軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

俺は鳥

翌日、チェックアウトをして宿の食堂に朝飯を食べに行くマーギン。

「どうして昨日食べに来てくれなかったのよ?」

朝からブリケに文句を言われる。

「朝にブリケがいなかったから休みだと思ったんだよ」

「朝は寝坊したのっ。で、罰として夜の注文分もらえなかったんだからねっ」

いや、俺のせいじゃないよね?

「なら、俺が夜に来ても一緒だったじゃないか」

「あっ、そうか。なら、朝からワイン飲む?」

「飲まんよ」

「えーーっ。いいじゃない。特別に夜メニューも作ってもらうから」

「ブリケ、いい加減にしろ。朝から夜メニューは作らんぞ。悪いなお客さん。朝はメニューが決まってんだ」

と、ここの大将と思われる人がブリケを叱る。

「いや、分かってるよ。朝っぱらから重いものも食えんしね」

「そうか。なら、シチューとパンのセットでいいな」

「いいよ」

朝食メニューの1番高いメニューをしれっと勧める大将。それでも1500Gだけど。これでブリケは150Gゲットだ。

硬めのパンをシチューに浸して食べ、ブリケにお別れをしておく。

「ブリケ、世話になったな。今日で領都を離れるわ」

「えっ、何日かいるんじゃなかったの?」

「もう2泊したからな。春に王都に戻らないとダメだから、これ以上長居をすると間に合わんかもしれん」

「雪の中帰るの?」

そう、今朝は雪が降っているのだ。

「これぐらいの雪ならなんとかなるだろ」

「これから吹雪くと思うよ。用事も大事だけど、命の方が大事なんじゃないかな? 春まで領都にいた方がいいんじゃない」

心配しているふりを装いながら欲望に忠実なブリケ。

「そんなわけにはいかないよ」

と、マーギンは苦笑いをする。

「えーーっ」

ブーたれるブリケ。

「戻ったら干しソードフィッシュを送ってやるよ。それをブリケメニューとして作ってもらえ」

「えっ? 高額メニューになる?」

「それはここの大将と相談してくれ。調理方法も書いておくから」

「絶対よ!」

「あぁ、お前には世話になったからな。届くまで随分と後になると思うが、約束は守る」

「じゃ、許してあげる」

と、ニッコリ笑うブリケ。なかなか可愛くて宜しい。

こうして領都を去る事にしたマーギンは気になっていたフラグの回収に行くことに。まずは魔犬のフラグだな。

ハンター組合には行かずに、焼き鳥屋の大将から聞いた貧しそうな村が多い方角を目指す。領都より西側方面だ。

領都を出ると雪が降ってることもあり、誰も外を歩いていないので、領都が見えなくなるぐらいまでは徒歩移動。その後、ホバー移動をする。

雪煙を上げて移動するマーギン。領都を離れれば離れるほど秘境か? と思うほど何もない。

「どこまでが領地なんだろう?」

雪で視界が悪く、遠くまで見渡せないのでスピードを早足程度まで落とし、そのまま移動を続けるとようやく集落を発見。しかし、村には入らず様子をうかがう事に。

家の煙突から煙が出てるから廃村ではなさそうだ。開けた土地が近くにあるからここは農村だろう。

「あっ……」

マーギンが開けた土地に移動した時に魔犬の足跡を見付ける。これだけ雪が降ってるのに足跡があるということはついさっきまでここに魔犬がいたってことだ。

マーギンが気配を探ると魔犬と思われる気配を発見。

「夜に襲撃するつもりか」

10匹程度の魔犬の気配が固まっている。手出しをせずに村人だけで対応できるのか様子をみることに。雪の中に埋もれるようにして気配を消し、村を見張る。

「動いた」

時間的には夕方前のはずだがもうすでに暗い。暗視魔法を使って動いた魔犬の群れを見る。

「げっ、黒いやつが2匹もいるじゃないか」

10匹ほどの群れの中に黒が2匹。あいつは先に仕留めておいてやらないとまずい。

《パーフォレイトっ!》

バシュッ、バシュッ。

マーギンは雪の中から黒い魔犬を魔力ビームで狙撃した。残りの群れはそれに構わず村の方へ。

「魔犬だーーっ、魔犬が出たぞーーっ」

村人の大きな声がする。マーギンは気配を消したまま村に移動し、家の陰から村人達が戦うのを見ていた。

「おっ、なかなかやるじゃないか」

男連中がナタや鍬などで魔犬に応戦し、その後ろから他の男が火のついた薪を投げつけている。薪から真っ黒な煙が出てるから油を染み込ませてあるようだ。次から次へと人が出てきて火のついた薪を投げつけることで魔犬は退散した。

この村はなんとかなりそうだな。

魔犬を追い払った後も村人達は警戒を続けているのを見たマーギンは先に倒した黒い魔犬を焼き払い、次の村を探すのであった。

数日かけて集落を見て回る。小さい集落近くでは魔犬や魔狼の気配を探り倒しておいた。

「魔狼の魔結晶の色が濃くなってんな」

魔犬は焼き払い、魔狼は解体して魔結晶を確認しておく。肉と毛皮は孤児院に差し入れする予定でアイテムボックスへ。肉は瘴気をもつ程ではないが、魔結晶の色からするとあと数年で瘴気を持つ肉になるかもしれない。マジックドレインの魔道具版を作れるかな? ペンダントみたいに緻密なものでなくて、瘴気を抜き切るだけのやつなら作れそうだよなとか考えつつ、魔狼肉で鍋を作る。魔狼肉は身体を温めてくれるので、味より寒さをしのぐのを優先する。

醤油と砂糖、生姜とネギをたっぷり入れて細切りに刻んだ魔狼肉を煮込んでつつく。味の濃さで肉の臭みを誤魔化すのだ。

「うん、まずまずだな。卵落としちゃお」

誰も返事をしてくれるわけでもないのに、声に出すマーギン。寝るときには温熱服の温度を少し上げて、マチョウ布団で寝る。寒さはこれで大丈夫だが、風でテントがバサバサうるさい。

誰もいないならテントでなくてもいいんだよな。小屋を作ってアイテムボックスに入れときゃベッドで寝られるから、職人街で作ってもらうか。

そんな事を思いながら就寝し、翌日以降は北の砦方面に向かって移動をする。

「この森というか丘を越えたら早そうなんだけどな」

行きたい方向を遮る丘と木々を前に立ち止まるマーギン。木々があるとホバー移動も無理なのだ。

「飛んでみるか」

まだ試した事がない飛行。少し浮くのは問題ないのだが、空中に浮くのはやったことがないのだ。浮く要領でやってみるけど高度が上がらない。

「どうやるんだこれ?」

魔王と対決した時に魔王は宙に浮いていた。あれは重力操作魔法なのは間違いないのだけれど、自分で自分を持ち上げるのが無理のように、魔法でも宙に浮くというのができないのだ。

「発射台みたいにしてやってみるか」

マーギンは雪で発射台のようなものを作り、助走距離を取るために後ろに下がって構える。

「よし、行くぞっ!」

ホバー移動をしながらどんどんとスピードを上げていき、

バンッ

ジャンプ台を乗り越えた。

「うっひゃぁぁっ、怖ぇぇぇっ」

バビュンと打ち出されたマーギンは空高く舞い上がる。雪で視界が悪いので木や丘がどこにあるかも分からず、自分ではどこまで高度が上がっているか分からない。

「げっ、もう落下してるじゃんかよっ」

自分が下に落ちてる感じがしたので、思わず手を鳥のように広げる。

「あっ、飛んでる……」

自分は鳥だ、自分は鳥だと思い込む事で飛べるようになった気がする。マチョウの羽マントがイメージ向上に役立ったのかもしれない。

「寒っびぃぃぃっ」

マントを広げて風を受けることで体温が容赦なく奪われていく。もうたまらんということで高度を下げて着地。

「おー、あの丘をちゃんと越えてんじゃん」

後ろを振り返るとちゃんと丘を飛んで越えられたようだ。これは使えるな。

マーギンはテントを出してマチョウマントを再加工していく。身体を包む羽と飛ぶイメージを作るための羽を作り、腕を広げてみる。

「うん、南に向いてる窓を開けたくなるな」

誰も分からないであろう独り言を呟きながら、北の砦を目指して再び移動をすることに。僥倖だったのはホバー移動でも羽を広げるとある程度方向を変えるのが楽になったことだ。自分を包む風の塊から羽を出すと空気抵抗を受けて曲がるのだ。

1人で歌いながら移動をする。女が海なら俺は鳥だなこれ。

北の砦に向かう途中でも魔犬や魔狼を倒しつつ、ようやく砦と思われる町近くに到着した。

「随分とものものしいな」

砦町は他の町とは雰囲気が違う。軍人と軍人相手に商売をしている人達で形成された町なのだろう。行き交う軍人は緊張した顔付きをしており、バタバタと走っていた。

情報収集を兼ねて食堂に入ってみる。もちろんマチョウマントは脱いでいる。

「随分とバタバタしてんだな」

注文を取りに来てくれたおばちゃんに町の様子を伺う。

「ノウブシルクが攻めてくるらしいわよ」

「ずっとそんなんじゃないのか?」

「噂じゃノウブシルク本軍のお出ましじゃないかって。あんた旅人だろ? えらい時に来ちまったもんだね」

「本当だな。雪の中せっかく来たのに」

「もしかして冬にノウブシルクに行くつもりだったのかい?」

「珍しい魔物が出てるって聞いてね」

「あんたハンターかい?」

「そう」

「今は領内でいくらでも仕事があるじゃないか。わざわざノウブシルクの魔物討伐なんかするこたぁないよ」

「そうかもね。戦争が始まるならとっとと帰るよ」

「そうしな、そうしな。あたしらも避難した方がいいのかねぇ。もし砦を越えられちまったらみんな殺されちまうって話じゃないか」

「抵抗しなければ食料品とかを奪われるだけだと思うけどね」

「それでも商売できなくなって死んじまうよ」

そんな話をしながらお任せで注文。ここにいる客は商人達なのだろう。しばらくこの砦町で足止めを食らっているようだ。この時期でもノウブシルクと行き来しているのか、店の前に馬車ならぬ馬ソリが何台か停まってたからな。

「げっ……」

マーギンに出されたお任せメニューは魔狼肉のシチューだった。