軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

虫系の魔物

「えーっ、泳がないのーーっ」

朝っぱらからカタリーナがうるさい。どうやらハンナリーから前に来た時に泳いだ話を聞いていたらしく、今日は泳ぐ気満々のようだったのだ。

「せっかく水着を買いに行こうと思ってたのにっ」

「もう遊びは終わりだ。ナムの村に行かないとダメだからな」

「マーギンは私とローズの水着姿を見たくないの?」

「別にどうでもいい。ちい兄様がローズの水着姿を皆に見せたくないみたいだからな」

「マっ マーギンっ。俺は姫殿下の下着姿を公然に晒すのは良くないと言ったのだっ」

本音をマーギンに暴露されて慌てるオルターネン。

「だってよ。泳ぐのがなしになったのはちい兄様の意向だ」

きちんと責任の所在を明らかにするマーギン。

「水着は下着じゃないわよっ」

キッとカタリーナはオルターネンを睨む。

「肌の露出という点では同じです。姫殿下たるもの、人前でそのような格好をされてはなりません」

あくまでもカタリーナの為だとごまかすオルターネン。往生際が悪いぞ。

「ねぇ、マーギンはローズの水着姿を見たいよね?」

「そそそ、そんな事はないぞ」

嘘を吐くマーギン。

「ローズって脱いだらすっごいんだよ(腹筋)」

「えっ? すっごいの?(胸)」

「そうっ、すっごいの」

微妙にすれ違うマーギンとカタリーナの会話。しかし自分が水着になった姿を想像されたのを理解したローズ。

「姫様っ。私は水着など着ませんっ。それほど泳ぎたいのなら、ご自身だけで泳げば宜しいのですっ」

そう叫んで真っ赤になる。これはこれで宜しい。

「えーっ、ローズも水着を買おうよ。そうしたらお風呂も一緒に入れるんだって。前に来た時は皆で水着を着て一緒にお風呂に入ったらしいわよ」

「バネッサ達と一緒に? 本当にそうなのかマーギン?」

ローズの感覚では水着を着ているとはいえ、男女で同じ風呂に入るとか信じられないらしい。

「ま、まぁね。水に濡れて寒かったからやむなしだよ」

「では本当に星の導き達と一緒に風呂に入ったのだな?」

「う、うん……」

なんか一気にローズの機嫌が悪くなったような気がする。一緒に泳ぐのはOKで風呂はダメなのだろうか?

「姫様、今回はマーギン達の仕事が優先です。もう仕事に戻るとのことなので泳ぐのは諦めましょう」

「う、うん……」

怖い顔をしたローズにそう言われて引き下がったカタリーナ。

「じゃ、じゃあ出発しようか」

なんとなく重くなった雰囲気から逃げるようにマーギン達はナムの村に向けて出発した。パンジャからは歩いて一泊二日の旅だ。

途中で虫系魔物に驚いてきゃーきゃー言うカタリーナ。ハンナリーも毛を逆立ててマーギンにしがみついている。ローズは足が大量にある7〜80cmほどあるムカデのような魔物に怯んだ。ミミズもダメだから、これはもっとダメだろう。

ムカデ系魔物が出る度にサリドンがファイアバレットで焼き殺す。剣で刺すと酸系の血液で剣を傷めるぞと先に教えたためだ。が、焼き殺すとその臭いで仲間を引き寄せるという悪循環になっていることには気付いていない。

「なぁ、マーギン。前に来た時にはこんなん出ぇへんかったよな?」

しがみついているハンナリーの言う通り、ムカデ系の魔物はこの前は出なかった。

「秋に多く出るのかもな。それと前より地面が湿気てるだろ? 活動しやすい環境が整ったんじゃないか」

前は雨が少なくて水場が枯れてたらしいからな。ちゃんと雨が降って虫系魔物が増える要因が増えたのかもしれない。

「マーギンさん、キリがないですね」

サリドン一人で倒しているので何か良い方法がないか聞きたいようだ。

「でもちゃんと倒さないとムカデ系の魔物は肉食だから、放置するとそのうち襲われるぞ」

焼けた匂いに寄って来ていることは教えない。自分で気付きたまへ。

「ハンナ、虫にラリパッパは効くか?」

と、オルターネン。もし効いたとしてもムカデのダンスとか見たいのだろうか?

マーギンは大きなムカデがラインダンスをする姿を想像する。ローズが悲鳴を上げそうな光景だ。

「ホープ、お前も参戦しろ。サリドンがそのうち魔力切れになるぞ」

「剣が傷むではないか」

「噛まれたり刺されたりしないように気を付けろよ。まぁまぁ強い毒を持ってるから刺されると動けなくなるぞ。噛まれると足ぐらいは食いちぎるからな」

こいつの動きは気持ち悪いがスピードがあるわけではないので落ち着いて対処すれば問題ない魔物だ。

「ふっ、踏み潰せばいいのかっ」

「ピンポイントで頭を踏み潰せるならな。ちなみに尻尾の毒針は頭まで届くぞ」

その攻撃はリスキーだ。地面が柔らかいと踏み潰せないからな。

「マーギンっ マーギンっ 囲まれてるっ」

カタリーナもしがみつきに来た。二人にしがみつかれたら動けんだろうが。

「ちい兄様、さっさとやっつけて。こんなのに苦戦してちゃダメだよ」

オルターネンは石を拾って投げつける。ちょっと正解に近付いたな。土魔法が使えるからそれで倒せばいいのだ。

「じゃ、頑張ってね!」

マーギンはカタリーナとハンナリーを抱えてその場を離脱する。そのうち正解を見付けるだろ。

「マーギンっ」

叫ぶローズ。自分も離脱したかったのだろうが、君はタイベにいる間は特務隊なのだよ。オルターネン達と一緒に戦いたまへ。

そして特務隊はムカデの魔物に石を投げ続けてなんとか全滅させたのであった。

「すぐに離脱しなよ。そいつらは共食いするから他の奴が死体を食べに来るぞ」

そう教えるとローズは一気に走ってこちらに来た。

「タイベは虫系の魔物が多いのかっ」

「そうだね。王都周辺と比べると多いよ。タイベに着いた時に説明したろ?」

「それはそうだが、こんなウニョウニョしたやつがたくさんいるとは……」

「虫系の魔物は気持ちの悪い奴が多い。感情も気配もない。生理的に無理だと思うのも理解する。俺も魔蛾とか嫌いだからな。だけどこればっかりは慣れてもらうしかない。一匹一匹の強さはそれほどでもないけど、数が多かったりするから厄介なのは厄介だね」

「慣れるものなのか?」

「慣れるしかないんだよ」

そうマーギンに言われてローズは黙るしかなかったのだった。

そして野営ポイントで1泊する。

「マーギン、そっちのテントで寝ていい?」

カタリーナがいつムカデの魔物が来るか分からないので怖いらしい。

「ダメです」

「えーーっ。ハンナとは一緒に寝てるじゃない」

「あのなぁ。姫のお前と一緒に寝るわけにはいかんだろうが。それにローズが隣にいるだろ」

「ローズも怖くて眠れないかもよ?」

「ムカデ避けを撒いといてやるから大丈夫だ」

「そんなのあるの?」

「ほら、上を向け」

「こう?」

マーギンはスーッとする草から作ったハッカオイルみたいな物をカタリーナの首に塗ってやる。

「わっ スースーするっ」

「虫も虫系の魔物もだいたいこの臭いを嫌う。テント周りにも撒いといてやるから虫は心配すんな。蚊取り線香も焚いといてやるから」

「他の魔物は?」

「特務隊が交代で見張りをするから問題ない。さっさと自分のテントで寝ろ」

「えーっ」

「えーじゃありません。それにハンナのテントは元々1人用なんだよ。3人も寝られるか」

「じゃあハンナと交替?」

「しません。さっさと寝なさい」

「マーギンがこっちで寝る? まだスペースあるよ」

「寝ません」

「ローズも一緒だよ?」

「……寝ません」

「ケチっ」

そう捨て台詞を吐いたカタリーナは拗ねて自分のテントに寝に行ったのだった。

翌日は特に魔物が出るわけでもなく無事にナムの村に到着。

「すいませーん」

「何か? あっ、あなたは」

「俺はマーギン。前に来た時に雨乞いの儀式にも参加させてもらったものだよ」

「よく来てくれました。ゴイルの所に案内します」

「ゴイルもマーイもいる?」

「はい」

マーギンの顔を覚えていた村人がゴイル達の家まで同行してくれる。他の人に勝手に入って来たと勘違いされないようにだ。

「わー、のどかな村ねぇ」

「本当ですね」

カタリーナとローズがそんな会話をしている。王都周辺の村と家の作りも違うからな。

そしてゴイル達の家に到着すると、俺達が来た事を知らせに行ってくれ、ゴイル達が出て来た。

「おーっ、マーギン。もう今年は来ないのかと心配したぞ」

「久しぶり。タイベに来る前にライオネルでクラーケン騒ぎがあって船が出なかったんだよ」

「クラーケンか。他の海でも出るのか?」

「タイベでも出る?」

「あぁ、たまーにな。それより今回はメンバーが違うのか?」

「皆を紹介するよ」

それなら家でとなり、中に入って皆を紹介した。

「へぇ、国が魔物討伐をするようになるのか」

「そうだ。まだ訓練中ではあるがな」

と、オルターネンが返事をする。

「それって、依頼をしたらタイベにも来るのか?」

「ん? なんか対応出来ない魔物でも出始めてんの?」

「いや、この辺は問題ない。しかしミャウ族が各地に協力体制を求めて来てるんだ」

「パンジャでもそんな演説してたね」

「ミャウ族がパンジャにまで行ったのか?」

「多分ね。深くフードを被った人が先住民達を集めてなんか演説してたよ。近くを通り過ぎただけだから内容は知らなかったけど、噂話で少し聞いたんだ」

「そうか。この村もどう対応するか迷っててというか揉めててな」

「なんで?」

「ミャウ族は他の神を祀る者を見下したような感じだと教えただろ?」

「うん。長老からも聞いたよ」

「だからこんな時だけ協力し合おうと言われてもな、という意見と、魔物の脅威が本当なら力を合わせてなんとかしないとここも危ないんじゃないかという意見が出てまとまらんのだ」

「ゴイルの意見は?」

「俺は協力し合うべきだと思う。マーギンが強い魔物が出始めると言ってたのが現実になって来たってことだろ? 対応出来るうちに協力体制を取るべきだと思うんだ」

「そうだね、俺もそう思うよ。今までの事があるからわだかまりはあるだろうけど、敵対してるわけでもないよね?」

「そこまで対立しているわけじゃないぞ」

「なら出来る範囲で連携した方がいいよね」

「こっちがミャウ族周辺まで行かないとダメだから大変なんだけどな」

「なんの魔物が出てるか知ってる?」

「見たことがない魔物らしい」

「ラプトゥルじゃないの?」

「ラプトゥル?」

マーギンはラプトゥルの姿形を説明する。

「そんなデカいトカゲがいるのか」

「森の中で前にワー族に会ってね、その時にラプトゥルの倒し方とか教えたから、よっぽど大量に数が出てない限り対応出来ると思うんだけどね」

「いや、相手は一匹だったらしい。炎の魔法攻撃も武器も通用しなくて、何人か殺られて死体を持ち去られたそうだ」

死体を持ち帰るか……

「で、特務隊は先住民からの依頼でも来てくれるのか?」

「ちい兄様、どうなの?」

「先住民といえシュベタインの民であることには違いない。依頼があれは協力はさせて貰うが、初見の魔物であれば戦力になれんかもしれん」

「マーギンも特務隊に入ってるんだよな?」

「俺は入ってないよ。今回の目的は糸になる草の買い取りとか商売絡みの件で来たからね。特務隊は見慣れぬ魔物に慣れる為に同行したんだよ。こいつは遊びたいから付いて来ただけ」

と、カタリーナを指差す。

「社会勉強ですーっ」

「違いますーっ」

まだ少し拗ねているカタリーナ。しかしそれをかまっている暇はない。

「ゴイル、ミャウ族は王国民を敵対視してるんだろ? なんかあってもこっちの協力は拒否するんじゃないか?」

「それはそうかもしれんが、そんな事を言ってる場合じゃないんじゃねーかな。それと特務隊に来てもらえるかと聞いたのはこの村になんかあった時の事だぞ」

それならもう少し詰めて話そうかとなり、後ほど長老にも相談することになったのだった。