軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

王都は寒い

翌日、ロブスン達にまた来ると言って集落を出ることに。ポニーに一緒に来るか? と聞いたが山犬達とここに残るようだ。

「えっ? シスコがおんぶかよ」

「前が見えないと酔うのよ」

バネッサを抱っこ、シスコをおんぶする。手は二本しかないので、シスコをロープで固定。前後に年頃の女の子に挟まれているのは他の人から見たらハーレム以外の何ものでもないな。

ホバー移動して途中で一泊。晩飯は何にするかと聞く。

「甘辛に……」

「却下だ。お前はそればっかりだろうが」

「イクラ丼も嫌よ」

だんだん偏ってくる食生活。

「面倒だから串焼きにするか。豚バラとマギュウでいいな?」

「いいわよ」

と、シンプルに塩焼きにする。ホースラディッシュをすりおろしておくので好きに付けたまへ。

「タレはなしかよ?」

「塩胡椒で十分だろ?」

「タレのがいいんだよ」

と、バネッサだけタレ焼きで食う。肉だけってのもなんなので、おにぎりも焼く。バネッサのは甘醤油。自分のとシスコのは醤油のみ。余分に焼いて明日の朝にも食べよう。

「焼きおにぎりのカリカリした感じがいいわね」

「そうだな。シスコのは平べったくしてやろうか? そうすればカリカリが増えるぞ」

「じゃあ、そうしてちょうだい」

シスコ用におにぎりを潰して平たくして焼いてやる。

「うちにはなんか特別にしてくれねぇのかよ?」

「お前のは味付け変えてやっただろうが」

「そうだけどよぉ」

と、少しお拗ねモードに入るバネッサ。子供かお前は?

しょうがないので、鶏つくねを甘辛濃厚タレで焼き、卵の黄身をのせてやる。

「ほら、これはお前の好きな味だと思うぞ」

「おっ、旨ぇ」

ご機嫌になるバネッサ。扱いやすくて宜しい。

翌朝は焼きおにぎりに焼鮭をのせ、出汁茶漬けにして食べた。王都に戻ったら酒飲んだ時のシメにこれを食おう。

そして移動を続け、ナムの村に到着。冷蔵冷凍庫用の箱ができていたので、魔道具に改造。イクラを小分けにして冷凍庫に入れておくと喜んでくれた。晩飯は宴会になり、さっそくシメの飯として焼きおにぎり焼鮭出汁茶漬けをゴイルと食ったのであった。

パンジャ経由でイルサンに寄り、米、酒、酢、味噌を買い漁る。社交会用に必要なのだ。ついでにただのような値段で酒粕も手に入れた。これで粕漬けと粕汁を作るのだ。

「マーギン、お酒を搾った後の物は何に使うのかしら?」

「肉や魚を漬け込んだり、粕汁ってスープの素に使うんだよ。好き嫌いがあるから仕入れても売れないと思うぞ」

「王都に戻ったら試させて」

「はいはい」

領都に移動してマーロック達と孤児院で合流。

「シシリー、お前はこのままタイベに残るのか?」

シシリー呼びかエルラ呼びか悩んでシシリーと呼んだマーギン。

「そうね。冬の間にいろいろと準備しておいた方がいいでしょ? ママにタイベに残るって伝えておいてくれないかしら」

「ママって、ババァのことか?」

「そうよ」

あのババァがママ……

「分かった。船の改装の事で領主から相談があると思う。それも頼んでおいていいか?」

「いいわよ。だいたいイメージはできているから」

「まだ決定じゃないけど、先住民達も踊り子や演奏者として船に乗るかもしれん」

「そうなの?」

「あぁ。パンジャの店で一番人気の踊り子だ。水着で踊ってもいいと言ってたな」

「なるほど。ならダンスの種類を考えておくわ」

シシリーはやはり優秀だな。シスコと切磋琢磨して商会を盛り上げてくれたまへ。

他にもタイベの豚肉をブランド化して売ってはどうかとか、グルメマップの事も話しておく。いずれは個人向け魔道具と業務用魔道具の販売店舗も視野に入れておいてもらう。昼のシャングリラの事をよく知っているから、売れ筋も分かるだろう。マーロックには討伐船をもう一隻作っておくように依頼する。ライオネルとタイベの両方で活躍しなければならなくなるだろうからな。これはハンナリー商会とは別口なので、資金として五000万Gをマーギンが出した。マーロックは稼いだら返してくるらしい。

こうしてタイベでの用件は片付き、マーギン達が王都に戻ると、二人ともマーギンの家に当然のように入る。

「飯だけじゃなく、うちに泊まるのか? 自分の家で寝ろよ」

「うっせぇな。ケチケチすんなよ。風呂に浸かったら湯冷めすんだろうが」

「そうね。なら私も泊まっていこうかしら」

自宅に戻ってきてもベッドで寝れないことが決定したマーギン。ぶつぶつと言いながら飯を作る。タイベから戻ってきたら寒くて仕方がない。晩飯は鍋にしよう。

アイテムボックスから魚介類とタイベの豚肉を出して寄せ鍋にする。シスコはカニと言うだろうから、あらかじめ殻を外してポーションにしておこう。

「ポン酢と胡麻ダレ、どっちにする?」

と、聞くまでもなく、シスコはポン酢、バネッサは胡麻ダレの入った器を自分の前に置いた。用意をしている間にシスコに大根おろしを作ってもらい、準備完了。

「うー、温まるぜ。王都ってこんなに寒かったのかよ」

「本当に寒いわね」

寒い寒いと言いながら、三人でハフハフして鍋をつつく。

「タイベにしばらくいたから身体が寒さに慣れてないんだよ。ほら、大根をいれるぞ」

マーギンはピーラーで大根をしゅーっ、しゅーっと、平たい麺のようにして鍋に投入。

「こんなもんが旨ぇのかよ?」

「別に食わなくてもいいぞ」

「誰も食わねぇって言ってねぇだろ。いちいちそんな言い方すんな」

「お前が文句を言うからだろうが」

バネッサと言い合いしている間に大根麺をシスコがバクバク食っていく。相当気に入ったようだ。

「不味くはねぇけど、別になくてもいいな」

バネッサはどうでもいいようだ。なら食うな。

シメは雑炊にして終了。バネッサから風呂に入り、シスコが続く。

「甘いワインが飲みてぇ」

「フルーツのワインか? タイベのフルーツを入れてやろうか?」

「うん」

パイナップルとオレンジに砂糖をまぶしてから赤ワイン投入。

「へへっ、やっぱマーギンが作ってくれるものはなんでも旨ぇな」

「そりゃ良かったな。明日から訓練再開するんだろ? あんまり飲み過ぎるなよ」

バネッサはフルーツの入ったワインを嬉しそうに飲んだ。訓練しているときのこいつは野性味溢れた感じがするけど、こうしてるとただの可愛い女の子だ。普通の家に生まれて普通に育ったなら魔物討伐みたいな危ないことをせずにすんだんだろうな。神様も罪なことをするものだ。

「なんだよ? じーっと見やがって」

「お前、やっぱり可愛いな」

「バッ、バッキャローっ! いきなり何言い出しやがんだ」

いきなり可愛いと言われて真っ赤になるバネッサ。

「特務隊に入ったお前に、危ないことをするなよとは言えないけど、本当に死ぬようなことはするなよ」

「なっ、なんだよそれ?」

「強くなるだけが幸せじゃないってことだ。俺は年が明けたらタイベに戻るから何かあっても助けには行ってやれん。だから雪が積もってる時に雪熊に突っ込んだりするなよ。オスクリタで目を狙うとかだけにしろ。慌てて倒さなくてもそれで追い払うことができる」

「冬にタイベに行くのかよ?」

「チューマンは必ずまた来るからな。あいつらは根絶する必要がある」

「ならうちも連れてけよ」

「ダメだ。それにもし王都付近でチューマンが出たら、討伐方法を知ってるのお前だけだろうが。下手に戦って食われて餌場に認定されるより、逃げるか出たやつを全部倒さなきゃならんだろ。お前と大隊長、隊長、カザフがいりゃなんとかなる」

「ロッカは?」

「多分、スピードが足らない。トルクはサポートに付けてもいい。デバフは効かないが、見えない手は使える。タジキはウロコの盾だけで防御するのは危険だからやめとけ」

「なるほどな」

「あっ、そうだ。防刃服をミャウ族達にも作ってもらおうと思って忘れてたわ。バネッサ用に持っていってたのに」

「あれを着るのか?」

「あれを着てたらチューマンの攻撃を食らっても致命傷を避けられるからな。そのうち支給されると思うけど、先にお前に渡しておくわ」

バネッサに防刃服を渡すと試着してみるようだ。

「キツイぞこれ」

「タイベで着ることを想定してたからな。服の上から着るなら支給品はサイズを変えてもらえ」

「ちょっと試してくる」

と、風呂場横の脱衣場に着替えに行った。子供と同じで貰った物はすぐに試したいんだろう。

バネッサが着替えに行った後にシスコが風呂から出てきた。

「マーギン、バネッサを痴女にするつもりなの?」

「何が?」

「あれ、防刃服でしょ? 素肌の上に着てたから凄い事になってるわよ。見てきたら?」

そう言われて脱衣場の扉を開けようとするマーギン。

ガチャガチャ。

「ばっ、バカっ! 開けんなっ!」

扉の向こうで必死に開けられまいとするバネッサ。マーギンは調子に乗って、扉をガチャガチャしてバネッサをからかった。

「変態かてめぇーっ!」

服に着替えて出てきたバネッサがマーギンに食ってかかる。

「いや、シスコがすっごい事になってるから見てこいって言うからさ」

「シスコてめぇっ!」

「あら、マーギンに見せたかったんじゃないの? お金貰えるわよ」

「もう金はあるからいいんだよっ!」

前のシャツが濡れて透けた時もそうだったけど、女としての自覚も出てきてるんだな。ちゃんと成長しているようで何よりだ。

マーギンは相変わらず親目線でバネッサを見ていた。

そろそろ寝るかとなり、バネッサがマーギンのベッドを使い、シスコはカザフ達のベッドを使うようだ。寝る場を失った主はアジの処理をしていくことに。

大量のアジを魔法で三枚おろしにして、ゼイゴも取っていく。もちろん骨も全部除去だ。せっせと処理して並べて、片栗粉を付ける。

「まだ、何かやってるのかしら?」

作業をしているとシスコが起きてきた。

「寝たんじゃなかったのか?」

「なんか目が覚めちゃったのよ。何か飲み物が欲しいわ」

「炭酸水でいいか」

「えぇ」

魔法でジョボジョボとコップに注ぐ。

「で、何を作ってるの?」

「アジの南蛮漬だ。社交会用の料理として頼まれてんだよ」

「材料を提供して調理方を教えるんじゃないの?」

「王妃の思い付き料理だぞ。料理人の予定に入ってないだろうし、こんな大量のアジをさばけとか無茶だろ」

「で、やってあげてるのね?」

「去年のカニクリームコロッケも結局俺が作ったからな」

「マーギンも一人でなんでもやろうとするのね」

「なら手伝うか?」

「嫌よ」

なんだよそれ?

「言っとくけど、人気があったら来年もハンナリー商会に発注がいくからな」

「えっ?」

「当たり前だろ? 新鮮な魚の仕入れはハンナリー商会しか無理なんだから。ちゃんと料理人を仕込むか、王家の料理人と繋がり持っとけ。毎年俺がやると思うなよ」

「なっ、何よそれ」

「王家社交会御用達商会とか凄いなシスコ」

「あなたって人は……」

王家社交会御用達商会と言われて、怒るに怒れないシスコは複雑な顔をするのであった。