軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

一時の日常2

オルターネンに深夜1時頃まで飲みに付き合った。どうやら隊長になってからは周りのものが全て部下になり、心を許せる友人と呼べるものが近くにいないのだろう。役職が付くとそうなるんだな。もしかしたらガインもそんな感じだったのかもしれん。それにマーベリックも……

家に帰ってさっとシャワーを浴びてから寝室に……

「うわぁぁっ。お前、何勝手に泊まりに来てんだよ?」

寝室のベッドにアイリスが寝ていた。疲れて気を抜いてたからアイリスがいるのに全然気付かなかった。

「お帰りなさい」

「お帰りなさいじゃねぇ。気配を消して潜むな」

「気配を消すの上達しました?」

「ま、まぁな」

「じゃ、おやすみなさい」

マーギンの顔を見たアイリスはすぐに布団に潜り込んだ。こいつ、起きて待ってたのか。ハンバーグを食ってまたホームシックみたいのにかかってるのかもしれないなと思い、そのまま追い出すことなく寝かせておいた。

翌朝、パンケーキをハチミツたっぷりで死ぬほど食べたアイリス。

「はぁー、幸せです」

椅子の背もたれに寄りかかってお腹をさするアイリス。

「そりゃ良かったな。パンケーキぐらい自分で作れるだろ」

「こんなにフワッフワに焼けないんですよ」

「生地の混ぜすぎか、ひっくり返すタイミングが遅いんじゃないか?」

「ひっくり返すのが遅いとフワッフワにならないんですか?」

「そうだぞ。ちょっとしたことで味も食感も変わってきたりするからな。自分で色々試して上手いものを作れるようになった方がいいぞ」

「でもマーギンさんに作ってもらった方が嬉しいです♪」

「お前なぁ……」

と、言いかけたらドンドンと扉を叩く音がする。

「マーギン、おっはよー!」

と、外から大声を上げて扉を叩くカタリーナ。アイリスが扉を開けにいく。

「おはようございます、フェアリーさん」

「あれ? なんでアイリスがここにいるの?」

「泊まったからですよ」

さも当然のように答えるアイリス。

「ずっるーい。あっ、パンケーキの臭いがする。私も食べるーっ!」

朝から賑やかだな。もう少し姫様らしくおしとやかにできないかね?

「おはよう」

カタリーナに続いてソワソワしながら顔を赤くしたローズも入ってきた。この前の事を思い出して恥ずかしいのかな?

「ローズもパンケーキ食べる?」

照れそうになったのを隠して聞いてみる。

「い、いや。私は朝食を食べてきたから大丈夫だ」

と、ローズは答えたがきっと食うだろうとマーギンは多めに焼いておく。

「わーい。魔木の実シロップはまだあるの?」

「あるぞ。新しいのも漬けてあるから持って帰れ」

「やった!」

前のシロップはもう食い切ったのか。そこそこたくさんあったはずなんだけどな。

「はい、お待たせ。ローズはハチミツと魔木の実シロップ、バターどれにする?」

「わ、私は……バターとハチミツで……」

顔を赤くしながら答えるローズ。何やら猫背になっている。いつもは凛と背中をのばしているのに。まぁ、いいか。

「私は魔木の実シロップ!」

お代わりをしてくるアイリス。お前、腹がはち切れるんじゃないか?

マーギンは自分が食べようと思っていたパンケーキに魔木の実シロップ掛けてアイリスにやる。

「マーギン、はいこれ。お母様から」

嬉しそうにパンケーキを食べながら手紙を渡してくるカタリーナ。ローズも隣で子供みたいに頬張って食べている。髪の毛も短くなっているから、少し幼くなったような感じがする。カタリーナが感染ったのかもしれんがこれもまた良しだ。

そう思いながら手紙を受け取る。きっとカタリーナのことが書かれているのだろう。そう思いながら手紙を読む。

〜来年の社交会用に新しい魚のマリネをご提供して頂きたく。魚の手配とマリネのソース、調理方法の教授をお願い致します〜

「カタリーナ、お前、王妃様に南蛮漬けを食べさせたのか?」

「うん、お母様もああいうの好きだろうなと思って。焼いた方を一口食べてもらったの」

なんて余計な事を……

「ギブ……」

マーギンがため息を吐いているとアイリスの口からパンケーキが出かけている。あれだけ食った後に食えるはずがないだろ。と、いやしんぼをしたアイリスに残りのパンケーキを切って口に押し込んでやる。

「無理です無理ですっ!」

「食えるだけ頼めといつも言っているだろうが」

「だって、魔木の実シロップのも食べたかったんです」

「だったら最後まで食え」

マーギンにパンケーキをグイグイ押し付けられて口の周りが魔木の実シロップだらけになるアイリス。

「ごめんなさい……」

「次に食いきれないぐらい欲張ったら作ってやらないからな」

「はい……」

マーギンはアイリスの口に押し付けたパンケーキは自分で食べた。甘いなこれ……

「カタリーナとローズはお代わりいる?」

「う、ううん。もう大丈夫」

目の前で怒られたアイリスを見てカタリーナとローズもお代わりとは言わないのであった。

「手紙は何が書いてあったの?」

「来年の社交会に南蛮漬けを頼むだってさ」

「じゃあ、焼いたのと揚げたの両方必要ね」

「だろうね。王妃様に分かりましたと伝えておいてくれ。後、酒はワインより合うと思う別の酒を手配しとく」

「分かったわ」

好みは人それぞれだけど、個人的に魚料理には日本酒か焼酎の方が合うと思うのだ。王都なら定番は白ワインになるのだろうけど、王家の社交会なら新しい組み合わせの方がいいだろうからな。手配はシスコに頑張ってもらおう。

「マーギン、料理によって酒の組み合わせを変えるのか? 赤と白を変えるのは分かるが」

ローズはあまり飲まないから、料理と酒の組み合わせをあまり知らないようだ。

「試してみる?」

朝っぱらから酒を飲むのもなんだけど、王妃に説明しといてもらわないとダメだし、元々魚のマリネが苦手なローズだと反応が分かりやすい。

ちゃちゃっとアジを焼いたのと揚げたので即席の南蛮漬けを作る。これにちょいと熟成魔法を掛けて完成。用意する酒は4種類。赤ワイン、白ワイン、日本酒、クセのない麦焼酎のお湯割りにスダチのようなタイベの酸っぱい果実を少し搾ったもの。

「俺はこの2種類が合うと思うんだけどね。赤ワイン、白ワイン、日本酒、お湯割りの順番で試してみて」

一口南蛮漬けを食べさせてから酒を飲ませる。

「おっ、最後の酒とはよく合っていて旨い」

「だろ? 俺もそう思うんだよね。社交会の時は寒いからお湯割りがいいんじゃないかと思うぞ」

「マーギン、最後のお酒は普通に売ってるの?」

「これはタイベで作られてる酒に酸っぱい果実を搾ってある。酒に酸味と香りを足したんだよ。これは別になくてもいいけど、女性にはこの方が飲みやすいかもしれん」

「もっと甘い方が美味しいのに」

「料理に合わせるから甘みはない方がいいんじゃないか? 甘味が欲しい人にはシロップを用意しておけばいいと思うぞ」

「分かった」

ローズがこの組み合わせを気に入ったようなので、焼酎とスダチみたいなのを後で渡してやろう。もうすぐ新鮮な魚が手に入るようになるからな。

朝から酒の入った皆はご機嫌で魔道具ショップへ。昨日シスコと打ち合わせができなかったから、話をしておかねばならないのだ。

「明日の朝イチの馬車ね。分かったわ」

シスコに出発の説明をした後、マーギンだけで切れない糸の素になる草を渡しにいく。

「あ、ありがとうございます……」

ようやく仕事が一段落付いた頃に素材が大量に届いて苦笑いする職人達。それとサンプルでバネッサ用の防刃服を一着もらっておく。そのうち糸を仕入れてミャウ族でも防刃服を作って用意した方がいいかもしれない。対チューマンには必要な服となるだろう。

他にも魔道具職人達から色々と相談され、あれやこれやを教えて訓練所に向かうと休みのものも多く人数は少なかった。

「マーギン、腕試しをさせてくれ」

と、ホープがやってきた。

「魔法ありか?」

「いや、なしで頼む。相手はコイツだ」

と、ローズの弟ノイエクスの相手をしてやってくれという。

「想定は? 俺は魔物か? それとも人か?」

「人で頼む。マーギンの力を知りたいらしい」

「なら木剣でやろうか。俺もちょっと剣をやり直したいと思ってたからちょうどいいわ。ホープも同時に掛かってきてもいいぞ。コイツ1人じゃ俺の訓練にならんだろうからな」

「何をっ!」

「なら俺も参加させてもらおう。俺も上達したところを見せたいしな」

ということで2対1での対峙。マーギンは初心に戻って身体強化もしないノーマル状態でやることに。

「いいぞ。どこからでも来い」

中段に構えたマーギンにノイエクスが大振りで斬りかかってくる。

「たぁーーっ!」

振り下ろしてきた剣先にコツンと剣先を当てて軌道を逸らす。

ブンッ

ガスッ!

カウンターで空振りしたノイエクスの顔面に剣を握った手でパンチを食らわせるマーギン。

「ぐおっ……」

ドンっ。

「ぐはっ!」

殴られた顔面を押さえて痛がるノイエクスを蹴飛ばした。

「痛がってる暇に殺されて終わりだな。お前、訓練で何をやってたんだ?」

呆れるマーギン。躱された後の事を何も考えてない。

「うるさいっ。偉そうに言うなっ!」

鼻血を出したノイエクスが叫ぶ。

「あのな、特務隊は命のやりとりが前提の戦いをする組織だ。対人戦であってもそれは同じ。今のが自分の一撃必殺技だとかうぬぼれんなよ。常に先の先の先ぐらいまで想定しとけ。一撃必殺技は最後の苦し紛れに一発逆転を狙ってやるような技だ。外れたらその後は死ぬんだよ。それを初手で持ってくる馬鹿がいるか」

「えっ、偉そうに……」

と、まだ口ごたえをするノイエクスに剣を使わず蹴り飛ばすマーギン。

「口で言って分からない奴は身体に叩き込む」

そう言ったマーギンはホープに参戦する間も与えず、ノイエクスをボロボロにして心を折った。

「とどめだ」

「ヒッ……」

マーギンはノイエクスの顔の前に木剣を突き出してから大きく振りかぶった。

「マーギン、もうやめてやってくれないか。このままではノクスが本当に死んでしまう」

と、ローズが割って入ってきた。

「良かったな、優しい姉ちゃんに助けられて。ホープ、治癒師にケガを治してもらってやってくれ。3回くらいに分けて治癒してもらえ。1週間は安静だ」

「お前、容赦ないな……」

「ホープ、このままあいつが変わらないままなら実戦に出すな。死ぬぞ」

コソッとホープにノイエクスの事を伝えておく。

「分かってる。ありがとうマーギン」

そうか。ホープはそれが分かってて俺と対戦させたのか。

「じゃ、次はホープな」

「えっ?」

「2対1でまだお前が残ってんだろうが。早くしろ」

そしてマーギンはホープ相手にガインに教えてもらった剣の基礎を1つ1つ思い出すように叩き込んでいく。ホープの剣は綺麗な剣。おさらいをするのに適任の相手だったのでマーギンはご機嫌で痛めつけていくのであった。