軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

こいつ……

《エアキャノンっ!》

ボヒュッ、ボヒュッ

現れたチューマンは3匹。バネッサに対処方法を教えてないうちから多対1はヤバいと思い、後の2匹を風魔法で吹き飛ばした。

《プロテクション!》

次はカタリーナをプロテクションで包んでおく。これで被害が出ることはないだろう。

「バネッサ、あれがチューマンだ。足の付根をオスクリタで狙え。近付いて攻撃すんなよ」

攻撃は上にいる方が有利。今はこちらが下にいるので不利だ。遠距離攻撃に徹するようにバネッサに伝えた。

バネッサは返事をせずにオスクリタをチューマン目掛けて投げる。

チュインッ

「ちっ、防ぎやがった」

なんだ今のチューマンの動きは? 前は関節防御なんてしなかったぞ。これはまずいかもしれん。

前とは異なる戦い方をしてきたチューマンを警戒するマーギンはカタリーナを包むプロテクションをボール状にして、ここから離れさせるために池に向かって蹴り飛ばした。

げしっ!

「きゃーーっ!」

ゴロンゴロンゴロン、ボッチャーーん。

ボール状のプロテクションに包まれたカタリーナは水面に浮く。そしてハムスターのように暴れていた。ちょっと楽しそうだなと思ったのは口に出さない。

「バネッサ、下がれ。こいつら前とは戦い方が変わってる」

「うちに戦わせるつもりだったんだろうがよっ!」

「まだ残りがいるからこいつは俺がやる。戦い方を見といてくれ」

バネッサにそう指示を出している間にチューマンが近付き、口を開いてカチカチと威嚇音を出してきた。狙いを魔狼のようなやつからこちらに切り替えたようだ。

「お前ら、学習でもしてきたのか? 生意気だな」

マーギンはそう話しかけた後にシュンッとその場から消えるように動き、マーベリックの剣を抜いてチューマンとまともに対峙する。バネッサにチューマンの戦い方を見せねばならないのだ。

まずは効かない攻撃を繰り返す。チューマンを剣で斬り付け、刃物で身体に傷を付けられないことを見せる。

ガキンっ、ガキンっ

次は相手の攻撃を受けるように防御する。

ガッガッガッガッ

攻撃パターンは変わってないようだ。さっきのオスクリタを弾いたのはたまたまたか?

「バネッサ、オスクリタを投げろ」

もう一度狙わせてみると、

チュインッ

やっぱりだ。こいつ、関節を狙われると自分がヤバい事を理解してやがる。マーギンは今の動きを見て確信し、剣でも関節を狙ってみる。

ガキンっ、シュンッ

ゲッ、関節ガードをしながら攻撃してくるだと?

マーギンはその攻撃を避けて、サッと後ろに下がると攻撃しながらダッシュしてくるチューマン。見た目は前のやつと同じだが動きが違う。特殊個体なのかそれとも……

《スタンっ!》

バチいぃぃっ!

前と同じぐらいの電撃を食らわせると止まる時間は約2秒。これは変わってない。

「バネッサ、次に電撃を食らわせたら両足の付根を狙ってくれ」

《スタンっ!》

バチいぃぃっ!

シュパッシュパッ

2本のオスクリタが両足の付根を斬り裂いた。

ズズンっ。

「こいつはもうほっとけ、残り2匹がもう来てる。1匹はお前が殺れ」

チューマンは坂を下るのは苦手なのか、降りてくるというより、片足を前に出して斜めの体勢になりながら滑り落ちるような感じで向かってくる。

「がら空きだぜっ!」

チューマンは4本の手を広げながらバランスを取っているので関節が丸裸だ。

バネッサが投げたオスクリタは上側になっている足の関節目掛けて飛ぶ。それをガードしようとした瞬間に軌道が変わり下側の足の関節を斬った。

ゴロンゴロンゴロンゴロン。ボッチャーーん。

チューマンは下側の足の関節を斬られた事によりバランスを失い池の中に。

「ひぃぃぃっ!」

水から逃れようと暴れるチューマンはカタリーナを包むプロテクションボールに掴まろうとする。

ガッ、グルン、ガッ、グルン、ガッガッグルングルングルン。

チューマンの爪はプロテクションボールを掴む事ができずに滑る。そしてプロテクションボールは水面でグルングルン回った。カタリーナはプロテクションボールの中でビンゴゲームの番号のボールのようにゴロンゴロンしている。

ガッ

チューマンは渾身の力を込めて4本の腕でプロテクションボールを掴んだ。

「シューーッ、カチカチカチカチ」

「ヒイィィィぃ!」

プロテクションボールに掴まったチューマンに口を開けて威嚇されるカタリーナ。

「カタリーナは大丈夫そうだな」

チューマンもプロテクションボールに掴まるだけでそれ以上の攻撃ができないようなので放置。残りを片付けようとすると、もう一匹はバネッサに両足と4本の腕をもがれていた。そして初めに足を斬ったチューマンは金色の魔狼のようなものに背中を踏み付けられている。

「避けろ。とどめを刺す」

マーギンが金色の魔狼のようなものに命令すると言葉がわかったのかサッと離れた。

ブシュッ

マーギンは首の後ろから剣を刺してとどめを刺した。

「カタリーナ、大丈夫……か?」

あれ? プロテクションボールに掴まっていたチューマンがいない。今はプロテクションボールの中でうずくまるカタリーナがいるだけだ。

マーギンは岸まで行き、風魔法を使ってプロテクションボールを引き寄せる。

「今からプロテクションを解除するから岸に飛び移れ」

そう叫ぶとカタリーナが顔を上げた。

「上側だけ解除してみるから、さっさと飛び移れよ」

こくこくと頷いたので、プロテクションボールを持って回転しないように支え、立ち上がるのを待ってやる。

《プロテクション解除》

プロテクションボールの上側からゆっくりと解除されていく。

「ほら、飛び移れ」

と、マーギンが抱きとめてやろうと両手を前に出す。

「えいっ!」

ビシャンっ

あっ……

カタリーナがマーギンに飛び込もうとしたのに、プロテクションが後ろに動き、カタリーナはその場で顔から水際に落ちたのだった。

「ふぇぇぇーん」

顔面を強打して水浸しになったカタリーナが泣き出した。笑いかけたがさすがに悪いかなと思って吹き出しそうになったのを我慢する。

「ぷっ……ほら、治癒魔法を掛けてやるから、立ち上がれ」

と、手を出すとカタリーナの傷が消えていく。やっぱりこいつ……

「酷いじゃないっ!」

「お前がどんくさいだけだ」

半べそでキーキー怒るカタリーナに優しい言葉をかけないマーギン。それより魔狼みたいなやつはどうした? と見ると、黒い方が金色をかばいながらバネッサと睨み合っていた。

「やめとけ。こいつは警戒しているが殺気は感じない。俺達を問答無用で襲ってこないところを見ると魔物じゃない。動物だ」

「こいつが牙を剥いてくるからだろうが」

「お前が怖い顔してるからだろ? 可愛い顔が台無しだ」

「なっ、何言ってやがるてえめぇっ」

真っ赤になるバネッサ。これでバネッサから発せられている威圧も解けた。

「お前、そのままだと死ぬぞ」

マーギンは黒い方に声を掛ける。懸命に金色の方を守ろうとしているが、もう立っていられるのが不思議なくらいだ。

「後の金色、今からこいつを治癒してみるから暴れんなよ」

《スリープ!》

マーギンは黒い方に強制睡眠の魔法を掛けた。本来なら気絶するように寝るはずが、かなりの精神力で抵抗する。

《パラライズ&スリープ》

全身を痺れさせ、それに抵抗しようとした時にスリープが発動。黒いのはドサッとその場で倒れた。それを見た金色は逃げずにマーギンを威嚇する。

「やめとけ。今から治療するから大人しくしとけ」

マーギンは威圧を放ちながら金色の方にそう言って、黒い方の傷口を見る。

「ギリ、内臓までいってないな。これなら助かるかもしれん」

ギリギリ腹膜が切れてなかったが、バックリ開いた傷口に治癒魔法を掛けてもすぐに塞がる訳ではない。まずは水を出して傷口を洗っていくことに。

ジャーっと水を出して掛けると、寝ているはずなのに鼻にシワがよる。痛いのを感じているのかもしれん。

《ロスペイン》

麻酔を英語でなんというか知らないマーギン。しかし、これでも魔法は発動する。タバサが亡くなる前に頻繁に使っていた魔法だ。

麻酔魔法を掛けられたことで本格的な眠りに入った黒い魔狼のようなものは死んだように見える。

「まだ生きてる。心配すんな」

金色の方が近寄ってこようとするのを止め、黒い方の傷口を端から順番に治癒魔法を掛けてくっつけていった。

「これで助かるかどうかはこいつ次第だ」

金色にそう伝えると心配そうな顔で横に寄り添う。この2匹はツガイなのかもしれんな。

2匹とも汚れているので洗浄魔法を掛けてから死んだチューマンを確認する。

「こいつらが虫系の人だってのか?」

バネッサとカタリーナもこちらに来て解体を確認するようだ。

「どうだろうな。バネッサ、普通のクナイでこいつの胴体に斬り付けてみろ」

「剣も効かなかっただろ?」

「それが死ぬとそうでもないんだよ」

と、バネッサにやらせると、クナイがザクっと胴体を斬った。

「なんだこいつ?」

「硬いままなら防具とかの素材になるんだけどな、死ぬと普通に切れるから素材にもならん。で、中身はこうだ」

そのまま胴体をくり抜くように切らせて外殻を外す。

ぬちょっ……

中身を見たカタリーナ。

「うぇぇぇぇぇ」

吐くな。もらいキラキラするだろうが。

あまりの気持ち悪さにキラキラしかけるカタリーナに我慢させる。

「ゲッ、中身はスライムなのかよ?」

バネッサはスライムにトラウマがあるので嫌な顔をする。

「俺もこんなのは見たことがなかったからな。生きてる時はこのぬちょぬちょが筋肉の代わりをしてるのかもしれん」

『生け捕りにせねば分からんこともあるじゃろうが』

と、ミスティなら言うかもしれん。パラライズも効かない相手に生け捕りなんかできるか。

「魔核もないから魔物じゃない。ということは魔結晶も取れない。肉もない。倒しても得るものが何もないんだよこいつ」

「でも倒さねぇとヤバいんだな?」

「そうだ。こいつが増えたら人類がヤバいから倒さざるを得ない相手ってわけだ。王都近くに出たらバネッサが指揮を取れ。他の奴らが迂闊に近寄ったらやられる。やられたら餌場と認識されて増えるぞ」

「マーギンは討伐に参加しねぇのかよ?」

「俺がいるときなら参加する。でもいない時もあるだろ。それと俺は巣を探して潰す役目をすることになるだろうからな」

「うちも連れてけよ」

「巣の殲滅は魔法を駆使することになるから1人の方がいい。この前は危うくロブスンを巻き添えにするところだったしな」

ロブスンはなくなった顔の毛が生えてきて、サル期みたいな顔をしていたのだ。

「そうかよ。で、あの魔狼みたいなやつはなんだ?」

「多分山犬だろうな。黒い方みたいなデカいのは初めて見た。山犬は賢い。無闇に人を襲ったりもしないから心配すんな」

「山犬とか初めて聞いたぞ」

「本来は山の中にいる動物だ。人のいるところに来ることはない。それがここにいるということはチューマンと戦いながら逃げてきたか、他の仲間を守るために群れからチューマンを引き離そうとしたかだろう。もし仲間から引き離すためにここまできたなら 主(ヌシ) クラスなのかもしれん」

マーギンはそう説明した後、シャツを脱ぎ始めた。

「なっ、なにしやがんでいっ」

「水の中のチューマンを見てくる……」

話が一通り終わってバネッサを見たマーギンは目を背けた。

「なっ、なんだよ?」

「俺が池から出てくるまでに下着つけといてくれ」

「えっ? あーーーっ! このスケベ野郎っ。みっ、見んなっ!!」

バネッサは風呂から濡れた身体のままシャツを着た。しかもノーブラでだ。

両手で胸を隠したバネッサは真っ赤になり、マーギンは慌てて池の中にジャバジャバ入っていった。

「ねぇ、わざと?」

カタリーナは違うわっと否定するバネッサに、ねぇ、わざと? と何度も聞くのであった。