軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

王家の社交会

年が明けた王城に多くの貴族が集められていた。例年は上位貴族から順に王に年始の挨拶が行われるのだが、今年は様子が違う。例年とは違う流れに貴族達はざわざわしていた。

「静まりなさい」

宰相の一言で静まりかえり、一斉に跪く貴族達。そして王が登場する。

「面を上げよ」

貴族達が顔を上げると厳しい顔付きの王。

「今年は皆に申し伝えなければならんことが3つある。まず1つ目は隣国と戦争の兆しがみえるということじゃ。大陸の北西にあるウエサンプトンが北のノウブシルクに落とされた。おそらく南西のゴルドバーンも時間の問題じゃろう」

ざわざわざわ

「2つ目は魔物の増加及び今までに見なかった魔物の出現じゃ。ノウブシルクが他国を攻め入った原因もこれに起因すると思われる。我が国より魔物の被害が甚大のようで、農作物、畜産が思うようにいかず、他国を攻めたようじゃ。我が国の北西の辺境伯領も小競り合いが活発化しておる」

ざわざわざわざわ

「3つ目は不正を行っておる貴族を一掃する」

王の言葉により一層騒がしくなる貴族達。完璧に清廉潔白な貴族の方が少ない。多少の事は間違いということで今までに見過ごされてきたのだ。

「我が国は今後他国や魔物の脅威と戦っていかねばならん。そのような時に各貴族が敵国に弱みを握られ、傀儡となりかねん事を防止するためでもある。発端はトイシャング家の王妃暗殺未遂に起因する」

ざわざわざわざわ

中央の上位貴族はすでにトイシャング家の情報は周知されているが、地方貴族や中央に関わっていない貴族はまだ知らないものも多いのである。

「新型魔道具を使った王妃暗殺未遂並びに庶民の利権を奪おうと画策、金鉱脈の不正等複数の不正を行った罪として、トイシャング家は一族郎党金山奴隷の刑に処す。また、その不正に関わった家は取り潰しとし、私腹を肥やす為の行為ではなかった家に関しては降爵とする」

ホープの実家は私腹を肥やしていていなかったと判断され、子爵家から男爵家に降爵処分だけで済んだ。そして、トナーレを管轄するライオネルに対しても処分が発表される。

「ライオネル家は今後、ライオネル領内における魔物討伐に関する支払い報酬の7割〜10割を負担するものとする。他の領主も討伐報酬の5割負担を命ずる」

ざわざわざわざわ

「何か言いたい事はあるか?」

貴族達は報酬負担を義務付けられたことに口をモゴモゴさせたが、不正を問われるよりマシだと、誰も反論をしなかったのであった。

王が退席した後、どの貴族がどのような不正を行い、どの処罰を与えられたかの一覧表が張り出され、身に覚えのある貴族達は次はないと震えるのであった。

夕刻から婦人も交えて社交会がおこなわれれ、まるでお通夜のような雰囲気の中、王妃が現れる。

「王妃様、なんとおいたわしいお姿に」

貴族の御婦人達がショートヘアの王妃にヨヨヨと泣くような感じで集まってくる。

「おいたわしい? なぜかしら?」

「あのお美しい髪の毛がトイシャング家の非道な企みでそのようなお姿に……」

「えぇ、髪が燃えた時は驚きましたけれど、この髪型は気に入っておりますのよ」

髪型を気に入っていると返事をされて目を丸くする御婦人達。

「まるで少女のようだと褒めて頂きましたの」

コロコロとそう言って笑う王妃。御婦人達は王が気を遣ってそう褒めたのだと受け取った。

「まぁっ、確かにそうでございますわっ」

御婦人達は哀れむのではなく、王妃を褒め称える方に切り替えたのだった。

その後に料理や酒を侍女達が命令されて取りに行く。王妃の取り巻き御婦人達は同じテーブルに座り、食事を共にすることを許された。

「あら、これは初めて頂きますわ。とっても美味しいですけど、何でございましょうか?」

「それはカニクリームコロッケというものですわね。北の領地の海で捕れるカニというものを材料にしておりますの」

そう言ってポンポンと王妃が手を叩くと、侍女が茹でたカニを持ってきた。

「ヒッ」

カニを初めて見る御婦人達はその姿に軽く悲鳴を上げる。

「誰か北の領地の婦人を呼んできてちょうだい」

侍女が北の領地の婦人を探して連れてきた。他の御婦人に比べて随分と若い北の領地婦人。

「お、王妃様。お呼びでございましょうか?」

カーテシーで挨拶をする北の領地婦人。

「あなたはカニをご存知かしら?」

「はい。海側の港街で食べられております。領都にはあまり入っては参りませんが、美味しい海の幸でございます」

「美味しいのにどうして入ってこないのかしら?」

「カニは晩秋から冬に掛けて捕れるものでございまして、気温が下がる前は鮮度を保つのが難しく、寒くなってからは雪で運搬が難しくなるからだと思われます」

「そう。やはり流通に問題があるのね」

「はい。それとカニを見たことがない方には恐ろしい姿に見えるのも原因かと思います」

「見た目はそうですわね。このような硬い殻の中にはこんな身が入っているとは思えませんものね」

王妃は茹でカニから足を一本もぎ取り、ポキっと折って中身を出した。

「わぁー、そのように簡単に身が取り出せるとは王妃様凄いです。カニは中身をホジホジするのが面倒なのに」

北の領主夫人は子供のように王妃を褒めた。他の御婦人達はそれを見て咳払いをする。

「あっ、失礼致しました」

「別によろしくてよ。少々はしたないかもしれませんけど、これはこのように食べますの」

王妃はマーギンに教えてもらった食べ方を皆の前でする。それを見た御婦人達は目を丸くした。しかし皆もどうぞと王妃に勧められるままに同じようにして食べざるを得なくなってしまった。

「あっ、甘いですわ」

「え、ええ、本当に」

あの見た目が気持ち悪いカニがこんなに甘みがあって美味しいとは思わなかった御婦人達はお代わりを要求する。

「あなたもここに座ってお食べなさい」

「はいっ」

北の領地婦人にも席が用意され、王妃と共に茹でカニとカニクリームコロッケを食べ始めた。

「これは今後王都で流通するのでございましょうか?」

「ええ、ハンナリー商会というところがカニの流通を担うそうですわ。1匹10万G程度みたいですわね」

「ハンナリー商会とはどちらの商会でございますか?」

「新しく庶民街に開設された商会ですわ。他にも色々と面白いものを取り扱うそうですわよ」

「庶民街の商会が王家に納品をされているのですか?」

「ええ、このカニクリームコロッケもそうですのよ。ちょっと、ボルティア家のものを呼んできてちょうだい」

王妃はタイベの領主、エドモンド・ボルティアを呼び付ける。

「王妃様、ご機嫌麗しゅうございます」

「エドモンド、ハンナリー商会はタイベから何を仕入れるのかしら? 皆も興味があるようですので教えて下さらない?」

「はっ。米、酒、防刃服の素材が主になるようです」

「それだけかしら?」

「まだ未確定ではございますが、魔カイコの糸の量産に取り組んでおります」

「魔カイコの糸ですって?」

御婦人達の目の色が変わる。

「あ、あの、まだ取り組み始めたばかりで成功するとは……」

「それはいつ頃わかりますのっ」

「いかほどのお値段にっ」

「どのようにして量産をっ」

その後、御婦人達に詰め寄られるエドモンドはタジタジだ。

王妃はこうして日頃のお礼を兼ねてマーギンに援護射撃を行ったのであった。

一方、王の元には騎士隊大隊長のスタームと軍統括マルクが隣に座り、北西の辺境伯並びに大きな街の領主が集まっていた。

「ノウブシルクの動きはどのように?」

北西の辺境伯、ヨーゼフ・ゲオルクは他の領主達から状況を聞かれていた。

「今のところは通常の小競り合い程度ではありますな」

「では本軍が動いているというわけではないのですな?」

「おそらく本軍はゴルドバーンへ向かっていると思われますぞ」

「北西のウエサンプトンはどうなったかご存知か?」

「今入っている情報では、ノウブシルクから大量の移民を受け入れさせられたようですな。ノウブシルクの北側は大型魔物が出て壊滅状態のようですので」

「北の領地にもそのような大型魔物が出るのではありませんか?」

今度は北の領地の領主に質問が移る。

「昨年に大型の蛇の魔物が出ましたが、ハンター達でなんとかなりましたから大丈夫でしょう」

北の街の領主は昨年の事をのほほんと皆に話した。

「おぉ、我が国のハンター達は優秀なのですな」

「皆さん、勘違いなさいませんように。昨年の北の街で発生した大量の魔狼、雪熊、そして白蛇は一般のハンターではどうにもなりません」

大隊長が北の街の領主の言葉を訂正する。

「しかし、あの蛇を倒した男はそうは言っておりませんでしたよ?」

「ハンターだけではまだ力が足りません。その対策として騎士隊の中に魔物討伐専門の特務隊を設立致しました。それに軍にも魔物討伐隊を設立し、対応していくことにしております。領主ともあろう人がご存知ないとは言わせませんぞ。昨年末にもその合同部隊が北の領地で戦っておったでしょうが」

「あ、そうでしたそうでした。いやあっはっは」

大隊長はこの領主で本当に北の街は大丈夫なのだろうか? と心配になる。

「ゲオルク殿、軍本部の応援は必要ですかな?」

「マルク閣下、今のところは大丈夫ではあります。まぁ、ノウブシルクの本軍が来ても我が領軍だけでなんとかなるでしょうがな。あっはっはっ」

「魔物はどうですかな?」

「そうですな、北側はノウブシルクが対応してくれていると言ったら宜しいのか、今のところは問題ありませんな」

「西側や南側からも出てないのか?」

大隊長はそんな事はないのではないかという感じで他の方面の様子も聞く。

「多少は増えてはいるようですが、魔物が多い周期は以前からありましたからな。西側、南側はご存知の通り、何もない荒地ですから、魔物どころか人もいませんぞ」

「なら良いが」

「えぇ、我々で手に負えないような魔物が出たらぜひ特務隊とやらに応援願いたいものですな」

北西の辺境伯領は1つの国と言っていいほど大きい。それを自負している領主のヨーゼフ・ゲオルクは実戦をしていない騎士隊や王都軍の事を見下しているような感じなのであった。