軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ロールプレイングゲームみたいな出来事

マーギンは板切れ砂サーフィンで砂漠をグルグルと移動する。

ズササササササッ ゴンッ

「ぶっ」

何か砂に埋もれていた突起部にぶつかり、すっ転んで、砂の上をゴロゴロと転がるマーギン。

「痛ってぇぇ…… くないな」

砂まみれにはなったが、怪我も何もなかったマーギンは何に躓いたのだろうと、ソリを拾って戻ってみる。

「石か」

躓いたのは砂に埋もれた石だった。マーギンは風魔法を使って周りの砂を吹き飛ばして発掘してみる。

「ボロボロになってるけど、明らかに人の手で加工された石だなこれ」

発掘した石は城壁に使わわれているようなものだ。

「ここか」

マーギンはここがアリストリア王国のあった場所だと思い、少し離れてその場所を竜巻クラスの風を出して一気に砂をどけていく。

サーーーーッ

砂煙が落ち着いた後に崩れた遺跡というか、建物であっただろうものが出現した。

「この形…… アリストリア王城だろうな」

マーギンが目にしたものは、王城の1番上の屋根の部分。ここはミスティが強化魔法を掛けてあった場所だ。つまり王の私室があった場所。

「何か手がかりは残ってるだろうか?」

部屋であった場所の砂を風魔法で除去していく。この部屋の中には入った事がなかったけど、恐らく煌びやかな部屋だったのではないかと思われる。ところどころ、くすんだ金のようなものがへばりついているのだ。

「何もないか」

見付けられたのは木片みたいなものだけ。金属類とか何もない。腐らないものは残ってそうなんだが。

あちこちの砂を吹き飛ばしては何か痕跡がないか探して回る日々が何日も続いた。そして見つけられたのは朽ちた剣や鎧のようなものと溶けた何かの金属類。それとボロボロの木片と人骨だと思われるものばかり。

「最後はここか」

砂をどけて探せるところは探し終わった。残ったのは石が積み重なった場所。

《スリップ!》

マーギンはスリップを唱えて石を動かしていく。崩れて積み重なったのだろうか? まるでパズルのようだ。

「えーっと、この石をこう動かしたら、こいつが引っかかるのか」

1人でどうやって動かしたら良いのかズラしては戻し、ズラしては戻しを繰り返して、石を除けていく。

「はぁ、しんど」

石を少し浮かせているとはいえ、動かしはじめるのには力を使う。スリップと身体強化を併用して作業を続けると疲れるのだ。

夜にはマチョウの布団に身を包んで眠り、起きたら石を除ける日々を続ける。そうしてだいぶ除去できてきた頃にあるものを発見する。

「あっ、あれは……」

マーギンは我を忘れてありったけ魔力を込めて石を浮かせて吹き飛ばした。

「これはミスティの金庫……」

発見したのはミスティの魔道金庫。

「以前のまま残ってんじゃねーかよ……」

何もかも朽ちていたアリストリア王城。しかし、ミスティの魔道金庫は砂まみれではあるが昔のままの姿でそこにあった。

「これのパスワード知らないんだよなぁ」

絶対に開けるなと言われて、パスワードも教えてもらっていなかったミスティの魔道具金庫。

「色々試して勝手に開けたら怒るかなぁ?」

もういないミスティに怒られる自分を想像するマーギン。

「怒るなら、怒って出てきやがれっ。いなくなったお前が悪いんだからなっ」

シーン

マーギンが大声で叫んでもミスティからの返事はない。

「ま、当然か」

マーギンは魔道金庫にパスワードを入れてみる。入力するためのパネルに表示されているのは数字と文字。まるで手掛かりがないパスワードをデタラメに打ち込んでも開くはずもない。

「これ、壊すことも無理だろうな。多分強化魔法も強固に掛けてあるだろうし」

数日、デタラメなパスワードを試して諦めたマーギンは魔道金庫をアイテムボックスにしまった。これ以上ここにいると気が滅入りそうなのだ。

アリストリア王国自体には未練はないが、ここがミスティの研究室だったんだろうなと思うと胸が締め付けられる。

マーギンにとっては数年前までここでミスティと一緒に飯を食ったり、魔道具の回路の事でギャーギャー言い合いをしながら過ごした場所なのだ。

「北西の辺境領に移動するか。ここからどれぐらい掛かるか分からんしな」

マーギンはここでの調査を終えて北西の辺境領を目指して北に移動を始めると、こんなところに住んでる人もいるんだなと思うような村を発見。

「砂地ではなくなったけど、こんな荒れ地だと作物も育たんだろうに。何食って生きてんだろう」

砂地から砂利に変わり、カチコチの地面。少しは水があるのか、枯草みたいなものが残っているぐらいだ。しかもかなり寒い。

立ち寄ると住んでいる人の事が気になってしまいそうなのでスルーしようと決め、移動をしようとした時、

ヒャッハー、ここは通さねえぜ!

みたいな感じではないけれども、男たちが剣を持って出てきた。

「どこから来た?」

「どうでもいいだろ? お前らの村には興味がない。このまま通り過ぎるから気にすんな」

「そうはいかんな。お前が身に着けているのはマチョウの羽だな。肉を持ってるなら出せ」

「なぜ出さなきゃならん?」

「あれは俺達の獲物だからだ。勝手に狩るのは許されんな」

「はんっ、家畜ならともかく、魔物がお前らのものだとか笑わせる。それにマチョウを狩ったのはもっと南の砂漠地帯だ」

「砂漠地帯だと? どうやって抜けて来た」

「だからお前らには関係ないだろ? もう面倒臭いから俺は行くぞ」

「待てっ」

「お前らが敵意を向けるなら攻撃するぞ。俺を丸腰だと思うなよ」

「何っ」

マーギンは自分の周りに無数の火の玉を浮かべて威嚇する。

「俺は魔法使いなんだよ。お前らどころか、村を焼き尽くすことも余裕だ。嘘だと思うならその剣で斬りつけてみるか?」

「あんなに多くの火の玉を……」

「分かったら引け。本当に俺はお前らの村に用はない」

「肉は…… 肉は持っているのか」

「なぜそんな事を聞く?」

そこまで言うと、男達はガバッと土下座をした。

「脅してすまないっ。 肉を、肉を少し分けてくれないかっ」

あー、やっぱり食うものがないのか。

「なら、初めからそういう態度をしろよ。こっちだって脅されたらムカつくだろうが」

マーギンは火の玉を消し、男達に立てと命令した。

「食うものがないのか?」

「あぁ、もうこの冬を越すのも難しいかもしれん」

コイツラの目は窪んで頬もコケてるからな。着ているものを脱いだらガリガリだろう。

「村に案内しろ。今日はここで泊まる」

「えっ?」

「食い物がないんだろ? 分けてやるって言ってるんだ。さっさと案内しろ」

男達は半信半疑になりながらもマーギンを村に案内した。

小屋みたいな家は何軒もあるが、寒いので皆が大きめの家に集まって身を寄せ合って冬を過ごすようだ。案内された家は大きな部屋の中央に囲炉裏のようなものがあるが何も燃えていない。人数は20人ほどか。みな生気がないから若いのか年寄りなのかわからんな。

「薪もないのか?」

「もうこの辺りの木は伐り尽くした」

マーギンはまだ持っている薪をドサドサと出して、囲炉裏に薪をイゲタに組み火をつける。

パチパチと音を立てて薪が燃え始めると、部屋が少しずつ暖かくなる。

「デカい鍋はあるか?」

「あぁ、ある」

火が落ち着くのを待って、鍋をセットして湯を入れていき、持っている野菜を煮込む。その間に食べ慣れているだろう、マチョウの肉をスライスしていく。使うのは柔らかい胸肉だ。脂ののったモモ肉は胃に負担が掛かりそうなのだ。

味付けは塩でする。醤油や味噌の味を覚えたら後が可哀想だからな。

「さ、食いたいやつは分けて食え」

「いっ、いいのか」

「お前らの為に作ったからな。がっついて食うと吐くからゆっくりと食え」

初めに襲おうとした男達がお椀に野菜と肉をすくって皆に渡していく。

「お前ら、よく生きてたな。何食ってたんだ?」

「干し肉や干し野菜を少しずつ分けて食べていた。それも残り少ない」

「あっちの年寄りは肉を食わないのか?」

「歯が悪いからな。とろけた野菜ぐらいしか食えん」

もごもごしながら食べているけど、肉も食った方がいいよな。

一回の鍋では足りないだろうから、配り終えた後にもう一度同じ鍋を作る。肉はマチョウスライスに加えて、年寄り向けにつくねにしていく。

「なんだそれは?」

「肉をすりつぶす機械だよ。包丁で叩いて作るより早い」

ミンチを丸めてぽいぽいと鍋の中に。鍋の出汁を手持ちの鍋に入れてお粥を作り、そこに煮えたつくねを入れた。

「これはあっちの年寄りに食わせてやってくれ。歯が悪くても食べられる」

「おっ、おお」

皆のお腹が落ち着いた頃に、なぜこんなところに住んでいるのか聞いてみると、遺跡漁りをしていたものが住み着いた村だった。

「もうほとんど何も残ってないから商人も来なくなった。前までこの辺りはここまで荒地ではなかったから作物も育てられたんだが、それもダメになってきたんだ」

「もうこの場所で暮らすのは無理だろ。手持ちの食料は分けてやるけど、この人数が冬を越せるほど持ってないぞ」

「それでも俺達にはここ以外に行くあてがない」

こんな話を聞いてもどうもしてやれない。王都に近かったらなんとかする事ができるかもしれないが、こんな場所だと打つ手がないのだ。

「この辺に魔物はどれぐらいいる?」

「マチョウは最近見なくなった。トゲネズミはまだいる」

「トゲネズミ? どれぐらいの大きさだ?」

と大きさを聞くと体高2Mほどの魔物。

「マスピナか。お前ら倒せるのか?」

マスピナとは巨大なヤマアラシのような魔物だ。

「いや、無理だ。あいつのトゲはヤバいんだ」

「マチョウは倒せるんだろ?」

「マチョウは罠で倒す」

落とし穴を掘っておいて、誰かが囮になってロープを仕掛けたところに誘導し、こかせて落とし穴に落ちるようにするようだ。危険なやり方だな。

「マスピナも同じやり方で倒せるぞ」

「穴に落ちても丸まって攻撃出来なくなるだろうが」

「燃やせばいい。あいつらのトゲは中が空洞だ。燃やしたらトゲがはじけて危険度が下がる。多少の火では死にはしないが、トゲがなくなりゃ槍とかで突けるだろ。肉はそれほど不味くはない。ちょっと臭いけど、虫系の肉よりずっとマシだ。サソリ系の魔物とかも食ってんだろ?」

「あぁ、食えるところは少ししかないがな」

サソリ系の魔物の残骸があったから、やっぱり食ってたんだな。

「明日、マスピナがいそうな場所に連れてけ。狩り方を教えてやる」

「えっ?」

「俺は魔物討伐を専門にやってきたからな。マスピナぐらいどうとでもなる」

翌日、マスピナが出そうな場所に行き気配を探る。

「あの岩の向こうにいる。矢に火をつけろ」

「分かった」

落とし穴を掘って、誘い込むのは時間も掛かるし、危険度も高い。要はマスピナのトゲをどうにかすればなんとかなるのだ。

「お前、石を投げてこっちに意識を向かせろ。そうすればこっちに向かってくる。次に火矢を射って、失敗したら散り散りに逃げろ。あいつは頭が悪いからどれを追うか迷って立ち止まる。止まったらまた狙え」

マーギンに指示された通りに石を投げて誘き寄せて火矢を射る。

「当たった!」

「逃げろ。針がはじけて無くなるまでそれを繰り返せ」

火がついてもすぐに針がはじけるわけではないので、当てては逃げてのヒットアンドアウェイを繰り返す。マスピナの動きはそこまで早くはない。射ったら逃げるを繰り返せばいいのだ。

パチッ、パチッと少しずつ針がはじけ飛んでいき、ほぼなくなったところで仕留めに掛かる。

「まだ針があると思って回転して当てにこようとするから避けろ」

マスピナは人の近くまで来ると針で攻撃するかのように回転する。それを避けて槍で刺す。

「まだだ。完全に動かなくなるまで続けろっ」

刺して逃げるを続けてようやくズンッと倒れた。

「油断するなよ。最後の力を残してるかもしれんから、そのまましばらく放置しとけ」

10分ほど待って完全に動かなくなったところで首元を斬り、血が出なくなるまで待ってから解体していく。

「これがマスピナの倒し方だ。こいつの攻撃は針だけだからな。それさえなくしてしまえば危険度はぐんと下がる。これで次からお前らだけで倒せるだろ?」

「あぁ、ああ。こんなやり方があったんだな」

「魔物の事を良く知れば倒し方も見えてくるんだよ。後は春になったらこの種を植えろ。この荒れ地でも育つかもしれん」

「これはなんの種だ?」

「ソバというものだ。植えてから2ヶ月ぐらいで収穫できる。実を粉にして麺とかにするんだが、旨く作るには難しいぞ。こいつを収穫した後には豆とか順番に植えていけ。そのうち他の作物も育つかもしれん」

「これが育ったらちゃんと食えるようになるのか?」

「個人的にはここを捨てて、作物が育ちやすい場所に移動したほうがいいと思うがな。北上するか東に移動したほうがいいぞ」

「年寄りがいるから無理だ」

「じゃ、その後どうするか考えておけ」

マーギンが言った意味を理解した男達は頷いた。あの年寄り達はもう長くないだろう。その後、動けるやつらがどうするか決めればいい。

その後、村に戻って何か礼をさせてくれと言われる。

「お前らに礼なんてするもんないだろ?」

「売れ残りで良かったら持っていってくれ」

といって差し出したものはボロボロの本。

「遺跡から見付けたものだ。今はもうほとんど砂に埋まってしまってるが、昔はもっと建物の残骸が見えてたんだ」

受け取った本はもう何が書かれてあったのか解らない。

「こんな本とかはまだあったのか?」

「状態の良かったものは商人が買い取っていった。残ってるのはこれだけなんだ」

「そうか。なら、報酬としてもらっておくわ」

マーギンはボロボロの読めない本を手に入れた。その本にはかろうじて背表紙にアリストリア王国の紋章だと思われるものが微かに残っていたのだった。