軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

なぜここにある?

ブリケを大将に任せて宿に戻る。明日は気になった店に行ってみよう。

フラグ回収は後回しにする。

『余計な事にクビを突っ込むな』

俺はミスティの教えに従うのだ。今回は嫌な予感しかしないからな。

翌日、宿の飯屋で朝食を食べたが、ブリケは出勤していなかった。多分寝坊だろう。俺のせいじゃないからね。

昨日スルーした気になった店は骨董品屋だ。いい仕事をしている器とかを見たいわけではない。遺跡と呼ばれるアリストリア王国跡地から流れ出た物がないか確認をしたいのだ。

ギィィィッ。

建て付けの悪いドアを開けて店に入ると、なんかカビ臭い。汚くはないが怪しさ満載だ。こういう店をやっている人はメガネの細いおっさんか、シャングリラのババアみたいな人だと相場は決まっている。そして、案の定、ババアみたいな人がジロリンと無言でマーギンを睨むのだった。

気にしたら負け、気にしたら負け。そう自分に言い聞かせて店頭に置いてあるものを見る。

壺や大きな皿、夜中に動きだしそうな人形とかが置いてある。こんなものを買うやつがいるのだろうか?

「ヒッヒッヒ」

ビクっ

「な、なに?」

ババアの笑い声に引くマーギン。

「その人形は以前より髪の毛が伸びてるんだよ。これからも伸びるだろうね。買うかい? 伸びる髪の毛なんてお買い得じゃないか」

「い、いらない」

何が得なんだよ。髪の毛が伸びるなんて気持ち悪いじゃねーか。

もしかしたら、この店に書物関係があるんじゃないかと思ったが、それらしきものは見当たらない。

「古い本とかはないのか?」

「本かい? あるよ。 箱にしまってあるから見たいなら手伝いな」

手招きされて店の奥に促される。ババアと戦って負けるわけはないのだが、精神的にやられそうだ。1人で来るんじゃなかったかも。しかし、本があるなら見ておかねばならない。

勇気を出してババアに近づき、店の奥に入ろうとする。

「わっ」

「きゃーーーっ」

脅かされるマーギン。

「ヒッヒッヒッ。 大きい図体をしているクセに女みたいな声をあげるんじゃないよ」

ドキドキドキドキっ。

心臓が口から出そうだ。

「脅かすなよっ」

「吊り橋効果というやつじゃ。ワシにトキメイたか?」

「トキメクかっ」

まったく、なんだこのババアは。シャングリラのババアよりたちが悪いぞ。

「ほれ、その箱の上の荷物をどけてみよ。本類は箱の中に入っておるわ」

言われた通りにそーっと上の荷物を除けていく。万が一落っことして中身を壊したとか言われたら買い取らされるに決まってるからな。

そして上の荷物を除けて長持ちのような箱を開けると本がたくさん入っていた。

「見ていいか?」

「その為に開けたんじゃろ? 好きに見な」

マーギンが本を取り出すとババアは店に戻った。

カチャ

えっ? 今鍵閉めた? ねぇっ、鍵閉めた?

ババアが店の入り口の鍵を閉めたような気がする。

「ヒッヒッヒ、もう今日は誰も来んわ。ゆっくり見ていけ」

「なんで鍵閉めたんだよっ」

「お前さん、何者じゃ?」

「え?」

「そんな髪色をしたやつは見たことがないからの。どこから来た?」

「王都」

「その前は?」

「生まれ故郷かな。小さな島国だから言っても知らんと思うぞ」

「そうかい。まぁええ」

なんか含みのあるような事を言われたが、先に本を見るとことに。

うーん、この辺は比較的新しそうだな。現代の文字に近いからここの人でも読めそうなものだ。恐らく小説だろう。タイトルの愛と死を煮詰めてってなんだよ? 他のも小説っぽいな。

おっ、これは……

かなり古そうな一冊の本を手に取り読んでみる。

「読めん」

「そうじゃろう。それは古代の文字じゃからな」

文字はアリストリア王国時代の文字を模したものなのか、ところどころ文字の形が違うし、単語もめちゃくちゃだ。デタラメに文字を並べてあるよう思える。次に手に取った古い本はちゃんと読める内容だ。

マーギンはそれを読んでいくと魔王討伐のことが書かれていた。勇者が3人の仲間を連れて魔王を討伐した内容だ。

コンッ

「痛っ」

婆さんになんかを頭に投げられる。

「ヒッヒッヒ、それは読めるのか?」

「まぁ、なんとなくな」

頭になんか当てられたと思ったのは気のせいか? と頭をさすさすしながら答える。

「それは魔王討伐の冒険譚じゃろ?」

「えっ?」

このババア、この文字が読めるのか?

「他に同じような本があっての、絵がそんな絵になっておるんじゃ。ほれ、そっちの本じゃ」

と、言われた本を手に取ると、子供向けの絵本のようだ。文面は子供でも読みやすいように書かれている。

「なんだ、そういうことかよ」

ババアは絵だけを見て、冒険譚だろうと推測したのだろう。文字も同じものが並んでたりするからな。

これはアリストリア王国がマーベリックの威光を国民に知らしめる為に作られた物語と絵本なのだろう。文字も印刷っぽいからな。しかし、本も絵本も俺の事はともかく、ミスティの事もいなかった事にされているようだ。剣を持ってるのは勇者マーベリック、デカい斧を持ってる男はガインガルフ、杖持ちはソフィアだろう。斥候のベローチェは役割だけ出てきて絵にはなっていない。

「酷い内容だな」

思わずマーギンは呟く。

他には手掛かりになるような本はなかった。

「婆さん、ありがとう。欲しいものはなかったわ」

「そうかい。物好きがたまにおっての。昔に本を買っていったやつがお目当ての本じゃったら残念じゃったな」

「こんな本買ってどうするんだろうね?」

「さぁな。古いものは万人に価値があるもんじゃないからの。お前さんは武器には興味があるかえ?」

「武器? どんな」

「待っとれ。持ってきてやる」

しばらく待つと、布に包まれた20cm程度のものを持ってきた。

「ほれ、こいつじゃ」

「開けていいのか?」

「いいぞい」

マーギンは巻かれた布を取ってみる。

「こっ、これは……」

「欲しけりゃ持っていくが良い」

「なっ、なんでこれがここにあるんだよっ」

「昔からあるものじゃ。ワシもいつからあるかは知らん。じゃがお前さんに渡さねばとふと思っただけじゃ。いるなら持っていけ」

「いくらだ?」

「それは売りもんじゃないからの。金はいらん」

「婆さん、こいつの価値を知らないのか?」

「お前さんには価値があるもんかもしれんが、ワシにはその価値は分からん。自分で価値が分からんものは値段を付けられんじゃろ。ヒッヒッヒ」

「分かった。なら、他の商品を買わせてもらう。こいつは本当にもらっていいのか?」

「もうそれはお前のものじゃ」

代わりに大きな皿でも買おうと思ったら髪の毛が伸びる人形を買わされた。お値段100万Gなり。これはカタリーナのお土産にしよう。もし呪われてても王族なら解除するすべを持ってるかもしれんからな。

人形ともらった武器を持って店を出ると、心無しか薄暗かった店が明るさを取り戻したような気がする。この人形、本当に呪われてんじゃないだろうな?

マーギンは宿に戻って、もらった武器を眺めていた。

「お前の持ち主は行方不明になった後、どうなったんだよ?」

手にした武器に話しかけるマーギン。

その武器の名前は【暗器オスクリタ】

勇者パーティの斥候ベローチェが使っていた武器だ。この暗器は持ち主と認めた者が使うと、投げても念じると手元に戻ってくる暗器。当時と同じく鈍い光を纏い、刃は鋭いままだ。

「なぁ、オスクリタ。お前の持ち主はどうなったんだ?」

暗器が返事をするわけもなく、マーギンはベッドに寝転んで1対の暗器を持って眺め続けるのであった。

晩飯も食いに行かずにオスクリタを眺めたまま眠ったマーギンは夢を見る。

「お前らだけで何食ってんだよ?」

「唐揚げ。お前、自分の飯持ってんだろ?」

「うるせえっ、ちょっと寄越せ」

「やだよ。俺とミスティの飯なんだぞ」

勇者パーティの訓練を数日続けてする時は、マーベリック達は毎回城に戻り、転移魔法陣に入るのが嫌なマーギンはミスティと飯を食って、訓練する場所に泊まるのが日課だ。

「いいから寄越せっ」

ビシュッビシュッ。

「うわっ、危ねぇっ。人に暗器を投げんなっ」

「さっさと寄越さねぇからだろ」

脅されて唐揚げを奪われるマーギン。

「ふん、まぁまぁだな」

「勝手に食って文句言うな」

マーギンは追加で唐揚げを揚げる。次のは味変で甘辛にしよう。砂糖醤油を作り、フライパンで温めて唐揚げを絡めていく。

「甘じょっぱいのも旨いの」

旨さ控えめの飯しか作れないミスティはマーギンの味付けをうまうまと嬉しそうに食っていく。そして暗器を投げてきたやつも旨そうに食いだす。

「まぁまぁじゃなかったのかよ?」

「いちいちうるせえな。今度は本気で当てるぞっ」

「こいつ……」

もう勝手に食えと、さらに追加で作り大皿に盛っておく。

「でさ、将来の発展を見越して、道は広くしておいた方がいいと思うんだよね」

唐揚げをもぐもぐしながらミスティに魔法国家建国計画を語るマーギン。

「お前の夢物語はもう聞き飽きたと言ったじゃろうが」

「そんな事を言うなよ。でさー」

マーギンの話を面倒臭そうにするミスティ。しかし、いつもちゃんと聞いてはいるのだ。

「あーーっ、シスコてめぇっ。甘辛にまでレモンかけんなよっ。酸っぱくなるじゃねーかよっ」

「あら、酸っぱいの美味しいじゃない」

「てんめぇぇっ」

「毎回、喧嘩すんなよ。ほら、もう一度甘辛を作ってやるから」

「マーギンは本当にベローチェに甘いわね」

「誰がベローチェに甘いんだ…… ベローチェ?」

えっ?

マーギンはそこで目が覚めた。

「なんだ、夢か。昔の事と今の事がごっちゃになってるとか夢らしいわ」

独り言を呟くマーギン。

そうか、やっぱりベローチェとバネッサって似てるのかもしれんな。

マーギンはバネッサならオスクリタに持ち主と認められるかもしれんなと、王都に戻ったらお土産に渡そうと思うのだった。