軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

中身

「なに、なにが入ってるのっ?」

マーギンが見せていいものだと判断したらと、自分で言ったにも関わらず、好奇心が抑えられないカタリーナ。

マーギンはそれに答えずに、布に包まれているものを取り出した。

「なにそれ?」

「これは多分……」

◆◆◆

「マーギン、家に帰っているのか?」

シーン。

マーギンとカタリーナを探しにきたローズ

「気配もないな……姫様は早くマーギンに教えたがっていたから、まさか魔法で戻られたのか?」

ローズはピンと来て、城に走って戻ることに。その目にはちょっと涙が溜まっていた。

◆◆◆

マーギンはシュルシュルと布を外す。

「剣?」

「そうだ。聖剣ジェニクス。勇者マーベリックが使っていた剣だ」

「勇者の剣……?」

「そう。妖刀バンパイアと対極にある剣だと言われているけど、実際はこの剣のことをよく知らないんだよな」

「マーギンが使うの?」

カタリーナに言われて、聖剣ジェニクスを抜いてみる。

「わぁ、綺麗な剣」

「そうだろ? マーベリックがこれで、魔物をスパンスパンと斬っていく様は本当に見事だった」

「なら、マーギンも同じように使えるんだね」

「……いや、多分俺はこの剣の性能を引き出してやれない」

「どうして?」

「お前に渡した聖杖エクレール、大隊長に渡したヴィコーレ、バネッサに渡したオスクリタ。それぞれがそれを手にしたときに何かを感じた。俺がこのジェニクスを持っても何も感じない。俺はこの剣の持ち主に相応しくないということだ」

「そうなんだ……残念だね」

「いや、元々俺が使えるとは思ってなかったから気にしなくていい。さ、他のものも確認しようか」

金庫の中に入っていたのは本がほとんど。それも使い込まれた本だ。

マーギンは本の中身を確認せずに先に指輪ケースを探す。

あった……

一番奥に落ちていた指輪ケース。ミスティのものだ。

指輪ケースを開ける手が震える。もし、ここに指輪が入っていたら、あの石像がミスティである可能性が出てくる。

「それ、開けないの?」

「えっ、あ……いや。開けるよ」

頼む、何も入ってないでくれ。

そう祈りながら、指輪ケースを開けた。

「あー、なんにも入ってない」

「そ、そうだな……良かった……」

これであの石像はニセモノの可能性が高くなった。ミスティの石像がどこにあるかは分からないが、壊れた石像がニセモノだろうということで、マーギンはホッとした。

「どうしてホッとしてるの?」

「いや、別に。残してくれた本がなんの本か確認してみようか」

と、マーギンが同じ種類の本を見てみると、これらは医学書だった。パラパラとめくっていくと、あちこちにメモが残っている。この字は……

「ちゃんと勉強してたのかよ……」

マーギンはこの医学書を見て、ソフィアがずっと医学の勉強をしていたことを初めて知る。聖杖エクレールの力で聖女になったと思っていたことを反省した。

「悪かったな。全部エクレールの力だと思ってたわ」

ゴンっ。

「痛っ!」

カタリーナが金庫に立て掛けてたエクレールが倒れてきて、しゃがんでいるマーギンの頭に当たった。

「ごめん、あっちに置いておくね」

「そうしてくれ」

なんか、オスクリタみたいに飛んでくるんじゃないかと思うマーギン。

医学書は医学書でまとめておく。

「その本は?」

「ミスティがまとめた魔物の研究結果が記されている。これは翻訳して、特務隊とハンター組合に渡さないとな」

次は魔道具の回路関係だ。この辺は全部知ってる。が、最後の方の回路は初めて見るものが出てきた。かなり複雑な回路を読み解いていく。

「それは魔道具の回路?」

「そうだ。俺が作れなかったものだな」

「なんの道具?」

「通信の魔道具だ。遠く離れたところの人と話せる」

「へぇー、すっごーい。それ作って」

「難しくて無理かもな」

と、嘘をつく。カタリーナに渡したら、延々と電話してくる未来しか見えない。

これはなんだろう? 回路以外に図解もあるけど。蓄音機? いや、違うな。集音器かこれ?

気配のない魔物を探るのに使ってたのかもしれん。

こっちの本は……

マーギンは本をめくって固まった。これ、魔導兵器の設計図と回路じゃないか。しかも俺が途中まで書いてたものも……

「それは?」

「これは見なくていいものだ。次のを確認する」

ここで、回路関係のものを見るのは良くないかもしれない。カタリーナが見ても分からないだろうけど、なんの回路か聞きたがるだろうからな。

残りはマーベリックが書いたであろう本と、ミスティの鍵付きの本。これは日記か。

ミスティの日記は子供が書いたような字でみすてぃと小さく書かれている。俺と出会ってから書いたものなのだろう。

マーベリックの本をここに入れてあるということは読めということだろうけど、ミスティの日記は違うかもしれない。鍵付きだから読まれたくないのかもな。

マーギンは聖剣ジェニクス、指輪のケース、魔道具関係、魔導兵器関係、マーベリックの本、ミスティの日記をアイテムボックスに収納した。

「カタリーナ、金庫を開けてくれてありがとう。この本は医学書でな、ソフィアが勉強していたものだ。今後のお前に必要になってくる。言葉は翻訳できるけど、俺に内容までは分からん」

「そんなの私も分かんないわよ」

「だろうな。だから、俺が知ってる医者のところで翻訳する。それにお前も付き合え」

「私は何をしたらいいの?」

「勉強だ。シャランランで治せたとしても、きちんと勉強しておいた方がいい」

「どうして?」

「骨折を治癒するときは、いきなり治癒魔法を掛けたら、元に戻らないまま固まる。元の状態に戻してから治癒魔法を掛けないとダメなんだよ。お前も見てただろ?」

「うん」

「多分、病気の場合もそういうことがあるかもしれん。だから勉強しておいた方がいい」

「分かった。それ、アイリスも参加できる?」

「アイリス? あいつは治癒魔法を使えないぞ」

「うん……実はね」

と、カタリーナはアイリスがソフィアの過去を見たことを話した。

「えっ、ソフィアの過去だと?」

「うん。マーギンが言ってた無慈悲な聖女だったというのは間違いだと思う」

そして、アイリスから聞いた話を全てマーギンに話そうとしたら、

ゴンっ。

「痛っ」

棚の上に置いたはずの聖杖エクレールが落ち、跳ねてカタリーナの頭に当たった。

「もうっ、なんなのよっ」

「ソフィアの話はいい。医学書を見たら、あいつが努力して聖女になったのが良く分かったからな」

「う、うん……」

ぐーっ。

一通り確認が終わると同時にカタリーナのお腹が鳴る。

「マーギン、お腹空いた」

「食べずに待っててくれたのか。本当に悪かったな」

「どうして忘れたの?」

「考えごとをしてて、そのまま家に帰っちゃったんだよ。そしたら急に眠たくなってな。起きたらすっかり忘れてた」

「もうっ。罰としてなんか作って」

「食べたいものあるか?」

「タイベで私が釣った魚持ってるよね?」

「あるぞ」

「それでなんか作って」

カサゴが大量にあるから、刺身と唐揚げにしてやるか。俺も唐揚げ食べたいしな。

カタリーナの私室で、カサゴの炊き込みご飯、みそ汁、刺身、唐揚げを作っていく。換気扇がないので、匂いが充満するけど気にしないでおこう。俺の部屋じゃない。

ジュワワワワ。

「丸ごと揚げるの?」

「背中に切れ込みを入れてあるだろ? こうしてやると、小さいやつは中骨も食べられる。大きいのは、あとから骨だけ揚げなおしてやる」

「いい匂い」

お腹が空いているときの揚げ物はいい匂い。これがお腹いっぱいだと油臭く感じるから不思議だ。

「さ、できたぞ。カサゴ尽くし飯だ。唐揚げは塩だけでもいいし、レモンを搾っても旨いぞ」

「じゃあ、初めは塩だけで」

マーギンは小型のやつを骨ごと食べる。

「美味しい。身がフワフワ」

「カサゴは出汁もよく出るから、炊き込みご飯もみそ汁も旨いぞ」

こうして、カサゴ尽くしご飯を堪能していると、

「姫様、姫様はお戻りですか」

と、ローズが扉の前で叫ぶ。

「いるよー! 入ってー」

ガチャと扉を開け、部屋に入ったローズの目に映ったものは、マーギンと2人で楽しそうに飯を食っているカタリーナの姿。

「いきなり居なくなられては困ります。心配したではないですかっ」

ローズ激オコ。

「ごめーん。マーギンに転移魔法使ってもらったの。ローズも一緒に来てるかと思ったら、いなかったの。何してたの?」

ワナワナワナワナ……

なんか、どうしていいか分からない感情が込み上げてくるローズ。

「貴様が、貴様がこんな近距離で転移魔法を使うからだっ!」

ポカポカポカポカ。

その感情をマーギンにぶつける。俺のせいじゃないぞと言いかけたが、そもそも約束を忘れたのは自分なので、甘んじて受け止めた。決して、ポカポカされるのも悪くないと思ったわけではない。

「はい、カサゴ飯。今から唐揚げ作るから」

「飯など、飯など……」

ぐーっ。

ご飯なんかいらないと言いかけたローズのお腹が鳴る。目の前に出されたカサゴ飯がとても美味そうなのだ。

「うっ、うっ、うっ」

泣きながらカサゴ飯を食べるローズ。悔しいけど旨いのだ。

「おかわりだっ!」

そして、やるせない感情はローズを暴食魔人へと変貌させたのであった。

その後、カタリーナに泊まっていってとせがまれ、断れなかったマーギン。ローズも一緒に泊まることになった。

「金庫にそんなものが入っていたのか」

寝る前に甘めの酒を飲みながら、金庫の中身のことを話す。

「俺に医学の勉強をしろってことだったのかもしれないけど、カタリーナに任せる。翻訳するときにちょっとは覚えられるかもしれないし」

「しばらく、翻訳作業に掛かりきりになるのではないか?」

「そうかもね。夏前には終わらせたいかな」

「夏に何かあるのか?」

「タイベにバカンス」

「えー、私も行きたーい」

「なら、一緒に行くか」

「いいの?」

「こっちの魔物の状況によるけどな。そのうち、遊ぶこともできなくなるかもしれないから、今のうちってやつだ」

「今のうちか……」

ローズが呟く。

「シュベタインはチューマン対策で、各街の対策が始まると思う」

「対策とはどうするのだ?」

「街の回りに掘を作ると思う。それができない村は、避難するしかないだろうね」

「被害をなくすことは無理なのだな」

「いつ来るか分からないからね。西側の国が協力しあってくれればいいけど、無理そうだし」

「そうだろうな」

実際にゴルドバーンの領主を見たローズはマーギンの言うことを理解したのだった。