軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

防衛戦再び2

「おっ、ロドリゲス。住民の避難はどうした?」

「ハンター達で手分けしてるから問題ないですよ。で、皆の役割は?」

大隊長はカザフと共にやってきたロドリゲスに地図を見せながら作戦を伝える。

「なるほど。足場がマシなここで迎え討つんですね」

作戦を聞いたロドリゲスはざっとメンバーを見渡す。

「じゃ、俺はアイリス嬢ちゃんの戦い方でも拝みましょうかね」

「こっちに来るのか?」

ノイエクスが不満気な顔をする。

「アイリスと一緒にいますから邪魔になりませんよ」

「ちっ、足手まといになるなよ」

「ロドリゲス、助かる」

大隊長がそう言うと、手をひらひらと振って、持ち場へと移動していった。

バネッサとカザフは 囮(デコイ) 担当。雪熊を引き付けて大隊長達の所へ誘導する。

「大隊長、4人だけで全部殺れんのか?」

バネッサが一度に全部の雪熊を相手するのは無理だろうと思って作戦を確かめる。

「うむ、少々きついかもしれぬな」

「なら、何匹か目を潰すぐらいはしておく。うちの攻撃じゃ、致命傷は無理だろうからな」

「逃げながらそんなことができるのか?」

「できるかじゃねーよ、やるんだよ。大隊長も雪熊ごときにやられんなよ。うちはまだ勝ててねーんだからよ」

「そうだな。なら、俺はお前の乗り越えるべき壁としてあり続けなければならんな。ま、これがあるから心配するな」

大隊長はヴィコーレをブンッと一回しした。

それを見たバネッサは口元だけで笑い、カザフの方を向いた。

「カザフ、行くぞ」

「お、おう」

◆◆◆

「おらーっ、もっと守りをしっかりやりっ。うちがスロウを掛けるから、動きが遅なったら、反撃やっ!」

軍人達は盾持ちを先頭にスクラムを組むような隊列で魔狼と対峙していた。

「よっしゃーっ! どこからでも掛かって来いっ!」

斥候の魔狼が飛んでくるように襲ってきたのを盾持ちが弾く。その隙を狙って魔狼達が一斉に飛び掛ってきた。

《スロウっ!》

最後尾でタジキに守られたハンナリーは魔狼に向けてスロウを唱える。すると一気に動きが鈍くなる魔狼。

「突撃ーーっ!」

「うぉぉぉぉっ!」

盾持ちからすり抜けた剣士達が面前の魔狼を斬っていく。

「弓矢隊、射れーーっ!」

ヒュンヒュンヒュンヒュン。

矢は当たらなくてもいい。一気にこちらに来ないようにさせる目的の矢が一斉に放たれた。

「次っ、守れっ!」

こうして、ハンナリーの部隊は、守って態勢を整え、スロウで動きを鈍らせて攻撃をする。この戦法で確実に魔狼を仕留めていった。

「見事だな」

「そうですね。我々の出番はなそうですね」

魔狼討伐の作戦はオルターネンがハンナリーに指導してあったのだが、それを見事にやり遂げるのを見て感心していた。

「ロッカ、俺達も出ようぜ」

ラリーは自分達の出番がなく、不服そうだ。

「では、魔狼の群れの北側を見に行こうか。隊長、宜しいですか?」

「敵を見付けても応戦せずに戻って来い。それなら許可する」

「了解です」

そう返事をしたロッカ達は他の魔物がきていないか確認に出た。

「ロッカ、あれキルディアじゃねーか?」

ラリーが遠くに見える魔物を見付けた。

「そうだな。3匹もいるのか。魔狼と戦ってるところに乱入されたら厄介だな」

「俺達だけで殺れんじゃね?」

「お前は隊長の命令を聞いていなかったのか? 応戦せずに戻るという約束だっただろうが。ここで討伐できたとしても、褒められるどころか、命令違反で謹慎になるぞ」

「えーっ」

「ラリー、いいか。組織で動くときには命令は必ず守れ。しかも今は命令違反をせざるを得ないような緊迫した状態でもない」

「俺たちの実力をちゃんと分かってないから隊長はあんな命令を出したんだろ? やっつけようぜ」

「ラリー、口で言っても分からんのなら斬る」

ロッカは剣を抜いてラリーの首に当てた。

「なっ、何すんだよっ!」

「組織の中で命令を聞けないやつは不要なのだ。お前がそんな性格だから軍から追い出されたのがまだ分からんのか?」

「そっ、それは……」

俯くラリーを見てロッカは剣をしまった。

「今のリーダーが私で命拾いをしたな」

「どういう意味だ?」

「リーダーがマーギンなら首を刎ねてたぞ」

「えっ?」

ロッカはオルターネンの元へ戻りながら前の魔狼討伐のときのことを話した。

「あの野郎、騎士とハンターを囮にしたのか?」

「そうだ。ハンターはその時の恐怖で正気を失ったまま牢に入っている。もう元に戻ることはないだろうな」

「マーギンはそんなに酷ぇやろうなのかよ」

「他の場所では、命令違反をしたハンターが魔狼に食われた。それでそこは魔狼達に餌場と認識されてヤバかったのだ。組合長がいなければ大半のハンターが死んでいただろう。命令違反をするということは全員を危険にさらす。ならばいない方がいいのだ。それがさっきのお前だ」

「ロッカまで俺をいらねぇって言うのかよ……」

「仲間を危険にさらすような馬鹿ならいらん。そうでなければ必要だ。好きな方を選べ」

「分かったよ……」

素直に分かったと返事をしたラリーに、ロッカはよくできましたと、頭をクシャクシャと撫でていた。ラリーは後日、そのときのことを首がもげそうだったとサイマンとボンネルに話すのであった。

「キルディアか。今日中にこっちに来そうか?」

「かなり距離があるので分かりません。ここで魔狼が討伐されているので、警戒したかもしれませんし、魔狼がいなくなった隙を狙ってくるかもしれません」

「分かった。ハンナリー隊は休憩及び待機せよ。キルディアは我々で対応する」

オルターネン達は魔狼討伐で体力を使った軍人達を休ませ、自分達でキルディアが来るのを待つのであった。

「カザフ、先に走れ」

「バネッサも逃げろよ。追いつかれるだろうが」

「いいから行けっ!」

カザフを先に逃がすバネッサ。やや小振りの雪熊が囮となった二人をロックオンしたのだ。

「ちっ、付いてくんの一匹だけかよ。カザフ、そいつを大隊長の所へ誘導しろ。コケたら食われるからなっ!」

「バネッサはどうするんだよっ?」

「うちはあのデカいのを引き付ける」

バネッサは追いかけてきた小振りの雪熊の上をくるんっと回って追い越させ、うしろにいるデカい雪熊に突進した。

「ちっ、バネッサのやつ……」

自分よりずっと危険な役割を買って出たバネッサを心配するのと、悔しい気持ちが入り乱れるカザフ。

ズボッ。

「うわっ!」

バネッサのことに気を取られたカザフが雪に足を取られた。

「ぐあぁぁぁぁおっ!」

雪熊が一瞬にしてカザフに襲いかかる。

死ぬ。カザフの脳裏にその言葉が浮かんだ。

ボヒュボヒュボヒュっ。

どこからともなく火の玉が飛んできて、一瞬にして雪熊の頭が炎に包まれた。雪熊はカザフを襲うのをやめ、必死に火を消そうと両前足で顔を掻きむしる。

ダッ。

その隙にカザフは体勢を整えて走った。

「ヤバかった。助かったぜアイリス」

カザフは一旦アイリス達の方へと避難。

「余計なことを考えてるからコケるんですよ」

「うるせえっ!」

バネッサを心配して自分が死にかけたこととか知られたくないカザフは誤魔化すのに怒鳴った。

「それよりアイリス、あのまま倒せたんじゃないのか?」

「大隊長は誘導するのに火魔法を使えと言ってましたから。攻撃魔法としては使ってませんよ」

「アイリス、お前の火魔法はあれが全開じゃないのか?」

と、今のを見ていたロドリゲスがアイリスに聞く。

「あれは普通のファイアボールですよ。雪熊はあれぐらいで死なないですよね?」

「ま、まあな。全開で撃ったらどうなる?」

「多分死ぬと思うんですけど、どうでしょうね?」

ロドリゲスはそう答えたアイリスに驚く。何をやったらたった1、2年でそんな威力のある攻撃魔法が使えるようになるのだと。

「次が来ましたよ。あの大きいのはバネッサさんをターゲットにしてるみたいですから、先に行かせましょう」

バネッサに片目を潰され、手負いとなった大型雪熊は我を忘れるかの如く、バネッサを追いかけている。

「ノイエクス、構えろ。アイリスは木の上から援護を頼む。カザフはこっちに来るやつを引き連れて大隊長の方へ行ってくれ。全部そっちへ行ったら俺達もあとを追う」

ホープはそう指示を出した。

ドガッ!

アイリスに顔を焼かれてダメージを負っていた小型の雪熊を、大型雪熊が邪魔だと言わんばかりに爪で引き裂き、バネッサを追う。

うしろに付いていた他の雪熊は、大型に付いていくのが4匹、ホープ達に気付いてこちらに来るのが4匹と二手に分かれた。カザフはこちらに来た雪熊に突進していく。

「カザフ、バネッサさんの方へ向かって走って!」

アイリスがそう叫ぶと、カザフは方向転換をして、バネッサの方へと走った。

《カエンホウシャっ!》

ゴゥゥゥゥウっ!

雪熊の前に炎の壁が現れ、雪熊は突進を止めた。そして、カザフの方へ向かうように雪熊のうしろにボンボンっとファイボールを撃ち込んでいく。

「ホープさん、全部あっちに行きましたよ。あとを追いましょう」

「よしっ、みんな、雪熊を追えっ!」

「アイリス、お前えげつない魔法を使えるようになったんだな」

最後尾にいるロドリゲスがアイリスに話し掛ける。

「まだそんなに温度を上げてないですよ。あとで雪熊が炎で倒れるか試しますね」

「おっ、おう……」

「来たぞ。アージョン、お前はどれでもいいから一匹だけに集中しろ」

「はいっ!」

「トルク。来たぞ。デカいのは大隊長がやるだろうから、アージョンが対峙するやつを掴んでくれ。それとホープ達が来たら、剣士と対峙するやつもだ」

サリドンはトルクにそう指示を出す。

「分かったー」

バネッサは大型雪熊を引き連れたまま大隊長の上をくるんと回って飛び越える。そのついでにオスクリタを投げ、もう片方の目も潰した。

目にオスクリタを食らって立ち止まる雪熊。

「フンッ!」

ヴィゴーレを振り抜く大隊長。

ブッシャァァァッ。ズズン……

一振りで雪熊の頭が飛んだ。

「うぉぉぉぉっ!」

身体に剣を固定するように持ち、うしろの雪熊に突進するアージョン。集中力が高まって雪熊が止まっているように見えた。

ズンッ。

心臓を貫いたアージョンの剣。

シュドドドドドドっ。

「アージョン、立ち止まるな。まだいるんだぞ」

うしろにいる雪熊にファイアバレットを撃って援護するサリドン。

大隊長は残りの雪熊を他のものの特訓相手にする方がいいと判断し、アージョンの補佐に回る。

「カザフ、邪魔になるから退け」

「分かってるよっ」

バネッサがカザフの所へいき、戦おうとしたカザフを連れてその場を離れさせた。悔しそうに皆が戦う姿を見ているカザフ。

「バネッサは倒しに行きたくねーのかよ?」

「べつに」

「前まではそんなことなかっただろうが」

「いいか、この雪と雪熊相手にはうちらは不利なんだよ。それに他のやつらで倒せるだろ。それでいいじゃねーかよ」

「なんだよっ、一人だけ分かったようなことを言いやがってよ」

「いちいちうるせえっ。ちゃんと他のやつらの戦いを見とけ。雪熊も進化していくかもしんねえんだぞ。いつまでも同じ戦い方をすると思ってんじゃねーよ」

バネッサはチューマンのことを思い描き、どの雪熊も同じ戦い方をするかどうかを見ていた。

ホープとノイエクスもうしろにいる雪熊と戦い出したのを見てサリドンが動く。

「俺が相手する雪熊には何もしなくていい。ノイエクスとアージョンが対峙する雪熊を掴んでくれ」

「はーい」

サリドンはトルクにそう指示をして、雪熊相手にファイアバレットを撃ちながら突っ込んでいく。

《ファイアスライムっ!》

アイリスは自分で編み出した炎攻撃を仕掛けた。それは炎がスライムのように雪熊に纏わりつき、雪熊が暴れても消えない。

「なんだありゃ?」

ロドリゲスがその魔法を見て驚く。

「昔、バネッサさんが、マーギンさんの仕掛けた防犯の罠に掛かったことがあるんです。水がバネッサさんに纏わりつくだけの防犯魔法なんですけど、水でできるなら炎でもできるんじゃないかなぁって」

「お前、凄ぇな。自分で新たな魔法を生み出したのか?」

「そうなるんですかね」

呑気に返事をするアイリス。

「でも、なかなか死にませんね。じゃあこうしましょう」

雪熊に纏わりついていた炎が顔に移動していく。

ヌルンっ。

そしてそのまま雪熊の口の中に入っていき、雪熊は身体の中から焼かれて死んだのであった。

「組合長、雪熊は身体の中は炎耐性ないみたいです」

「そ、そうみたいだな……」

避けようのないアイリスのファイアスライムを見て、ロドリゲスは少し恐怖を覚えたのであった。