軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

生卵は気持ち悪いじゃろ?

ー王城での焼肉ー

王様、王妃様はカルビは数切れでご満足頂けたようだ。あとはロース肉の薄切りを炭火で炙りにして大根おろしとポン酢醤油で召し上がって頂いた。本日の焼肉パーティーに他の皆は呼ばなかったので、マーギンが焼いてサーブすることに徹していた。

「炙りとは美味しいですわね」

「溶いた生卵を付けるともっと美味しいんですけどね」

「生卵?」

「はい。卵は魔法で洗浄しますのでお腹が痛くなるとかの心配はありませんが、食べ慣れてないと気持ち悪いと思われるかもしれません」

「では、それを頂こうかしら」

王妃はチャレンジするようだが、王は顔を 顰(しか) めていらないと言った。

マーギンは薄切りロース肉に焼肉のタレを付けて炭火で炙る。ジュワワワッという音と共に煙が肉にまとわりつく。

「はい、どうぞ」

マーギンは溶き卵に炙った肉を入れて王妃に渡す。王妃はちょっと戸惑いながらもそれを口に入れた。

「まっ!」

目を丸くする王妃。こういう表情見るとやっぱりカタリーナの母親なんだなと思う。カタリーナも初めて食べて美味かった時に同じ顔をするからな。

「オルヒ、どうじゃ? 気持ち悪いのではないのか?」

「そうですわね。王には無理だと思いますわ」

初めて食べたものが美味しかったら、食べてみてというのが普通だろうけど、王には勧めない王妃。恐らく自分が先に食べて問題がないことを確認しようともしなかった王に不満を持ったのかもしれない。

「マーギン、私にも同じの焼いてっ♪」

カタリーナはカルビをモクモクと食っていたのにこれも食うのか。

ローズの護衛時間は終わっているので、今は第一隊が護衛に付いている。メンバーもガラッと入れ替わったので、さすがに前みたいに殺気を飛ばしてきたりはしない。

「お前、さんざんカルビを食ってただろ?」

「でも食べたいのっ」

また口から肉が出ても知らんぞ。

王妃もお代わりを希望したので炙りロースのすき焼き風をせっせと焼くマーギンなのであった。

「ご馳走様でした。今まで食べたお肉の中で一番美味しかったですわ」

「お口にあったようで何よりです。この肉は脂を楽しむような肉ですので頻繁に食べる肉ではありませんね」

「でもこうして炭火焼きにすると香ばしくて美味しいですわね」

「脂の焦げる匂いも味の一つですしね」

「来年の社交会で炭火焼きをだそうかしら?」

やめれ、室内でやったらえらいことになるぞ。皆のドレスが焼肉の香水をつけた? みたいな感じになるぞ。

今日の焼肉会は何かハメられるような事もなく、本当に食事だけで終了した。

お礼としてお土産に王家の紋章の入った蒸留酒をもらった。めっちゃ高いんだろうなこれ。

翌日にロッカの親父さんに大量に作ってもらった剣とウロコの防具と盾を受け取りに行った。

「親父さん、剣と防具は出来てる?」

「おう、出来てるぞ」

マーギンはロングソードとショートソードを各10本とウロコの防具を受け取った。うむ、良い仕上がりだ。

「全部で500万Gだ」

マーギンは大金貨を200枚渡す。

「500万だと言っただろうが」

「その金額は利益出ないでしょ? 正規価格ならこれぐらいなんじゃない?」

「お前から正規価格を受け取れるか。防具の素材も持ち込みだろうが」

「お金は気にしないで。この前たくさん儲けたから余ってんだよ」

「金が余るわけねぇだろうが」

「どうせウロコのプレスを手伝ってくれたハルトランもお金取ってないんでしょ? その中から払っておいてよ」

「お前こんな大金をポンと出しやがって」

「気にするなら、俺がタイベから戻って来た時に魔導窯でも俺に発注する?」

「魔導窯を?」

「そう。素材を融合するのは温度を細かく設定出来る魔導窯の方がいいだろ?剣を打つのは今の窯を使えば問題ないじゃない。新しい素材を開発研究していくのも鍛冶屋の仕事だと思うけどね」

「むぅ、考えておく。この金は本当にいいんだな?」

「いいよ。俺が金を使うのって飲み食いぐらいだから」

ということで正規価格ぐらいの値段を支払ったのであった。

いよいよ明日タイベに向けて出発だ。

「ちい兄様、行きは馬車で直接ライオネルまで行こうと思ってるんだけど」

「訓練として走るのではないのか?」

「船がいつ出るか分からないから、とりあえずライオネルまで行って、船の出る日を確認したいなと思ってね。すぐに乗れなかったらライオネルで魔物討伐してもいいし」

「なるほどな。ではそうしようか」

ということで、翌日馬車でライオネルに向かったのであった。

ライオネルに着くと人が多い。この時期って人が集まってくる時期なのか? 季節は秋本番の10月半ば。もしかして収穫祭とかやってるのか?

「ハンナ、この時期のライオネルは祭りかなんかしてるのか?」

「そんなんしてへんで。ほんまにめっちゃ人が多いのなんでやろな?」

マーギンとハンナリーでなんだろうな?

と顔を見合わせて首をかしげた。

「まぁいいわ。とりあえずタイベ行きの船がいつ出るか確認しに行こうか」

皆で客船の所に向かうと、港は獣人達で溢れていた。大型漁船とかもたくさん停泊している。

「おっ、マーギンじゃねーか」

と、声を掛けてきたのはカツオ漁船の獣人達だ。

「おっす。海が時化て漁に出られないのか?漁船がたくさん停泊してるけど」

「時化るにゃまだ早ぇ。魔物が出て船を出せねぇんだよ」

「なんの魔物?」

「クラーケンだ。今回のはかなりデケぇ。うちの船でも危ねぇから、港に引き返したんだ」

「あの大型漁船でもやられるのか?」

「張り付かれたらやべぇな」

それなら本当に大物だな。

「マーギンっ、クラーケンってなぁに?」

カタリーナはもとより、特務隊もローズもクラーケンを知らないようだ。

「クラーケンっちゅうのは、でっかいイカみたいな魔物や。船に絡み付いて沈めてまいよんねん」

と、知ってるハンナリーは得意気に説明する。

「へぇ」

「マーギン、クラーケンとやらは討伐出来ないのか?」

と、ローズが聞いてくる。

「水中にいる魔物の討伐って難しいんだよね。正面や横から襲って来るならなんとかなるけど、真下から張り付かれたらどうしようもないんだよ」

「そうか、マーギンでも難しいのか」

「今までクラーケンが出たらどうしてたんだ?」

「うちの船を沈められる程の大きさのクラーケンは初めてだからな。今までの大きさなら、カジキとかを突くモリで対応してたぞ。倒すのは無理だが追い払うことは出来る」

クラーケンはピンポイントで弱点を突かないと倒せないからな。

「はー、弱ったな。せっかくマグロの群れが入って来てたのによ」

と、獣人の猟師が嘆く。

なんですと?

「マグロってクロマグロ?」

「そうだ。デカいやつの群れが入って来てた所にクラーケン騒ぎだ。これで群れも散ってしまったかもしれんがな」

もしかしたらクラーケンは大型クロマグロを狙ってたのか? クラーケンはクジラを食うはずなんだけどな。

「クジラは入って来てるか?」

「おう、この時期はクジラも出るぞ」

ならそれを追って来たんだな。

「クジラ漁船ってある?」

「あるぞ」

「そこに案内してくんない?」

と、クジラの漁船の所に案内してもらった。

「おう、どうした?」

「こいつはマーギンってやつなんだがな、クジラ漁船を見たいと言うから連れてきたんだ」

「珍しいやつだな。外からなら好きなだけ見ていけ」

と、言われて捕鯨船を見ると、やはりバリスタみたいな物を船首に搭載してあった。

この捕鯨船はガレー船タイプだ。帆もあるけど、クジラを追う時にオールを使うのだろう。大型漁船より機動力が高そうだ

「あの船首に付いてるのはクジラに銛を撃ち込むやつだよね」

「そうだ」

「あれでクラーケンを討伐出来るよ」

「は? あの銛はクジラを追い掛けて撃つものだ。真下から襲ってくるクラーケンをどうやって狙うってんだ?」

「大型漁船を囮にしたら狙えるじゃん」

「こっちに来たらどうすんだよっ」

「クラーケンって、クジラを食ってるんだよ。だから船をクジラだと思って襲って来るんだ。今回のはかなりデカいクラーケンなんだろ? より大きな獲物を狙うと思うぞ」

「本当かよ? クジラ漁船も普通の漁船よりデカいんだぞ」

「大丈夫。こっちに張り付かれたら、足ぐらいは斬り落としてやる。そうすれば沈まされるまでにはならんよ」

「は? クラーケンの足は柔らかそうに見えて硬ぇんだぞ」

「知ってるよ」

マーギンは、地面に絵を描いて、クラーケン討伐の作戦を皆に教えて行くのであった。