軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

回復した山犬

マーギンは池に潜り、カタリーナを包んでいたプロテクションボールがあった位置に潜って沈んだチューマンを探す。水中メガネがないのでもやっとした視界のなか、チューマンらしきものを発見。万が一生きてたらやばいのでアイテムボックスに収納を試みた。

シュンッ。

お、入った。ということは死んでたんだなと、チューマン回収を終えたマーギンは皆の元に戻った。

「バネッサは?」

「テントの中」

待っていたカタリーナがそう答える。

山犬達の方を見るとは黒い方は死んだように眠り、金色はそれに寄り添っている。暴れそうな気配はないのでそのままにさせておいた。

「みっ、見たのかよ?」

テントから顔を出してそう聞いてくるバネッサ。

「お前は痴女か? 少しは恥じらいを持て」

「うっせえっ。緊急事態で慌ててたからだろうが。で、見っ、見たのかよ?」

真っ赤な顔をして聞くバネッサ。

「丸見えだ。お前、特務隊の訓練所でも似たようなことしてるんじゃないだろうな?」

「してるかっ!」

「これからはこぼれ落ちないようにサラシでも巻いとけ」

マーギンはバネッサにそう言って晩飯の準備を始める。鶏ガラを煮出している間に大量の豚肉をミンチにし、次に貯まりに貯まったマギュウのレバーを湯通ししてからすり潰して裏ごしする。

「何作るの?」

「山犬の餌だ。これに時間が掛かるから俺達の晩飯は適当になるぞ」

「えーっ、うなぎは?」

「池に仕掛けを入れておくから捕れるとしても明日だ。今日は我慢しろ」

うなぎがいたとしても今日の騒動でどっかにいったかもしれんが。

鶏ガラスープに豚ミンチを入れて煮込み、レバーペーストも投入。見た目が非常に悪いスープの出来上がりだ。

さて、こいつらはどれぐらいの量を食べるのだろうか? 黒い方は馬ぐらいの大きさ、金色はそれより小さくロバぐらいだ。人と比べると食べる量は半端ないだろう。

冷ました豚肉とマギュウレバーのスープを金色の前に置いてやると匂いを嗅いでマーギンの顔を見た。

「これはお前のだ。黒い方にはスープだけにしておくから、肉はお前が食え」

そう言っても食べようとしない。黒い方も目を覚まして鼻にシワを寄せて立ち上がろうとする。

「動くな。傷口が開く。まだ完全にくっつけたわけじゃないからな。もう少し元気が出たらもう一度治癒魔法を掛けてやる。今は回復に努めろ」

マーギンから敵意を感じない黒犬は立ち上がるのをやめてグルルと唸るだけになった。

「ほら、お前はこれを飲め」

と、スープだけを鼻先に置いてやるもマーギンを睨みつけたままだ。

「しょうがないやつだ」

マーギンは黒犬の口をがっと掴み無理やり開けさせ、口の中の上顎にレバーペーストを塗る。黒犬の口から手を離すと何を入れられたのかと上顎を舐める。

「ほら、食いもんだと分かったろ? 今日はこれを飲んで寝ろ。お前らなら明日にはだいぶ回復しているはずだ」

そう言ってその場を離れるとスープの匂いを嗅ぎ、ぺろっと舐めたのでそのうち飲むだろ。

次は人間の飯だ。もう作るの面倒だからマギュウの鉄板焼きでいいか。

「カタリーナ、魔導鉄板を出すから自分らで焼いて食え」

バネッサとカタリーナに材料を出しておくから自分で食えと言っておく。山犬達が元気が出たら大量に食うだろうから餌をもっと作っておかねばならないのだ。

こうしてマーギンは1人で黙々と黒犬用のレバーペーストを作っていった。夜はテントに2人を寝かせてマーギンが見張り。敵の気配はないが、山犬の様子も見ておかねばならないのだ。

パチパチパチと焚き火の前で座るマーギン。うなぎの罠を何本も仕掛けたあとは山犬をじーっと見ている。いつの間にかスープもなくなっているし、金色の方も餌を食べたようだ。

のそっ。

金色が立ち上がってマーギンの方へきた。

「どうした? 食べ足りなかったか?」

そう話掛けると目の前でおすわりをする。

「お前、エメラルドグリーンの瞳をしてるんだな」

金色の毛並みに緑の瞳。まるでミスティのような組み合わせだ。

「山犬って茶色しか知らなかったけど、お前ら特殊個体か? 黒はまだ分かるけど金色って珍しいな。すごく綺麗な毛並みだぞ」

と、褒めてやると心なしか嬉しそうな顔をする。

「撫でていいか?」

と、聞いてから近寄り、下顎から口の横に手をやりワシワシしてみる。柔らかくて手触りの良い毛だ。そのまま頭やら身体を撫でても嫌がらない。

「お前、柔らかくて手触りいいな。山犬の中ではモテモテだろ?」

褒めながらひとしきり撫でるとまた黒犬に寄り添い、落ち着いた感じで寝ていくのだった。

翌朝、黒犬が立ち上がった。

「もうそこまで回復したのか。ならこれを食え。血が増えるのに役立つかもしれん」

マーギンは黒犬の方にレバーペースト、金色の方には肉を与えた。2匹とも素直に食べたので一安心だな。もう大丈夫そうだ。

人間の飯はいつものベーコンエッグとパンだ。今日はバネッサが作ってくれなかったのでマーギンが作る。

「まだ恥ずかしいのかよ?」

赤くなったままマーギンの方を見ずに飯を食うバネッサ。

「うるせえ」

「マーギン、うなぎ捕れた?」

それよりうなぎのことで頭がいっぱいのカタリーナ。

「どうだろうな? 今から罠を上げてみるか」

と、カタリーナと2人で仕掛けた罠を引き上げにいく。

「マーギン、なんか動いてるっ!」

仕掛けをうんしょうんしょと引き上げるカタリーナが動いていると言う。土の筒に入ったうなぎが動くのなんか分かるものなのか?

「おっもーい」

カタリーナが苦戦するのでマーギンも手伝い、罠を引き上げると馬鹿でかいうなぎが頭を突っ込み、引っかかっていた。

「なんだこいつ?」

「やったーーっ! 大きなうなぎだーっ!」

これはうなぎか? 確かに長くてヌルヌルしているが、色は茶色に黒のまだら模様だ。まぁ、カタリーナが喜んでいるからうなぎという事にしておこう。

そして仕掛けた他の罠に掛かってるのも同じやつ。仕掛けのいくつかは壊されていたので、もっとデカいのが入って壊したのかもしれん。餌代わりにレバーの切れ端を入れたのが原因なのだろうか?

馬鹿でかいうなぎを5匹ゲットし、テントの所に戻り魔法で解体する。昼メシにこれを食ってみよう。

蒲焼きのタレを作って焼いていくと良い匂いだ。その匂いにつられたのか、山犬達も寄ってきた。

「これを食いたいのか? 味付きは良くないだろうから素焼きにしてやるよ」

山犬達には素焼きしてから冷まして置いてやると食べた。大した回復力だ。

「黒いの、こっちにこい」

そう言って手招きすると寄ってきたので傷口に治癒魔法を掛けてやる。あともう1回掛けてやれば完全に治るだろう。

「前食べたのと味が違ーう」

と、カタリーナが不服そうに言うので味見をすると脂っけがほとんどなく、パサッとした感じの肉質だ。鶏肉の胸肉やササミみたいな感じである。やはり普通のうなぎとは違うんだな。

「これなら蒲焼より、唐揚げとかの方がむいてるな。それか油煮にしてやろうか?」

「美味しくなる?」

「唐揚げにしてから甘辛にしたら好きだと思うぞ」

「じゃあ、それにして」

「晩飯の時にな」

多分バネッサもその方が好きだろう。小骨が気になるからミンチにして団子にしてから揚げてやるか。

山犬の飯も作ってやらないとダメだから時間が掛かる。マーギンは晩飯までせっせと飯の準備をし続けるのであった。

「うん、この方が美味しい」

「だな」

大きなうなぎらしきものは唐揚げにした方が美味しい。しかし、手間が掛かるから鶏肉の方がいいな。

黒犬はレバーペーストとササミを湯がいて混ぜてやり、金色にはササミの湯がいたものを与える。湯がいたお湯にほんの少しの塩と砂糖を入れて冷ましてやると飲んだ。水分はたくさん取っておいた方がいいだろう。多分……

翌日も同じ餌を与えた後に治癒魔法を掛けてやる。もうこれで完治だ。あとは血が増えれば元の状態に戻れるだろう。

「マーギン、いつまでここにいるんだ?」

「山犬も完治したからミャウ族の所に戻ろうか」

「チューマンの巣は探さねぇのかよ?」

「カタリーナがいるからな。あいつらが戦い方を学習しているなら想定外の事が起きるかもしれん。だから一旦引き揚げる。ロブスン達にもこの事を伝えないとダメだしな」

「分かったよ。次はいつ探しに出るんだ?」

「今回はこれで終わりにする。王都に戻ってシスコを迎えにいかないとダメなんだよ。あいつに色々と引き継ぐ事も人もいるからな」

「ならさっさと戻ろうぜ」

「おい、山犬。俺達はもう帰るからお前らも元の場所に帰れ」

そう言ってポンポンとしてやっても帰ろうとしない。

「付いてくるつもりか?」

マーギンをじーっと見るだけで返事をしないのでどう思ってるか分からない。

「ま、好きにしろ」

マーギン達は坂の上に登り始めたがカタリーナが遅い。

「待ってよーっ!」

「木登り訓練を散々しただろ。しっかり登れ」

「おんぶ♪」

「お前なぁ……」

と言いつつしゃがんでやるマーギン。

「わーい♪」

そのまま坂の上まで登ったところでカタリーナを降ろしてミャウ族の所まで徒歩で移動すると山犬達も一緒に歩いてくる。やっぱり付いてくるつもりのようだ。

途中で山犬達の餌になるような獲物を狩ろうと思っていたが、動物どころか魔物すらいない。もしかしたらチューマンがこの辺りを餌場にしていたのかもしれん。山犬達が山の中でチューマンに追われるか群れから引き離そうとしたなら、まだ他に別のチューマンがいるのかもしれんな。と、マーギンは警戒を高める。気配を探るのは難しいので音が頼りだ。

「うわぁ、金の方はモッフモフだね。黒い方はツルッツルしてる」

音に集中しているのにカタリーナがうるさい。しかし、ここで黙れと怒鳴ると泣くかもしれん。今回の捜索では散々な目に合ってたからな。

と、カタリーナが散々な目に合ったのはマーギンのせいではあるが、他人事のように思うマーギン。そして飯の時間になるとおすわりをして待つ山犬達。

「晩飯は海鮮ものだぞ」

今日の晩飯はマグロ尽くし。山犬達には骨で出汁を取り、血合い部分を煮てやる。人間はマグロ丼。赤身、づけ、中トロ、大トロ炙りをこんもりのせてやった。2人のは甘醤油にしてやり、自分のは山ワサビ醤油だ。

「旨ぇ」

「うん、美味しい♪」

たまにはこういう飯も良いだろう。山犬はマグロの目玉食うかな?

血合いだけでは足りなさそうなので、頭を半分に切ってやるとバリバリ食べる。マグロの頭を切ったのはマーベリックの剣だ。スマンなこんな使い方をして。

2匹でデカいマグロの頭1つを食べて満足したのか、また寄り添うようにして眠る。というか元気になった黒犬が金色を庇うようにしているのだ。仲良いなこの2匹。

俺も今日はゆっくりと寝よう。なんか来たら山犬が反応するだろ。

テントの中にゴロンと寝転がると昨日寝てなかった分、すぐに眠りに落ちたマーギンなのであった。