軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

デカい虫

マーギンはその後何度かミスティ像にエクレールを通して治癒魔法を掛けてみたが何も効果がなかった。

「俺がやっても無駄か……」

マーギンは神殿を後にする。もしかしてという期待は崩れさった。残された手はカタリーナに試してもらうこと。しかし、普通の姫としての生活を選べばエクレールを試してもらう事もできなくなる。カタリーナに聖女としてこれからの人生を歩んでくれとも言いたくない。そんな複雑な思いをしながらミャウタンの元へ戻った。

「もう宜しいのですか?」

「寝てていいと言っただろ?」

「申し訳ありません」

「いや、謝ってもらうようなことじゃないんだけどな。1つお願いをしていいか?」

「はい、なんなりと」

「神殿でもいいんだが、使徒の石像を運んできた人物をここで祀ってやってもらえないか?」

「使徒様をお運びになられた……あの戦闘斧の持ち主の方でございますか」

「そう。ムーの遺跡で眠ってたんだ。あそこは荒らされて安らかに眠る事もできないんじゃないかと思ってな。できれば時々焼肉と酒を供えてやって欲しい」

「畏まりました。今度こそ、ミャウ族は使徒様のご友人をお守りして参ります」

「場所は神殿でいいか?」

「はい」

マーギンはもう一度ミャウタンを連れて神殿に行く。

「どこに寝かせておこうか」

祭壇の下にミスティ像がある。隣で寝かせるにも台座がない。地面に寝かせるのも申し訳ないな。ヴィコーレを入れてあった扉の中とかの方がいいか? 棺代わりになるかもしれん。奥行きはどれくらいあるかな?

マーギンは祭壇の裏側にある扉の所に行き、扉を開けてライトの魔法を使って中を見る。

「ギリ、入るか」

ガインの骸を出して安置してみると足がでる。なんか扉からミイラ化した足が出てたら気持ち悪いな。ここはやめておこう。

結局安置場所に困り、階段を上った祭壇の台座の前に毛布を敷いてそこに寝かせておくことに。この神殿にはミャウタン以外来ないから驚かんだろ。

「ちょっと焼肉臭くなってもいいか?」

「はい」

ガインの骸の前でちょっとだけ焼肉を焼いてやり、強い酒を供えておく。焼肉の煙が線香代わりになっていいだろ。

神殿内に煙が充満するかと思ったらそうでもなく、煙が天井まで上がり消えていく。通気孔とかあるのかもしれん。

ミャウタンに時々、こうして供えてやってくれとお願いして皆の元に戻った。

「ワフっ」

山犬達がすぐに気付いて駆け寄ってくるのでよしよししてやる。バネッサ、シスコ、ポニーはテントの中で寝ているようなので、マーギンは山犬達と一緒に外で寝るのであった。

「マーギン、飯できたぞ」

「おっ、ありがとうな」

バネッサが作ってくれたカリカリベーコンと半熟目玉焼き。ベーコンで黄身を掬って食べる。

「どうだ?」

「旨いぞ」

「へへっ、だろ? シスコはもっと焼けとか言いやがんだぜ。こっちの方が旨いよな?」

「まぁ、人それぞれだ。俺はこっちの方が好きだけどな」

「そんなの食べるのあなた達だけよ」

「シスコはカチカチ卵を食ってりゃいいだろうが」

相変わらずの2人。よく飽きないものだ。

「朝っぱらから喧嘩すんな」

「わかってるよ。で、いつここを出発するんだ?」

「すぐに出ようかと思ってたんだがな、ロブスンの事が気になるから2〜3日待ってみるわ」

「なら探しに行こうぜ。日帰りで帰ってくりゃ入れ違いになっても問題ねぇだろ?」

「それもそうか。シスコ、お前はここで待っててくれ。暇だろうからポニーに文字でも教えてやってくれ」

「えっ?」

「ポニーもお勉強できたほうがいいからな」

「えー」

「えー、じゃない。そのうち必要になるからな。シスコおばちゃんに教えてもらえ」

ビタンッ!

「誰がおばちゃんなのよっ!」

「……シスコお姉ちゃんに教えてもらえ」

ちょっとした冗談なのに本気ビンタを食らったマーギン。

バネッサと2人で出掛けようとすると、ギンが付いてくる。

「お前も来るのか?」

「ワフっ」

という事でギンも一緒に連れていく。キンはポニーに付いててやるようだ。

「バネッサ、ちょっと走るぞ」

「いいぜ」

ホバー移動ばかりだと身体が鈍るから久々に全力疾走。ちゃんとバネッサもギンも付いてくる。直線なら引き離せるかもしれないが、木々のある場所だとバネッサの方が速いかもしれん。

しばらく走った後に昼休憩。ギンは自分で獲物を獲りに行った。

「甘辛作ってくれよ」

「昼から唐揚か?」

「いいだろうが」

バネッサのリクエストで唐揚の甘辛を作る。よく飽きないよな。

しょわわっと揚げているとギンが小型の鹿みたいなやつを咥えて戻ってきた。バネッサとマーギンを交互に見て、マーギンにずいっと差し出してきた。これはなんか作ってくれということか?

魔法で解体して、モモ肉を刀削麺のようにシュッシュッとスライスして湯に入れてシャブシャブにしてやる。これが1番早くできる。唐揚を甘辛にしてバネッサに渡してから、レバーをシャブシャブした湯で軽く湯通ししてペーストに。

「こら、これはオヤツだ。今食うやつじゃない」

相変わらずレバーペーストが好きなギン。くれくれ攻撃が激しい。待てをさせておいて、湯からアクを取って洗浄魔法を掛けたモツを茹でておく。後はアキレス腱も湯通ししてから魔法で乾燥させる。これもオヤツだな。

ギンはモモ肉を全部食べ、他の肉は晩飯ように確保しておいてやろう。マーギンはアイテムボックスからご飯を出してイクラ丼。

「なんだよそれ?」

「魚の卵だ。食ってみるか?」

と、スプーンにミニイクラ丼にして口に入れてやる。

「おっ、旨ぇ」

そして隣で同じように口を開けるギン。

「これは味付きだからお前はダメだ」

「くふぅっ、ふうぅん」

うーん、イケズぅとか言ってるのだろうか? しょうがないからマグロの血合いを角切りにして口に入れてやった。風味が強いからこういうのが好きだろう。

お腹がこなれるまで徒歩移動してから全力疾走。

「ロブスンいねぇな」

「だな。ちょっと上空から見てくるわ」

と、マーギンはプロテクション階段を出して木より高く登り、気配を探るも分からない。ロブスンも気配絶ちできるから、上空からだと居ても分からんか。

「もう戻るか。入れ違いになってるかもしれんしな」

と、下に降りて戻ると、甘い香りがする。

「ちょっと寄り道するぞ。バレットフラワーが咲いてる」

「あの種を飛ばしてくるやつか」

「そう。ギンが近づかないように捕まえててくれ」

匂いのする方にバレットフラワーを探しに行く。前に王妃にあれば取ってきますと約束してたからな。

そしてもう近いなという時にギンが警戒体勢を取った。

「どうしたんだよ?」

いきなり動かなくなってグルルと静かに唸るギン。

「マーギン、ギンの様子が変だ」

「どうした?」

「なんか警戒してるみてぇだ」

そうバネッサに言われてマーギンも集中して気配を探る。

「魔物や動物の気配はないぞ。チューマンかもしれんな」

視界の範囲にチューマンはいない。が、茂みから飛び出されたら不意打ちを食らう可能性がある。

《プロテクション!》

マーギンはバネッサとギンに近寄れと言ってから自分達をぐるっとプロテクションで囲んだ。

ギンは警戒体勢を取りながら耳をピクピク動かす。プロテクションを張ったマーギンは周りの様子を探らずにギンの様子を見ていた。

ギンの右耳がピクッと動いた後に斜め上に向かって吠えだした。

「ガウッ」

「上か?」

プロテクションは筒状に張っている。上から来るのか?

マーギンは妖刀バンパイヤを抜いて構えた。バネッサもオスクリタを持ち構えている。

ブーン。

「なんだよ、デカい虫じゃないか」

警戒した方向からデカい虫が飛び去った。飛び去った方向に吠え続けるギン。

「危ない虫か?」

「マーギン、なんだあれ?」

「いや、分からん。一瞬鳥かと思ったけど、羽音が鳥じゃないな。多分虫だと思う」

「結構デカかったぞ」

「そうだな」

ギンが警戒を止めたので、バレットフラワーの蜜をいくつか回収して集落に戻ったのだった。

集落で晩飯を食っているとロブスンが戻ってきた。

「マーギン、来てたか」

「いいところに戻ってきたな。親子丼食うか?」

晩飯はサーモンとイクラの親子丼。バネッサはガツガツ食っている。

「あぁ、もらおうか」

何かを説明せずにロブスンに渡すと臭いを嗅いでから食べた。

「何か分かったか?」

「チューマンはアンタラバガの蜜を好むのかもしれん」

「アンタラバガ? なんか聞いた事があるがなんだっけ?」

「種を飛ばしてくるヤバい花だ」

「あー、バレットフラワーか。俺達も採取してきたぞ」

「チューマンが近くにいなかったか?」

「いや、デカい虫がいただけだな」

「そうか。俺が見たのはチューマンがアンタラバガを食ってるところだ。山の中にいた」

「やっぱりまだいるのか」

「あいつらはアンタラバガの種をものともせずに食ってた」

「剣が効かない外殻を持ってるからな。それも当然だろう。ここから距離は離れてるか?」

「あぁ。山の中だ。ここにくるかどうかは分からん」

「今作ってる堀が完成したら防衛は可能だろうけど、見回りは増やした方がいいかもしれんな」

「そうだな。最悪、他の村に避難する事も考えておく」

「それはミャウタンと相談しておいてくれ。しかし、いきなり避難しても受け入れてくれるかどうか分からんから、先に他の村に相談しておいた方がいいぞ。1番近い村はどこだ?」

「風の神、ロムを祀る谷だが、山側になる。現実的に避難するならは土の神ディンを祀る村になるだろう」

「風の神を祀る村は山間の谷にあるのか。山に近いからチューマンが出てたりしないか?」

「どうだろうな。ロムの村は他とも離れているから他の集落ともあまり繋がりがない。まぁ、俺達はどことも繋がりがないけどな」

「それならなおさらだ。ディンの村に使者を送って相談しとけ。それが無理ならナムの村まで行くしかなくなる。あそこなら受け入れてくれるとは思うが」

「そうだな。ワー族とミャウ族で話し合いをしておく」

これからの方針を決め、最悪この集落を放棄する事も含めて話し合いをしておくとロブスンは返事をしたのであった。