軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

王妃との面談

マーロック達に送ってもらってライオネルに到着したマーギンとカタリーナ。

「マーギン、頼みがあるんだが」

マーロックがライオネルに到着したら真面目な顔をしてマーギンに頼み事をしてきた。

「ん? なんだ?」

「こいつをエル……シシリーのいる娼館に払ってきてくれねーか」

ドサッと金貨の入った袋を渡してくるマーロック。

「山分けしなかったのか?」

これはマルカ討伐の時に得た報酬だろう。

「山分けはした。が、こういうのは早い方がいいと皆が言ってくれてな。それにシシリーは俺達がいた孤児院の仲間だ。ここにいる奴らにとってもな。だから皆で金を出そうということにしてくれたんだ」

「そうか。なら自分で渡しに行けよ」

「いや、これはマーギンに頼みてぇ。金を払ったから結婚してくれというつもりじゃねぇんだ。あいつを自由にするための金だ」

「ならそう伝えていいんだな?」

「あぁ、頼む」

マーギンは金を受け取り、地引き網漁師の所に顔だけ出して王都へと向かった。カタリーナにも走らせたがジャガイモ農家のケンパじいさんの村近くで日が暮れてしまった。

「乗れ、このまま王都に向かう」

ケンパじいさんの所に寄ろうかと思ったがこのまま王都に戻ることにして、ホバー移動をする。当然王都の門が閉まっているけど問題なしだ。

「マーギン、お腹空いた」

「城で食え。これ以上遅くなる前に送ってやるから」

「いやーーっ。マーギンの家で食べて泊まるっ!」

カタリーナのわがまま姫発動。

「なんでだよっ。タイベで散々作ってやっただろうが」

「だって、お城に戻ったら1人で食べないとダメなんだよ?」

「それがお前の普通だろ?」

「でもいやなのっ!」

大通りで大きな男が叫ぶ少女の手を無理矢理引っ張っている光景が衛兵を呼ぶ。

「貴様っ、何をしているかっ!」

「ほらみろ、お前が騒ぐから衛兵が来たじゃねーかよ」

3人の衛兵がマーギンを取り囲む。

「衛兵さん、この人私に帰れって言うのよっ!」

「は? どこかに連れて行こうとしていたのではないのか?」

「違う。俺の家はあっちだ。こいつが帰らないと言うから自分の家に連れて行こうとしてただけだ」

「何か話がおかしいぞ。とりあえず詰め所まできてもらおうか」

「だってよ、お前のせいだぞ。どうすんだよ?」

「えーーっ、お腹空いたっ。衛兵さん、私はお腹が空いてるの。マーギンの家でご飯を食べたいの。分かる? だから詰め所なんか行きたくない」

「お、お嬢さん、そういうわけにはいかないんですよ。こいつが悪人だったらどうするんだ」

「マーギンが悪人でも何でもいいでしょ。ほっといて」

おい、悪人というのを否定しろ。

「衛兵さん、俺はこいつの保護者みたいなもんなんだよ。疑うなら門番に聞いてみてくれ。俺の事を知っているはずだ」

そう言うと1人の衛兵が門まで走って行った。そして……

「申し訳ございませんでした。どうぞお楽しみ下さいませ」

門でバアム家の客人だと聞かされたのか態度が一変する衛兵。しかし、お楽しみ下さいってなんだよ?

「なら詰所に行かなくていいのね?」

「はい」

「だって。マーギンの家にご飯を食べに帰りましょ」

「なんでそんなにわがまま言うんだよ?」

「だって、もうこんな機会ないかもしれないじゃない。今日が最後の夜なんだよ?」

まぁ、こうして2人でいるのはこれが最後かもしれんな。

「食ったら送って行くからな」

「やった! 何作ってくれるの?」

衛兵達に敬礼されながら、その場を後にする。カタリーナはマーギンに腕を組んで、何作ってくれるの? と聞きながら嬉しそうに歩くのであった。

こいつ……

チーズハンバーグをたらふく食ったあと寝やがった。これは確信犯というやつだ。

家に泊まらせるのは不味いと思っていたが、ここまでずっとテントで一緒に寝てたのだ。もう今さらだな。

カタリーナに洗浄魔法を掛けてベッドに運び、自分は風呂に浸かる。

「はぁ、生き返るわ」

マーギンは風呂にブクブクと顔まで浸かりながら、カタリーナの能力の事を考える。あいつに教えたら、きっと人を助ける道を選ぶだろう。そうなれば毎日毎日、ぶっ倒れるまで人を治し続ける生活になる。それにガインの手紙でミスティの石化が 病(・) 気(・) の(・) 一(・) 種(・) であればと書いてあった。ということは聖杖エクレールの力で病気を治せるってことか? ソフィアのやつ、医学を勉強してきたのかと思ってたけど、病気を治せたのは杖のお陰だったのかよ。風呂の中でブツブツ言うマーギン。

そしてソフィアがなぜ慈悲深くなかったのか考える。

「そりゃそうか。1人で病人を治せる人数なんて知れてるからな。何か制限しないとパンクするか……」

当時は貴族しか相手にしなかったソフィアのことが好きではなかったが、カタリーナが聖女になった時の事を考えると、しょうがなかったのかもしれんと思える。自分に人を治せる力があると分かれば、病気で苦しんでいる人をどうにかしてやりたいと思うだろうからな。

マーギンは当時の自分は何も見えてなかったのだなと理解する。マーベリックの日記、ガインの手紙、俺とミスティの事を嫌いだったはずのソフィアでさえ聖杖を残してくれたのだ。偶然見付けたオスクリタも、もしかしたらベローチェが俺の手に渡るように何かしてくれてたのかもしれん。

「俺ってガキだったんだな……」

マーギンは何度も風呂の中に潜ってブクブクとするのであった。

翌朝、

「シスコの所に寄ってから城に行くぞ」

呑気に朝ごはんは何? と起きるなり聞いて来たカタリーナにパンケーキを焼いてやり、職人街へ。

「やっと帰ってきたのね。バネッサは?」

「置いてきた」

「なんですって?」

バネッサを置いてきたと言ったマーギンをキッと睨む。

「ちっ、違うわ。タイベのミャウ族って所の集落で戦闘員の訓練をしてくれてるんだよ。シスコとタイベに行くときに迎えに行く予定だ」

「そういうことなの。で、いつ出るのかしら?」

「お前はいつに出れるんだ?」

「2日後なら大丈夫よ」

「了解。カタリーナを城まで送って行くから帰りに寄るわ」

「特務隊の所に行く?」

「行くつもりだけど」

「なら、夕方に特務隊の訓練所で待ち合わせましょ」

と、シスコと話している横で、ブリケが屍のようになっていた。

「カタリーナ、王妃様にこの後会えるか聞いてきてくれ」

「それなら一緒に来れば? で、ダメなら出直せばいいじゃない」

ということで、アポ無しで王妃の所へ行くとそのままどうぞと言われた。

「おかえりなさい」

「ただいまっ!」

「随分と楽しい旅だったようね」

カタリーナの元気な姿を見てそう微笑む王妃。

「マーギンさん、お世話をお掛けしましたわね」

「えぇまぁ」

そんなことはないですよと言わないマーギン。

「今回の旅の報告をしたいのですが」

「そう。カタリーナ、席を外しなさい」

「えーっ!」

「あまりわがままを言うと、次からは何も許可しませんよ」

さすがは王妃。一発でカタリーナを黙らせた。

「マーギン、話が終わったら部屋にきてね」

と、言い残してカタリーナは護衛騎士に連れられて出ていった。その後、他のもの達も退出させる王妃。

「さ、お気兼ねなくどうぞ」

「ありがとうございます。実はカタリーナのことなんですが、今回の旅で分かったことがあります」

マーギンはカタリーナの能力の事を説明した。

「本人には何も言っておりません。本人に伝えるかどうかはお任せ致します」

「そう。カタリーナに伝説の聖女になれる素質があるとは驚きですわね」

「えぇ、自分も驚きました。このまま姫殿下として人生を歩むのがいいのか、聖女となり、人々を救う人生を歩むのが良いのか自分には分かりません」

王妃もこの事を聞かされて悩んでいるようだ。

「ちなみにマーギンさんはどちらがいいと思われますの?」

「力を持つということは幸せでもあり、辛いことでもあります。こんな力がなければ平穏に暮らせたかもしれないと思う時もありますからね」

マーギンは自分の事と置き換えて返事をした。

「それはローズとのことかしら?」

「まぁ、自分に力がなければ出会う人でもありませんでしたので、結果は同じですけど」

全てお見通しなのだと思い、否定せずに素直に答える。

「そう。ならばカタリーナも同じですわね。聖女になろうがなるまいが結果は同じ。どちらの道を歩んでも納得できることもあれば諦めなければならないものが出てくるものでしょう。本人に決めさせますわ」

「え?」

「今の王家は有力貴族や他国と結びつきを強める為の婚姻も必要ありませんしね。それより魔物の脅威と戦う時代になるのでしょう? であれば聖女の力が必要になるのではありませんか? カタリーナはきっとそちらの道を選びますわ」

「本人に話せばそうでしょうね。しかし、辛い目に合うことも増えると思うのです。毎日毎日救いを求める人が自分の元に訪れ、延々と治癒する日々になります。時には命の取捨選択を迫られ、助けられない人が目の前で亡くなり、家族が泣き叫びながらカタリーナを責めるようなことも出てくるでしょう」

「そうですわね……」

「それでも本人に伝えますか?」

「マーギンさん」

「はい」

「カタリーナを心配して下さってるのね」

「そうですね。カタリーナはわがままなところがありますがいい子ですよ。幸せな人生を送って欲しいと思ってます」

「娶ってマーギンさんが幸せにするという手もありますわよ?」

「自分にとってはカタリーナは娘みたいな感じですよ。これが思春期ぐらいの時に出会ってたら舞い上がってたかもしれませんけどね」

そう答えると王妃は残念ですわと笑うのであった。

結局、カタリーナに話すかどうかは王と相談するとのことで保留となった。

「あっ、そうそう。ローズが結婚を断った相手の家から責任を問われているようですけど、私の手助けは必要かしら?」

「ご存じなのですか?」

「貴族間のトラブルは把握しておりますわよ。そもそも婚約を交わす前のお断りですから責任も何もないのですけど、バアム家の方が爵位が低いので対応に苦慮しているようですわ」

「あ、いや。お気持ちだけで大丈夫です。ローズが結婚を断ったのは自分にも責任がありますので自分でなんとかします」

「それと、ローズは責任を取ってバアム家から離籍するつもりのようですわよ」

「そうなんですね……離籍したらカタリーナの護衛はクビになりますか?」

「元々爵位は気にしておりませんわ。カタリーナが希望した人物ですから」

「分かりました。色々とご配慮をありがとうございます」

「では、これからもカタリーナを宜しくお願い致しますわね」

「自分にできることであれば」

マーギンはそう答えて、カタリーナの部屋に向かうのであった。