軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

新たな儀式とアージョンブリケ

「ガインのやつ最後まで俺を子供扱いしやがって」

マーギンはそう言いつつもガインが残してくれた手紙とヴィコーレを大切にアイテムボックスに収納した。

「ミスティ、頼むから俺がそばにいない時に石化を解くなよ」

そう言い残して神殿を出た。

階段を下りてミャウタンと話した部屋に出ると、下りてきたはずの階段が見えなくなる。素晴らしい隠ぺい魔法だな。

そのまま屋敷の中を通って外に出るとポニーがポツンと座っていた。

「マーギンっ!」

ダッと走って来てマーギンに抱きつき顔を見上げるポニー。

「ずっと帰って来ないから心配した」

「心配かけて悪かったな」

「3日も出てこないんだもん」

そんなに俺は神殿にいたのか。

「ミャウタンは?」

「皆と話してる」

「そうか。なら、俺達も皆のところに行こうか」

「大丈夫? 目が赤いよ」

「寝てなかったからな。チューマンの事を聞いてからちょっと寝るわ」

マーギン達が向かったのは儀式会場。どうやらまたあの儀式をやるとのこと。あれからもう1ヶ月過ぎたしな。

マーギンを見付けたミャウタンが頭を下げる。

「もうよろしいのですか?」

「あぁ。チューマンの事も気になるからな。今から儀式か?」

「はい。交流を望むものと、望まないものとの軋轢が高まっておりますので」

ミャウ族にとってマーギンという異物が入り込んだ事で、長年変化のなかったこの地が変わっていく。それが良い事なのか悪い事なのかは不明だが、転機だということには変わりがない。

「では、マーギン様もご参加をお願い致します」

寝ようと思っていたけど、儀式に参加をせざる得なくなる。

「マナの心は親心っ!」

この前と同じ下りだ。しかし、今回は参加者がよさこいの鳴子みたいなものを持っている。この前と違うのか? マーギンがそう思ってキョロキョロしていると、マーナナナナッと違うものが始まる。

「マナっ」

チャッチャチャ。

ミャウタンがマナっと歌うと、皆が楽器をチャッチャチャと鳴らす。

「マナっ」

チャッチャチャ。

「マナっ」

チャッチャチャ。

「マナを押しそううぅぉ、ゆーわくのマナァ」

なんだこれ?

「キッスキスキスキスほぉーりんらぁぁあ」

俺がミスティ像にチューしてたのこっそり見てたんじゃないだろうな?

こうしてまた変な儀式に翻弄されたマーギンは疲れ果てて宴会をパスすることに。

「悪い、宴会はパスするわ」

「はい。ごゆるりとお休み下さいませ」

マーギンはミャウタンにそう伝えてテントに向かう。

「ポニー、付いてこなくていいぞ。宴会があるだろ?」

「ううん、私も眠いから一緒に寝る」

ポニーの顔をよく見ると目が赤い。俺のことを心配して、よく眠れてなかったのかもしれない。悪いことをしたな。今いない人間のことより、今いる人間の方を優先しないとダメだな。と、自分にいいきかせる。

「なんか食ってから寝るけど、なんでもいいか?」

「うん♪」

マーギンはテントの中でインスタントラーメンを出し、卵を落として3分待つ。

ずぞーずぞー。

「美味しいっ。こんなにすぐにできたのに」

「すごく美味しいだろ?」

「うん。すぐ美味しい、すごく美味しい」

やめろ。訴えられるぞ。

インスタントラーメンを食べた後にすぐに寝ることに。

「ポニー、お前、タヌキから牛になるかもしれんな」

「牛に? どうして?」

「どうしてかは知らん」

「変なの……」

と、いきなり寝てしまったポニーを隣に寝かせてマーギンも寝転がる。

ざわざわざわざわ。

何やらテントの前が騒がしい。

「くれよぉぉ、くれよぉぉ、あのやべぇタレをくれよぉぉ」

テントを開けると焼肉のタレとうなぎのタレ中毒になったミャウ族が来ていたのだった。

◆◆◆

時は少し遡った北西辺境伯領。大隊長とオルターネンが宿に戻り、食堂の店員がマーギンの事を知っていたと聞かされる。

「あいつはここで女遊びをしてたのか?」

「一緒に買い物をしてご飯を食べに行ったらしい」

ロッカがオルターネンに答える。

「メニューと酒はなんでもいいか?」

大隊長がマーギンの女遊びなどどうでも良いといった感じでメニューを見て皆に聞いた。

「奢りですか?」

と、ラリーが大隊長に目を輝かせて聞く。

「これぐらい構わん。好きなのを頼むか、お任せにするか?」

「なら、お勧めのお任せで頼みますよ」

ラリーがブリケを呼び、お任せでワイン3本とお勧め料理を人数分頼んだ。当然ブリケは1番高いワインとラム肉を使ったメニューをチョイス。

「おっ、この肉柔らかくて旨ぇ」

「うむ、ラムローストか。王都で食うより旨いかもしれん」

「マーギンさんはラム肉使いませんよね? どうしてでしょう」

大隊長は骨付き肉ラムローストを一口でいき、アイリスは骨を持って齧っている。

「マーギンはラム肉苦手だって言ってたわよ。はい、これはキッシュ。マーギンが美味しいって言ってたやつ。季節が違うから中の具材は少し違うけど」

ブリケがそう言ってテーブルにキッシュをおいた。

「あっ、私もこれ好きです。今度マーギンさんに作ってもらおうっと」

アイリスはキッシュを食べてそう言う。

「マーギンがあなたのご飯を作るの?」

「はい。私はアイリスといいます。マーギンさんの妻です」

久々に出たアイリスの妻発言。しかしここにマーギンがいないので誰も突っ込まない。

「あなた成人してるの?」

「とっくにしてますよ」

「へぇ、そうだったんだ。だからすぐに帰っちゃったのか」

「すぐに帰ったんですか?」

「うん。2泊だけで帰っちゃった」

アイリス達はマーギンが何をしていたか知らない。2ヶ月ぐらい王都に戻って来なかったのにと不思議に思ったのだった。

飲み食いが終わった後のお会計。

「48万7千Gになります」

ちょっと申し訳なさそうに値段を伝えるブリケ。値段を聞いたラリー達が目をパチクリさせている。

「釣りは取っといてくれ」

大隊長はそう言って大金貨5枚でお支払い。

「いっ、いいんですか?」

「構わん。もう少し飲みたいがどこか良い店はあるか?」

「私がよく行く焼き鳥屋は美味しいですよ」

「焼き鳥か。そういえばしばらく食べてないな。よし、そこにしよう。誰か一緒に来るか?」

「はいっ」×全員

「なら、私が案内しますね」

「仕事はいいのか?」

「早退します」

と、テヘペロするブリケ。チップを含めて今日の稼ぎは十分過ぎるほどあるのだ。店のマスターもこれだけ売上があれば早退もすんなり許可してくれるだろう。

ブリケの案内で焼き鳥屋に到着すると先客がいた。

「アージョン、もう来てたの?」

「早番だったからな。お前こそ早いじゃないか。で、誰だその人達?」

「前に話したハンターの知り合いだって」

「あのマーギンってやつか?」

「そう。えーっと、テーブルとカウンターどっちにします? と言っても全員一緒は無理かな」

デカい大隊長を見てブリケがどうしようと思う。

「ラリー達はこっちで俺と一緒にテーブルだ。他はカウンターに行け」

テーブルとカウンターに別れるように大隊長が指示をした。大隊長はここでラリー達に今日の調査報告を聞くようだ。

オルターネン達はブリケとアージョンとカウンターで飲むことに。

「ねぇ、皆さんはハンターなの?」

ブリケがロッカに何者かを聞く。

「元々はそうだ。だが今は特務隊という魔物討伐専門の隊員になった」

「魔物討伐専門部隊?」

「そうだ。ハンターは依頼内容を見て仕事を受けるかどうかを決めるが、我々は民の為に動く。これから魔物が強くなっていくらしいからハンターだけでは守りきれなくなるだろうと発足されたのだ。そちらの方が隊長だ」

ロッカにオルターネンを紹介され、ペコリと頭を下げたあと、

「あんたも魔物討伐してんの?」

と、ブリケはアイリスを見る。

「はい。私はサポートが主な任務ですけど」

「アイリスがサポート担当なのは確かだが、敵味方に容赦ないぞ」

と、オルターネンが笑う。

「どういうこと? サポートって荷物持ったり、料理作ったりとかじゃないの?」

「隊長、容赦ないなんて酷いです。マーギンさんがいない時には何もしてませんよ」

「マーギンがいたら騎士隊を焼いたりするだろうが」

「えっ?」

「そいつは凄腕の火魔法使いだ。ボアや魔狼ぐらいなら何匹でも燃やして倒せる。ノクスもここに来るのにずいぶんとそれに助けられたよな?」

「ちい兄うるさい」

頼まずとも出てくるブリケセットをもぐもぐしながらノイエクスは拗ねる。

「騎士ってどういうことだ?」

アージョン参戦。

「ロッカさん達がハンターだった時に、騎士隊の護衛訓練相手に指名されたんです。私達が賊役になって、護衛対象を襲う内容だったんですけど、マーギンさんがなんとかするから思いっきりやれって言ったんです」

「で、第一隊長を丸焦げにしたわけだ」

と、オルターネンが笑う。

「だ、第一隊長って……」

「王族警護の隊だな。ロッカも再起不能にするぐらいボロボロにやったんだろ?」

「うむ、手応えがなかったからな」

「オルターネン、外部に騎士隊の恥を晒すな」

テーブル席から大隊長が大声で注意する。

「大隊長に怒られたからこの話は終わりだ。大将、ウィスキーをもらえるか」

「割りますか?」

「氷だけ入れてくれ。ロッカも飲むか?」

「同じものを頂こう」

「あ、あの、あの大きい人はどんな人なんですか?」

アージョンはなんとなく、この人達は偉いさんじゃなかろうかと気付き始める。

「あの方は、騎士隊の大隊長だ」

「えっ? ということはお貴族様なんじゃ……」

「隊長もノイエクスも貴族だ。二人は兄弟でもある。私とアイリスはハンター出身。大隊長とテーブルを共にしているのは王都軍出身だ」

ロッカが説明をしてやる。

「そんなバラバラの身分の人達が一緒に任務をしてるんですか?」

オルターネンに質問をするアージョン。

「お前、アージョンといったか? 魔物相手に身分が通用すると思うか?」

「思いませんけど、そんな偉いさん達と一緒に飲みにきたりするものなのですか?」

「今回はこの領地近辺の魔物調査をするために臨時パーティを組んだからな。まぁ、そうじゃなくても特務隊は身分の垣根がない。で、お前は何をやってるんだ? そこそこ鍛えているように見えるが」

「自分は領都軍の軍人です」

「そうか、お前は軍人か。これからは人相手の戦いより魔物相手の戦いの方が重要になるぞ。領軍は魔物討伐もしているらしいが、これまでと違うと思っておけ。今までの訓練じゃ通用しなくなるぞ」

「どういうことですか?」

「言葉通りだ。我々もマーギンに対魔物戦の特別な訓練をしてもらって実感した。今までの自分達ならすぐに死んでいただろうなと。なぁ、ノクス」

「死にかけて悪かったな」

「ま、ホープも訓練を受ける前は似たようなもんだったがな」

「えっ? ホープが」

「そうだ。ボアに小突き回されては死にかけ、バネッサにあっさり負け、虫の魔物に集られとかそんなんだ。それでもあいつは折れずに耐えた。それが今のホープだ。甘っちょろいお前が勝てるわけがないだろ」

オルターネンはホープとサリドンが何をやってきてどう成長したかをノイエクスに話してやった。それを聞いていたアージョン。

「隊長、自分も特務隊に志願したら強くなれますか」

「入隊させるかどうかはテスト次第だな。その後に特殊訓練に耐えて、実戦で使い物になりそうなら入れてやる」

「自分は強い魔物を倒したいんです」

「何の魔物だ?」

「鳥人です」

「なんだそれは?」

アージョンは砦の出来事をオルターネンに説明するのであった。