軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

甘い香り

「マーギン、今から何が始まるのだ?」

ミャウ族の儀式に初めて参加するローズはキョロキョロしっぱなしだ。

「ミャウ族はしょっちゅう儀式をしてるんだよ。神様や使徒を敬うのと、人々のストレス発散に役立つんだとよ。ほら、ミャウタンが出てきたから始まるぞ」

いつものごとく、マナの心は親心から始まり、ポニーはマーギンに背中を押されてキャッキャと身体をクネクネする。

次はくるっと反対側を向いてローズの背中だ。

「なるほど、これは気持ちがいいものだな」

「結構凝ってるな」

「そうなのか? あまり凝ってるとは感じたことがないのだがな」

肩凝りを自覚しない人は結構いるものだ。しかし、ぐっと押されて気持ちいいと感じるのは凝ってるということだろう。

「マーギン、またみんな反対側向いたよ。いつまで触ってんの?」

カタリーナがくるっと反転したら、まだローズがこっちを向いて、ほわーっとした顔をしている。その顔越しにマーギンに声を掛けたのだ。

「触ってるとか言うな」

急に恥ずかしくなるじゃないか。

反対側を向いて、またポニーをほにゃほにゃしてやる。

「もうーっ、そんな押し方したらくすぐったいよぉ」

少女にセクハラするマーギン。わざとくすぐったくなるように押しているのだ。

「しかし、マーギンの筋肉は柔らかいのだな」

ローズがマーギンの背中を押すと、指がぐっと中まで入るような感じになるので驚いている。

「まぁ、柔軟性には気を付けてるってのもあるかもね。筋肉が硬いと怪我しやすくなるし、関節の可動域も狭くなる。訓練のときにさんざん柔軟させただろ?」

「そ、そうだったな。私はまた硬くなってしまっているのか」

「知らないところに来て、緊張してるってのもあるんじゃない? ポニーとかふにゃふにゃだぞ」

そう言われたローズはマーギンと場所を変わり、ポニーを押してみる。

「本当だな。とても触り心地がいい」

「まだ筋肉があまり付いてないってのもあるけどね。バネッサはマシュマロみたいな筋肉してんぞ」

「バネッサか……触ったのか?」

触ったとか言わないで欲しい。

「ここで、同じようにしてただけだよ」

またくるっと向きを変えて、次はカタリーナの背中を押す。

「お前も硬いぞ」

「えーっ、シャランランしたら柔らかくなる?」

「治癒魔法で柔らかくなるか」

と、マーギンが言ったにもかかわらずシャランランするカタリーナ。

「うおっ、柔らかくなった」

「ほらぁ、やってみないと分かんないこともあるじゃない」

確かに。俺は治癒魔法はこういうものだという固定観念が強いのかもしれない。その点、カタリーナは治癒魔法は何でもできるかも、という発想がある。それが影響しているのだろう。

「ローズにも《シャランラン》」

「あっ、なんだか身体の中の血が一気にスムーズに流れだした感じがします」

「マーギン、ローズの背中を押してみて」

またくるっと回ってローズの背中を押す。

ふにょん。

「キャッハッハッハ。マーギン、くすぐったいぞ」

「ポニーみたいな背中になったわ。シャランラン凄いな」

ふにょふにょふにょ。

マーギンにしつこくふにょふにょと押されて身体をよじるローズ。

「マーギンのえっち」

それを見たカタリーナはマーギンをセクハラ呼ばわりするのであった。

そして、今回の歌もマナをおーせーマーギン♪ だった。

「儀式にマーギンの名前が出てくるのか?」

「俺が来てるからサービスしてくれてるんだろ」

不思議に思うローズにそう答えたマーギン。ローズはなるほどと意味の分からない感心をしていた。

扉をあーけるー♪ つもりがあるーならー♪ お前のーマナをー押せよー押せよー押せよー♪

儀式は毎度のことなので、歌を聴かずにポニーをくすぐって儀式を終えたマーギン。このあとは宴会だ。

「うーなぎ、うなぎ、なにして食べるー♪」

なんか聞いたことのある歌を歌いながら、うなぎを焼き始めたミャウ族達。もちろんマーギンのタレで蒲焼にして食べるのだ。

「ローズ、うなぎはすっごく美味しいのよ」

「とてもいい匂いがしてきましたね」

「早く焼けないかなぁ」

カタリーナがヨダレをジュルルとしながらうなぎの焼ける匂いを嗅いでいると、

フンフンフンフン。

「きゃあっ、どうして私を嗅ぐのよっ。いい匂いはあっちでしょ」

キンとギンが近付いてきて、カタリーナの匂いを執拗に嗅ぐ。

「しかし、山犬とは大きいのだな。魔狼より大きな犬がいるとは知らなかったぞ」

初めてキンとギンを見るローズ。

「ポニーっ、何とかしてよ」

「私もしょっちゅう嗅がれるよ」

「前に来たときにはこんなに嗅がれなかったじゃない。きゃあっ!」

嗅ぎまくったあとにベロンベロン舐められるカタリーナ。

「お前から鰯の匂いがしてんじゃないか?」

「そんなのしてないわよっ!」

と、冗談を言いつつ、マーギンも不思議に思う。山犬が何に反応しているのだろうか?

スンスン。

「どうしてマーギンも嗅ぐのよっ」

「お前、なんか甘い匂いがしてるぞ。隠れてバレットフラワーの蜜でも舐めたか?」

「ずっと一緒にいたのに、そんなことしてないの知ってるでしょ」

おかしいな? 確かにカタリーナから甘い匂いがする。山犬達もこの匂いに反応しているのだろう。

キンとギンに混じって、マーギンもカタリーナのあちこちをスンスンと匂いを嗅ぐ。

「犬は仕方がないが、マーギンが姫様の匂いを執拗に嗅ぐのはどうかと思うぞ」

カタリーナをクンクンするマーギンに呆れてそう言うローズ。

「いや、不思議なんだよ。ローズも嗅いでみて」

「やっ、やめてよ」

「姫様が嫌がられているではないか」

「いいから。早く」

マーギンが真剣な顔をしてそう言うので、ローズも失礼しますと言って嗅ぎ始めた。

「特に、甘い匂いとかしてないぞ」

「いや、してるって。ほらこことか」

カタリーナのうなじ辺りを嗅ぐマーギン。続いてローズも。

「私には分からんぞ」

「えー? マジで」

確かめるように何度もカタリーナを嗅ぐマーギン。

「すけべっ」

「だっ、誰がすけべで嗅いでるってんだ。お前から生臭い匂いがするなら、分からんでもないけど、甘いから不思議なんだろうが」

「誰が生臭いのよっ。嗅ぐならローズの匂いを嗅げばいいじゃない。ほら、ローズ、あなたも嗅がれなさい」

「ひっ、姫様。私は別に」

「命令よ!」

カタリーナに命令され、髪の毛を上げて、うなじを出さされるローズ。振り向かずとも分かるぐらい真っ赤だ。

「カタリーナ、やめとけって。ローズが恥ずかしがって震えてるじゃないか」

「嗅ぎなさいっ。私だけなんども嗅がれたんだからねっ。私はマーギンの匂いを嗅いでやるんだから」

カタリーナが怒ってそういうので、おずおずとローズの匂いを嗅ぐマーギン。

ん?

「も、もういいか」

「ちょっと待って」

ローズの肩というか、背中辺りがカタリーナと同じ甘い匂いが微かにする。

「カタリーナ、ここを嗅いでみろ」

「いい匂い?」

「お前からした甘い匂いが微かにする」

「えー、どれどれ?」

クンカクンカと遠慮なく嗅ぐカタリーナ。

「分かんない」

「多分、うなじより、もう少し下らへんだ」

「ここ?」

ガッとローズの襟ぐりを下げて背中をクンカクンカするカタリーナ。

「汗臭い」

その言葉を聞いたローズは慌てて襟ぐりを戻した。

「汗臭くなんかなかっただろうが」

と、もう一度匂いを嗅ごうとしたマーギンはローズにビンタを食らったのであった。

「へい、うなじ焼けヤンした」

うなじではない。うなぎだろうが。さっきの様子を見ていたピアンがからかうようにうな丼を持ってきてくれた。

「おいひいっ。ろーふもはひゃふたへへ」

頬張りながら喋るな。

カタリーナが大喜びでうなぎを食べながら、ローズに食ハラをしているのを放置して、ロブスンに神殿のことを聞いてみる。

「神殿のことはミャウタン様に聞くのが一番いいだろう。ここの者でも存在を知らない方が多いからな」

そういや、秘匿されてたな。

「ちょっと、ミャウタンのところに行ってくるわ」

と、ロブスンにカタリーナ達を任せてミャウタンのところへ。

ガツガツ。

ミャウタンもうな丼をがっついていた。こんな食い方をみるとミスティと見間違うな。

「ちょっといいか?」

「こっ、これは失礼致しました」

ほっぺたにご飯粒を付けたまま頭を下げるミャウタン。マーギンはそれを取ってやりつつ、神殿のことを聞いてみる。

「別に構わんよ。今ある神殿は建て直されたものだと言ってたよな?」

「はい」

「元々の神殿はどこにある?」

「建て直されたとだけしか分かりませぬ」

「そうか……お前、古代シャーラムの文字は読めるか?」

「いえ、読めませぬ。そのようなものが残っているのですか?」

「あぁ、祭壇に古代シャーラムの文字で描かれた魔法回路が残ってたんだ。その回路も全部ではなく、一部だけな。もしかしたら祭壇に祀られていたものにも回路が描かれていたんじゃないかと思う。それと組み合わせて初めて回路として繋がるのかもしれん」

「祭壇に祀られていたものも不明なのです」

「そうだったな。うちのツレが通路か扉を開けるためのものじゃないかと言ってな、元々の神殿への入り口の鍵になってるかもしれん」

「何か隠されていると?」

「そう。本当の使徒様像だ」

「え?」

「まだ確定じゃないが、壊れた石像はダミーの可能性が高くなった。その確信を持つために元々の神殿がどこにあるのか知りたいんだよね。本当に場所は知らないんだな?」

「は、はい」

これでまた手詰まりだ。

「飯食ってるときに悪かったな」

マーギンは取ってやった米粒をモグモグしながら、みんなの元に戻った。

「何か分かったか?」

「いや、ミャウタンも知らなかったわ。まぁ、数千年前のことが残ってるのが珍しいからしょうがない」

マーギンもうなぎを食べたあと、山犬達にレバーペーストを作ってやり、洗浄魔法を掛けてブラッシングをしてやる。

スハー。

「うん、獣臭さがなくなったわ」

キンとギンに顔を埋めて犬吸いをしたマーギン。

「どんな匂いがするの?」

と、ポニーが聞いてくる。

「犬の匂いだな」

「私は?」

と聞くので、ポニー吸いもしてみる。

「陽だまりの匂いだな」

「いい匂い?」

「嫌いじゃないぞ」

「ねぇ、マーギン」

それを見ていたカタリーナがガバっと抱き着いて、スーハースーハーとマーギン吸いをする。

「嗅ぐなよ」

「お父様と同じ臭いがする」

そう言われたマーギンは心に大きなダメージを受けたのであった。