軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

選択肢

マーギンはもう一度鑑定しながらロッカに魔力を流してみる。

「何か分かるか?」

「あぁ、熱いものが身体の中に入ってきているのが分かる」

カタリーナが魔力を吸い、そこに大量に流したからか、ロッカに魔力が注ぎ込まれるようになったようだ。

「気持ち悪くなったり、熱っぽくなったらすぐに言え。魔力が増えるどころか逆効果になるからな」

長い時間を掛けて、魔力を大量に流し続けると、ピコンと数値が上がった。

「いま、魔力値が1伸びた」

「ほっ、本当かっ!」

「だが、こっちの魔力を相当使って1しか伸びない。魔法使いクラスまで伸ばそうとするなら、相当時間が掛かるぞ」

「相当の時間とは?」

「数年単位だろうな。それもロッカの体調を見ながら毎日やっての話だ。お前、もう熱っぽくなってきてるだろ?」

ロッカはしんどくなってきているのを黙っているが、顔も赤くなってきているし、握っている手も熱い。もう限界だな。と、マーギンは魔力を流すのを止めた。

「ハァッ、ハァッ、ハァッ」

大きく息をするロッカ。

「終わり。ロッカは魔力を増やすの諦めろ」

「まだだ。まだいける」

「ダメだと言ったろうが。お前に魔法は向いてない。これは才能というか、体質だから諦めろ。努力する方向として正しくない」

マーギンがきっぱり言い切ると、ロッカは黙ってしまった。

「マーギン、何か他に方法はないのか?」

オルターネンが代わりのものがないか聞いてくる。

「どうだろうね。ロッカは今でも十分強いから、伸び代がなぁ……」

「やはりそうなのか……」

ロッカは自分でも分かっていたことを指摘され、拳を握りしめた。

「まぁな。今からでも剣技の熟練度を増していくことは可能だと思う。あとは体力を落とさないことが重要になるんじゃないか」

「分かった」

そう返事をしたロッカは立ち上がる。

「苦労を掛けて悪かった。ありがとうマーギン」

そう頭を下げて出ていこうとする。

「ロッカ、一つ聞いていいか?」

「なんだ?」

「自分の力だけで強くなりたいのか?」

「そうだ」

「そうか。なら、俺はこれ以上力になってやれん。悪いな」

「いや、マーギンが悪いわけではない。色々とありがとう」

ロッカは唇を噛み締めて、マーギンの家を出ていく。そしてオルターネンもそのあとに続いて出ていったのであった。

「マーギン、もう何もしてやれねぇのかよ?」

バネッサはロッカの様子を見ているだけしかできなかった。

「まぁ、ロッカ単独で強くなる手助けは、俺には無理だな」

「どういう意味だ?」

「言ったままの意味だ。個人単体で強くなるには努力と才能が必要だ。ロッカはできる限りの努力はしてきただろう。だからあとは才能次第。しかし、魔法適性が低いから、俺がこれ以上何かをしてやれることはない。隊長か大隊長に剣技を磨いてもらうしかないだろうな」

「ロッカ、落ち込んでたな。さっきはあんなに嬉しそうな顔をしてたのによ」

「まぁな。ロッカ達の強さは魔物討伐に使われる。変に誤魔化して勘違いさせると命に関わるからな。はっきり言ってやるしかない」

「まぁ、マーギンが悪いわけじゃねぇんだけど、なんとかしてやりてぇよな」

「個人での強さにこだわらないなら、方法はあるんだけどな」

「どういう意味だよ?」

「個人はそれぞれ得意不得意分野がある。だからパーティを組むだろ?」

「そうだな」

「だから、パーティメンバー次第でどうとでもなる」

バネッサはマーギンの言うことが上手く理解できない。

「もっとちゃんと説明してくれよ。意味がよく分かんねぇ」

「例えば、俺が昔組んでいたパーティメンバーの剣士二人はそこまで魔力が多くなかった。といっても魔法使い並みの魔力はあったと思うけどな」

「魔法は使えたのか?」

「使ってたのは身体強化ぐらいだな。今のロッカと同じだ」

「でも強かったんだよな?」

「俺も魔法なしじゃ勝てなかったし、あいつの剣を見て、俺には無理だと思って剣を諦めたからな」

「ロッカにそこまでなれというのか……」

「それは酷な話だ。努力してもあそこまで行き着かないだろ。俺が知る限り、人類の頂点だった人達だ。でもその二人でも俺の力を必要とした」

「え?」

「俺は魔力が多かったからな。その二人のサポート役をしていた。つまり魔力の少なさを俺の魔力でカバーしてたんだ。プロテクションによる防御と身体強化を俺がやっていたんだよ。二人は攻撃専門だ」

「つまり……」

「そんな凄かった二人でもサポートが必要だったってことだ。ロッカにもそんなサポート役がいれば今よりずっと強くなれるんじゃないか?」

「なんでそれを言ってやらねぇんだよっ」

「ロッカが個として強くなることを希望したからだ。だから俺にしてやれることはもうない」

「誰かと組んで強くなれるなら、それでもいいと希望したらどうするんだ?」

「俺は一緒に戦ってやれんからな。俺みたいな役割ができるやつを探すことになる。まぁ、多分何とかなるだろうけど」

「もうあてはあるのか?」

マーギンはバネッサの問いに一呼吸おいて答えた。

「トルクだ」

「トルクが……」

マーギンはそこまで説明してからバネッサに風呂入って寝ろと言った。そして、一人で朝まで明日の準備を再開するのであった。

「ロッカ、そんなに落ち込むな」

二人で騎士宿舎に戻りながら、オルターネンがロッカを慰める。

「申し訳ありません。分かってはいたことなのですが、それがはっきりしてしまったので……」

「それでも道はある」

「えっ?」

「剣技だ。それはまだ磨けるとマーギンも言っていただろう。明日からはそれを意識して訓練をする」

「そうですね」

その言葉にもロッカは落ち込んだままであった。

翌朝、マーギンはソードフィッシュをホワイトソースと混ぜ、それをパイにしたものを娼館に持っていく。大人数用の大きなやつだ。

「久しぶりだね」

「あぁ、バタバタとしててな。シシリーもタイベで頑張ってるぞ。あと数年であの一帯を牛耳るんじゃないか」

「ま、あの娘なら上手いことやっていくだろうさ」

ババアは驚きもせずそう答えた。

「これは新作だ。オーブンで焼いて食わせてやってくれ。ババアには重いと思うから食うなよ」

「そんなもん持ってくるんじゃないよっ!」

「ババアには別のものがあるんだよ。これでも食っとけ」

「なんだいこれは?」

「押し寿司ってやつだ。パイの中に入ってる魚と同じものを使ってる。一つ食ってみろよ。嫌いなら持って帰るから」

ほぐしたソードフィッシュを出汁と醤油と砂糖で薄く味付けしたものを棒型の押し寿司にしてある。それを切ってババアに食わせた。

「ふんっ、旨いじゃないか」

「だろ? これはババアが食え」

「作り方を教えな。どうせお前しか作れないようなもんだろ」

「そのうち、ライオネルとかで食えるかもな。レシピ書くの面倒だから、ライオネルまで食いにいけ」

「ちっ、抜け目ないやつだよ」

ババアは押し寿司を商売に使うつもりだったのだろう。こんな面倒臭いものを遊女見習いに作らせるのは可哀想だ。

マーギンは差し入れを終えたあとに大将の店に行く。

「おー、マーギン。帰ってたのかい」

「久しぶりだね、女将さん。突然で悪いんだけど、今晩店が終わったあとに、ここで試食会させてくんない?」

「何を食わせてくれるんだい?」

「ソードフィッシュって魚でね。干してあるんだけど、それを仕入れるかどうかの試食なんだよ。下ごしらえは済んでるから、仕上げだけして、ここで食べようと思って」

「ダッド、どうすんだい?」

「構わんぞー。酒代は取るからなーっ!」

大将は煮込み料理を作っているのか、厨房から離れられないようだ。リッカも店にはいなかった。

「じゃ、夜にまたね」

と、用事を済ませ、家に戻ると寝起き姿のままのバネッサ。目に毒だな……

「どこ行ってたんだよ?」

「娼館と大将の店だ。もう用事は終わった」

「腹減った」

「米とパンのどっちにする?」

「どっちでもいいぜ」

というので、ソードフィッシュのフライをパンに挟んでやる。ソースはタルタルだ。それとオレンジジュースにハッシュドブラウン。

「ほらよ」

「旨ぇ」

「そりゃ良かったな。お代わりもあるからゆっくり食え」

ガツガツと食うバネッサは同じものをお代わりした。

「あー、久しぶりにガッツリ朝飯食ったぜ」

「宿舎には食堂もあるだろうが」

「まぁな」

バネッサは何も言わなかったが、食堂で朝飯を食ってないようだ。

「早朝になんかやってんのか?」

「そうだ。他のやつには言うなよ」

こいつ、一人で自主練してんのか。

「お前にもマジックバッグ作ってやろうか? 小さなポーチタイプなら邪魔にならんだろ」

「マジか?」

「あぁ。朝飯はちゃんと食え。パンとか入れときゃ、時間がないときでも食えるだろ」

マジックバッグはアイリスとタジキが持っている。きっとバネッサは単独行動をしていることが多いのだろう。それなら個人のが必要だろうからな。

「手を出せ」

「なんかくれんのか?」

と、素直に手を出したバネッサに、フルオプションの水を出せる魔法陣を描いてやる。

「何の魔法をくれたんだ?」

「水を出せる魔法だ。フルオプションタイプのやつだ」

「いっ、いいのかよ?」

「朝からいいもん見せてもらったからな」

「何の話だよ?」

「ブラぐらいしろ。目のやり場に困る」

「あーーーーっ! このスケベ野郎っ!」

朝からバネッサは元気であった。

◆◆◆

「よく眠れたか?」

「うんっ。マーギンのところのベッドと同じぐらいフカフカだったぜ」

「はい、みんなたくさん食べてね」

と、大隊長の奥さんが料理を勧めてくれる。

「大隊長、これどうやって食べたらいいんだ?」

テーブルマナーを知らないカザフ達。朝ごはんでも軽いコース料理なのだ。

「別に好きに食えばいいが、ナイフやフォークは外側から使っていくんだ」

「へぇ、全部同じフォークじゃダメなのか?」

「それぞれが食べやすいように作られている。まぁ、好きに食え」

カザフ達は、昨夜、大隊長の屋敷で甘いお菓子をご馳走になり、朝はまごまごしながらも、豪華な食事を旨そうに食べる。

「タジキ、料理人を目指すなら、こういう料理もあると知っておいた方がいいぞ」

「マーギンや大将が作るのと全然違うよな」

「そうだな。料理と一口に言っても色々な種類や世界がある。どの道を選ぶかは好きにすればいいが、知識としては知っておいた方がいいだろう」

大隊長はいつもみんなの飯を作ってくれているタジキに、触れたことのない世界を見せたのであった。

◆◆◆

「ハンナちゃん、みんなと一緒に行かなくて良かったのか?」

みんなはマーギンの家と大隊長の家に行ったのにハンナリーは軍人達と騒いでいた。

「んー、別にええねん」

「マーギンのところに行きたかったんじゃないのか?」

「うん……でもな、うちがいたらシスコが怒るやろ? 怒らすつもりはないねんけど、怒らせてしまうからええねん」

「商会長なんだからよ、代理にビシッと言ってやりゃあいいじゃねーか」

「うちは商会長いうたかて、今のところ名前だけやからな。実質はシスコが商会長みたいなもんや」

と、ハハハと笑う。

「そうかもしんねぇけどよ、ちゃんとハンナちゃんも商会のことを考えてるじゃねぇか。それは伝えてあんのか?」

「言うたらまた怒るかもしれへんやん? そやから今はまだええわ」

「ま、俺達はハンナちゃんの味方だからよ、そんな淋しそうな顔をすんな」

「おおきに。ほんならいっちょ、ラリパッパいくかぁ!」

「よっ、待ってましたぁぁ!」

うーー、はっ! ハン、ハン、ハンナリー♪

と、みんなで輪になってハンナリーも踊るのであった。

◆◆◆

ふんふん♪ と、上機嫌の王妃。

さて、あの人はどんな反応をするかしらね。

1、お前はいつまでも美しいぞ。と、褒めてくれる。

2、赤くなって照れる

3、なっ、なんじゃっ。と驚く

マーギンさんは2の反応のあと、女性として褒めて下さったけれど、あの人はきっと3の反応でしょうねと、クスクス笑いながら、王の寝室へと向かった。

「どうしたオルヒ?」

「ふふふふ、じゃーん、どう?」

王妃は少女のように少し顔を赤らめ、服の前を開けた。

「な、なんじゃっ!」

ほら、やっぱり。

「これはタイベの……」

と、微笑みながら説明をしようとした瞬間。

「いい歳してみっともない格好をしおってからに」

王、選択肢になかった地雷を踏む。

サーーーー。

津波の前の引き潮のような音が寝室に流れる。

「そうですわね。いい歳なのにはしゃぎ過ぎましたわ。では、陛下、おやすみなさいませ」

「お、おい。オルヒ……?」

パタン。

王妃は王の呼びかけに振り向きもせずに寝室をあとにし、自室に戻ると、パンパンと手を叩いて隠密を呼ぶのであった。