軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

追加報酬

港に船が戻ると大勢の人達が待っていた。

「無事に戻ってきたぞーーーっ」

出港してから3日で戻って来た大型漁船。もしかしたらクラーケンにやられて戻って来ないのではないかと噂になっていたのだ。

カタリーナ達もその大勢の中におり、無事に船が戻ってきたことにホッとしていた。

船が着岸するとざわめきが一層大きくなる。

「こんなでけぇクラーケンを仕留めて来やがったのか」

そう呟いたのは捕鯨船の船長。

そしてマーギンが船から降りてくると、真っ先に駆け寄ったのがカタリーナ。

「マーギンっ、無事に帰って来て良かった」

そう叫んで飛び付いて来たのをさっと避ける。

ベチャッ

「マーギン、お前酷いことしやがるな」

後ろに付いて来ていた貨物船の船長クックがその様子を見て呆れている。

「姫様っ」

ローズが慌てて駆け寄ってカタリーナを立ち上がらせた。

「マーギン、姫様がコケないように避けろっ」

受け止めろとは言わないローズ。

「そんな事が出来るか。カタ…… フェアリー、受け身をちゃんと取れてないぞ。だから鼻をぶつけるんだ」

マーギンは赤くなったカタリーナの鼻をちょいと触って治癒する。

「もうっ、避けないでよっ」

「いちいち抱きつこうとするな。はしたないぞ」

「おい、マーギン。姫様ってどういうこった」

クックはカタリーナが姫と呼ばれた事に驚いたようだ。

「こいつは貴族のワガママなお嬢さんでね。社会勉強の為にタイベに行くんだよ。姫は自分でそう呼べと言ってるだけだ」

「お、お前…… 貴族のお嬢様をそんな扱いしているのかっ」

「元々はハンナと二人で行く予定だったんだよ。それに付いてきたいと言ったから、貴族扱いをしないという条件を出したんだよ。だから気にしないで」

「他の奴らは護衛か?」

「護衛兼お守りはこちらのローズでフェアリーの親戚だ。で、男性陣は特務隊といって、騎士隊の中の魔物討伐部隊だね。タイベの魔物は種類が違うからその勉強で一緒に行くことになったんだ」

「おっ、お前っ。今回一緒にいるのは貴族ばっかりじゃねぇかっ。まさか、お前も貴族だったのか?」

「俺が貴族に見える?」

「見えん」

どこかで同じやり取りをしたな?

「いや、領主が今回の討伐報酬の負担をあっさりと承認したのも気になってたんだ。もっと揉めると思ってたからな。だから今の話を聞いて、お前の事を領主が知っていたのかと思ったんだ」

「ライオネルの領主とか知らんぞ。承認が早かったのは状況的にやむを得ないと思ったからだろ?」

「そ、そうか…」

「マーギンっ」

今度はハンナリーが抱きついて来た。それは避けずに受け止めるマーギン。

「じゃれつくな」

マーギンはぐいっとハンナリーを引き剥がそうとするが、それでも離れずにまんまるお目々の上目遣いでマーギンを見上げる。

「なぁ、なぁ、こんなでっかいイカやったらみんなで食べても余るやん。なんか色々作ってぇな」

「お前、クラーケンを食いたいのか?」

「だって、これイカの魔物なんやろ?」

「まぁ、そうだな。だけどこいつは丸一日船で曳行してきたから鮮度も落ちてるし、クラーケンは不味いぞ」

「そうなん?」

「試しに食ってみてもいいけどな。バター炒めにしてやるから、それが美味かったら他の料理も作ってやる」

そういうと小躍りするハンナリー。セルフラリパッパなのか?

港にいる人達に手伝ってもらって、どっせいどっせいとクラーケンを引き上げて行く。マーギンが少しだけスリップの魔法を掛けたので、クラーケンから銛が抜ける事もなく無事に港に引き上げられた。

「身とゲソのどっちを食いたい?」

「ゲソっ」

ゲソの一部を切り取り、一応臭み取りとして軽く茹でてからバター炒めにする。

「なんや、オシッコ臭ない?」

「これがクラーケンの身の臭みだ。しかし茹でても臭うな。ちょっとレモン汁に漬けてみるか」

茹でる前のゲソの切り身をレモン汁に漬けてみると、身が雑巾みたいな感じになり、それを茹でると臭いはずいぶんとマシにはなったのでバターで炒めてみる。

「ほら、食え」

小躍りしていたハンナリーはどこへやら? 一度オシッコ臭いと思った物を口にしなければならないので躊躇しながら口に入れた。

「うっ……」

「どうだ?」

「噛んだらなんとも言えん不味い味が滲み出てきよる……」

ペッペッと吐き出すハンナリー。

「な、不味いと言っただろ」

「ほなら、こんなにデカいのに食われへんかったらゴミやん。処理すんのも大変やんか」

「人は食わんけど、魚の餌にはなるんだよ」

「餌?」

マーギンは大型漁船の船長を呼び、解体する前にハンター組合に依頼達成の報告に行くことにした。クラーケンの討伐証明の部位がどれか分からないのだ。

ーハンター組合ー

「あっ!」

マーギンを見るなり奥に消えていく受付嬢。とても嫌な気分にさせてくれる。

そして、トッテムの手を引っ張って戻って来た。

「私は今は忙しいと……」

「よお、トッテム。元気だったか」

「あっ、マーギンさん。マーギンさんにシメイイライガキテイマス」

なんだこの喋り方は?

「マッ、マーギンさんにクラーケン討伐の指名依頼が入っておりまして」

受付嬢がトッテムの通訳をしてくれる。

「あぁ、知ってる。もう討伐してきたから確認しに来てくれ。討伐証明部位がどこか分からんから本体を持ち帰った」

「わっ、わかりましたっ。組合長っ、行きますよっ」

受付嬢に手を引っ張られて港に向かうトッテム。

そしてクラーケンの死体を目の当たりにして、普通に戻った。

「こんなに大きなクラーケンがいたのですね。さすがマーギンさんです」

「これで依頼達成でいいな?」

「はいっ。ありがとうございますっ。お手数ですがもう一度組合にまで来て頂けますか。報酬を…… 報酬を…… オシハライイタシマス」

マーギンと報酬の組合せがトラウマになっているトッテムはフリーズしかけたので、受付嬢が手を引っ張って組合に戻ったのだった。

「こちらが報酬の9千万Gとなります」

組合に支払う1割の手数料を差し引いて、大金貨で900枚もらって完了。

「ちなみにどうやって倒されたんですか?」

と、受付嬢に聞かれる。

「それは秘密だ。俺のやり方を教えても他のやつらには不可能だからな。俺の予想ではこれから大型クラーケンが出るのが常態化すると思うぞ。組合が国と別組織なのは知っているが、連携して対策を練っておいた方がいいだろうな」

「ど、どんな対策を練ればいいか教えて下さいっ」

「そうだな。タイベの組合と連携を取ってどうしたらいいか打ち合わせをしとけ。クラーケンは海水温に左右されずに出る。海に面している組合が他にあるか知らないけど、そことも話し合っておいた方がいいだろうな。ライオネルだけで背負い込むと大変だぞ」

「他の組合は対策方法を知っているんですか?」

「それは俺も知らないから、それを含めて連携しておけ。ちなみに海に出る魔物は陸地に上がって来ないから、討伐不可能と判断したら陸地に避難して魔物が去るのを待つというのが基本だ。それ以外に良い方法がないか情報を把握するのが組合の仕事だろ?」

「わ、わかりました。アドバイスありがとうございました」

組合を出たマーギンが港に戻るとクラーケンの解体が始まっていた。

「船長、ちょっといいか?」

マーギンは大型漁船の船長に話しかける。

「どうした?」

「クラーケンは食うには不味いけど、魚の餌には使えるんだよ。マグロの延縄の餌に使うといいぞ」

「これをマグロが食うのか?」

「マグロには良い匂いなのかもね。冷凍しとけばしばらく餌に困らんだろ?」

「なら試しに使ってみる」

「全然ダメだったらそこで捨てればいい。他の魚の餌にもなるからな」

それを伝えて、解体が終わるのを見届けた。

「マーギン、明日出港するから乗れ」

と、一緒に解体を見ていたクックが貨物船に乗れという。

「俺は貨物船で良いんだけど……」

マーギンはチラッとカタリーナを見る。

「ローズ、貨物船の船長が明日出港するから船に乗せてくれるって。どうする?」

「姫様を貨物船に乗せるのか?」

「そう。部屋は男女に別れるけど、客船じゃないから野営みたいなものだと思って」

「姫様をそのような船に……」

「貨物船だと釣りが出来るのと、自分達で料理を作ることになる。ちなみに客船の飯はまぁアレだ」

「マーギン、自分でお魚を釣るの?」

「前の時サワラとか食べさしてもろてん。めっちゃ美味かったで」

「なら貨物船に乗るっ。よろしくね船長っ」

「おっ、おお。お嬢様がそれで良ければどうぞ」

屈託なく微笑んでクックによろしくと言ったカタリーナ。クックもその笑顔に落ちたようだった。

その間にバケツリレーをして解体で汚れた港を綺麗にしていたのも終わったようなので、大型漁船の船長の所に行く。

「お疲れ様」

「マーギン、クラーケンを討伐してくれて助かった」

「これから大変になるね」

「本当にこんな化け物が出るのが常態化するのか?」

「多分ね。頻繁になるのはまだ先だろうけど、毎年同じ時期に出るようになると思う」

「俺達船乗りは苦しくなるな」

「船乗りだけじゃないよ、北の領地は魔狼が大量に出るのが常態化するだろうし、タイベでは見たことがない魔物が出始めている。どこも自衛手段を取らないと生活出来なくなるどころか生きていけなくなる」

「自衛手段か…… 漁船で何が出来るんだろうな」

「ハンター組合に領主と連携して対策を練るように伝えてあるから、船乗りは報酬資金を貯めておくとかしないとね。それとこれは今回の船賃」

「は?船賃だと」

「そう。危険と分かっているのに船を出してくれたからね。危険手当みたいなものだよ」

マーギンは5千万G分の大金貨を渡した。

「お、お前この金額は…」

5千万Gは大型船の持ち主が按分して出した金額相当だ。

「今回は大型船だけで按分しただろ?これからはライオネルの港を使う船の互助組合みたいな物を作って、討伐報酬を皆から出してもらって積立しておきなよ。毎月500万Gを積み立てたら年間で6千万Gになる。それと同等額を領主に出してもらえば毎年1億2千万Gになるだろ?」

「皆から金を集めて貯める?」

「そう。皆がどこの組合に属しているか知らないけど、自分達の組合みたいな物を作ればいいと思う。その金の使い道は魔物討伐報酬だけじゃなくて、魔物にやられた船の修理費用の融資とかに使ってもいいし、ライオネルの船乗りが安心して仕事が出来るような仕組みを作った方がいいと思う。今渡したお金は按分した所に返してもいいし、互助組合の運営費用に使ってもいいと思うよ」

「お前、そんな事を考えてたのか?」

「前にここでカツオを一緒に食った漁師と話してたんだけどね、王都にはあまり鮮度の良い魚が入って来ないんだよ。船長の船は冷凍して水揚げしてくるだろ?その冷凍したまま王都に流通させたいなと思ってるから、ちゃんと漁に出てくれないと計画が狂うんだよね」

と、マーギンは笑った。

「お前がその流通をやるのか?」

「俺と一緒に居た獣人の女の子がいただろ?」

「あぁ」

「あいつが流通の商会を立ち上げたんだよ。だからあいつにやらせる。人の確保も済んでるし、王都の売り先もなんとかなる」

「そうか。俺達が漁をやらないとお前らも困るのか」

と、船長も笑い返してきた。

「そういうこと。で、今回獲れたマグロを売ってくれない?」

「おぉ、3本共お前にやる。クラーケン討伐のせめてもの礼だ。冷凍せずに血抜きと内臓処理だけして冷蔵してある。自分で解体出来ないならこっちでやってやるぞ」

おー、生マグロか。それも3本共もらえるなんてラッキーだ。

「解体は自分で出来るから大丈夫だ」

こうしてマーギンのクラーケン討伐の報酬にマグロ3匹が追加されたのであった。