軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

訓練の打ち上げ

ー翌日のリッカの食堂ー

テーブルに炭火焼セットを置いて焼いているので店の中が火事かと思うぐらい煙で充満している。

「お前ら一気に焼きすぎだぞ」

マーギンは一応先に注意しておいたが、そんな事をちゃんと聞かないメンバー達。アカゲマギュウは脂が多いので炭に脂がボタボタ落ちてジューーっという音と共にブワッと炎が上がる。

「わーっ燃えてる燃えてるっ」

カザフとバネッサがいるテーブルは賑やかだ。日頃焼く肉はここまで脂が多くないから一気に載せても問題ないけど、マギュウカルビだとそうはいかない。炎で周りが黒焦げになった肉も楽しみたまへ。

「この肉は旨いが、すぐに腹がいっぱいになって来やがるな。昔はもっと食えたんだがな」

大将があれ?みたいな感じでそう言った。このテーブルには大将、ロドリゲス、女将さんとマーギン。リッカはオルターネンの所だ。

「しゃぶしゃぶにしようか?」

大将達の年齢になると脂がキツくなってくるってのは本当なんだな。

ムギュッ

「いででででで。踏んでるっ 踏んでるっ。女将さん足踏んでるっ」

「マーギン、この歳になると脂がキツいってのは誰に言ってるんだい?」

あ、口に出てたのか…

「女将さん、 蹄(ヒヅメ) で踏まれたら足が砕けるだろうが」

グリッ

「ぎゃぁぁぁっ」

「誰の足が 蹄(ヒヅメ) なんだいっ」

女将さんの 蹄(ヒヅメ) もとい、踵でマーギンの足は危うく砕けるところだった。

「あっちのテーブルうるせぇな」

マーギンの叫び声を聞いて呆れるバネッサ。その隙に、

「あーーーっ その肉はうちが育ててた肉だろうがぁっ」

「おっぱいお化けは先に真っ黒のやつ食えよっ」

「なんだとテメーーっ」

あー、うるさい。あいつらだけ外で食わせた方がいいかもしれん。

お互いにうるさいと思い合うマーギンとバネッサ。

しゃぶしゃぶもあっさりし過ぎるのもなんなので、牛骨スープでしゃぶしゃぶにする。つけダレはポン酢醤油だ。

「おっ、これいいな」

やはりこの年代はしゃぶしゃぶの方が…

ハッ

慌てて口を押さえるマーギン。

「どうしたんだい?」

「いや、何でもない。たくさんあるからどんどんどうぞ」

マーギンはもう少し牛タンとカルビを食べる。

「マーギン、このワイン旨いな。どこのだ?」

ロドリゲスが飲んだワインは北の領地で買ってきたやつだ。

「北の領地で買ったんだよ。マッコイがいい店を紹介してくれてさ」

「あー、あの半地下の店か。親父は気難しかったろ?」

「そうだね。でもこのワインを勧めてくれたのはその親父さんなんだよ。このワイン、しっかりコクがあるのに変な渋さとかないんだよね」

「確かにな。高かっただろ?」

「瓶で3千Gだよ」

「は?嘘つけ。この味でその値段はないだろ。3万Gの間違いじゃないのか?」

「いや、樽で買ったらもっと安かったぞ」

「あそこのワインは高級品ばかりなんだぞ」

え?

ということは外の人間には外の価格で売ってるのかもしれん。余計な事を言うとマッコイに迷惑を掛けるかもしれないから黙ってよ。

「まぁ、そう言わないと遠慮するだろ?たくさん買ったのは本当だから遠慮せずに飲んで」

ということにした。

「そうか。なら俺も秘蔵っ子を出すか」

と、ロドリゲスはバッグから蒸留酒の瓶を出した。

「こいつはなかなか手に入らん酒だぞ。ダッド、グラスと氷をくれ」

「氷は俺が出すからグラスだけ持ってくるよ」

勝手知ったるリッカの食堂。マーギンは5人分のグラスを持って来た。

「あと1人は誰のだ?」

「大隊長も好きなんじゃないかと思ってね」

と、その声が聞こえたのか大隊長がやって来た。

「マーギン、マギュウとはかなり旨い肉だな。貴族街でもこの肉は手に入らんぞ」

「特殊な肉ですからね。焼肉はもういいんですか?」

大隊長も大将達と歳は変わらないみたいだけど、脂多めの肉も平気みたいだ。

「あぁ、堪能した。で、何か美味い酒を飲むのだろ?」

「ロドが持ってきてくれたウィスキーを飲もうかと思いましてね」

「ほう、これはいいウィスキーだな。今度来る時は自分も秘蔵の奴を持ってこよう」

また来る気満々の大隊長。伯爵家当主なのにこういう店も平気なんだな。

おつまみにスジ肉とホルモンの味噌煮込みを出す。

「おっ、こいつは美味いな」

大将の好きそうな味だからな。ロドリゲスもこれはなんだ?とか言いながら食べている。

「スジ肉とマルチョウだよ」

「捨てるところじゃねーかよ」

と、ロドリゲスは言いながら食べ続ける。

「マーギン、賄いを食うなら鍋からよそって来い」

大将も味噌煮込みを食べて飲んでしているので動きたくないようだ。

マーギンは大将のモツ煮込みを2人分よそって持ってくる。

「はい、大隊長。これは大将が作ったやつ」

「おっ、こいつも旨いな」

「でしょ?おれ大将の作る賄い好きなんだよね」

自分で作った味噌煮込みも好きではあるが、大将の賄いはなんとなく家庭の味みたいな感じなのだ。

モツ煮込みを食べて、氷が少し溶けたウィスキーをクッと飲む。

「はーっ。旨いねこの酒」

「だろ?捨てるような部位と高級酒の組み合わせってのはおつなもんだ。まるで俺達みたいなもんだな。あーはっはっは」

ロドリゲスが言いたいのは高級酒=大隊長、捨てる部位=俺達ってことだろう。なんか笑えない…

「大隊長はこういう飯も平気ですよね?庶民にも偏見みたいのがないし。貴族では珍しいんじゃないですか?」

「軍のマルクも似たような感じだ。まぁ、あいつは部下に平民が多いからってのもあるがな」

「騎士は皆貴族でしょ?それに雪熊とか魔物の事も結構詳しいですよね」

「あぁ、俺は若いというか子供時代から20歳ぐらいまでハンターもどきの事をしていたからな」

「え?どうしてですか?」

「俺は次男だったからな。家を継ぐ事もないと、外に飛び出して好き勝手に生きていこうと思ったのだ」

「へぇ、でも家を継いだんですよね」

「父、兄と相次いで病死してな。やむを得ずだ。流行り病で使用人とかもバタバタ倒れて大変だったみたいだ」

みたいだ、ということは大隊長はその時に外に出て暮らしていたから感染を免れたのか。

「貴族の次男以降はそれなりに生き辛い。プライドだけ高くなり、兄が家を継いだ瞬間から身分が無くなるみたいな感じだからな。だからオルターネン達の気持ちはよく分かるのだ」

あー、それでか。

「ま、そうは言っても庶民と比べりゃ恵まれてますぜ大隊長さん」

と、ロドリゲスは贅沢な悩みだろ?みたいな感じでいらぬ言い方をした。

「それはそうだな。貴族であれば衣食住に困る事はないからな。俺は家を継げない立場だと理解した時に自分の力で生きて行こうと外に出たのだ。そこで初めて庶民の生活というものを知った。ハンターもどきの事をして狩ったヤツの肉を食い、強い魔物に殺されそうになって恐怖を覚え、それに負けじと自分を鍛えた。その時に家を継ぐ事になって悩んだものだ。このままの生活を続けたいが、自分が継がなければスターム家が無くなる。結局俺は家を継ぐことを選んだというわけだ。マーギンとその時に出会ってたら家を継がなかったかもしれんな」

「なんで?」

「パーティを組んで魔物を倒しまくるに決まってるだろ?そうすれば自分でこのマギュウも狩り放題だ」

と、大隊長は笑ったのであった。

そこからマーギンは皆がどうやってマギュウを倒したのかをモツ煮込みをつまみに高いウィスキーを飲んで話したのだった。

そろそろお開きにしようかとなったが、お子様ズは皆口からマギュウが出てるんじゃないかと思うぐらい食って動けなくなっている。

「マーギン、歩いたら口から出る…」

「口を押さえて歩け。もうお前ら3人を同時に連れて帰るの無理だぞ」

おんぶ抱っこ肩車で連れて帰るには大きくなってしまったカザフ達。

カタリーナはローズ、アイリスはロッカ、バネッサとハンナリーはどうすんだよ?

「ロッカ、バネッサはどうすんだよ?」

「マーギンが連れて帰ってくれ」

「なんでだよっ。ハンナを連れて帰らなきゃならんだろうが」

「シスコ、ハンナをおぶれるか?」

と、ロッカがシスコに聞く。

「しょうがないわね。ハンナ起きなさい」

ベシベシベシベシっ

容赦なく寝ているハンナに往復ビンタをかますシスコ。

「うーーん オトン、ごめん、ごめんやからもう勘弁してぇな…」

「何寝ぼけてんのよっ。早く起きなさいっ」

「はっ、あれ?うち、うち…」

目を開けたハンナリーはキョロキョロと皆の顔を見る。

「起きたなら歩きなさいっ」

「あれ、シスコ?」

「そうよ。帰るわよ」

「うっ、グスッ グスッ」

「ほら、早くっ」

ぐすぐす泣くハンナリーの手を繋いで家に連れていくシスコ。ハンナリーの過去を知っているマーギンは今のハンナリーを見て心が痛かった。あいつにはムカついても手をあげるのやめとこう…

で、バネッサが余る。

「しょうがないな」

マーギンはバネッサを抱き上げてくるんと背中に回して背負い、カザフ達と一緒に家に帰ったのだった。

大隊長と特務隊はローズ達が出た時に一緒に出ている。

バネッサを背負って帰るマーギンを見ていた大将とロドリゲス。

「マーギンはバネッサと出来てやがんのか?」

ロドリゲスが大将に聞く。

「どうだろうな。マーギンにとっちゃカザフ達と変わらんのかもしれんな。昨日食った煮込み肉は甘かっただろ?」

「そうだな」

「あれは皆にも食わしてたが、本当はバネッサやガキ共の為に作ったやつなんだろうよ。マーギンの作る飯はあんなに甘い味じゃねぇ。今日の味噌煮込みって奴がマーギンが作る飯の味付けだ」

「あぁ、旨かったなあれ」

「まだ残ってるから飲み直すか?」

「そうだな。俺も大隊長にいらんことを言っちまったから、モヤモヤが残ってんだ」

「まぁ、お前の過去とか知らねぇからしょうがねぇ。しかしあの大隊長ってお方は良い人だな」

「おう、俺の嫌味にも嫌な顔をすらしなかったからな。ああいう信頼出来る貴族をちゃんと見付けて来るマーギンもやりやがるぜ」

大将はそうだなと笑って店の中に戻ったのであった。