軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

悔しい

「お前、気付いてたんなら早く言えよ」

「どうせなら、透けるシャツを着て起きてこい」

もう秋になっているので、ブラをしてないんだろうなぐらいにしか分からなかったのが幸いだ。

「すけべっ」

「お前、まさかカザフ達の前でもあんな格好してんじゃないだろうな?」

「してねぇっての!」

バネッサと仲良く、ぎゃいぎゃいと言い合いをしながら、木工職人達のところに行く。

「おっ、マーギン。久しぶりだな」

「儲かってるか?」

「それがよ、あの漆器ってやつの大量注文が入って、それに掛かりっきりでな」

「良かったじゃん。完成まで時間掛かるだろ」

「そうだ。で、どこからの発注だと思う?」

漆器は高値で売れと言ってあるからな。それを大量発注となると貴族絡みだろ。

「どこの貴族だ?」

「それが王宮からの発注だってんだよ。まだ信じられねぇ」

あー、王妃が発注してくれたのか。漆器を気に入ってたみたいだからな。

「良かったな。王室御用達なんてなかなかないぞ」

「本当の話だと思うか? 金は前払いでくれたから、騙されてる心配はねぇんだけどよ」

「多分本当に王室からの発注だ。気合入れて作れよ」

「マジかよ……」

「で、用事が2件あってね、一つはうちの扉を修理してくれる人を紹介して欲しいのと、もう一つはここで出るおがくずを貯めといてほしい。誰かに定期的に取りにこさせるから」

「片付けてくれるならありがたいけどよ。何かに使うのか?」

「そのうち大量に必要になると思うんだよね」

「なら、大工を紹介してやるからよ、そこでも頼んでくれ。こことは比較にならんぐらい大量に出るぞ」

と、大工のところに連れていってくれたので、ドアの修理とおがくずを頼んでおく。

「マーギン、おがくずなんてなんに使うんだ?」

「ゴミ処理だ。シスコがカニ料理や飯の店を始めたらゴミ処理の問題が出てくるからな。今からゴミを処理するための魔道具を作る」

「おがくずをゴミ処理に使うのか?」

「そう。ちょいと工夫が必要だけど、ゴミが商品に変わるから一石二鳥ってやつだ」

バネッサはなんのことか分からないけど、すげぇなと返事をした。

マジックコンテナなども作らないとダメなのでシスコのところへ。

「何しにきたのよ?」

マーギンを見るなり嫌な顔をするシスコ。

「今、大工と木工職人のところに行ってきて、おがくずを捨てずに貯めておいてもらうように頼んできた。それを誰かに回収させてくれ」

シスコの眉間にシワが寄る。

「誰にやらせろっていうのよ?」

「回収ぐらい誰でもできるだろ?」

「その誰でもって、誰か言ってみなさいよっ!」

あー、またヒスコになってやがる。

「シスコ、態度悪ぃぞ。マーギンはお前のために動いてくれてるってのによ」

バネッサがマーギンを庇うと、そのことにもイラッとくるシスコ。

「バネッサには関係ないでしょ。口を出さないでちょうだい」

「けっ、そうかよ。なら、なんでも一人でやりやがれ」

「なんですってぇ!」

「二人ともやめろ。みんな怯えてるだろうが。シスコ、おがくずはゴミ処理に使う。カニが大量に売れるようになったら、カニ殻や生ゴミの処理に困るだろ? それと、魚を処理した内臓とかを捨てるのにも使う。ゴミが臭うと近隣に迷惑だからな」

「なら、初めにそう説明しなさいよ。でも回収にまで人手を割けないわよ」

「そうか。なら、魔道具も人手もこっちで勝手に手配する。その代わりゴミを処理する費用をもらうのと、ゴミを売る権利はそいつらにやるからな」

「ゴミを処理してくれるなら別にいいわよ」

シスコは自分が忙しいのに、マーギンとバネッサが自分達だけ楽しそうにしながら、また何かを押し付けようとしたと思い、イライラしていたのだ。

マーギンは魔道具を作る前に孤児院に行く。

「あら、薪や炭を寄付して下さる……」

「マーギンです。ちょっとお願いというか、子供達に仕事を頼めないかと思いまして」

孤児院では春雨的なものを作ってもらっているが、そこまで儲かるものでもない。

「子供達にできることでしょうか?」

「はい。おがくずを回収して、ごみ箱に補充する仕事です」

マーギンはそのゴミが売れることを説明する。

「本当ですか?」

「ええ。上手く売ることができなかったら買い取ってもいいですし、販路を紹介することもできます。元手は不要ですから、孤児院の運営費用に使ってください」

それぐらいなら孤児達でも可能だろうと承諾してくれた。

「マーギン、本当にゴミが金になるのか?」

「たぶんな。畑に使うと土がよくなるはずなんだ」

「はず?」

「俺は畑をしたことがないからな。でも、大丈夫だ。これが普通のことだったから」

勇者パーティ時代はどこの料理屋もコンポストを使って、残飯を肥料に変えていた。そのコンポストも作ったことがあるのだ。

また職人街に戻り、昼メシのお好み焼きを食うついでにコンポストの話をしてみる。

「ゴミ捨てるのに金払うのか……」

「月にいくらなら払える?」

「うちの規模だと、1万Gが限界だな。自分で捨てに行きゃただだからよ」

「それ、孤児院に寄付するつもりなら払えるか?」

「ゴミ集めを孤児がやんのか?」

「そう。孤児達に管理を頼む」

「そうか。なら、うちは頼むわ」

「ありがとうね」

「どうせ、その魔道具はお前が作ってやるんだろ?」

「まぁな。見本は俺が作って、追加分はみんなに頼む。業務用コンポストは職人組合の持ち物にしておいて、飲食店に貸し出しする形式だな。貸し出し賃は組合がもらう代わりに、魔石の補充をしてもらおうかと思ってね」

「それ、回路の特許とかどうするんだ?」

「別に組合のものでいいよ」

と、お好み焼き屋の親父と話していると、他の魔道具職人達が集まってくる。

「業務用ってことだが、個人用でも売れると思うか?」

「どうだろうね。貸し出しの管理はこの辺しか無理だろうから、業務用も売ればいいんじゃないか? 他の街でも需要はあると思うぞ」

「なるほど。それもそうだな。それに関しても特許料はいらねぇのか?」

「別にいいよ。作るのはお前らだし」

「分かった。なら、あとでみんなの決を取るけどよ、俺等が貸し出しして孤児らが管理する分は、貸し出し賃もそいつらにやれ。それで魔石も買えるだろ」

魔石の値段はかなり下がってきている。

「いいのか?」

「まぁ、職人にも孤児あがりのやつもいるし、寄付とかしてやってねぇからな。マーギンが特許を組合にくれるってんなら、俺達もなんかしてやりてぇじゃねぇか」

みんながそうだなと、うんうん頷く。

「了解。なら、あとは頼むわ。機械自体の仕組みはそんなに複雑じゃない。回路は特別なやつを組んでやるから、非公開特許にするぞ」

そう説明すると、おおー、と歓声が上がり、お好み焼きを食ったあとに色々と作り始めた。

「バネッサ、試食会まで時間あるけど我慢するか? それとも軽くなんか食うか?」

一通り職人達に説明と、作り方を教えたあと、家に戻ったマーギンとバネッサ。

「飯は我慢する。なんかつまむものと、軽めの酒がいい」

腹に響かないつまみか。キュウリを昆布とごま油で和えるか。酒は薄めのレモンサワーだな。

それをバネッサに出してやり、リビングで飲んでいる間に、マーギンはキッチンで遠征用に作り溜め始めていた食料と携行食のドライフルーツ入りクッキー等をバネッサ用に作ったマジックポーチに入れておく。それから追加で唐揚の甘辛も作って入れておいた。

「まだなんか作ってたのか?」

「まぁな。それ飲みきったら行こうか」

「分かった。それと、このキュウリのやつもっと食いてぇ」

「また作ってやるから行くぞ」

いつもは野菜より、肉系を好むのに、バネッサは野菜に飢えてるのかもしれんな。マジックバッグを渡すのはあとにして、野菜サンドイッチを追加で入れてやるか。

リッカの食堂に行くと、遅いと怒られた。まだ閉店前だろうが。

「あれ? ハンナは来てないのか?」

「今日は無理だと言ってました。試食するのはハンバーグですか?」

アイリスよ、食ったことがあるものを試食とは言わんだろうが。

カタリーナとローズも来てない。ロッカ、オルターネン、大隊長もだ。思ってたより、人数が少ないけど、まぁいいか。

マーギンはタジキに手伝わせながら料理を仕上げていく。

「ソードフィッシュは工夫しだいで色々なものに使えるけど、俺が作れるのはこんなもんかな」

今まで作ったことがあるものをソードフィッシュでアレンジしたものが大半だ。

「マーギン、朝食ったやつはねぇのかよ?」

「フィッシュバーガーか? あれを夜に食いたいのか?」

「パンなしでいいぜ」

と、バネッサがリクエストするので、追加で揚げていく。これもバーガーにして入れといてやるか。

「マーギン、これを送ってくれるつもりだったの?」

ブリケが聞いてくる。

「内陸地だと需要があると思うんだよな。お前が給仕の仕事に戻ると思ってたから、臨時収入としてやろうと思ってたんだ」

「これ、領都支店で売る!」

「なら、仕入れろ」

「えー、くれるんじゃないの?」

「販売用なら別だ。お前がお世話になっていた宿の人の分はお前にやる。それでソードフィッシュを広めてもらえ」

「わー、ありがとう」

「シスコ、ブリケが勝手に仕入れると言ったけど、いいんだな?」

「採算が合うならいいわよ。これの仕入れ値はいくらかしら?」

「さぁ?」

「あなたって人は……」

マーギンのとぼけた返事にイラッとくるシスコ。

「今回は個人的に作ってもらってたやつだからな。仕事で使うならシシリー経由で交渉しろ。どれぐらいの量を扱うかでも仕入れ値が変わってくるだろうが」

「分かったわよ」

と、試食会は好評に終わり、ソードフィッシュはハンナリー商会で取り扱うことになった。

「大将、ここでゴミ処理に月1万Gぐらい払うつもりはある?」

「ゴミ処理に金払うのか?」

「そうだね。コンポストってゴミ処理用の魔道具を魔道具組合から貸し出す予定にしてる。それを孤児達が管理をするんだよ。生ゴミも臭わなくなるからメリットはあると思うよ」

「孤児達の仕事か……よし、いいぞ。それぐらいなら払ってやる」

「マーギン、孤児院の仕事でやんのか?」

「そうだぞ」

カザフ達も興味を示す。

「魔道具ってことは、魔石か魔結晶がいるんだよな?」

「そう。コンポストの貸し出し賃の中から魔石を買ってもらう予定にしている」

「明日、隊長に確認とるけど、俺達が狩った魔物の魔結晶は好きに使っていいことになってんだよ。それを孤児院に持ってったら、魔石を買わなくていいんだよな?」

「そうなるな」

「だってよ、貯めてた魔結晶をシスターのところに持っていこうぜ」

「いいよー」

「それ、お前らの金になるんじゃないのか?」

「給金ももらってるし、飯代も宿舎代も払ってないから大丈夫」

「そうか。なら、そうしてやれ」

「うんっ!」

シスコは自分ができないと言ったゴミ処理の仕事が、マーギンにかかればあっと言う間に解決していく様を見て、敗北感にも似たものを感じたのだった。