軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

戦争の影響

門を通って、最初の街に到着した。

「作物が全然畑になかったな」

バネッサがそう呟く。街道沿いにある、いくつかの村近くを通ったが、農作物がなかった。麦畑には草のように麦が生えていたが、それだけしか見当たらなかったのだ。

「まぁ、ほとんどのところが夏野菜を植えてる村だったんじゃないか?」

マーギンはなぜ農作物が畑になかったか想像は付いていたが、あえてそう答える。

「それでもよぉ、自分達が食うもんぐらいなんか植えてあるもんだろ? ほうれん草とかジャガイモとかよ」

「もう収穫して、倉庫にしまってあるんじゃないか? それに俺達が気にすることじゃない。気にしてもなにもしてやれないだろ?」

「そりゃあな……」

「さ、今日の宿の確保と飯屋に行くか。他国の飯がどんなのか気になるしな」

と、話題を変える。

「はい、お泊りいただけます。お部屋割りはいかがなさいますか?」

「えーっと……」

ノイエクスは大隊長と一緒でと言いかけたら首を横にブンブンと振る。野営は仕方がないと諦めていたが、宿まで一緒は嫌みたいだ。

「男2人は個室で。カザフ達は俺と一緒でいいな?」

アイリスとバネッサ、カタリーナとローズが相部屋となった。

「ここ以外でオススメの飯屋とかある?」

「あいにく、今は閉まっているところが多くて。うちも簡素な食事しか提供できない状態なのです」

「戦争の影響?」

「はい。申し訳ございません」

やはりそうか。農村が近い田舎の街でこれだ。王都や戦場に近いところはもっと酷いだろう。

「大隊長、飯はどうしますか?」

「だ、大隊長……?」

受付の人が驚く。

「あー、この人のあだ名ね。俺達の中で1人だけおっさんだからさ」

ゴツン。

そう誤魔化したらゲンコツをくらった。

「ご飯はなんとかするから、泊まりだけでいいよ。朝飯もいらない」

と、素泊まりだけにしておいた。手持ちの食料は大量にある。ゴルドバーンで何も買えなくてもなんとかなるだろう。

部屋で煮炊きするのもなんなので、それぞれの部屋で持参した飯を食う。

「マーギン、戦争があったら、食料がなくなるのか?」

カザフ達は食料が足りなくなる理由を聞いてきた。

「多分、国境沿いの農村部が戦場になったりしてるんだろう。で、食料が足りなくなるから各地から取り寄せる。それで各地で足りなくなるんだと思うぞ。あとは魔物の増加の影響もあるんだろうな」

「魔物の肉を食えばいいのにな」

「ハンターも傭兵に行ったりして、足りないんじゃないか? それにマジックバッグがないと肉もたくさん持ち帰れないだろ?」

「あ、そっか。マジックバッグって超高級品だったんだよな」

「そう。お金があっても買えなかったりするからな」

マーギンといれば、こういった心配をすることがなかったカザフ達。今回のことで改めて、自分達は恵まれているのだと実感する。

「ここでマジックバッグ作って売ればいいんじゃない?」

「マジックバッグを作れる人は少ないんだよ。それに犯罪にも使えるから、ゴルドバーンでは作ったり、売ったりするのも許可が必要かもしれん」

「そうなんだ。シュベタインではそういうのないの?」

「さぁ? 俺が作れるのを知ってる人は少ないし、売ってもないから大丈夫じゃないか?」

「そっか……俺達、なんか普通に使ってたから、そんなこと考えたことなかった」

「ま、いいんじゃないか。特務隊には必要だろ。犯罪に使われないんだったら、売ってもいいんだけどな」

コンコン。

そんな話をしていると、誰か来た。

「はい」

「よぉ、飲もうぜ」

と、バネッサとアイリスがやってきた。

「お前ら何食ったんだ?」

「お菓子」

子供かお前らは?

「おにぎりでも食っとけ」

と、鮭の焼きおにぎりを出してやる。

「へへっ、香ばしくて旨ぇ」

「美味しいです」

コンコン。

「はい」

次にやってき来たのはノイエクス。

「タジキ、預けてあるパンをくれ」

「あっ、ごめん。渡すの忘れてた」

「ノクス、何食うつもりだ?」

「パンだ」

どうやらパンだけを食うつもりのようだ。

「これ食っとけ」

「いいのか?」

ノイエクスにも焼きおにぎりを渡しておく。よくパンだけとか食う気になるな? バターやジャムなしでも食えるのは凄いと思うけど。

そして、部屋も寒いので、オイルサーディンをつまみにお湯割りを飲もうとすると、大隊長もやってきた。見てたわけじゃないよね?

「カザフ、カタリーナ達も呼んでこい」

と、言ったら呼びに行くまでもなく、2人とも来た。

部屋はぎゅうぎゅうだけど、家で飲むときもこんな感じだしな。

オイルサーディン以外に牛肉やマグロの大和煮なんかを出しておく。これには焼酎のお湯割りだな。

「つまみにちょうどいいな」

「缶つまってやつですね」

「カンツマとはなんだ?」

「缶詰のつまみ。俺の生まれた国では、こういう物が缶に詰められてたんですよ」

「ほう、瓶ではなく缶に詰めるのか。傷まないのか?」

「密封されてるから日持ちしますよ。缶詰の作り方は知らないので、作れませんけど」

「お前の生まれた国は便利な物があったのだな」

「そうですね」

マジックバッグとかはなかったけどね。

同じようなことを他の街でも続けながら、各地の様子を調べていく。

「大隊長、どうします? 北上するか、南下するか、このまま西へ向かうか」

「とりあえず、王都に入ろう。ハンター組合でどのような依頼が出ているか興味がある」

魔物討伐以外に傭兵の募集もあるって門番が言ってたからな。

王都の門番にハンター組合の場所を聞いて、そこへ向かう。

「うちの国と違って活気がねぇな」

「戦争とかで景気が良くないんだろうな」

王都だというのに、外にいる人も少ないし、あちこちの店が閉まっている。

そして、奴隷と思われる人もあちこちにいるし、浮浪者みたいなのもいる。貧民街ならまだしも、大通りでこれだ。治安も悪化してるのかもしれん。

「ローズ、気を付けてくれ。スリや強盗とかが出るかもしれん。俺達がよそ者だというのはすぐに分かるだろうから、狙われるぞ」

「承知している」

「ノイエクス、無礼を働かれても人を斬るなよ。ここは自国じゃないから、何かと不利な扱いをされる恐れがある」

「誰が無礼を働かれたぐらいで人を斬るか」

「剣を抜くなという意味だ。なにかあれば俺が対処する。それと、アイリスを暴走させるなよ」

そう言われてハッとする。そうだ。こいつのやらかしは俺の責任になると言われていたことを思い出したノイエクス。

警戒しながら、ハンター組合に向かって歩いていると、ケガをしている奴隷が荷車をひいていた。ムチかなんかで打たれたような感じだ。

「あなた、ケガをしてるじゃない」

「かまわないでください。旦那様に叱られます」

カタリーナがそのケガをしている奴隷に話し掛ける。タイベの先住民のような人だ。

「大丈夫、私が治してあげるから」

《シャランランっ!》

「え? あっ……」

「もう痛くない? ケガしたら休まないとダメよ」

「あ、あなたはいったい……」

「私はカタリー……むぐぐく」

「やめろ。俺達は急いでんだ。見知らぬやつに構うな」

「もうっ、ちょっとぐらいいいじゃない」

「いいから、行くぞ」

と、カタリーナの首根っこを掴んで連れていく。ケガを治してもらった奴隷はカタリーナに頭を下げていた。

それからも、ケガをしてへたり込んでいる人にシャランランをしていくカタリーナ。

「ほら、俺達から離れるな」

「ま、まだあの人が……」

「いいから来いっ!」

ようやくハンター組合に到着。まずは掲示板を確認する。

「大モグラ、ボア、魔狼……それにビッグワームまで出てんのか」

「ビッグワームとはなんだ?」

「肉食のミミズみたいなやつ。モグラと一緒で、地中からいきなり出てくるから厄介だよ。強さはそうでもないんだけどね」

ミミズと聞いて引きつるローズ。

「これ、討伐依頼受けてみる?」

と、ローズに聞くと、キッと睨まれた。大ピーマン討伐とかないかな?

「傭兵の依頼はそこそこ高額だな」

大隊長は討伐系ではなく、傭兵の依頼を見ていた。

「だからハンターはそっちを受けるんでしょうね。相手にもよるけど、魔物より弱そうだし」

「あの……」

と、組合の人らしき人から声を掛けられる。

「なんですか?」

「よそから来られたハンターさん達ですか?」

「そうだけど、魔物討伐の依頼溜まってるね」

「は、はい。まったく人手が足りてなくて」

魔物討伐系の報酬は軒並み低いし、数が多い。それに王都以外の依頼もたくさんある。

「一番困ってるのはどれ?」

「ここのビッグワームです。報酬も安い上に素材も取れないので」

「これが出るの小麦畑だろ? 国から援助とか出てないの?」

「国も今は大変で……」

国も分かっちゃいるけど、目の前の戦闘を優先せざるを得ないのか。

「素材が取れないと言ったけど、食えるだろ? 食料不足なら狩ればいいのにね」

「えっ、ビッグワームって食べられるんですか?」

「気持ち悪がって食べない人が多いけど、夏場のボアなんかより旨いぞ」

「マーギン、お前は食べたことがあるのか?」

ローズがミミズを見るような目でマーギンを見る。

「ホルモンの味噌煮込みを昨日食べただろ?」

「あ、あぁ。美味かったぞ」

「あれ、本当はミミズなんだよ」

「う、嘘だ……」

青ざめるローズ。ホルモンの味噌煮込みをご飯に掛けて丼飯にしたら、バクバク食っていたのだ。それが今にもうぇぇぇぇしそうになる。

「うん、嘘」

「きっ、貴様というやつはっ。言っていい冗談と悪い冗談があるとしれっ!」

てっきり、ポカポカしてくれると思ったら、涙目で怒鳴られてしまった。期待ハズレだ。

「あ、あの……」

「あ、ごめんごめん。ビッグワームは処理をきちんとしたら、普通に食える」

「その方法を教えてもらえませんか。今の王都は本当に食料不足でして」

「いいよ」

◆◆◆

「げっ、ミミズなんて食うのかよ?」

ビッグワームをミミズ呼びするマーギン。

「なんでも調べておかねばならん」

「なら、お前だけ食え。俺は食いたくない」

今倒したばかりのビッグワームを食ってみると言い出したミスティ。

「お前も一緒に食わねば、調査にならんではないか」

「なんでだよ。お前が食えば調査できるだろうが」

「味の好みは色々とあるじゃろうが。こいつが旨ければ、食料不足で困っている農村の連中も助かるとは思わんのか?」

「お前が食って、大丈夫なら他のやつも大丈夫だ」

「貴様も食えっ!」

「イヤだ」

こんなやり取りをしながら、丁寧に捌いていく。

「うむ、皮はヌメリがある。臭いの正体はこのヌメリじゃな」

ぬちゃぬちゃの粘液を触って臭いを嗅ぐミスティ。エンガチョだ。

そして、そのヌメリを板でこそいだり、塩でこすったりして、効果的に取り除ける方法を試していく。

「うむ、酢が一番綺麗に取れるな」

「ヌメリがあったほうが飲み込みやすいだろ? そのまま食ってみろよ」

「誰がこんなヌルヌルしたものを食うかっ!」

「オクラとかネバネバしたものを好んで食うだろうが」

「貴様が食ってた腐った豆より旨いわっ!」

「あれは腐ってるんじゃない」

「腐ってなくても、ガインの足みたいな臭いのする豆を食うやつが偉そうにオクラを語るなっ!」

いつもの口喧嘩をしながら、ヌルヌルをとったビッグワームの皮を焼いたミスティ。

「うむ、食えなくはない」

うわ、こいつミミズ食いやがった。

「なんじゃ、その顔は?」

「別に……」

「私を汚物を見るような目で見たじゃろうがっ。食えっ、貴様も食えっ!」

「絶対にイヤだ」

《パラライズ!》

げっ。

ミスティにパラライズを掛けられ、無理矢理口の中に焼きミミズを押し込まれた。

「うぇぇぇぇ」

吐き出したくても、パラライズで吐き出せない。

「ほーれ、よく噛め」

手でアゴを動かされて咀嚼させられる。

「うぇぇぇぇ……ん?」

「どうした?」

パラライズを解除され、感想を聞かれる。

「ちゃんと味付けしたら、食えるかも。これ、塩も振ってないよな?」

「味付けなしで食ってみるのが実験じゃ」

「イカの風味がないイカみたいだ。バター炒めとか合うかも」

と、鹿の子状に切れ目を入れて、バター炒めにしてみる。

「うむ、身に脂っけがないから、こうしてバターで炒めると旨いではないか」

調理されて出てきたらミミズとは思えんな。

油との相性がいいと分かったので、次は素揚げにしてみる。

「スナック菓子みたいだな」

とても不思議な肉だ。じっくり揚げてやると、コーンスナックみたいな感じになる。

と、なにかを閃いたマーギン。

鹿の子状の切れ込みを入れずに素揚げして塩を振る。クルッと丸まった姿はまるで、あのスナック菓子みたいな見た目だ。

「チーズあじにできたらいいのにな」

「こうするとオヤツじゃな」

こうして、マーギンとミスティはビッグワームを食料として認識したのであった。

◆◆◆

「じゃ、この討伐受けるよ。実物を調理してみた方が分かりやすいだろ? それで食えると分かったら、依頼を受けるやつも出てくるだろうからな」

「よろしくお願いします」

ということで、睨み付けているローズをよそに、マーギンはビッグワーム討伐の依頼を受けたのであった。