軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

無慈悲

しばらくミスティの石像を撫でたマーギンは気配を消して外に出る。いきなりミャウ族の集落にいるのはおかしいからだ。

スタスタと歩いて外に出ても誰も気付かない。が、

「ワフっ!」

キンとギンが走ってきてマーギンに飛び付いた。

「お前ら、俺が来たの分かったのか?」

ハッハッハッと舌を出してマーギンに、でいん、でいんと身体をぶつけてくる。

「撫でて欲しいのか?」

キンとギンをワシワシしているとポニーが走って来た。

「マーギンっ、来てたのっ?」

「今来たところだ。ロブスン達は?」

「外の見回りに出てる」

そうか、とポニーの頭も撫でてやる。

「キャッ、何するのよ」

キンとギンが私達が先だろ? という感じで間に割って入ってくる。

「よーしよしよしよし」

キンギンがお腹を見せて、足をうにゃうにゃと動かすので、先に思う存分腹を撫でてやった。

ふぅ、これぐらいで勘弁してやらぁって感じでポニーに順番を譲ってやったようなので、同じように腹を撫で撫でしてやる。

「くすぐったいよぉ〜」

少女にセクハラをするマーギン。ポニーのお腹はほよほよしていて触り心地がいいので、しばらく撫で続けたのであった。

「マーギン、いつきてたんだ?」

夕方にロブスン達が戻って来た。

「今朝だ。チューマンはどうだ?」

「あれから出てないぞ。代わりにラプトゥルが出た。まぁ、もう苦戦することもないがな」

特訓の成果が出ているようで何よりだ。

「ラプトゥルが出たってことは、チューマンがここを諦めたのかもしれんな。油断は禁物だがしばらく安泰かもしれん」

「そうだといいな」

「オヤビン、今日はイロを連れてきてないでヤンスか?」

ピアンよ、イロとか言うな。

「今回は俺一人だ」

「フラれたんでヤンスね?」

「フラれるもクソもあるか。今回は山の方にチューマンを探しに行くから一人なんだよ。明日にはここを出るからな」

「誰を連れて行くんで?」

「一人で行く。なんならピアンが付いてくるか?」

「え、遠慮するでヤンス」

「マーギン、ピアンは別として、本当に一人で行くつもりか?」

「あぁ。できれば殲滅したいと思ってるからな。誰かを連れていくと巻き込む恐れがある」

ロブスンは一度巻き添えを食らっているのでマーギンが何をするのか理解した。

「いつぐらいに戻ってくる?」

「今回は捜索範囲が広いから長期間になると思う。春には戻ってきたいとは思うが、どれぐらいになるか分からん。だから俺のことは気にせずに、お前らがやるべきことをやっててくれ」

「分かった。マーギンのことだから心配はしていないが、無理をするなよ」

「分かってる。他にもやらないとダメなことがあるからな。まだくたばるわけにはいかんよ」

その夜は宴会にならず、少人数でゆっくりとご飯を食べ、マーギンも早めに寝たのであった。

「寒っみぃぃ」

翌日、マーギンは集落を出たあと、一気にプロテクション階段で空中に上がり、そのまま移動し、今は山の上だ。

「さすがにタイベの南部といっても山の上は寒いな」

山頂は雪が積もり、木々の葉っぱもない。だが、それがかえってチューマンを見付けやすい環境になっていた。

一人で焚き火をしながら鍋を食べる。

「一人で食うのは楽だけど、物足りなくもあるな」

旨ぇ、とか、ハンバーグは? とかの賑やかさがないと、こんな味気ないんだなと思うマーギン。テントの周りにプロテクションを張り、ガランとしたテントで寝る。ここに来るまでにチューマンは見付けられなかった。もしかしたら、寒さに強いだけで、冬は活動期間でないのかもしれない。獲物も少なくなるからな。

翌日は空からチューマンを探して回る日々が続く。飯もちゃんとしたものを作ることがほとんどなくなり、携帯食やパンを炙ってチーズを齧るような食事になっていく。

「まったく見当たらんな」

1週間ほど探し続けたが、チューマンは見付けられなかった。

「どこに行きやがったんだ?」

タイベの山を越えるとゴルドバーンになる。このまま越えてしまうか迷うマーギン。シュベタイン王国でも異国人ではあるが、国民と同じようにすごさせてもらっている。しかし、ゴルドバーンではそうはいかないだろう。下手したら密入国を疑われるかもしれない。山越えなんて普通の人はできないからな。

散々迷ったあげく、夜間に気配を消してゴルドバーン側に行くことにした。

ひたすら空を移動して、ようやくゴルドバーンの村らしきところを発見した。

地上に降りて、そっと集落の様子を探る。

「何も気配がしないな」

気配を消して集落の中に入ったら、荒らされた形跡と、黒く乾いた血跡があちこちにある。

「この足跡……」

魔物の足跡とはまるで違う。これはチューマンの仕業だ。

麓の村はすでにチューマンに餌場にされたのだろう。誰も生存者がいない。これはゴルドバーンがヤバいのではないだろうか?

マーギンはそのまま他の集落を探していくと、荒野を歩くチューマンを見付けた。タイベでは3匹とかの単位だったが、ここを歩いているのは2、30匹はいる。

「まるで荒野を歩く死神の列だな」

すぐに殲滅するのではなく、空に上がり、その隊列がどこに向かうのか確かめる。

「あの集落に向かっているのか」

隊列のずっと先に村規模の集落がある。あの村を餌場にするつもりなのだろう。

「チッ、助けに入るしかないか」

マーギンは顔を布で隠し、村に向かった。

「この村に何か用か」

村人に警戒されるマーギン。

「ここにチューマンと言っても分からんか。人型の魔物がこの村にむかってる。全員殺されるぞ。早く逃げろ。それを伝えに来た」

「ま、まさか。他の村を襲っている新型の魔物か?」

「まぁ、そんなところだ。ざっと30匹ぐらいいる。お前らじゃ勝てんから逃げろ」

「そ、その話は本当なんだな? 村を空にして何か盗もうったて、この村には金目のものはないぞ」

「そんなの見りゃ分かる。逃げる時間を稼いでやるから、早く逃げろ」

「あんた、なにもんなんだ?」

「そんなことはどうでもいい。数がいるから全部を止められるとは限らん。早くしろっ!」

見るからに不審者のマーギンの言葉をなかなか信じられない村人は、他の村人に相談をしに行った。もう逃げるのを待っている暇はなさそうだ。

マーギンは逃げるかどうかの判断を待たずにチューマンがいる方向へ走る。

「チッ、もうこんなところまで来てやがる」

チューマンもマーギンを見付けて、ギチギチギチギチと牙を鳴らして威嚇を始めた。

「さ、お前らでストレスを発散させてもらうことにするわ」

マーギンは妖剣バンパイアを抜く。チューマン達もマーギンを餌ではなく、敵だと認識したのか、いきなり戦闘モードに入った。

「お前ら相手に手加減はいらんよな?」

妖剣バンパイアに魔力を注いで構えると、こいつらも関節を守る仕草をする。

「無駄だ」

マーギンから大量の魔力を注がれた妖剣バンパイアの前では関節を隠しても無意味。関節を隠した爪ごと切り落とされていく。

ギチギチギチギチ。

スパッ、スパッ、スパッ。

チューマンの攻撃を掻い潜り、淡々と足の関節を斬っていくマーギン。一人だと妖剣の威力を上げすぎても巻き添えになる仲間もいないし、電撃を使うまでもない。マーギンは今回のチューマンの群れを殲滅した。

「ふぅ、なんとかなったな」

と、足を斬られて動けなくなっているチューマンがギチギチと威嚇してくるが、立てなくなったチューマンは脅威ではない。

生きている間に試すか。

《パーフォレイト》

至近距離から魔力ビームを撃つがそれを弾くチューマン。

「これは対魔法プロテクションみたいな能力を持ってやがるな。炎も氷も魔法で具現化したものだから耐性があるということか? なら電撃も効かないはずだよな?」

次は物理攻撃。硬くて普通の剣なら外殻を斬ることができない。が、カタリーナは見えない手で頭を握り潰した。なら、これはどうだ?

マーギンはチューマンの頭の横に土魔法で岩の塊を2つ出す。

《スリップ!》

片方の岩にスリップを掛け、蹴飛ばしてチューマンの頭を挟んでみる。

ガッ、という音が聞こえたが、潰れた様子はないので、次はチューマンの下の地面を硬化させ、上から岩を落とす。

グシャっ。

なるほど、頭は物理で潰せるな。これならヴィゴーレで頭を砕くことは可能だ。

こうして、まだ動くチューマンに対して、目は潰せるかとか、部位ごとに水で包んで、どこで息をしているかなどを確かめていく。その様子は生きたまま人体実験をする異常者のようだった。

「ま、魔王だ……」

逃げろと言われても信じきれなかった村人が様子を見に来ていた。

そこには淡々と、まだ生きている魔物を痛ぶるマーギンの姿があったのだった。