軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ヒノモトニシンジツネムル

マーナナナナッでひとしきり踊った後は全員が横を向いて、隣の人の背中を親心で押していくようだ。マーギンは見よう見まねでポニーの肩や背中を親指でぐっぐっと押してみる。

「きゃはははっ。くすぐったいよ」

マーギンの親心をくすぐったがるポニー。なんかもっとやりたくなる。

「痛ででででっ。ロブスン、爪っ、爪っ」

イタズラ心を出しかけたマーギンの背中にロブスンの爪が食い込む。

「す、すまん。これならいいか?」

今度は肉球のようなものがある手の平で押してくれる。うむ、なかなかよろしい。

「なぁ、ロブスン。マナってなんだ?」

「マナとは身体の中をめぐる力のようなものらしい。こうすることで、上手く流れるようになるのだそうだ」

血流とかリンパ液みたいなものだろうか? それとも魔力のことかな? アニメとかでマナという言葉を聞いた事があったけど何かはよく知らん。

何度かくるっと回っては、押す相手がポニーになったりロブスンになったりした後に儀式が終了した。

「皆のもの。これで儀式を終了する」

わぁー、パチパチパチ。

皆で拍手して儀式が終わった後に宴会の準備が始まる。

「マーギン、儀式の日はこのままここで皆で食べて飲むんだよ」

「そうなのか。俺達は何もしなくていいのか?」

「当番の人がやるから大丈夫」

ガラガラガラガラと移動式屋台みたいなものがいくつも来て、お祭り会場に変わっていく。テーブルや椅子がないので、それぞれが適当に座って、地べたで食べるようだ。

「何か食べたいものある? 取ってきてあげる」

気が利くポニー。星の導き達とはえらい違いだ。

「何があるか分からないから適当でいいぞ」

「分かったー!」

ロブスンもポニーに付いていってやるようで、マーギンはその場で1人になった。

「よぉっ、お前が外から来たやつか」

徳利のようなものを持って数人の男達がマーギンのところにきた。

「そうだ。歓迎はされてないようだけどな」

「そういうやつもいるけど気にしないでくれ。お前は飲める口か?」

「それなりにはな」

「じゃ、飲もうか。外の話を聞かせてくれよ」

酒を飲もうと言ってきたやつらからは敵意も何も感じない。本当に外の話を聞きたいとか見たことがない外の人間に興味を持っているだけのようだ。

マーギンがいいぞと返事をすると目の前にどかっと座り、小さめのコップに酒を注いでくれる。

「じゃ、ラー様と使徒様にチョォー!」

「チョォー?」

「酒を飲み干すという意味だ。ほらお前も言え」

「チョォー」

多分乾杯と同じ意味なのだろう。マーギンがチョォーと言った事で皆が酒を飲み干した。強めのクセのある酒だが嫌いではない。

「おっ、こいつを一気に飲めるとはイケる口だな。ほれ、飲め飲め」

くいっと飲むと入れ替わり立ち替わりして、注いでくれた人とチョォーと言ってはお互いに飲み干していく。こんな飲み方したら結構酔いそうだな。ガインに飲まされている時みたいだ。

「持ってきたよーっ! あ、他の人も来てたんだね」

「ポニー、俺達は自分で取ってくるから気にしなくていいぞ。ロブスンもほら飲め飲め」

ロブスンも同じく、チョォーっと飲まされていく。駆け付け3杯ってな感じだ。

「マーギン、これはこうやって好きなものをのせて巻いて食べるの。さっぱりが好きなら、これを絞ってもいいよ」

ポニーが手本を見せるように、薄くて小さめのピザ生地みたいなものに好きな食材をのせて巻いて食べる。トルティーヤかなこれ?

マーギンは適当にカラフルな野菜と肉をのせて巻いてかじる。

「おっ、旨い。この酒とも合うわ」

「だろ? 手軽に食える祭り料理だ。外の世界だとこんな時には何を食うんだ?」

「そうだな。俺の仲間と飯食う時は焼肉が多いな」

「串焼きか?」

「串焼きもあるけど、人数が多いと串に刺すのが面倒だから、各自が適当に食いたいものを網にのせて焼いて食うって感じだな」

「マーギンが焼いてくれる肉は旨いぞ」

と、ロブスンが肉だけ巻いたものを一口で食べて説明する。

「へぇ、外の肉か。なんの肉だ?」

「牛、豚、鶏がメインだな。海の近くだと海鮮になる。魔物肉だとマギュウの人気が高いぞ」

「おー、海鮮か。ここは海から遠いから、魚は川魚ばかりだな」

「川魚でも旨いやつはいるけど、海魚の方が種類も豊富で旨いやつが多いな。カニとかも旨いぞ」

「カニはつまみになるけど、飯にはならんだろ?」

「お前らが言ってるのはサワガニかなんかだろ?」

と、マーギンは指でサイズを聞く。

「そうだ。それ以上大きいのはおらんぞ」

「海のカニはもっとデカいんだよ。食ってみるか?」

「持ってるのか?」

「あぁ。マジックバッグに入れてあるから焼いてやるよ」

マーギンはアイテムボックスからバーベキューコンロと炭を出してカニとマギュウを焼いてやる。

「こりゃ旨ぇっ。こんなもん初めて食ったぜ。やっぱり外の世界は違ぇなぁ」

酒を注いでくれたやつらが大喜びで騒ぐものだから、次々と人が集まってきた。マーギンはもう勝手に焼いて食ってくれと、食材と追加のコンロを出すことに。

「このやたら旨い甘じょっぱい味付けはなんだ?」

「それは焼肉のタレだ。そのうちナムの村でも作れるようにしているところだな。今は王国の王都にしかないぞ」

「王国の人間はこんな旨いものを食ってんのか」

「最近作れるようになったばかりだからまだ広まってないけどな」

「王国にはこんなデカいカニがいるのか?」

「寒くて深い海の底にいるやつだ。王都で食うと高いけどな」

ここに訪れた時とは打って変わってトゲのない態度のミャウ族達。旨いものは正義ってところか。

「こんなもん食ってたら、こんな魚とか食えねぇよな」

と、1人の男が皿にのった魚を嫌々食べている。ニョロロンと長い魚だ。

「それ、うなぎじゃね?」

「うなぎ? こいつはプララという魚だぞ」

「生のやつある?」

「もらってきてやるよ」

と、しばらく待つと、ニョロロンニョロロンと手の中から逃げようとする魚を持ってきた。

「やっぱ、うなぎじゃん。こいつはご馳走だぞ」

「そうか? 骨だらけだぞ」

丸焼きしただけではうなぎの本領が発揮できないからな。

「俺が調理してやるよ。まだあるなら何匹か持ってきて」

その間に醤油と砂糖と酒でタレを作り、持ってきてくれたうなぎを解体魔法で捌いて、中骨を焼いてからタレに漬け込んで煮詰める。

「串に刺すのは難しいから、このまま焼くけど、本当は綺麗に串に刺してやるのが正解だ」

開いたうなぎを焼いて、タレを塗って焼いてタレを塗って焼いてを繰り返して試食。

「うん、それなりにらしいのができた。食いたいやつは食ってくれ」

うなぎの焼ける匂いは暴力だ。皆が我も我もと奪い合いになり、マーギンはうなぎ屋と化す。

そんな騒ぎの中、

「何を騒いでおる?」

「ミャ、ミャウタン様……」

ミャウタン登場。

「お前も食うか?」

皆が平伏するような感じの中、普通にお前呼ばわりするマーギン。

「プララか。珍しいタレを付けると旨そうな匂いがするものじゃな」

「これはこうするのが1番旨いと思う。それとこれかな」

だし巻きフライパンを出して、う巻きを作るマーギン。

「ほら、ポニー。食ってみろ」

試食はポニー。

「おいひいっ」

「だろ? ほらどんどん焼いてやるから食え。ミャウタンも食いたいなら勝手に食え。お前がいると他のやつらが恐縮して食えんだろうが」

ミャウタンが来たことにより、他のミャウ族達が食べて騒ぐのをやめてしまったのだ。迷惑だと言わんばかりにさっさと食ってあっちに行けとの態度を取るマーギン。

「では頂こう。もぐ……もぐ……ガツガツ」

一口二口食べた後にがっつくミャウタン。

「旨いのじゃーーっ!」

フガフガと一心不乱に食うミャウタン。こいつ、本当はミスティなんじゃなかろうな? 初めて食ったものが旨かった時の様子とそっくりだ。

マーギンは本当はミスティなんじゃ? と思ってミャウタンをペタペタと触ってみる。

「いきなり何をするかーーーっ。この獣めっ」

「違うな。結構あるわ」

そう言ったマーギンをべしこんっと殴るミャウタン。

「貴様の不埒な振る舞い許さんからなっ!」

口の周りをうなぎのタレでベタベタにしたミャウタンが怒ってあっちに行ったあと、全員からゴミを見るような目で見られるのであった。

その後、しばらくこの集落に滞在することになり、寝泊まりはミャウ族の集落内でテントを張る事になる。ミャウタンの屋敷に【獣立ち入り禁止】と書かれたからだ。

しかし、集落内にテントを張った事により

ミャウ族達との交流が増えた。ロブスンにミャウ族の戦士達を紹介してもらい、チューマンの対策方法を説明していく。

「電撃の流れる矢だと?」

「そうだ。チューマンに魔法は効かなかったが電撃は効く。矢が当たったら約2秒間動きが止まる。その隙を狙って足の付け根を斬れば倒せる」

「信じられん」

「本当だ。マーギンは俺達の前でそれをやって見せた。攻撃パターンも見切ってくれてある。次からはそれが確かかどうか試しながらの戦いになる」

ロブスンはマーギンがチューマンを倒した時の事を皆に説明してくれる。

「ちなみにお前らがどんな剣を使ってるか見せてくれ」

マーギンはミャウ族達が使っている剣を確認する。

「ダメだな。この剣だと関節を斬るのも難しい。あとで鍛冶師のところに連れていってくれ。目指すべき剣がどういうものか教える」

「この剣でもラプトゥルは斬れたぞ」

「何回斬れた?」

「一撃はなんとか……」

「だろ? ラプトゥルごときを斬って1回で斬れ味が落ちるような剣でチューマンと戦うのは無謀だ。あいつの攻撃を下手に受けたら剣ごと斬られるぞ。剣の扱いが上手いやつを選んでくれ。俺の手持ちの剣をやる」

そう言うとざわざわしながらも、ミャウ族とワー族の中で剣の扱いに長けたものが集まった。マーギンはそれぞれに自慢の素振りをさせて人選をする。チューマン討伐隊の大半がワー族から選ばれた。

マーギンはロッカの親父さんが打った剣を素振りしながら剣のバランス特性別に分けて、相性が良さそうなやつに渡していく。

「俺が剣を渡したやつがチューマン討伐隊な」

「何を基準に選んだ?」

ロブスンが聞く。

「スピードと剣筋だ。素早く懐に入り込んでスパッと剣を振れないと危ない。それは前に説明した通りだ。武器を使わないロブスン達は弓使いの盾役になってくれ。他の魔物に不意打ちを食らう可能性があるからな」

「チューマン1匹にこれだけの人数で対応するのか?」

「ロブスン、これからチューマンが1匹で来ると思うな。餌場から仲間が帰ってこなかったら、次は複数で来る可能性が高い。仕留めきれなかったら撤退しながらの戦いになるからな。この集落を防衛するにはまだ人数が少ないくらいだ。皆がチューマンとの戦いに慣れたら、次は巣を落としに行くことになる。そこからは生存権を賭けた戦いになるんだぞ」

皆にそう宣言すると、ゴクッと唾を飲むのであった。

マーギンはその後、鍛冶師に目指すべき剣を教え、電撃の出る矢をせっせと作っていく。矢を回収できればいいが、乱戦になれば予備が大量に必要になるのだ。他のワー族達には電撃矢用の魔結晶を集めさせておくことに。昼間は戦士達にチューマンとの戦闘シミュレーションを行い、夜には飯を食って宴会をする日々が1ヶ月ほど続いた。

「ちっ、よそ者が偉そうにしやがって」

ミャウ族全員がマーギンと打ち解けたわけではない。排他的思想を根強く持つものと、外の世界を受け入れようとするものが混在する。マーギンを受け入れたもの達は目標が明確になり、旨いものを食って楽しそうに過ごすようになるなか、排他的思想の持ち主達はフラストレーションが溜まっていった。

そんな折、

「マーギン、ミャウタン様が屋敷に来て欲しいって」

「俺は立ち入り禁止になったんだろ?」

「でも話があるんだって」

と、ポニーがミャウタンからの伝言を伝えにきた。ポニーは毎晩マーギンのテントで一緒に寝ていて、すっかり親子のようになっている。

ミャウタンの屋敷にいるミャウ族は排他的思考のものばかり。マーギンが来ると相変わらず敵意をぶつけてくるが無視だ。

「呼んだか?」

「マーギン、お前がここに来て1ヶ月程が過ぎた。ここを救うべき地かどうか判断が付いたか?」

「まぁ、気の合うやつも増えたし、気に食わないやつもいる。来たときよりかは居心地がマシになったのは確かだな」

「そうか。では、私もお前に話しておくべきことがある。皆下がれ」

「ミャ、ミャウタン様。このような獣のようなやつと2人きりにさせるわけには参りません」

「下がれと言ったのじゃっ!」

「は、はい……」

ミャウタンが人払いをする。

「付いて参れ」

「どこに行くんだ?」

マーギンの質問には答えず、屋敷の中に入っていくミャウタン。マーギンもそれに続いた。後から誰かが付いてくる気配はない。

「マーギン。いや、ムーの使徒様。この度は我々の無礼な振る舞い、お詫びを申し上げます」

今までの態度とは違い、敬語で話すミャウタン。

「俺は神の使徒なんかじゃねーぞ」

「隠さなくても良いのです。私は初めて貴方様を見た時から確信しておりました。我らに伝わる伝承の通りなのですから」

「伝承?」

「そのもの黒き髪をまといてヒノモトの地に降り立つべし。失われしものとの絆を結びついに人々を安寧の地へ導かん」

なんか聞いた事のあるような伝承だな。

「人違いというか、使徒違いじゃねーか? 俺の生まれた国は大半の人が黒髪だしな」

「いえ、貴方様は私を初めて見た時に落胆されたご様子」

「あ、いや。ごめん。お前は悪くないんだよ」

勝手に期待していたのはこっちだからな。

「私を触られたのは胸を確認されたのでは?」

「ご、ごめん。スケベ心で触ったわけじゃないんだよ」

「分かっております」

「えっ?」

「なぜ確認されたのか分かっていると申し上げたのです」

「どういう事?」

「私をラー様の使徒様かどうか確認をされたのですよね?」

「いや、その……」

詳しくは屋敷の奥にある部屋で説明すると言われた。

「使徒様、ミャウ族がなぜ他の民と交流を持たないかご存知でしょうか?」

「創造神ラーを祀るものは他の神を祀るもの達を下に見ていると聞いたけどな。それが理由じゃないのか?」

「外部にそう思われても仕方がありません。実際そう振る舞ってきましたので」

マーギンはミスティ似の顔をしたミャウタンに敬語を使われる事に違和感が半端ない。

「敬語なんて使わなくていいぞ。普通にしゃべってくれ」

「なら遠慮なくそうさせてもらうのじゃ」

ビシッ。

「あうっ」

なんかいきなりミスティがドヤ顔をしたかのように見えてデコピンを食らわすマーギン。

「あ、すまん。ちょっとムカついたからつい……」

「調子に乗ってしまい申し訳ありません」

今のは俺が悪かったけど、気にするなと言っておこう。

「ごほんっ、大昔はミャウ族も他の民と普通に交流をしていたのです」

咳払いをしてから話題をもとに戻すミャウタン。

「いつから交流を絶ったんだ?」

「それはこの後に説明致します。他のものと交流を絶ったのはそれが原因でございます」

「後で?」

「はい。ご説明をする前にミャウ族はムーの使徒様にお詫びを申し上げなければならないのです」

「何の詫びだ?」

「使徒様をお守りできなかったことです……」

そう言ったミャウタンは涙を流して下を向いた。

「使徒を守れなかった? それはどういう意味だ?」

「こちらへ……」

ミャウタンが部屋の壁に何かを詠唱すると、上へと続く階段が現れた。これは隠ぺい魔法か? 初めて見たな。

隠ぺい魔法に驚きつつもミャウタンに連れられて階段を上ると、まばゆいばかりの黄金でできた神殿があった。

「すっげぇ……」

「ここはラー様の神殿でございます。どうぞ中へ」

暗い顔をしたミャウタンが中へと案内する。神殿に入ったマーギンは絶句する。

「な、なんだよこれ……」

「申し訳ございませんっ」

ミャウタンはその場で土下座をした。

「お、お前、本当は生きてるんじゃなかったのかよ……?」

マーギンは目にしたもののそばへふらふらと歩いていく。

「お前、本当は生きてたんじゃなかったのかよーーーーっ!!!」

マーギンはそう叫んで膝から崩れ落ちた。

まばゆい光に包まれた神殿内でマーギンが目にしたものは砕けたミスティの石像であった。

次回「モウヒトツノシンジツ」