軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

大人げないマーギン

夏のパンジャのビーチには人が多い。はしゃぐカタリーナが海に走って行こうとするので付いていかねばならない。

「ほら、バネッサも来い」

ここにバネッサを置いていくと絶対に他の男が寄ってきてトラブルになる。

「ここで見てるから行ってこいよ」

「いいから来い」

マーギンはバネッサの手を引っ張って立たせようとする。

「いいって言ってんだろ」

「フェアリー1人で行かせるのはまずいんだよ」

「だからマーギンが行けばいいじゃんかよ」

早く来いと手を引っ張るマーギンに抵抗するバネッサ。

「よぉ、おっさん。嫌がる女を無理矢理連れて行こうとかふてえ野郎だな」

17〜8歳と思われるヤンチャ盛りの男3人が絡んできた。

「こいつは俺のツレだ」

「なんだコイツら?」

「お前に声を掛けようと近付いてきたんだよ。お前を1人にしておいたらこんなのがワンサカと寄ってくるから一緒にこい」

「おっさん、こんなヤツラとかなんだよ?」

「うるさい。こいつはツレだと言ってるだろうが。バネッサ、早く来い。フェアリーもヤバいんだよ」

「分かったよ」

バネッサはマーギンの手を握って立ち上がる。

「なぁ、こんなおっさんと遊ぶより、俺達と遊ぼうぜ」

「うるせえ。お前らみたいなガキと遊ぶか」

「なんだと? 俺らと歳変わらんだろうが。男をガキ扱いすんなよ。ほら、こっちこいよ」

と、声を掛けてきた男がバネッサに触れようとした。

ゴンッ。

ブッ。

バネッサが目に見えないようなスピードで顔面を殴りやがった。こうなると思ったんだよな。

「てめえっ、何しやがった」

マーギンに殴られたと思った男達は戦闘体勢に入る。

「今のはお前が悪い。見知らぬ女を触ろうとするな。大怪我せんうちに早くどっかいけ」

バネッサの機嫌もどんどんと悪くなってきている。こいつ、後先を考えずにビーチで暴れそうだな。

ヒョイ。

「て、てめぇっ。なにしやがんだよっ!」

マーギンはバネッサを抱き上げてカタリーナの元へと走る。

「こんなところで暴れそうだったからな。皆遊びに来ているところでもめ事をおこすな」

「こんな人がいっぱいのところで恥ずかしいだろうが。分かったから降ろせよっ!」

「いまさら何言ってんだ。カタリーナのところに着いたら降ろすから暴れんな」

「やっときたっ。あー、バネッサが抱っこされてるーっ!」

すぐにカタリーナに追いついたのでバネッサを降ろす。カタリーナはまだ誰にも絡まれてなかった。

「男に絡まれたから逃げてきたんだよ」

「いま後にいる人達?」

げっ、付いて来てやがる。

「おっさんのくせに、たわわ以外に金髪ロリっ娘まで連れてやがんのか。なんか許せねぇ」

なんて人聞きの悪い事を言うやつらだ。

「マーギン、ロリっ娘って何?」

「お前やアイリスみたいなやつのことだ」

「胸のこと? 私アイリスより育ってるよ。確かめてみる?」

やめなさい。

「あのなぁ、もう絡んでくるな。皆遊びにきてんだから騒ぎになったら迷惑だろ。それに俺もいい加減怒るぞ」

「へっ、おっさんが怒ったらどうなるってんだよ。俺たちゃこの辺ではちょっとは知られて……」

《パラライズ》

「グギギギギっ」

いい加減ムカついてきたマーギンはパラライズをかける。

「さ、海に入りたいなら準備運動しろ」

痺れて倒れた3人を無視してカタリーナに準備運動させる。その近くでは痺れて倒れた3人に人々がどうしたどうしたと集まってきた。

「そいつら自分達でさばいたプクでも食ったんじゃねーか?」

しれっと嘘を吐くマーギン。

「プク毒だと? そりゃヤバい。おいっ、埋めるのを手伝ってくれ」

皆が一斉に穴を掘り、絡んできた男達が顔だけ出して埋められていく。

「まだ生きてんのに埋めんのかよ?」

「フグ毒にやられたら埋めると助かる事もあるらしいぞ。本当かどうかは知らんけどな」

「あいつらパラライズ食らっただけだろ?」

「そんな魔法知ってるやつは限られてるからな。さ、もう忘れてやろう。俺達には関係のない奴らだ」

その後も、誰かクソ持って来いとか聞こえてきたから食わされるのかもしれん。そんなもんでフグ毒がなんとかなるわけないと思うけどな。

大騒ぎになってる所から離れて海に入る。

バシャっ。

いきなりバネッサが水を掛けてきやがった。

バシャバシャっ。

マーギンもやり返す。

「べっ、べっ。しょっぺえだろうが」

「お前が先に掛けてきたんだろうが」

バシャ。

次はカタリーナだ。

「お前らなぁ」

「えーいっ!」

バシャバシャ。

バシャバシャバシャバシャっ。

バネッサとカタリーナの2人から水掛け攻撃を食らうマーギン。

「お前ら、いい加減に……ぶほっ、ゴホッゴホッ」

しゃべっている最中に水を掛けられて盛大に海水を飲んだマーギン。

「ぶほっ、だってよ。ぎゃーはっはっ……ぶほっ」

「お前だって喋ってるときに海水かけられたらそうなるだろうが。思いっきり海水飲んだんだからな」

「ゴホッゴホッ、てんめぇ。これでも食らえっ!」

ドバッシャン、ドバッシャン。

手ではなく海水を蹴り上げて掛けてくるバネッサ。

「そんなに足を上げたらパンツ丸見えだぞ」

と、言うとバッとシャツを押さえた。

「水着だろうが。だーはっはっはっ、ぐぼっ」

大笑いしたところにカタリーナからの攻撃。

「きゃーっ、マーギンがぐぼっ、だって、キャーハッハッハ、ぶベベベベベベ」

ちょっとムカついたマーギンは水魔法を噴射してカタリーナを攻撃。ホースで水を掛けられかのように顔面に水をくらい続ける。

「たっ、たんまっ……ぶべべべべべっ」

容赦のないマーギンの水攻撃。

「マーギン、やり過ぎだ……ぶべべべべべ」

止めようとしたバネッサも容赦のない水攻撃を食らう。マーギンの大人げない一面が出た海水浴なのであった。

「もうっ、魔法で攻撃してくるなんて酷いじゃないっ」

「なんて野郎だてめぇはよっ」

2人から責められて逆ギレするマーギン。

「うるさい。水を掛けてキャッキャウフフしたいならもう少し加減して掛けてこいってんだ」

海水浴は終わりにしてご飯を食べにいく3人はギャーギャー言い合いをしながら飯屋に向かう。パンジャでもガイドブックみたいなものを作らねばならないのだ。

「こうして意識して食うとイルサンと飯の味も違ぇんだな」

「そうだな。味付けがシンプルになった感じもするけど、甘めの味付けだな」

「これ旨ぇぞ」

バネッサのを一口もらうと甘みをフルーツで付けてある。実に南国らしい味付けだ。

「確かにバネッサ好みの味だな。甘みはマンゴーかなこれ」

「マーギン、これも食べてみて」

カタリーナがスプーンにのせた混ぜご飯みたいなものを差し出してくるのでそのまま食べる。

「これは酸味が結構あるな。ライムを絞ってあるんだと思うぞ。シスコが好きそうな味だ」

「マーギンって皆の味の好みを覚えてるの?」

「甘み、酸味、辛味とかはな。人によって好き嫌いが別れるだろ?」

「バネッサは甘い味が好きなんだよね?」

「そうだな。皆より甘い味を好む。だから別に作ってやることが多いかもしれん」

「私は?」

「お前はアイリスと似たような感じだ。あとはグニュとした食感がダメとかかな」

「ふーん」

「なんでそんな事を聞くんだ?」

「いつもバネッサだけ別に作ってあげてるなぁって思ってたの」

「お前とアイリスにも別に作ってやってるだろうが。チーズもりもりとか」

「あっ、そうか」

「そうだよ。シスコは酸味のあるものを好むけど、バネッサは酸っぱいのが嫌いだ。ロッカは柔らかい肉より歯ごたえのある肉が好むとか、結構好みの差があるんだよ」

「料理人になればいいのに」

「やだよ。仕事で料理するの面倒なんだぞ」

「でもいつも皆のご飯作るよね?」

「誰か俺好みの飯を作ってくれるなら作らんぞ」

「ふーん。誰のご飯なら美味しいの?」

「リッカの食堂の大将の飯は好きだぞ。アイリスと会うまでは毎日のように食ってたしな。タジキの飯は大将と俺の味をベースにしてるから俺好みではあるけど、目玉焼きはバネッサが作ってくれるやつのほうが好きだ」

「バネッサって、マーギンにご飯作ってあげることあるの?」

「ねっ、ねーよっ。賭けで負けた時ぐらいだっての。うちが作ってやると言ったら嫌そうな顔をしやがるしよ」

「ローズには作ってもらったことある?」

「ないぞ。カタリーナには一度作ってもらったな」

「美味しかった?」

「女の子に作ってもらったというスパイスは効いてたな。食えなくはなかった」

「美味しくなかったってこと?」

「いや、旨さ控えめだっただけだ」

「ふーん」

カタリーナが何を知りたかったのかよく分からない会話だった。

何日かパンジャに滞在し、イルサンと同じような事を続ける。料理の味付けは少し異なるが、それだけだとインパクトが弱い。王都から客を呼ぶには他の何かが必要だよな。

「ちょっと女の子には似合わない店に行ってみるか?」

「どんなお店?」

「踊り子を観ながら酒を飲む店だ。客は男ばっかりなんだけどな、女の人でも楽しめるかどうか観て欲しいんだよ」

「へぇ、行ってみたいっ!」

姫を連れていくような店ではないが、女の人でも楽しめるようなら、売り物になるかもしれん。

こうしてカタリーナとバネッサを連れてマーイと出会った店に行ってみる。

「げっ、酒飲むだけで1万Gもすんのかよ」

「飲み放題だけどな。飯はもう食ったから酒だけでいいだろ。ここはゴイルとマーイが出稼ぎに来ている店なんだよ」

酒のカウンター近くの席に座り、飲みながら踊り子が出てくるのを待つことに。女の客なんかいないからジロジロ見られるので、酒を取りに行くときも2人を連れていく。

「あっ、ヤキソバの人」

人をハムの人みたいにいうな。

「久しぶり。今日はマーイの日?」

「違うわよ。その娘達、踊り子で働かせるの?」

「違うよ。甘めの酒2つと、ラム酒のソーダ割をちょうだい」

「そうなんだ。どっちも人気出そうだけどねぇ」

確かにそうかもしれん。ただバネッサが踊り子になったら客を殴る未来しか見えない。

酒を持って席に戻ると音楽が流れ始めてショータイム。

「きゃーっ、可愛いっ!」

カタリーナ大喜び。バネッサはブスっとしている。

「面白くないか?」

「お前、前にも来たことがあるんだよな? 1人でこっそりと女を見に来てたのかよ」

「違うわ。飲みにきたらこんな店だっただけだ」

「ふーん、ならうちが宿に戻ったら水着で踊ってやろうか?」

「おっ、いいねぇ」

げしっ。

マーギンを蹴るバネッサ。

「やっぱり裸みてぇな女を見に来てたんじゃねーかよ」

「だから違うって言ってるだろうが」

そんな言い合いをしている間もカタリーナは可愛いっ、とか、あの人ムッキムキ! とか喜んで見ているのであった。