軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

出発前の日常

年が明けて、朝から餅つきをすることに。カザフ達もよく寝て充電完了したのか、めっちゃ元気だ。こっちは寝る場所すらなかったというのに。

「大将達呼んでくる」

タジキがそう叫んで、リッカの食堂に走っていったので、先に魔導餅つき機で作るか。ババアのところにも持っていかないとダメだからな。

そして、餅つき機の餅がつきあがるころに大将達がやってきた。

「よぉ、おめでとうさん」

「明けましておめでとう。今から餅つくのに持ってきたのか?」

「は? なんにも持ってきてねぇぞ」

「あるじゃん」

と、女将さんの腹を見るマーギン。

どすどすどすうっ。

餅より先につかれるマーギン。

「新年早々、余計なことを言うんじゃないよっ!」

「痛ちちちち。女将さん、杵いらないんじゃ……」

どすどすどすどすどす。

「懲りないわね、あんた」

呆れるリッカ。

「お? お前、少し餅が育ったな」

リッカの胸を見ていらぬことを言う

ビタビタビタンっ。

まだつかれ足りなかったマーギンはリッカに仕上げられた。もう十分だろう。

「タジキ……あとは頼んだ」

エビ餅みたいな顔になったマーギンは、あとを任せてシャングリラに正月料理を持っていった。

「お前、もう飲んできたのかい?」

「そんないいもんじゃない。ほら、差し入れだ」

びっしりと肉系の料理が入った箱と、雑煮用の出汁、そして餅を渡す。

「お前、毎年こんなことしなくていいよ。忙しいんだろ?」

「まぁ、そうだけどさ。見習いの娘達は楽しみにしてるだろ? こっちの瓶は甘く煮た栗が入ってる」

「ふん。気前のいいこった。そのうち誰か身請けしてやりな」

「俺にそんな甲斐性はないよ。で、ババアのはこれだ」

ババア用に、カニ、エビ、酢締めの鯛の押し寿司を渡す。

「前のと具が違うやつかい。具を変えたのはなにか意味あるのかい?」

「俺の生まれた国では、紅白のものは縁起のいい色なんだよ。新年にピッタリだろ?」

そう答えると、珍しく微笑んだ。

「あたしがもらう前に、タバサに食わしてやりな」

「え?」

「なんも埋まっちゃいないがね」

と、店の裏庭に連れて行かれると、小さな祠というか、教会みたいなものが建てられていた。

「タバサがここにいるかどうかは知らないけど、想いは届くさね」

そうだといいなと思い、マーギンは押し寿司と酒を供えて、手を合わせ、心の中でタバサにお礼を言った。

『ありがとう。前を向いて幸せになってね』

「えっ……?」

タバサの声が聞こえたような気がしたマーギンは、タバサと出会ったときから亡くなるまでのことが頭の中でよみがえり、ポロっと涙がこぼれた。

「ったく、いい大人が泣くんじゃないよ。タバサは湿っぽいの嫌いだったろ」

「あ、あぁ。そうだな。タバサ、本当にありがとう。タバサがいなかったら、今の俺はなかった。それと、助けてやれなくてごめん。今なら何とかしてやれたかもしれないのにな……」

そう自分で言って、涙が止まらなくなってしまった。ババアはそんなマーギンを見かねて、店の方に行くのであった。

「ババア、しばらく来れないかもしれんからな」

「もう来なくていい。お前はお前のやらないといけないことだけやればいいさね。いつまでもここに義理立てする必要ないんだよ」

「別に義理で来てるわけじゃない。俺にとっては、この世界での原点なんだよここは」

「そうかい。なら、次に来るときにはもっといいもん持ってきな」

と、最後はいつものババアに戻った。

「マーギン、おっそーいって……泣いてたの?」

カタリーナが心配してくる。まだ目が赤かったようだ。

「昨日寝てないからだ」

「一緒に寝れば良かったのに」

そんなことをすれば、抱き合って寝るような感じになるだろうが。

「マーギン、餅は甘辛にしたら旨ぇか?」

「甘辛か。それはみたらし餅だな。よし、タレを作ってやる」

「おっ、やっぱり旨ぇんだな。ほれみろタジキ」

「甘醤油でも同じだろうが」

「タジキ、味付けは同じだけどな、みたらし餡ってのがあるんだ。作り方を教えてやる」

といっても、甘醤油に水溶き片栗粉を入れて加熱するだけだ。

「強火でやるとダマになるからな。混ぜながらゆっくりと加熱して、最後に強火で仕上げるんだ」

できたみたらし餡をバネッサ用に焼いた餅に掛けてやる。

「火傷するからフーフーして食べろよ」

「いちいち子供扱いすんな」

いや、お前はやらかすから言っているのだ。

「あっちいぃぃっ」

ほらな。

「マーギンさん、お餅にハンバーグを掛けたら美味しいですよね?」

アイリスよ、ハンバーグは掛けるとは言わん。

「却下だ」

「えーっ」

「マーギン、チーズは?」

「チーズか。餅ピザなら旨いぞ」

「じゃ、それ作って」

また面倒臭いことを。

「却下だ」

「えーっ、バネッサだけずるーい。好きなの? ねぇ、バネッサのことが好きだからえこひいきするの?」

またお前はいらんことを……

「餅ピザはつきたての餅でやるもんじゃない。余った餅を食うためにやるんだ」

と、適当なことを言っておく。もう面倒臭いから、カズノコと雑煮で飲もう。

「大将、女将さん。カズノコとか食う? 他にも色々と作ってあるけど」

「食ったぞ」

え?

「何を?」

「そこの箱に入ってたやつだろ。もうみんなで食った」

嘘だろ……

と、箱の蓋を開けると、カズノコが少し残っているだけだった。まぁ、雑煮とカズノコだけでいいか。

餅を食ってはまた餅つきしてと、賑やかなみんなを見ながらマーギンは酒を飲む。

「私にもそのお酒ちょうだいよ」

リッカがマーギンの飲んでるタイベ酒を飲みたいと言ってきた。

「リッカは旨いと思わんかもしれんぞ」

「前にロドリゲスにもらったお酒も美味しいって思ったもーん」

成人のときにもらった高級酒か。

「どうやって飲んだ?」

「オレンジジュースに入れた」

なんてもったいないことをするのだ。ロドリゲスが泣くぞ。

「少しだけ入れてやるけど、吐き出すなよ」

「大丈夫よ。子供扱いしないでよね」

と言って一気に飲むリッカ。

「ゴホッゴホッゴホッ」

ほらみろ。

「何よこれっ。美味しくないじゃない」

「だから言っただろうが。育ったのは胸だけかお前は」

そう言うと赤くなる。

「みっ、魅力出てきたかな?」

「バネッサくらいになってから言え」

ビタンッ。

リッカは怒って向こうに行ってしまった。

その様子を見ていたカタリーナ。

「ローズ、張り合ってきて」

「え? 何をですか?」

「バネッサには勝てないけど、勝負になるのはローズだけなの。だから張り合ってきて」

「嫌です。それにどうやって張り合うって言うんですか」

「脱げばいいじゃない」

「姫様っ!」

ローズはキッとカタリーナを睨む。

そんなやり取りを近くでやるから丸聞こえだ。しかし、久々に見る、ローズのキッと睨む顔もなかなか宜しい。

マーギンは今、ピーマンを出したらどんな顔をするかな? とか想像して楽しむ。

キッ。

それがローズにバレた。

「マーギン、いらぬことを考えているだろ?」

「べ、別に……」

「嘘をつけっ。絶対になにか変なことを考えていた顔だ。正直に言えっ!」

マーギンの近くにきて凄むローズ。

「いや……ローズにピーマンぶつけたらどんな顔するかなぁって」

と、正直に答えるとピーマンを見るような目でマーギンを見る。

「貴様というやつは……」

「そんな顔すると思ったんだよねぇ」

と、クスクス笑いながら酒を飲むと、「お前というやつは、お前というやつは」とポカポカされる。うむ、良い正月である。

こんな正月を過ごし、2日後に特務隊達と餅つきをするために訓練所で準備をしていると、王妃付きの使用人がやってきた。

「マーギン様、手紙をお持ちしました」

「王妃様から?」

「はい」

なんだろう? と思って読むと、うなぎのさばき方を料理人に伝授してほしいとのことだった。

「どっから仕入れたんだろ?」

「ハンナリー商会よ。シシリーが手紙と一緒に送ってきたのよ」

と、餅つきに来ていたシスコが説明してくれる。どうやら、社交会用にウナギやら、南国フルーツを送るように言ってあったようだ。

「王妃様に明日伺うとお伝えください」

と、使用人に伝言を頼んでおいた。

そして始まる餅つき大会。

「ほなら、あんたら。しっかりやりや」

軍人達にハッパをかけるハンナリー。軍人達はそれに応えるように歌いだす。

「ハンナリーは、ええやつだっせ、耳としっぽがおまっせ♪」

「なんやその歌っ。うちにしっぽなんかあらへんわっ!」

そうハンナリーが怒鳴ると、大笑いする軍人達。だんだん、掛け合い漫才みたいになっていってるな。

今回の餅つき大会はタジキに仕切らせているので、楽ちんだ。

「トルク、お前、ロッカのところを手伝ってこい。あれじゃ餅がなくなる。手をつかれないように気を付けろよ、砕けるぞ」

「分かったー」

ロッカは憂さを晴らすようについてるから、餅が飛び散ってるし、杵が砕けて木クズが入ってるんじゃなかろうか? トルクが上手く誘導してやってくれ。

マーギンは手伝わずに、餅つきしている人達を見て回る。こうして見てると、今の人間関係がよく分かるな。遊びの中でも人間関係や性格が分かるもんなんだなと感心していた。

翌日、うなぎのさばき方を教えるが、なかなか上手くいかない。うなぎの数もギリギリしかないのであまり失敗ができない。

「時間がないから、とりあえず俺が全部さばくよ。練習は次からやって。まだ焼く練習もしないとダメだし」

結局、マーギンが魔法で全てさばき、タレを作る。

「マーギンさん、当日厨房に入ってもらえませんか? 社交会は失敗できないのです」

話を聞くと、王妃が王都に戻ったあとに、社交会でやる内容が変わったようで、料理人達も切羽詰まっていた。

「分かったよ」

お願いします。と、懇願されたマーギンは、しょうがないなぁ、と答えるしかなかったのであった。