軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

一生の思い出になる日

「あ、ありがとうございまし……た」

スッキリしたマーギンとは裏腹にボロボロにされて倒れたホープ。軽く治癒魔法を掛けてやる。後は自力で治したまへ。

「やはりマーギンは綺麗な剣を使えるのだな」

ホープとの稽古をずっと見ていたローズ。

「基礎は教えてもらったからね。でもいつも勝手な事をやって怒られてたよ。基礎も極めれば必殺技に匹敵するかもしれないけど、子供の頃は派手な技を使いたくてさ」

「どんな技があるのだ?」

「1番練習したのはダブルスラッシュかな。こうやるんだよ」

マーギンは子供の頃に練習を続けていたダブルスラッシュをローズに見せる。

「おおっ、凄いではないか」

「でも今考えると実戦的じゃないんだよね。余分な動きになるからスピードも威力も落ちる。連撃ならこっちの方がいいかな」

マーギンは下段に構えて斬り上げから振り下ろしの逆V字斬りを見せる。

「なるほど。しかし、下段に構えてたら初撃の斬り上げを読まれるのではないか?」

「はじめっからこれを出すんじゃないからね。ちょっと構えてみて」

と、ローズが興味津々になるのでやって見せる事に。

下段に構えるマーギンに対してローズは中段に構える。

「じゃ、いくよ」

と、合図してからマーギンは下段から伸びてくるような突きを放つとローズは剣を振り下ろしてマーギンの突きを弾く。当然上から弾かれたマーギンの剣は下がる。そこから、

シパッシパッ!

マーギンは逆V字斬りを放った。ローズの剣先は下に向いていたので受ける事もできない。

「なるほど、こういうことか」

「そういうこと……」

ブッ!

今の攻撃を見て感心するローズからマーギンは目を逸らす。

「ご、ごめん。剣圧で上着が斬れちゃったから隠してくれないかな」

「えっ? あっ、キャーーーッ!」

胸を隠してうずくまるローズ。

「みっ、見たのかっ?」

蹲りながら、涙目でキッとマーギンを睨み付ける。

「みっ、見てない……」

マーギンは180度顔を背けてそう答えた。

それを見ていたカタリーナは舌をペコちゃんのように出して親指を立てる。

「ローズ、グッジョブ!」

お前の仕業か……

ローズは姫様命令でノーブラブラウスの上に上着を着ていたのだ。そしてこの日、マーギン一生の思い出の日となったのだった。

慌てて着替えてきたローズは真っ赤になってグッジョブと言い続ける姫様をポカポカする。

晩御飯は闇鍋。ローズが恥ずかしくてマーギンの顔を見れないようなので、訓練所で真っ暗のまま鍋にすることに。闇鍋といってもマーギンが出した食材なので変なものもなく、カザフ達も混ざって食べ始めた。

「おっ、マギュウ肉だ!」

「これはボアかな? 暗いと何食べてるか分かりにくくなるね」

トルクの正解だ。カザフが食ったのもボアだ。

「肉だな」

ロッカ、何肉か言えよ。

「ハンバーグだっ!」

アイリスよ、それは肉団子だ。似て非なるものだぞ。

「これはカニね」

シスコ、それは盲牌して白と自慢気に言うようなものだぞ。というかいつの間に参加してたんだよ?

それぞれがこれはなんだとか当てっこするように食べていく。たまにはこういう楽しみがあっても良いだろう。俺が掴んだこの肉はなんだろうか?

もぐ……

「誰だっ、ネズミ肉を入れた奴はっ!」

「あっ、マーギンが食った。よくネズミって分かったよな?」

タジキがネズミ肉を入れやがったようだ。

「明らかに味が違うだろ。鍋全部がネズミ臭くなるだろうが」

「この鶏肉硬いんだけど」

カタリーナが俺に鶏肉が硬いと言う。

「鶏肉は入れてないぞ」

「じゃあ、これなに?」

「姫様、多分それはヘビだ」

タジキ、闇鍋は初めてなのに楽しみ方をよく掴んでるな。

「うぇぇぇぇ」

ほら、やりやがった。ヘビの種類にもよるが煮込むと独特の生臭さがあるからな。

黙って魚介類だけをヒョイパクしていくハンナリー。コイツは見えてるだろうから当然か。ズルではないがズルしてるみたいなもんだからイタズラしてやろう。

マーギンはエビをしんじょうにして、1つだけ中に唐辛子を練り込んでおく。海老しんじょうを鍋にポイポイと入れると煮えた頃に唐辛子入りをドンピシャに掴むハンナリー。

「わっ、これ海老の肉団子や。めっちゃ美味しい……辛っらぁぁぁっ! あんた何食わすねんっ!」

「それは当たりだ」

「こんなん当たりちゃうわっ!」

うむ、予想通りの反応で宜しい。

カタリーナがヘビを食べてから鍋に手を出さなくなってしまったので、タイベ産の豚肉をしゃぶしゃぶしてから器に入れてやる。

「これなに?」

「食ってからのお楽しみだ」

具材を何か言わないマーギンがくれたものを躊躇するカタリーナはローズの口にグイグイと押し付ける。

「豚肉ですね」

「ほんと? じゃあ食ーべよっと」

「残念、それは虫だ」

「うぇぇぇぇ」

豚肉と虫の違いぐらい分かれ。

こうして疑心暗鬼になりながら食べる闇鍋も終わったのであった。

「カザフ、大隊長は来なかったのか?」

「なんか王様に呼ばれてるからって言ってた」

「そうか。俺はまた明日からタイベに行くからちゃんと鍛えてもらっておけよ」

「分かってるよ」

「次はいつ帰って来るの?」

と、カタリーナからの質問。

「どうだろうな。海が荒れて帰れなくなる前には戻る予定にしてるぞ」

「なんかお土産買ってきてね」

「なんでだよ。この前までお前も行ってただろうが」

「私のじゃなくて、ローズの」

「ローズの?」

「ひっ、姫様。私は何も……」

「すっごい水着とかいいんじゃないかな?」

「姫様っ!」

マーギンは夕方の光景を思い出して赤くなる。

「か、考えとく……」

そう答えたマーギンの顔をカタリーナはニヤニヤして見るのだった。

翌日、

「よぅ、来たのか」

馬車乗り場に行くとシシリーが来ていた。

「顔ぐらいは見せておいた方がいいかなって」

「ま、自分で好きに決めたらいいわ」

「あら? シシリーも行くのかしら?」

シスコもやってきて、マーギンに着替えを渡しながらシシリーを見る。

「ライオネルまでな」

その後、馬車に乗り、ゴトゴトと1日揺られてライオネルに到着した。

「すっかり夜だな」

「そうね」

「今から会いに行くか? それとも明日にするか?」

「……明日にする」

と、シシリーが言うので宿をとって飯を食う。

「シスコ、明日ライオネルの漁港を見学して、前に説明したことの確認だ。それと漁師ができなくなったやつを雇う予定にしてるから顔合わせしとけ」

「雇った?」

「そう。王都で魚をさばける奴が必要だろ? 漁師は皆出来るからな。何人になるか分からんが人数がいたほうがいい。それに値段が決まってるカニや魚はいいけど、小物も扱うなら値段を決めれる奴が必要になる。何人かはライオネルの倉庫番にしてそういうのをやってもらえばいいと思ってな」

「人を手配してくれてたの?」

「王都の人間よりライオネルの人間の方が即戦力になるからな。家族ごと来たりもするだろうから、住むとこの手配も必要になるぞ」

「分かったわ」

「今回の漁師は魔物に船を壊された奴だ。足を失った奴もいる。ハンナリー商会は働きたくても働けなくなった奴らの受け皿になってくれると嬉しい」

「そうね。あなたのお陰でハンナリー商会は大変よ」

と、シスコは言いつつも、自分が目指す商人への道のりの一歩なのだと受け入れた。

翌朝、地引き網漁師の元へ行く。

「マロ兄……」

馬車に乗ってからここまでほとんど言葉を発していなかったシシリーを心配していたマーギンの心が一気に冷める。もうあのCMが脳内に再生されたのだ。

「後は勝手にやってくれ。シスコ、漁港に向かうぞ」

シスコは意味が分からないままマーギンに手を引っ張られて漁港へと連れて行かれた。

「シシリー、あの金はお前を買ったんじゃない。俺達はお前の自由を買ったんだ」

「あんな大金払う必要なかったのに……」

「大金っても、俺が稼いだと自慢できる金じゃねーんだけどな」

「どういうこと?」

「マーギンが全部お膳立てしてくれたんだ。海の魔物討伐費用の相場を跳ね上げさせ、それを討伐するための武器や方法も全部俺達にくれたすげぇ討伐船のお陰だ」

「マーギンがどうして?」

「きっとマーギンもシシリーの事を好きなんだろうよ」

「私がくっつくと怒るわよ」

と、シシリーは微笑む。

「ねぇ、マロ兄」

「どうした?」

「その船を見せてもらえない?」

「いいぞ。あっちに停めてある」

マーロックに連れられてシシリーは討伐船の停泊場所に向かう。

「これが討伐船? 見たことがない船だわ」

「当たり前だ。世界でまだ1つしかない船だからな」

と、マーロックが胸を反らした。そして、船にいた船員たちが出てくる。

「お前ら、エルラが自由になったぞ」

「おめでとうございますエルラさんっ!」

そこにいた全員が大きな声でシシリーをエルラと呼び拍手をした。

「えっ? えっ?」

戸惑うシシリー。

「ここにいるのは全員あの孤児院出身だ。お前と面識はないが皆家族だ。お帰りエルラ」

「マロ兄……」

自分を含めて皆が家族だと言われたことで涙が止まらなくなるシシリー。

「あの孤児院も今は俺達が運営していてな、昔とは全然違うようになってる。ガキどもも元気に商売をしてるぞ」

「そ、そうなの」

「そうだ。良かったら一度見に来ないか?」

「えっ? わ、私は……私は……」

「孤児院を見たら辛い事も思い出すかもしれん。しかし、生まれ変わった孤児院を見てやって欲しい。それにこの討伐船もな」

「わ、私が乗ってもいいの?」

「エルラが気に入ったならこの船に乗れ」

「……うん」

マーロック達はアニカディア号にエルラを乗せて近くの海を疾走するのであった。