軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

まさに地獄

「ミャウタン、神殿の祭壇に何があったか知ってるか?」

「申し訳ございません。口伝にも記録にも残っておりません。恐らく使徒様の石像を壊された時に奪われたのではないかと思われます」

「そうか。あの神殿はラーを祀る神殿なんだよな?」

「そうとも言えますが、使徒様の神殿でもございます」

「あの壊れた石像が祭壇にあった可能性はあるか?」

「いえ、それも分かりません。申し訳ございません」

残念ながら何も分からずじまいか。祭壇に祀られてたのが鏡なら真実が分かりそうだったんだけどな。ガインの手紙にあったミスティの魔導金庫の開け方のヒントもどこにあるか分からんし。もしかしたら祀られていたものと一緒に盗まれたのだろうか?

謎が出てきても解く手がかりがない以上どうしようもない。先にやらないといけない事をやるしかないな。

マーギンが拡張済みテントに戻ると4人寝られるマットに3人が等間隔で寝ている。入り口からバネッサ、ポニー、カタリーナの順だ。俺はどこで寝るのか試されてるのか?

寝相の良いカタリーナとポニーの間に寝るのが1番寝やすそうではある。が、マーギンの頭に「何があっても許可します」と王妃の声が流れる。いや、何もないのだけれども千里眼か何かで見られているような気がするのだ。隠密がいないにも関わらずだ。

迷った挙句、マーギンはバネッサとポニーの間で寝る事に。ポニーを少し動かして寝転ぶ。子供の体温が高いのかポニーの寝ていた部分のマットがぬっくぬくだ。ちょっと冷やそう。風魔法でマットに空気を送り熱を取る。

「よし、こんなものか」

と、マーギンが寝転ぶとコロンとポニーがくっついてくる。暑いからやめれとも言えないので空調の温度を下げる。寒いくらいにしてやるとポニーの温みが心地よくてそのままの温度で寝てしまった。

「うーん、うーん」

マーギンは重みですぐに目が覚める。

げっ、皆くっついてきてんじゃん。あ、空調が効きすぎて寒かったのか。自分のせいなので怒ることもできず、空調の温度を調整し直し、結局外にタオルを敷いて寝たのであった。

「マーギン、卵とベーコンくれよ」

「ん? バネッサが作ってくれんのか?」

「昨日あんまり寝れてねぇだろ? 卵ぐらい焼いてやるよ」

バネッサはマーギンが外に寝にいった事に気付いていたので朝食を作ってくれるようだ。

「じゃあ、私がスープ作ってあげる。マーギン、コーンスープの素ちょうだい」

それは作るとは言わん、混ぜるというのだ。

カップにコーンスープの素を入れてお湯を注ぐ。

「ほら、素早く混ぜろ。だまになるぞ」

カタリーナとポニーでぐるぐる混ぜてもらっている間にトーストを焼いておく。

「バターとハチミツどっちにする?」

「どっちも!」

全員ハニーバタートースト希望か。聞くだけムダだったな。

「はいよ」

「おっ、ありがと」

バネッサが作ってくれたカリカリベーコンと半熟目玉焼き。バッチリだ。

「旨いぞバネッサ」

「焼いただけだろうが」

と、嬉しそうにツンになる。それをカタリーナはじーっと見ていた。

ロブスンに出発することを伝えて山側に向かう事に。

「そこそこ距離があるから走るぞ」

「ホバー移動しねぇのかよ?」

「森の中じゃ無理だな。俺1人でもスピードを出せん。走ったほうが早いぞ」

「うちはいいけどよ、フェアリーがついてこれんのか?」

俺とバネッサが本気で走ったら無理だな。

「ちょいと試してみるか」

「なんかやんのか?」

「プロテクションを階段代わりにしたら上まで登れると思うんだよ。そこから滑り台みたいにしたら早いんじゃないかなって」

マーギンの言うことが上手く理解できない2人。

「ま、やってみるわ。バネッサは俺のうしろを付いてきてくれ。カタリーナは背中に乗れ。足を踏み外して落っこちたらどうにもできんからな」

マーギンは直径1m程度のプロテクションを何枚も上空に向かって出していく。モヤっとした円盤がたくさん空中にあるのはなかなか神秘的だ。

「カタリーナ、乗れ。ジャンプしながらいくからしっかり掴まってろよ」

カタリーナがぴょんとマーギンに飛び乗ったあとにしがみつく。しっかり掴まれとは言ったが首が絞まる。加減をしろ加減を。

よっ、はっ、と言いながらプロテクションをジャンプして登っていく。バネッサもヒョイヒョイと後に続いてどんどん上に登っていった。

「こんなに上まできて大丈夫かよ? さすがに怖ぇぞ」

すでに森を見渡せるぐらいまで登ってきた。バネッサの言う通り高所恐怖症でなくても下が見えると怖さが出てくる。カタリーナは下を見れなくてマーギンにしがみつきっぱなしだ。

「そうだな。上に来ると風も結構あるからそろそろ山側に……」

びゅほぉーーっ

「うわわわわわっ」

「ぎゃーっ、落ちるっ落ちるっ」

バネッサにもしがみつかれて身動きができなくなる。風でふらついたことでカタリーナもより強くしがみつく。下に落ちる前に首を絞められて落ちそうだ。

《プロテクションスライダー!》

今適当に考えたネーミングの魔法で山の麓まで長いプロテクションを出した。

「バネッサ、座れ。プロテクションを滑って下に降りるから」

「だっ、大丈夫なのかよっ?」

「多分。カタリーナ、座るから足を俺の膝に乗せとけ。バネッサ、お前もくっついとけ。離れて降りたら事故りそうだ」

3人で固まって座り、プロテクションスライダーを滑り台の要領で滑ることに。

するするするする……

イマイチ滑りが悪い。もう少し角度が必要なのか? と、プロテクションスライダーの角度を少し強めにするとスピードが出る。こんなもんかな。

するするるるるるるるっ!

「あっちいっ!」

スピードが出た事によって摩擦熱で尻が燃えそうというか、摩擦でなくなってしまうかもしれない。しかし、3人くっついて滑っているので身動も取れない。

「マーギン、尻が燃えるっ!!」

バネッサも尻がヤバそうだ。下手に暴れたら落っこちてしまう。

《スリップ!》

マーギンは摩擦をなくす為にスリップを自分達に掛けた。

バビューンーーっ!

「うっぎゃぁぁぁっ」

摩擦抵抗がなくなったことで自由落下に近いスピードで滑り落ちていく。足でブレーキを掛けようとしてもスリップが掛かっているので無意味。このままでは地面に叩き付けられてぷちゃってなってしまう。

《スリップ解除!》

キュキュキュキュッーー。

「あっちいーーーーっ!《スリップ!》」

バビューン。

まさに地獄。自由落下か尻がなくなるかの2択だ。

どうしようどうしようどうしよう……。

ダメだもう地面が近い。マーギンは速度を落とす方法としてプロテクションスライダーをループさせた。

「ぐぬぬぬぬぬっ」

強烈なGが襲ってきてそのままグルーーンと1回転してポンッと打ち出されるように宙を舞う。

《プロテクション! プロテクション! プロテクション!》

薄めのプロテクションを何枚か出して、バリンバリンバリンと割りながら着地した。

「し、死ぬかと思った」

カタリーナはまだぎゅうっとしがみついたままだ。バネッサは腰が抜けたような感じで立てなさそうだ。

「ほら、だいぶショートカットできたぞ。もう地面だから離せ」

「マーギン、怖ぇじゃねぇかよっ!」

「俺も怖かったわ。滑り降りるのをなめてたな」

カタリーナに離れろと言ってもいつまでもしがみついて離さないので、小指を持って引きはがす。

「痛い痛い痛いっ、折れるっ!」

「折れる前に離せ」

護身術を姫に使うマーギン。

「今日の移動はここで終わりにするから」

恐怖で全身に死ぬほど力を入れたからめっちゃ疲れた。バネッサもしばらく動きたくないだろう。

「甘いものでも食うか?」

2人に聞くと無言で頷いた。

マーギンはなんか無性にドーナッツが食べたくなり、作ってみることに。ホットケーキの生地を揚げたらドーナッツになるのだろうか?

とりあえずチャレンジ。

ホットケーキの生地を作ったがドロドロすぎて輪にできないため、おたまで掬って油に投入。まんべんなく揚がるようにくるくる回してキツネ色になったら完成。

「マーギン、それ何?」

カタリーナがじーっと見て聞いてきた。

「ドーナッツというものを作りたいんだけどな、これで合ってるかどうか分かんないんだよ」

揚げたてドーナッツを一口かじってみる。

「思ってたのと違うな」

「美味しくなかったの?」

「美味しいっちゃ美味しいんだけど、これじゃないんだ。水分量が多いのかもな。作り直すわ」

「それ食べてみたい」

「かじったぞ」

「気にしないから大丈夫」

というので砂糖を振りかけてやる。

「あーっ、美味しいっ!」

「そうか? この生地は他のに使うからもうちょっと待て」

マーギンは水を加えず薄力粉とバターと卵、牛乳を少しだけにして混ぜる。それを伸ばして輪にするけどいびつだな。

それを揚げるとかなりドーナッツに近くなった。ややサーターアンダギーに近いかもしれんが成功ということにしておこう。

輪にしてもいびつになるので、棒状のまま揚げていき、揚がったものに砂糖を振りかけて完成。

「まだ熱いから気を付けて食えよ」

「マーギンは食べないの?」

「ホットケーキの生地も残ってるからな。それも使う。今のは2人で食べていいぞ」

無性にドーナッツが食べたいと思ったが、一口食べて意識が違う方にいったのだ。

ソーセージを串に刺し、ホットケーキの生地に浸けて揚げる。そう、さっき一口食べた味はこれなのだ。サービスエリアやお祭りの屋台で食べるアメリカンドッグ。あれ好きだったんだよな。どうして今まで思い出さなかったんだろ。

揚がったアメリカンドッグにケチャップを掛けて齧る。

「うん、旨い!」

もっと安いソーセージの方がしっくりくるかもしれんが、タイベの豚肉ソーセージで作るとより旨いわ。

「それなに?」

「あんまり甘くはないけど食べるか?」

「うん♪」

バネッサも食うだろうと生地がある分だけ作った。

「おいひいっ! ほれ、ふぁんてりょほうり?」

飲み込んでからしゃべれ。

アメリカンとか言ったら、それどういう意味? とかしつこく聞かれそうだな。

「シャーラムドッグだ」

「ふーん」

良かった。どうして攻撃がこなくて。しかし、なぜドッグなんだろう? 昔は犬の肉でも使ってたんだろうか?

マーギンも名前の由来は知らないので、聞かれても説明できないところなのであった。