軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

いいの?

ハンナリーが皆の元に戻った後にバネッサとシスコも目を真っ赤にしながら戻って来た。きっとお互いの気持ちをぶつけ合ってきたのだろう。それを見たマーギンもテーブルに戻ろうとすると、アイリスがやってくる。

「バネッサさんとハンナさんだけズルいです」

「なら楽しく踊るか?」

「はいっ」

アイリスはぴょんっとマーギンの首に抱きついてきたのでマーギンはグルグルっと回してやる。

「きゃーーーっ」

必死にしがみつくアイリス。

それを見たカタリーナも、

「私にもやってーっ」

と、すぐに交替させられるアイリス。カタリーナには抱き着かせるわけにもいかないのでマーギンは腕を持ってグルグルっ。

「いやーーーっ。飛んでいくーーーっ」

ジャイアントスイングのように回されるカタリーナ。

せっかくの順番を奪われたアイリスは

《スリップ!》

「ぬおっ」

スリップによって少し床から浮いたマーギンは回転スピードが上がってカタリーナを投げ飛ばしてしまわないように必死に腕を引っ張り引き寄せる。その事により、さらにスピードが上がり、グルグルグルグルっ。

「おおーっ」

アイススケートのスピンを見るが如くバアム家当主達から、さすがは姫殿下とか見当違いの褒め言葉を述べる。

スリップの効果が切れてようやく止まる2人。

「アイリスっ 危ないだろうがっ」

「でも凄かったですよ」

こいつ……

アイリスはマーギンにゲンコツをもらったのであった。

その頃のオルターネン達。

「オルターネン様、うちは特務隊に入んぜ」

「そうか、歓迎する。ロッカ達もそれでいいか?」

「あぁ。バネッサとシスコが納得したのなら問題はない。カザフ達もそれでいいか?」

「うん。俺達もやってやんぜっ」

「シスコは無理なんだな?」

「えぇ、私はハンナリー商会の面倒をみておくわ。マーギンがどこまで手を広げてるかもまだわからないし」

「ハンナリーは?」

「うちも特務隊でしばらく頑張るわ。シスコ、商会を乗っ取らんといてな。うちは必ず戻ってくるさかいに」

「途中で逃げ帰ってきたら居場所ないわよ」

「に、逃げてこうへんわっ」

こうして皆の進む方向が決まっていく。

「マーギン、いいの?」

「何が?」

「お母様が見てるよ」

「え?」

コケまいとカタリーナを引き寄せたマーギンはそのままカタリーナを抱きしめるような形になっていた。それを目に焼き付けるように見つめる王妃。

ヤバいっ

「リッカ、お前も来いっ」

「なによっ、今さら」

とプンスカしつつもこっちに来るリッカ。マーギンはリッカの腕を持ってグルグルグルグルっ

「きゃーーーーっ」

《スリップ》

セルフスリップをかけるマーギン。

グルグルグルグルっ。

カタリーナの時と同じようにリッカを抱き寄せて回転をあげてからストップ。するとカタリーナの時と同じように抱き合ったままになった。

「な、危なかったろ?」

「スケベっ。なにすんのよっ」

バシンっ

リッカはマーギンにビンタを食らわせてプンスカと怒ったまま戻っていった。

「いやぁ、スリップって危ない魔法ですよねぇ……」

と、王妃を見る。

「マーギンさん」

「はひ」

「将来が楽しみですわ」

そうにっこり微笑む王妃の笑顔にマーギンの顔からサーーーッと血の気が引く音がするのであった。

次に誘われるのは自分かとソワソワしているローズ。しかし……

「そろそろお開きだな。この後これからの打ち合わせを兼ねて、どこかで飲み直そうか」

と、オルターネンがパーティを終わらせた。

キッ

兄をにらみつけるローズ。

「本日はどうもありがとうございました。新鮮な魚やその他珍しい魔道具や調味料のご要望がございましたら、是非ハンナリー商会をご贔屓下さい」

マーギンも王妃に何か言われる前にパーティーの終了に賛同して、バアム家当主夫妻に挨拶をした。

「えーっ、もう終わっちゃうの?」

まだ楽しみたいカタリーナはぶーたれる。

「この後大将の店で二次会になると思うぞ。お前も来るなら一度戻ってから着替えてこい。その服だとあの店のボロっちいテーブルとかに引っ掛けて破くぞ」

「誰の店がボロっちいってんだ」

ゲッ、いつの間に大将と女将さんが後ろにいたんだ。

大将夫妻とシスコの父親フォートナムが当主夫妻にお礼を言いに来ていたのだ。

「マーギン、私とは踊ってなかったわね。最後にちょいと踊ってやるさね」

「えっ、もう曲も流れてないから終わりで……」

そう言っているのに女将さんに強引に抱き寄せられて、

「ギッ、ギブッギブッ」

ミシミシミシッ

マーギンは女将さんからサバ折りを食らったのだった。

夜にリッカの食堂に集合。カタリーナの護衛はローズの代わりに大隊長がしたようで、一緒にやって来た。ローズはすでに店に来ているが、オルターネンにそっぽを向いている。なんか喧嘩したのかもしれない。

大将の店ではいつもと変わりなくドンチャン騒ぎが始まる。食べ物は前に作っておいたカニ料理や唐揚げの甘辛とかの作り置きだ。俺は焼きガニでも食おう。

炭火コンロをテーブルに置いてカニの殻を切って炭火にのせていく。

「マーギン、スモークサーモンとスモークナッツ、それとウイスキーのジンジャーエール割を頼む」

「大隊長もあの場で飲めば良かっただろ?」

「護衛任務中に飲めるかっ。これみよがしに旨そうに飲みやがって」

「別に王妃様も怒らないだろ?」

「それでもだ」

まぁ、立場上仕方がないけどさ。

ご要望通りスモークサーモンとスモークナッツを出してやる。カシューナッツだけ先に食ってやろう。

「うむ、旨いっ」

「そりゃ良かったですね。マギュウでも焼きますか?」

「おぉ、頼む」

大隊長はカニより肉だろう。

なぜか、マーギンのいるテーブルは大将と大隊長と女将さんの高年齢テーブルだ。

「甲羅酒飲みます?」

「なんか分からんが飲むぞ」

カニの甲羅を炭火の上にのせて、日本酒を注いでおく。好きなタイミングで飲んでくれたまへ。

「で、いつから出るんだ?」

「明後日かな。シスコに引き継ぎがあるから、それを済ませてから出ますよ」

「いつに戻って来る?」

「春にタイベに行かないとダメだから、4月には戻ってくると思います」

「どのルートだ?」

「そうですね、西の領都を抜けていくことになりますかね」

「大陸中央へ行くのか?」

「はい。何もない場所だというのも気になるからそこを見てきますよ。もしかしたら魔物が湧いてるかもしれないし」

「そうか。もし時間が取れるようなら、北西の辺境伯領も見てきてくれんか?」

「ノウブシルクが侵攻してくるかもしれないんでしたっけ? 人同士の小競り合いには参加しませんよ」

「いや、何かあっても手出しはしなくていい。マルクが心配しておってな。北西の辺境伯の当主はヨーゼフ・ゲオルクというもので、自軍は王都軍より強いと自負しているのだ」

ヨーゼフ…… カタツムリとか好きそうな名前だな。

「日頃から実戦を重ねている軍と訓練だけの軍なら、そうでしょうね。魔物対策も自軍でやってるんですかね?」

「勿論ハンターも活躍はしているだろうが、領軍も出ているだろう。北の領地の大規模版ってところだな」

なるほど。

「で、何を見てくればいいんですか?」

「大陸の北西の国、ウエサンプトンはすでにノウブシルクの属国になり、ウエサンプトンはノウブシルクの国民を大量に移民として受け入れさせられたらしい。ノウブシルクの北側は魔物に飲まれて壊滅状態らしいのだ」

「壊滅ですか。どんな魔物が出てるんですかね?」

「そこまでは分からん。その魔物がこれから南下してくるようであれば北西辺境領にも影響が出てくるのではないかと思ってな。ヨーゼフは自軍の方が上だと思っている限り王都軍への応援要請は事前にしてこないだろうと思われる」

「応援要請があったときには時すでに遅しってやつですか」

「うむ、応援要請がくる前にマルクも軍を動かせん。しかし、要請を待って手遅れになれば王都も危うくなる。お前の目で様子を見てきてくれると助かる」

「行けるかどうかわかりませんけど、時間があったら見てきますよ」

「いつもこんな事を頼んですまんな」

「いや、ついでですからいいですよ」

「それにお前の仲間も特務隊に巻き込んでしまったな」

「入隊を決めたのはあいつらですからね。特務隊に入隊しようが、しまいがやることは同じでしょう。得るものは違うでしょうけどね」

「得るもの?」

「ハンターだと得るものは金ですけど、特務隊だと金で手に入らないものを得られるんじゃないですかね」

「金で手に入らないものか」

「えぇ。金はハンターでなくても稼げます。今回の件はあいつらにとって良かったんじゃないかと思いますよ。ハンターをやってるより死亡率も下がるでしょうし」

「強いやつの方が負担が増えるだろ」

「自分の身を自分で守れないやつは見捨てればいいんですよ。あいつらには特訓のはじめにそれを教えてあります。ちい兄様も新しく入隊する部下にそれを叩き込むと思いますよ。これからの魔物討伐はそういう戦いになりますからね」

「見捨てるってお前……」

「きっと命令を無視して勝手に突っ込んでいくやつが出てきますから。ハンターでもそういうやつが以前の北の討伐で死にましたよね」

「そうだったな」

「命令を無視して戦いに行くようなやつは俺ぐらい強くないとダメなんですよ」

「こいつ」

と、笑った大隊長。それから大将達を交えてたわいもない話をしながら甲羅酒を楽しむマーギンなのであった。

「そうだ。忘れん間にこれを渡しておく」

じゃらっと重そうな革袋を渡される。

「なんですかこれ?」

「王妃様から渡しておいてくれと頼まれた。社交会のカニとマグロの代金と料理指南の謝礼だそうだ」

中身を見てみると大金貨がぎっしりと入っていた。恐らく500枚ぐらい入っている。金額にすると5千万G。

「ああいうのって、献上とかになるんじゃないんですか? その代わりにハンナリー商会の営業をして下さったのかと思ってましたけど」

「いや、毎年ちゃんと仕入れ代金は支払っていると思うぞ。代金を王妃様から渡されるのは異例だがな」

これ、まさか持参金とかじゃないだろうな? と、マーギンは受け取るのを躊躇したのであった。