軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

旅行気分

「陛下からもらってきたぞ」

大隊長が髪の毛の色を変える薬を持ってきてくれた。臭いを嗅ぐとブリーチ剤かなんかだなこれ。

「貴重な薬らしいから、こぼすなよ」

いや、そんなに貴重なものではないと思う。魔法の薬かなんかと期待していたが、そうではなさそうだ。

早速髪の毛に付けて、しばし放置すると、髪の毛の色が抜けていく。

「こんなもんでいいかな?」

「なにか違和感があるな。もう少し待った方がいいんじゃ」

「そう?」

待つだけなのも暇なので、地図を見ながら、ゴルドバーンのどの辺りに転移するか相談する。

「前はどこに行ったのだ?」

「ほとんどが南側の山とかそんなところ。街中は怪しまれても嫌だから、少し覗いた程度だね」

「そうか、状況を調べるには中心地に行かねばならんからな。シュベタインから入国したように見せる必要もある」

「なら、南側の山近くに転移してから、こっちに移動する必要があるね」

「距離はどれぐらいある?」

「ミャウ族の集落からライオネルぐらいかな」

「かなりあるな。徒歩移動だと1ヶ月ぐらい掛かるかもしれん」

「なら、俺とカタリーナで、ここに移動してから、みんなを呼び寄せようか?」

と、シュベタインから陸路で向かったときの入り口付近を指で示す。

「初めからそこに転移できんのか?」

「転移魔法って、一度行ったことがある場所しか無理なんだよね。俺一人で行って、転移で戻って来てもいいんだけど、ずっと同じ場所にいてもらうことになる」

マーギンは転移酔いのことと、カタリーナがいないと2〜3日動けなくなることを説明する。

「そうか。ならば姫様を連れて行って、戻ってくる方がいいな」

そこまでの移動はプロテクション階段を使うことを説明すると、

「皆で行けばいいのではないか?」

「スピード出すと、結構危なかったりするんだよね。2人ならなんとかできても、全員になんかあったら、助けられないかも」

結局、安全策を取ることになり、全員でゴルドバーンの南側に転移し、マーギンとカタリーナがゴルドバーンの入り口に行って、転移ポイントを作ってくることで決まった。

「うむ、髪の色もいい感じになったな」

と、言われて鏡を見る。

「金髪みたいになってんじゃん」

「いいではないか」

「俺の顔立ちに似合わんでしょ」

まるで田舎のヤンキーみたいな感じだ。それに違和感があるのは眉毛のせいだな。

「眉毛も色揃えないとダメだね」

と、眉毛に薬を塗る。

「まつ毛だけ黒いとおかしいぞ」

と、言われたのでまつ毛にも……

「うぎゃぁぁ、目がっ、目がぁぁぁ」

薬品が目に入り、転げ回るマーギン。城が空から崩れ落ちてしまいそうだ。

治癒魔法でなんとか乗り切り、金髪マーギンの完成。

「おぉ、目の色もブラウンになったぞ」

え?

また鏡を見てみると、確かに瞳の色も黒からブラウンに変わっていた。ブリーチ剤じゃないのかこれ? もし、ブリーチ剤と同じだとしたら、目ん玉漂白とか怖すぎる。

出発前に全員の持ち物を確認するために、夜に宿舎に集合した。

「ぎゃーはっはっは、マーギンじゃねぇ。マーキンだ」

金髪マーギンを見て大笑いするバネッサ。

ギンからキンに変わっただけで、なんか卑猥な名前に聞こえるのはなぜだろう。

「うるさい。ゴルドバーンに行くのに各自の持ち物をチェックをする」

「マーギンが全部用意してくれてんじゃねぇのかよ?」

「人数が多いだろうが。着替えはもちろん、食料やテントも自分の分を用意しておけ」

マジックバッグ持ちは、アイリス、タジキ、バネッサ。追加で大隊長の分も必要だな。ヴィコーレを持ち歩くと目立つからな。

「マーギンさん、ハンバーグはおやつに入りますか?」

「入る」

「えーっ」

別におやつの上限とかないだろうが。

「ノイエクス……呼びにくいな、お前の名前。ノックスでいいか?」

「ノクスでいい」

「なら、ノクス。お前、自前のテントとか持ってるか?」

「一応あるけど」

「着替えとか含めてタジキのマジックバッグに入れといてもらえ。食料もある程度、自分で用意しとけよ。肉は現地でも調達できるだろうが、パンとかな」

「分かった」

「大隊長、全員で動くとは思うけど、チーム分けしといた方がいいかな?」

「そうだな。なにか希望はあるか?」

「タジキは大隊長、カザフはバネッサ、トルクは俺に付け。他は……ノクス、お前はアイリスの盾役、カタリーナの盾役は俺がやる」

「マーギン、ローズは連れて行かないの?」

「ローズ、行きたい?」

「わ、私は……」

「マーギン、ローズも連れていけ。もしかしたら、ゴルドバーンの貴族と話をすることがあるかもしれん。俺1人より、女性がいた方が警戒されずに済む」

「了解」

「僕がマーギンに付けって、どういう意味?」

と、トルクが聞いてくる。

「カザフ、タジキ、トルクは俺か大隊長が許可を出すまで実戦をさせない。それぞれ付いた人が何をするのか、どう動くのかをよく見ておけ。絶対に勝手に戦闘するな」

「えっ? なんでだよっ。俺達はもう結構やれるようになってんだぜ」

カザフが不満を言う。

「知ってる。だから連れて行くんだ。見るのも特訓だと思え。ノクス、お前もだ。アイリスがやらかしたらお前に責任を問うからな」

「えっ? なんでだよ」

「盾役とはそういうものだ」

と、適当なことを言っておく。アイリスに自分がやらかしたら、怒られるのは他人だということを知っといてもらおう。

それから2日掛けて、それぞれが準備を整え、出発することになった。

「さ、行くぞ」

「おー!」

マーギンがカタリーナと先に入り、あとに皆が続く。カタリーナも慣れたもので、マーギンがグラッときた瞬間にシャランランをしてくれる。

「助かる……スンスン」

マーギンがカタリーナを嗅ぐ。

「嗅ぎたいの?」

「やっぱりお前がシャランランを使うと甘い匂いがする」

「自分では分かんない」

「だろうな。他の人にも分からんみたいだから、魔力が関係してるのかもしれん」

「何をやっとるのだお前は?」

カタリーナを嗅いでいるところを大隊長に見られたマーギン。

「い、いや。変なことをしていたわけじゃないんだよ……」

「変態野郎が。お前、前にうちの匂いも嗅いでたよな」

バネッサからも白い目で見られる。そんな目で見るのは構わないが、ローズの前で人聞きの悪いことを言わないで欲しい。

「あー、姫様から甘い匂いがする」

「トルクも分かるの?」

「うん、甘い花みたいな匂いがする」

「マジで?」

カザフとタジキもクンカクンカとカタリーナの匂いを嗅ぎに行く。

「やっ、やめてよ」

カザフ達よ、もうすぐそれは変態と呼ばれる行為になるのだぞ。

そして、カザフとタジキはしつこく嗅ぐので、エクレールの餌食になるのであった。

「タイベみたいな気候だなここ」

冬の王都から来たから、蒸し暑く感じるので、軽装に着替えてから、拠点をどこにするか話し合う。

「見知らぬ場所で拠点を作るのはまずいな。どこかに村かなにかないか?」

「ありますよ。前にチューマンに襲われ掛けていた村がね」

「ではそこに行こう。金を払えば、村の中で野営させてもらえるだろう」

と、村を目指して移動する。

「これは酷いな……」

マーギン達が目にしたものは、壊滅した村だった。

「これはチューマンの仕業か?」

「どうでしょうね」

ここに来るまで、マーギンと大隊長以外は旅行気分だったのが、壊滅した村を見て、自分達が甘かったことを自覚する。

黒ずんだ土がそこらかしこにあるが、すでに血の臭いはしない。襲われてから時間が経っているのだろう。

「大隊長、チューマンの可能性が高いです。入り口が綺麗に斬られてますからね」

夜に襲撃を受けたのだろう。入り口の扉がすっぱりと斬られ、家の中にはおびただしい血の跡が残っている。逃げる暇もなかったということだな。

他の家も似たような感じだ。タイベでは3匹セットのことが多かったが、どの家も似たような感じだ。おそらくこの村は複数のチューマンに襲われたのだろう。

「ここにまた来ると思うか?」

「どうでしょうね。狩り尽くしたと思えば来ないでしょうし、餌場と認識していれば、餌が溜まってないか確認に来るでしょうね」

「そうか。ならばここで野営をするのはやめておこう。移動するぞ」

この感じだと、周辺の村は襲われてなくても、離村しているだろう。この近辺で野営地を作るのは無理と判断して、全員でプロテクション階段を使って、ゴルドバーンの入り口へと移動することになったのだった。