軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

反省会

想定以上に効き過ぎてしまった唐辛子ガス。兵士達が粘膜という粘膜をやられて悶え苦しんでいる惨状を見たマーギン。

風魔法を送っていた軍の魔法部隊が唐辛子ガスを吸い込んだことでむせ返り、次の詠唱が出来なくなったことで弓隊にも唐辛子ガスが届いてしまったのだ。

「うぅぅぅぅっ」

「だずげでぐれぇぇぇ」

「目がぁぁぁ」

「ゴフッゴフッゴフッ息がぁ息がぁゴフッ」

まさに地獄絵図だ。早く戦闘を中止して治療にあたらなければ。

「ストーーーーッ」

ストップと言いかけたマーギン。

「あ…」

ストップを掛ける前にタジキが盾を構えて中央に突っ込んで行く。その後からハンナリーとサリドンが付いていった。前方にいた兵士達は後ろの仲間が悶え苦しむ様を見ていたので、やすやすとタジキ達を通してしまう。

「スロウッ スロウッ スロウッ」

ハンナリーは敵の陣地に突っ込んだのが怖いのか必死でデバフを掛けまくる。ついこの前まで人を攻撃するのを躊躇していたサリドンも人が変わったようにスロウを食らって動きが鈍くなった兵士達にファイアバレットをお見舞いしてていく。そして両翼を潰したオルターネンとロッカも参戦し、悶え苦しむ兵士を気にせず立っている者を陵辱していった。アイリスは悶え苦しむ兵士にファイアバレットで止めを刺している。

「酷ぇ…」

そしてシスコとトルクは後方で苦しむ魔法部隊と弓隊を淡々と射抜いていた。

「なんて無慈悲な攻撃だ…」

マーギンが訓練を止める間もなく、兵士達はコンバインで刈られる稲のように倒れていった。

「勝利条件は敵将を討つことだっ 閣下を討ち取れーーーっ」

オルターネンは兵士達を殲滅した後、攻撃命令を出し、マルクに突進していく。こちらの全戦力がマルクに向かった。完全にオーバーキルだ。

「きゃーーーっ」

その時にカタリーナの悲鳴が響き渡る。

あっ、あの3馬鹿も来てたのか。

どこに隠れていたか分からないが、隠密から捨てられたラリーがカタリーナを討ち取りに来ていた。

体格の良いボンネルの後ろに、隠密出身のラリーと剣士のサイマンが縦1列に並んでジェットストリームアタックのようにカタリーナに突進。ローズがそれを迎え撃っていた。

「甘いわっ」

ローズが先頭のボンネルを木剣で容赦無しに突いた後、剣士サイマンと打ち合いになった。しかし、それは囮。本命のラリーがサイマンを踏み台にしてローズを飛び越えた。

「姫様ぁぁぁぁーーっ」

ローズが振り向いて叫ぶ。

「敵将取ったりーーーーっ」

空中からラリーがカタリーナを襲う。

「いやーーーーっ 来ないでぇーー!」

空中からラリーの短剣がカタリーナを討ち取ろうとした瞬間、

「ぐおっ…」

カタリーナの前で空中に浮かんだまま身動きできなくなったラリー。見えない大きな手で握り潰されそうになって息が出来ない。

「いやーーーーっ」

ブンッ

ビタンッ

カタリーナは目を瞑ったまま軍配ビンタをラリーに食らわせた。

「ふぉぉぉぉぉっ」

一瞬空中に止まっていたラリー。カタリーナは軍配で顔面ビンタをしたつもりが、そこにあったのは空中に浮いたままのラリーの大事な所。

ラリーはその場にドサッと落ちて、くの字に丸まって悶絶した。

「姫様、申し訳ありませんっ」

不覚を取って、カタリーナを危険に晒したローズはその場で土下座をする。

「大丈夫よっ!ローズに代わってお仕置きしておいたから」

カタリーナはとても有名なポーズでローズにそう言ったのだった。

そして、マルクは両手を上げて降参していたので、今回の戦闘訓練はこちらの勝ちで終了した。

マーギンは悶え苦しむ兵士達を水でじゃぶじゃぶと洗い、治癒隊にマジでヤバそうな奴から治してもらっていく。

「マーギン、我々の勝ちだぞ」

必死で皆を治療しているマーギンにオルターネンがそう嬉しそうに言って来たのであった。

ちい兄様、空気を読もうね。

ー反省会ー

通常、反省会とは訓練を振り返って、あそこはここをこうすれば良かったとか、アドバイスをしながらやるもの。しかし、この反省会は本当にマーギンが反省させられていた。

「訓練で毒ガスを使うとか何を考えているっ」

大隊長に怒鳴られるマーギン。

「あれは毒ガスじゃなくて、殺傷力のない唐辛子で…」

「殺傷力がないとか嘘つけっ。皆が死にかけていたではないかっ」

確かに。あの惨状を見ると唐辛子でも人を殺せるのかもしれないと思ってしまう。

「スターム、もういい。あの人数差でこちらを殲滅した見事な戦法であったと褒めるべきだ」

自分でもまずかったなと思っていることを大隊長に怒鳴られ続けて、ちょっと涙目になりかけていたマーギンはそう言ってくれたマルクを見る。

「閣下…」

「唐辛子ガス以外にも色々と聞きたいのだが良いか?」

「ええ、どうぞ」

ここは大隊長から逃げる為にマルクとだけ話すことに。

「そちらが使った火魔法はなんだ?」

「ファイアバレットというものです。ファイアボールよりずっと小さいので、速射や連射性に優れ、今回はかなり温度を落としていますので使用魔力も少ないのです。飛ぶスピードも速いですしね」

「温度を上げるとどうなる?」

「魔狼とかは撃ち抜けます。もっと温度を上げるとかなりヤバイ攻撃になりますね」

「ヤバイとは?」

「アイリスとサリドンにはまだ無理なので他の人も出来ないでしょうから、気にしないで下さい」

「お前は出来るのだな?」

「ええ、まぁ」

「あそこの木に撃ってみてくれないか」

と、言うので、侘び代わりに見せることに。

マーギンがファイアバレットを撃たずにその場に浮かべて、魔力を込めて温度を上げていく。

「赤色から青白くなっていくのだな」

「はい。これを普通に撃つとこんな感じです」

マーギンは木の幹に青白いファイアバレットを撃つ。

バシュッ

幹に穴があき、穴の周りがブスブスと焦げる。

「凄い威力だな。で、普通でない撃ち方とは?」

「ファイアバレットとある魔法を併用します」

マーギンは青白いファイアバレットを木に向かって再び撃つ。

ボシュッ

マーギンの放ったファイアバレットは木に命中したが、貫通せず先程のような威力ではなさそうに見えた。

「何も起きんぞ?」

「リリース」

ドガーーーーッン

「うおぉぉぉっ」

マーギンがリリースと唱えた途端ファイアバレットが命中した木がいきなり木っ端微塵になった。

「なんだ今のはっ」

マルクと大隊長の声が揃う。オルターネン達や兵士達も腰を抜かすぐらい驚いていた。

「ファイアバレットに込めたエネルギーを一気に解放したんですよ。人に使えばあの木のように跡形もなく消え去ります。これは岩のように硬い魔物を倒す為の魔法ですね」

「お前はこんな恐ろしい魔法を使えるのか…」

マルクが声にならないような声で呟きマーギンを見る。

「人に使うには効率が悪いですよ。別に人を木っ端微塵にする必要もありませんし」

斜め上の回答をするマーギン。

「お前を敵に回したくないものだな」

「軍が俺の敵にならなければいいだけの話ですよ」

マーギンはそう答えたのであった。

「マーギンっ、俺ともう一度勝負しろっ」

もうこれで反省会は終わらせようと思った時に3馬鹿のラリーがマーギンの所に駆け寄って来た。

「お前か。カタリーナを討つために気配を消し続けたのは見事だったな。俺もお前らがカタリーナを狙ってるのに気付いてなかったわ」

「俺が本気を出したんだから当たり前だっ」

「が、その後の襲い方がお粗末だったな。護衛が一人なのが分かっていたのに、縦一列で突っ込んだのは愚策だ。自分の能力を過信しているからあんな襲い方になる」

「なんだとっ」

「自分は絶対にローズを抜けると思ってたんだろ?」

「事実、女護衛は抜いただろうがっ」

「その後、カタリーナにやられたじゃねーかよ」

「あっ、あれは不思議な力が…」

「言い訳すんな。やられた結果が事実だ。あれが実戦ならお前は任務失敗で死亡だ。お前のは自信じゃなくて過信だと理解しろ」

「うるせぇっ」

「じゃ、もう一度やってやるから覚悟しとけ」

マーギンは手解き代わりにラリーと立ち合ってやることにした。

マルクが審判になり、開始の合図をする。

「始めっ」

「うっ…」

ラリーが突っ込もうとした瞬間、自分の目を疑う。

マーギンが3人に別れて突進して来たのだ。

ビシッ ビシッ ビシッ

ラリー達瞬殺。

「はい、終了」

「痛ってぇぇぇっ」

3人はデコを押さえてのたうち回る。マーギンは3人にデコピンを食らわせたのだ。

「ラリー、分身の術ってのはああいう風に使うんだ。お前が前に見せた分身の術は見世物としてはいいが、実戦では使えん」

「お前っ、どうして分身の術が使えるんだよっ」

「昔、知り合いに教えてもらって俺なりに改良した。実戦向きにな。どう改良してあるかは自分で考えろ。お前なら同じ事が出来るはずだ。後はちゃんとした戦い方を教えてもらえ。中途半端な知識で自分は強いと勘違いするからこんな目に遭うんだ」

3人はデコに角が生えたのか?と思うぐらい腫れていた。

「お前は一体何者なんだ?」

魔法や格闘術だけでなく、隠密が使うような技まで使えるマーギン。ラリーはこんな奴がいることが信じられない。

「ん?俺は魔法書店の店主だ」

「嘘つけーーーっ」

マーギンを嘘つき呼ばわりしたラリーはタンコブにもう一度デコピンを食らって悶絶したのであった。