軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ツェーマン

「マーギン凄い」

ポニーがヒーローを見るような目でマーギンを見る。

「そう、俺は強いんだ。凄いだろ」

「うん!」

マーギンはうわっはっはっは笑って両手を腰に当てて胸を反らした。

「ロブスン、こいつの調査をやるから皆で確認しにきてくれ」

初めて解体する魔物には解体魔法も使えないので、手作業で解体することになる。

「なるほどな」

マーギンは黒い魔物の手を動かして可動域を確認する。

「こいつは4本の足を腕のように使うから厄介ではあるが、関節の可動域は広くない」

「つまり?」

「攻撃自体は単調だってことだ。俺達みたいに腕を柔軟に動かせない代わりに腕を4本使うってところだな。攻撃のクセもあるから慣れれば討伐可能だ」

厄介だといっても腕4本が不規則に動く訳ではない。左右の攻撃は上腕、もしくは下腕2本でしてくる。上腕右、下腕左のような攻撃はない。上右、上左の組み合わせ。または下左、下右の組み合わせ。他には上腕両方で挟む、下腕両方で挟む、上下両方の腕で挟む。牙は挟み攻撃の時しかしてこなかった事をロブスン達に説明をする。

「攻撃パターンが決まってるのか」

「まだ1匹だけだから、次からはそれを確認しながらの対峙になるな。それと頭はあまり良くなさそうだ。外殻に自信があるからだろうけど、比較的柔らかい関節部分をガードすることもなかった」

「攻撃パターンを読んで関節を狙うのが良いのだな?」

「それはそうなんだけど、お前らの牙攻撃は難しいな。関節を食い千切れたとしても、こいつが倒れるまでに離れるのは無理だろ? 離れる前に攻撃を食らう可能性が高い」

「と、なると剣を使えるものが主体になるか」

「そうだな。あとは弓使いとかいるか?」

「ミャウ族にはいる」

「じゃあ、剣を使えるやつと弓使いのセットで対応することになる」

「矢は効かぬだろ?」

「特製の矢を作ってやるよ」

「特製?」

「あぁ。こいつの外殻は電撃を通した。だから電撃の出る矢を作ってやる。それを当てて動きが止まったところを剣で足の関節を斬り離れる。倒れたら後ろに回って止めを刺す。これが今のところ考えられる1番安全な討伐方法だ。それにこいつの外殻は防具に使えるかもしれん」

マーギンはロブスンに倒し方を説明した後に解体を始める。

まず関節に剣を入れて手足を分断していく。そして関節のところから剣を入れてみる。

ザクっ。

「えっ?」

「どうした?」

「いや、硬くて斬れんかと思ったらあっけなく斬れた。なんだこりゃ?」

試しにガキンガキンと打ち合った爪を剣で切ってみる。

ザクッ。スパンっ。

「最悪だ」

「ずいぶんと簡単に斬れたな?」

「あぁ。防具やこの爪が武器に使えるかと思ったが、呆気なく斬れた。こいつの外殻は生きている間だけ強固なのかもしれない」

身体の内部を調べるためにカニの肩肉を食べる時のように解体してみる。体液なのか血なのかは分からないけど、黄色い液体は粘質だ。その粘液が付いた剣から糸が伸びる。

ガッ。

気持ち悪っ。と思いながら胸の外殻を取り外してみると、外殻の裏側に筋肉のようなものがへばりついており、中身は筋とスライムのような粘液だった。

「こんな中身をした魔物は見たことがない。なんだこいつは?」

そして、ドロドロと粘液を剣でかき分けて魔核を探すが見付からない。次いで腹部分、頭と解体していくが魔核と呼ばれる魔結晶は見当たらなかった。

「ロブスン、こいつは魔物じゃない」

「なんだと?」

「魔核が見当たらない。魔物は全て魔核を持っている。スライムでさえもな」

「ということは?」

「こいつは生物だ」

「こんな生き物がいたのか……」

マーギンは黙る。こいつが魔物でないとすると、魔王が生み出したものではない。つまり人型の虫? この星の人間はロブスン達のように動物から進化したタイプと、猿のような類人猿というものから進化した人族がいる。こいつは虫から進化した原始的な人なのか? だとすると進化過程の虫がいてもおかしくないのだが、いきなりこんな人型になるものだろうか?

マーギンにはそこまでの知識はない。中学2年の途中でこの世界にやってきたからだ。

「マーギンどうした?」

考え事をしてフリーズするマーギン。

「いや、なんでもない。こいつは虫の進化したやつなのかもしれないな」

「アリか?」

「いや、アリの特徴がない。一番近いのはハチ系だと思う。まぁ、アリとハチは似てるんだけどな」

アリにはコブみたいな腹柄節というものがあるが、こいつにはそれがない。退化した可能性もあるが、ハチ系だと推測するのが妥当だろう。牙を鳴らして威嚇してくるのも肉食系のハチに見られる行為だ。

「アリ系にしろ、ハチ系にしろ、ヤバさは変わらん。獲物を肉団子にして持ち去るなら、巣ができている可能性が高い。ミャウ族と相談してどうするか方針を決めた方がいいな。巣を見付けて殲滅しないと、あっという間に増えるぞこいつ」

マーギンがそう言うとロブスン達はゴクッとツバを飲んだのだった。

そして死骸を燃やしてみるとよく燃えた。粘液も燃えている。炎耐性も生きている間だけのようだ。仕組みがよく分からんな。

ミャウ族の元に向かう前に黒い魔物もとい、虫人。の呼び方を考える。

「こいつはチューマンという名前で呼ぶことにする」

「チューマン? どういう意味だ」

「俺の生まれた国では虫の事をチュウとも呼ぶ。人間の事はヒューマンとも言うんだ。だからチューマン。人型の虫とかそんな意味だ」

我ながら素晴らしいネーミングだとウンウンと頷くマーギン。

「ツェーマンか」

ロブスン、それは業界用語の1万円のことだ。

「チューマン。発音が違うぞ」

ミャウ族の集落に向かう途中でロブスン達はチューマンと何度も発音を練習するのだった。会話は普通に話せてるのに、狼系の口ではチューの発音が難しいのだろうか?

歩いて集落に向かう途中、ポニーはマーギンと手を繋ぐ。そして時々上を向いてマーギンの顔を見てニコッと微笑む。飼い主大好きな犬が散歩の時に飼い主の顔を見るような仕草でとても愛らしい。後で飴ちゃんをあげよう。

ポニーをペット枠で見るマーギンもなかなかに酷い。

獣道やヤブの中を通りミャウ族の集落へ向かう。場所を知らないとたどり着くのが難しいだろう。深い草の間を通る時にはポニーに肩車をしたりと甘やかせるマーギン。そしてこっくりこっくりとし始めたので、おんぶして進んだのであった。

「ここだ」

ロブスンが案内してくれた集落は木の柵で囲われた集落。門番のようなものに何やら説明をした後にしばらく待たされた。

「なんだとっ」

そして何やら揉めだした。ロブスンが怒鳴っているのだ。

「王国の人間を入れる訳にはいかん」

「マーギンは王国の人間じゃない。それよりそんな事を言っている場合ではないっ。事は一刻を争うのだ」

「応援を頼んだのは確かだが、シャーラームーの民だけのはずだっただろうが」

「うるさいっ。さっさと通せ」

「ダメなものはダメだっ」

「貴様っ、噛み殺すぞ」

牙を剥いて威嚇するロブスン。

「ヒッ」

「やめとけロブスン。脅しでもそんな事を言うな」

話が聞こえてきたマーギンが止めに入る。

「マーギン、しかしだな」

「とりあえず自己紹介をしてみるわ。おい門番。俺はマーギン。シュベタイン王国の王都で魔法書店を営むものだ。王都に住んではいるがシュベタイン王国のものではない」

「シャーラームーの民と肌の色が違うではないか」

「肌の色でいうと俺は王国の人間とも違うがな。髪の毛の色とかも違うだろ? まぁ、それはどうでもいいけど、わざわざ助っ人に来た者に対してその態度は良くないぞ」

「うるさいっ。無理を通そうとするならこちらにも考えがあるぞ」

と、粗末な槍をこちらに向けた。

「ほぅ、俺を敵扱いするのか?」

マーギンが門番に向けて少し威圧を放つ。

「やめろっ。お前はミャウ族を滅ぼしたいのかっ」

ロブスンよ、人を魔王みたいな扱いをしないでくれ。

「何をしているか貴様らーーっ!」

その時にマーギンの背中からミャウタンに変化したポニーが叫んだ。

「ミャ、ミャウタン様」

「この者はミャウ族を救いに来てくれたものじゃ。その者に向かって武器を向けるとは何事じゃーーっ!!」

「もっ、申し訳ございません」

「もう良い。さっさと通すのじゃ」

「は、はい」

ポニーはヒョイっとマーギンの背中から降りて、マーギンの手を引いて中に入った。

「マーギン、付いてくるのじゃ」

マーギンの顔を見上げて微笑む変化ポニー。なんかミスティにドヤ顔をされたようでイラッとくる。

ベシッ

「あ痛っ。な、何をするのじゃ!」

ポニーの頭を叩いたマーギン。理由も分からず叩かれて涙目になる変化ポニー。

「あっ、すまん。なんかムカついたんだ」

ミャウタンが見知らぬ男と手をつないで入ってきただけでも目立つのに、いきなりミャウタンの頭を叩いたマーギンにミャウ族達は殺気立つのであった。