軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

作戦会議

サリドンが訓練に復活した日

「マーギンさん」

「もう痛みはないのか?」

「はい。当たり前のように思っていることが、当たり前ではない事に気付かせて頂きました。申し訳有りませんでしたっ」

と、謝られたが、マーギンは何の事かさっぱり分からない。が、サリドンの顔付きがスッキリしていたので、

「そうか、ならいい」

と、全てを分かっているようなフリをした。

「自分は自己訓練をしたいと思うのですが、よろしいでしょうか」

「やりたいことがあるのか?」

「はいっ」

「なら好きにやってみろ」

人に言われてやるより、自分でやりたいことをやった方がいいだろうなと、サリドンに任せることにした。

マーギンはタジキのタンク訓練に加わり、単純な突進だけでなく、突き上げたり、突進した後に下がって連続で突進したりをやってみせて、カザフとトルクに同じようにやらせておいた。

そしてサリドンが何をしているか見ていると、サリドンは基本中の基本からやり始めていた。

壁の的に正確に当てる練習。初めは単発で正確に当てる事に集中して、それから速射と連発を自分なりに工夫してやっているようだ。あれなら任せておいていいな、とマーギンは呟き、他の人の訓練を見ていくのだった。

ー軍との訓練日前日ー

あれから個別の訓練をやりとげ、各人共能力の底上げがかなり出来た。後はそれを実戦でどう活かして行くかの確認だ。対人と対魔物は勝手が違うけれども、作戦をどう立てるかを話しながら教えて行くことに。

「ちい兄様、ロッカ、軍と合同訓練とか初めてだよね?」

「そうだな」

「ちい兄様は向こうの戦力を知ってる?」

「槍隊、盾隊、剣、弓隊、魔法部隊がいる。後は騎馬隊だ」

マーギンは大隊長に騎馬隊は不参加にしてもらうように伝えてある。騎馬隊を相手にすると馬を潰さなくてはいけないからだ。

「騎馬隊は事前に不参加にしてもらった。馬を潰したくないからね」

「人は潰してもいいのか?」

「治癒師を実戦並みに用意してもらってるからそこは気にしないで。でも首を刎ねないでね。それは治せないから」

そんな事をするかと言われたけど、やりかねない状況になるかもしれないしな。本当に危ない時はプロテクションを張るけれども、乱戦になると見落とす可能性があるのだ。

「向こうはどう出てくると思う?」

「盾隊が最前列で守りを固めて、まず槍隊から仕掛て来るだろう」

オルターネンは合同訓練をしていなくても軍の戦い方は知っているようだ。

「じゃ、その対策は?」

「槍を躱して、中に突っ込むしかないだろう」

「剣士しかいないとそうだね。でも多勢に無勢という事もあるからね。個々の強さで勝っていても限界がある。こちらの戦力は何がある?」

「剣士、短剣と暗器使い、弓使い、魔法使いだな」

「じゃ、向こうの戦力で一番厄介なのは何?」

「やはり槍隊だろうな」

「そう?護衛訓練の時に槍はいなかったけど、無惨にやられたよね?その時に厄介だったのはなんだった?」

「遠距離攻撃か」

と、オルターネンはハッとする。

「魔法使いはそんなに気にしなくていい。多分ファイアボール主体だからスピードも遅いだろうし、玉がデカいから避けやすい。弓隊は正確に狙って来ると言うより、大量に射って来る」

「矢の雨が降って来るわけか」

「そう、矢の雨が降って来て、それに対処している間に槍隊に突っ込まれて負ける。剣士が槍を抜けようとしたら盾隊に阻まれるだろうからね。こういう戦いは数が多い方が圧倒的に有利なんだよ。それは魔物相手でも同じだね」

「アイリスのファイアバレットを初めに大量に打ち込んでみるか」

「盾隊が使う盾は鉄だろ?至近距離で撃たないと防御される。だから初めに狙うのは弓隊と魔法部隊の遠距離攻撃部隊をまず潰さないとダメなんだよ」

「それをしている間に槍隊に突っ込んで来られるだろ?」

「うちの魔法使いは特殊な魔法が使えるのを知ってるよね」

「特殊な魔法?」

「そう、向こうの突進を止めるのはアイリスの役目だ」

「どうやって?」

「アイリスのスリップを使う。初めに突っ込んで来た奴がコケたらどうなると思う?」

「後続が巻き込まれるのか…」

「そう。それで向こうが混乱したらバネッサとカザフで向こうの戦力を散らす。走ってクナイを投げて混乱させるんだ」

「遠距離攻撃部隊はどうやって潰すのだ?」

「シスコとトルクにこいつを敵の上に射ってもらう。それをアイリスとサリドンで撃ち落としてくれ。この袋にファイアバレットが命中したらシスコは風魔法で敵の中央から奥まで拡散させる」

「その袋の中には何が入っているのだ?」

「粉にした唐辛子にアルコールを混ぜたものが入っている。ファイアバレットで熱せられたらガスのようになるはずだ」

「唐辛子を敵に撒くのか…」

「これを吸ったり、目に入った者はのたうち回る。熊とかも追い払えるようなものだからね。だからこちらも吸うとダメージを受けるからシスコの風魔法が頼りだな」

「向こうにも風魔法使いがいないのかしら?」

「いてもお前ならなんとかなると思うぞ。通常の風魔法は風を吹かせるだけだ。お前はエアキャノンを撃てるようになってるだろ?向こうが風魔法で対応しようとしたらエアキャノンを撃て。全体に広がる風に勝てる」

「わかったわ」

「トルクはダメージを受けた遠距離攻撃部隊を射抜け。それでこちらはずっと楽になる」

「わかった」

「ハンナリー」

「はっ、はいっ」

「お前はタジキと組んで、向こうの戦隊の中に突っ込んでスロウを掛けまくれ」

「えっ?ウチも戦闘に加わって、いっちゃん危ない所に行かなあかんの?」

「お前は追いかけっこで逃げ切った実力があるだろ?今回の相手は多人数だからタジキに守らせる。タジキ、この盾を使え」

マーギンはタジキ用に作られたウロコの盾を渡す。

「うぉー、カッケぇぇ」

「その盾は剣でも斬れんし、火魔法も防げる。ハンナが後から襲われんようにちゃんと守れよ。ハンナの逃げ足は速いから、振り切られないように身体強化をして行け」

「わかった」

「マーギン、私は参加出来ないのか?」

ローズはやっぱり見ているだけは嫌か。

「んー、ならこっちはカタリーナが討ち取られたら負けにしようか。こっちは相手を殲滅するか総大将のマルク閣下を討ち取ったら勝ちにしてもらおう。ローズがカタリーナを守り続ける以上負けはない。ローズが文字通り最後の砦だな」

「私が的になるの?」

「そう。ローズがやられても逃げ切れ。それでうちの負けはない」

相手は軍人だが、自国の姫を討ち取れる訳がない。攻撃するというより捕縛ぐらいしか手立てはないだろう。今のローズを抜いてからカタリーナを捕まえるのは至難の技だ。こちらの訓練にもちょうどいい。

剣士達の連携はお任せしておく。サリドンは遠距離攻撃の魔法使いではなく、剣士と共に相手に突っ込み、至近距離で魔法を繰り出す悪魔のような存在になるだろう。

明日の訓練はちょっと楽しみだなと思うマーギンなのであった。