軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

タイベ飯

「何やってんだお前?」

「いいでしょ。王妃様ごっこよ」

王妃がそんなことをしているの見たことないぞ。

マーロックが男達に睨みを利かせて追い払った。

「こんなの用意してあったのか?」

「ビーチの店でレンタルしているのよ。まだ利用する人は少ないけれど、そのうちお金持ちが来るようになったら、繁盛するんじゃないかしら」

ベッドは木の枠に布の帯を張ったもの。角度調節もできるから、この世界のボンボンベッドみたいなもんか。

「これおもしろーい」

カタリーナがボンボンベッドの角度をガチャガチャして遊んでやがる。

「ね、ローズもやってみて」

と、ローズを寝転ばせて、ガチャガチャとやりやがる。そんなことをしてたら壊れるぞ。

ガチャっ。

「あー、壊れたぁ」

ほれみろ。

「ひっ、姫様。これはどうしたらいいのですか」

ローズはくちゃっと二つ折りになっている。

「身体を伸ばせば、脱出できるんじゃない?」

そう言われたローズは身体を伸ばす。

「ぬぬぬぬ」

くちゃ。

身体を伸ばして、ベッドをまっすぐにしたあと、脱出を試みるとまた二つ折りになる。それを何度も繰り返すローズ。

それを見たマーギンの脳内に流れる音楽。

ス◯イリースタ◯リー♪

「マーギン、た、助けてくれ……」

くちゃっとなったローズが手を伸ばすので、ひょいと引っ張ってやる。ぎっこんぎっこんと何度もやっていたローズは力が入らず、ふらついてマーギンの胸の中に。

「おっと、危ない」

ビキニ姿のローズを抱きとめるマーギン。

「えっち」

カタリーナのジト目。

「ちっ、違う」

また真っ赤になる二人。シシリーはその様子を見て、ご飯買いに行きましょうと海の家チックなところに向かった。

海の家と言えばカレーだ。グリーンカレーと迷ったあげく、辛口のバターチキンカレーをチョイス。ローズとカタリーナは甘口だ。マーロックとシシリーはシーフードカレーを選んだ。

「こんなもんでも、こうして食うと旨いな」

カレーを食べ慣れているマーロックもいつもより旨いと感じるようだ。バターチキンカレーとビールも旨い。

「旨いのに空いてるな」

海の家に食べに来ている人はまばらだ。少し割高だからかな?

「どうしても地元の人が多いからしょうがないわねぇ」

「もっと匂いのするものとか売ればいいんじゃないか? それと手軽に食えるものとか」

「例えば?」

「ソーセージを串に刺して焼いたり、焼きそばとかさ」

「焼きそばって魔道具ショップの近くにある食堂で、お好み焼きとかと売ってるやつよね?」

「そうそう。あのソースの焦げる匂いって、人を呼ぶと思うんだよな。あとはカキ氷とか」

「確かにそうかも。でもこっちは小麦粉が割高だし、氷菓子も考えたんだけど、氷を作る魔道具があまり普及してないのよ」

「なら、氷を作る魔道具を作ってやるよ。高くて買えないようなら、ハンナリー商会がレンタルしてやればいいんじゃないか?」

「いいのかしら?」

「せっかく作った海の家が上手くいかないと、次から影響するだろ」

「ふふふ、ありがとう。遠慮なくお願いするわね。でも焼きそばは単価が高くなる割にお金を取れない商品になるから、無理かしらねぇ」

「明日、ナムの集落に行くから、そのときに似た食べ物を作ってもらうわ。それなら、タイベのものが使えるから」

夕方にも泳ぐつもり満々だったカタリーナとは裏腹に、他のみんなは日焼けと、泳ぎ疲れでパスと言った。

「えー、せっかく遊べる日なのに」

「なら、釣りにでも行くか?」

カタリーナに優しいマーロック。

「行くっ!」

レンタルした日傘とベッドを返却し、弁償代はマーギンが支払った。カタリーナにあとで返せよといったら、半裸のローズを抱きしめたのはプライスレスでしょとかぬかしやがった。確かにそうだと思ったマーギンは大人しく払ったのであった。

「わぁ、すっごく魚がいる」

アニカディア号で沖に出るまでもなく、小魚の大群がビーチまで押し寄せて来ている。

「こんな浅瀬に鰯の大群がくるのは珍しいな。何かに追われてきたのかもしれん。嬢ちゃん、大物が釣れるかもしれんぞ」

「やったぁ!」

他の船員達はマーロックが戻ってくるまで、船で待機していたようだ。飯とか誘ってやればよかったな。

網で鰯を掬い、それを餌に泳がせる。釣り方は手釣りだ。

「きたーーーっ!」

鰯餌は優秀だ。すぐにカタリーナの仕掛けに何かが掛かった。革手袋をはめたカタリーナがうんしょうんしょと格闘している。

「きゃーーっ。持ってかれるっ!」

「姫様、助太刀します」

ローズも加わり、魚と力比べ。

ザパッ。

浮いてきたのはデカい魚。船員がギャフで掛けてあげてくれた。

「やったぁ!」

「さすがです姫様」

「マーロック、これ、なんて魚?」

「ハタだ。こいつは旨いぞ」

ハタ系は色々な種類がいるが、これは旨いハタらしい。

そのあとも、太刀魚やフエフキダイとか釣り、ご満悦のカタリーナ。日が暮れるまで釣りをして、夜の海を移動して、ナムの港へ到着した。

今夜はここで、カタリーナの釣った魚をみんなで食べることに。

「ハタは俺がやってやる」

と、マーロックは素早く捌いて、他の魚も油で素揚げしたあとに鍋で煮る。太刀魚はマーギンが刺身と炙りにした。

「おひいひぃ」

「このハタ旨いね」

「あぁ。こうして食うのが旨いんだ」

「寒いところだと鍋にしたいもんだな」

「俺らは寒いところで飯を食う機会がほとんどないからな」

確かに。

シメはトマトとチーズを投入して、リゾットにしてやる。

「もっと食べたいのに、お腹いっぱいで食べられない」

すでに口から魚が出ているカタリーナ。そりゃ、あれだけ食ったら食えんだろ。

翌朝、ナムの漁港の人にライチに似た果物、サモワンのジュースをご馳走になり、クズ真珠をお買い上げ。

「マーギンさん、ソードフィッシュの干したものが溜まってるんです」

「おー、そうだったな。全部買っていくよ」

「マーギン、ソードフィッシュの干したのなんて、買い付けてたのかしら?」

シシリーはソードフィッシュなんかと驚いている。

「そうだよ。内陸の北西領とかで売れるんじゃないかと思ってな」

「どうやって食べるの?」

「水で戻して、塩抜きしたあとに調理するんだ。色々な料理に使えるし、旨いんだぞ」

「へぇ」

タイベの人達からしたらソードフィッシュは大型の害魚だ。だが、こうして干したものはそこそこ高級品になる。

手土産に生のサモワンをたくさんもらってゴイル達のところに移動。

「おっ、来たか」

「ちょっとぶりだね」

畑仕事をしていたゴイルを発見し、シシリーを紹介する。

「そうか、俺はゴイルだ。宜しくな」

「こちらこそ、うちのマーギンがお世話になっております」

シシリーよ、うちのマーギンってなんだ?

仕事の話が終わったあと、醤油職人達も交えて晩飯に。マーイに頼んで、シーフード焼きビーフンを作ってもらった。

「これを海で売るのね?」

「そう。タイベ風焼きそばってやつだな。味付けは塩でもいいし、醤油でもいいぞ」

「匂いで客を誘うなら、醤油の方がいいわね」

と、醤油をどれぐらい卸してもらえるか、職人達と話を始めたので、こちらは飲む方に専念する。

「マーギン、前に精米したときに出るヌカってので、ダイコンとか漬けてみたんだけど、人気がないの。私は美味しいと思ったんだけど、おにぃとか臭いっていって食べないのよね」

前にマーイにたくあんを教えておいたのだ。

「キュウリも漬けた?」

「うん」

「食べさせて」

と、何本かもらい、スライスしていく。

「旨いぞ」

「だよねぇ」

マーロックは食べたが、他のみんなは苦手のようだ。

「マーギン、それ臭いだろ?」

「まぁ、嫌いな人は嫌いだろうね」

「こっちも食べてみる?」

と、マーイが茶色いたくあんを出してきた。

「そっちはまだ旨いんだけどな」

ゴイルはこれなら食べてもいいと言う。

「これ、漬ける前にスモークしたのか? 旨いね」

「干す場所がなかったから、燻製みたいにしてから、漬けたの」

うむ、たくあんの燻製みたいで旨い。おっ、あれ作ってみよ。

マーギンはアイテムボックスの中から、マグロを出して叩いていく。

「何作るの?」

「ネギトロの漬物バージョンだね」

叩いたマグロにネギと細かく刻んだたくあんの燻製、ホースラディッシュも刻んで混ぜる。そこに醤油を垂らして味見。

「おっ、旨い。マーイ、ご飯ちょうだい」

どんぶり飯にして、それを上にのせてかき込む。

「これ、たまらんわ」

マーギンがそう言うと、他のみんなも欲しがるので、追加で作る。ローズとカタリーナのはホースラディッシュ抜きだ。

「いけるわね。これ、他の魚でもできるのかしら?」

「色々試してみたらいいかもね。俺はマグロが一番合うとは思うけど」

「マーギン、アジでもいけるんじゃねーか? それかカツオとかよ」

マーロックは他の魚でも旨いと思うぜと言う。

「それもいいね。ホースラディッシュの代わりにショウガを混ぜてもいいんじゃないか?」

「おぉ、今度そうするわ」

それを聞いたシシリーはタイベ飯の売りにできないか考えていたのであった。