軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

カタリーナを撫でる

しかし、あのチューマンの死骸……

マーギンは隣でマーギンの方を向いてスヤスヤと寝ているカタリーナを見る。

「あの死骸、こいつが恐怖でチューマンの頭を見えない手で握りつぶしたのか」

前から見えない手を使えるんだろうなとは思っていたが、チューマンの硬い頭を握り潰すぐらいの威力があるのか。それに傷が治っていく自己治癒能力。どちらも無意識で魔法を使っている。こいつ、光と闇の両方の属性持ちだな。王都に戻ってこいつが同意したら鑑定しておいた方がいいかもしれん。それか勝手に見て王妃と本人に伝えるか相談したほうがいいか。恐らく、光も闇もかなりの適性がある。俺と一緒にいることも増えたから魔力もかなりのものになっているはずだしな。

「過ぎたる力か……」

力があるから幸せになれるとは限らない。知らない方が幸せということもあるからな。そう思ったマーギンは勝手にカタリーナの能力を見る事にした。

カタリーナ・シュベタイン

魔力値:997

火:C

水:C

風:B

土:D

無属性:A

光:SS

闇:S

やっぱりな。このまま魔力値が伸びれば間違いなく聖女になれる存在だ。しかも闇属性持ちの特殊な聖女。勇者パーティーのソフィアより能力が高くなるかもしれん。さて、王妃にこの事を伝えたらどうするかな。能力を知らなければ第3王女としての生活を送る事になるだろう。俺と出会わなければそうなっていた人生だ。その方がいいのか、能力を知って聖女になる方が良いのか判別がつかん。

「お前は将来どうなりたいんだろうな?」

マーギンは安心した顔でスヤスヤと眠るカタリーナの頭を撫でてそう呟いたのであった。

翌日、マーギンはチューマン討伐隊にも相手が戦闘を学習している事を教えていく。

「前回通用した攻撃が次も効くとは思わずに対応するように」

チューマンが学習すると聞かされ、初めはざわざわとしていたが、こっちもそれは同じだ、俺達もさらに特訓を強化すると答えた。良い姿勢だなお前ら。

「マーギンはこれからどうするのだ?」

「チューマンの巣も気になるが、やらないとダメな事があるから一度王都に戻る。冬前にもう一度戻ってくるわ」

「分かった」

ロブスンにそう答えると、

「マーギン、うちはここに残るぜ」

と、バネッサが残ると言い出した。

「お前、王都の特務隊どうすんだよ?」

「マーギンが王都に戻るなら学習したチューマンの事を知ってるのはうちしかいねぇだろうが。どうせシスコとすぐにここに戻ってくんだろ? それまでこいつらの特訓をうちがやっておくよ」

「お前……」

「へんっ、ピアンの野郎を使い物になるようにしといてやんよ」

「そうか。なら頼むわ。それと……」

「それとなんだよ?」

「チューマンが出ても無茶してケガしたり死んだりすんなよ」

マーギンは真面目な顔をしてバネッサに死ぬなよと言う。

「分かってるよ。別にこいつらに情があるわけじゃねぇから、下手こいた奴は見捨てるって」

そう笑って答えるバネッサ。これは嘘だ。バネッサは見知らぬ奴でも危険にさらされたら飛び出していく。性分というのは変えられるもんじゃない。

マーギンはへへんと笑うバネッサをスッと抱き寄せた。

「なっ、なにしやがんでいっ!」

「本当に死ぬなよ。約束だぞ」

「わっ、分かってるってばよ」

マーギンが本気で自分の事を心配してくれていると分かったバネッサは素直にそう答えたのであった。

その日はポニーにレバーペーストの作り方を教え、ロブスンに獲物を狩ったら肝をポニーに渡すように伝える。山犬達には山に帰りたくなったら帰っていいから付いてくるなと言い聞かせた。

「マーギン、すぐに帰ってきてねーっ!」

ポニーと皆に見送られ、ミャウ族の集落を後にしたマーギン。ナムの村まではカタリーナをおんぶして一気にホバー移動をした。

「ねぇ、マーギン」

びくっ。

この言葉にトラウマがあるマーギン。カタリーナに言われても反応してしまうのだ。

「な、なんだよ?」

「2人っきりだね」

「そうだな」

移動の途中の野営時にそんな事を言い出すカタリーナ。

「もうっ、こんな事を言われたら照れて赤くなるもんでしょっ!」

「お前相手に赤くなんてなるか」

「じゃあ、ローズだったら?」

「えっ? あぁ、うん……」

ローズと2人っきりの事を思い出して赤くなるマーギン。

「やっぱりローズの事、好きなんでしょ?」

「そうかもしれんな」

「バネッサとどっちを選ぶの?」

「なんだそれ? どうしてバネッサが出てくんだよ?」

「だって、昨日抱きしめてたじゃない」

「あいつは無茶するから心配なだけだ。まぁ、俺がいない時はもっとしっかりしているみたいだけどな」

「ふーん、おっぱいも見たのに?」

「みっ、見てませんっ!」

「あー、こういうのには赤くなるんだ。えっち」

「お前なぁ……」

カタリーナと2人だと疲れる。これは早々に帰らねばと、翌日も死ぬほど飛ばしてナムの村に到着したのだった。

ゴイル達が切れない糸の原料になる草を刈り入れてくれてたのでお支払いをしてアイテムボックスに収納しておく。

「ゴイル、またすぐに戻ってくるんだけど、次に花の種を持ってくるから村の周りに撒いてくれないか」

「なんの花だ?」

「蚊取り線香のもとになる花だ。もしかしたらチューマン避けになるかもしれない。ならなくても蚊取り線香に加工できるから損はないぞ」

ハナコの鼻に巻き付かれながらゴイル達にチューマンの事を説明しておく。ナムの村に到着してからハナコがマーギンの匂いを嗅ぎっぱなしなのだ。山犬の匂いが残ってるのかもしれん。

「ハナコ、いい加減にしなさい。マーギンが苦しそうよ」

「絞めてはないから平気だマーイ。ハナコ、お前はマーイを仕事に連れて行かなくていいのか?」

「刈り入れまで暇だから大丈夫だよ。マーギンはすぐに王都に戻るんだよね? 付いていこうかなぁ」

「マーイ、ダメだぞ。感謝の儀式に間に合わんかもしれんだろうが」

どうやら米の収穫が終わると感謝の儀式というかのがあるらしく、踊り子のマーイは必ず参加しなければならないようだ。

「じゃあ、また今度だな」

「ちぇっ。なら、なんかお土産買ってきてね」

「なんか欲しいものがあるのか?」

「うーん、都会の服とか?」

「服か。俺はどんなのがいいか分からんぞ」

「おまかせでいいよ。都会っぽいのがいいな」

都会っぽいってどんなのだろうか? シスコに選んでもらうか。サイズはカタリーナに聞いといてもらおう。俺が聞くとセクハラと言われかねんからな。

ナムの村も1泊だけして領都へ移動。まずは孤児院に行き、蚊取り線香になる花の種をどれだけ分けてもらえるか相談をする。

「やばい敵だな」

マーロックにもチューマンの事を話しておく。

「これが効いてくれたらいいんだけどな」

「花はまた増やせるから、あるだけ持っていってくれ」

「ここの分は大丈夫か?」

「あの花は種を撒かなくても同じ場所にまた生えてくる。種は拡張用だからな。増やすのはまた次で構わんだろ」

ということで大量に種をもらった。これを続けていけばタイベ中に花が広がるかもしれん。王国側でも育つかな?

「で、すぐに王都に戻るんだな?」

「そのつもりなんだけど、ちょっと行きたい所があるから数日待っててくれないか?」

「どこに行くんだ?」

「ムーの遺跡だ」

「は? 荒らされて何もねぇし、魔物だらけだと言っただろうが」

「ちょっと確かめたい事があるんだよ」

自分が石化された後に保管されていたと思われる遺跡。荒らされたとしても何か残っているかもしれない。ガインはラーの神殿に手紙とヴィコーレを残してくれていた。手紙も俺かミスティのどちらかが先に目覚めるか分からないので2人宛の内容っぽかった。もしかしたら、両方の神殿に手紙を残してくれているかもしれないのだ。

「そうか、なら気を付けてくれ。俺もあそこに行ったのは随分と昔だ。今はもっと酷くなってるかもしれんからな」

晩御飯は子供達が作った魚のすり身の天ぷら。売り出したそうだがまだあまり売れてないようだ。

「マーギン、美味しくない?」

「いや、旨いぞ。まだあまり売れてないのは街の人が食べた事がないからじゃないか。試食とかしてもらった方がいいかもな」

「試食?」

「そう。味見してもらって美味しかったら買うだろ。後は食べ方も教えてやらんとな」

「こうやって食べるだけじゃないのか?」

「つまみとして売ってやればいい。誰か大人を連れていけ。この酒を前割りしといてやるから試食と合わせて少し飲ませてやるといい」

「分かった!」

孤児達は元気だ。もう孤児とも呼べない感じになってきてるから良いことだ。元海賊達も家族のように接しているから、大家族って感じで非常に宜しい。

その夜は子供達と寝る。空調もない暑い孤児院で子供達に群がられて寝るのは修行と変わらん。そう思ったマーギンは窓枠に簡単な空調の魔法陣を描き魔結晶をセットする。窓を開けるとスイッチ・オンだ。これで涼しい風が入ってくると勘違いしてくれればいいな。

翌日、子供達は大人を連れて芋焼酎を前割りしたものを持って販売に行った。すり身の天ぷらには生姜のすりおろしを付けてもいいぞとアドバイス。売れてくれるといいな。

さて、遺跡に行くのにカタリーナをどうするかだな。マーロック達に預けておいても問題ないだろうが、王妃に自分が守ると言った手前連れて行くしかない。

「遺跡まで探検しに行くけど一緒に行くか?」

「うん♪」

お留守番してろと言わずに初めから一緒に行くかと聞かれて嬉しいカタリーナは即答した。

人目のあるところは徒歩移動。マーロックが近くまで船で送ろうかと言ってくれたが、自分達の仕事を優先してくれと言っておく。これはハンナリー商会とは関係のないことだしな。しかし、遺跡へと続く森は手つかずの森。獣道すらない。

「どうやって進むの?」

「開拓みたいな感じで進むしかないな」

剣を振り回して藪漕ぎして、木を薪にして収納して進む。早くもマーロック達に海からのルートを頼めば良かったと後悔するマーギン。

「暗いね」

「そうだな。ここまで木が繁っているとは誤算だったわ」

ガサッガサッと剣を振り回しているから動物の気配は離れていく。が、魔物は寄ってくる。何の魔物か確かめる前に気配に向かって魔力ビームのパーフォレイトを撃って殺しておく。今回の目的は君たちではないのだよ。マーギンがそんな事をしていることを知らないカタリーナはあっつーい、虫が多いとか不満を歌にしていた。うっとうしい歌だ。

「これきりがないな。俺に乗れ」

「ホバー移動するの?」

ぴょんと飛び乗ったカタリーナはマーギンの背中から顔を出して聞いてくる。

「階段を登る。しっかり掴まっとけ」

マーギンは懲りずにプロテクション階段を出して登っていくのであった。