軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

焼肉は屋上で

「大隊長、ここは立ち入っても良かったのですか?」

オルターネンが大隊長に驚いたように聞いている。焼肉会場は中庭ではなく、宿舎の屋上でやることになったのだ。

「別に屋上を解放しても構わんのだがな、落ちる馬鹿が出るかもしれんという理由だけなのだ」

屋上は屋根の上というわけではなく、ちゃんとテラスになっている。

「中庭より、こっちの方がいいですね。煙を気にせずにすみます」

マーギンもこっちの方がいいと思ったようだ。

「だろ?中庭でやると、窓から物欲しそうな視線にさらされるからな。落ち着いて食うならここの方が良いと思ったのだ」

大隊長も人目を気にせずに食べたいのだろう。食堂で食ったら部下達がすーっと消えて行くしな。立場のある人は飯食うのも大変だな。

灯り魔法の玉を浮かべて、バーベキューコンロをセットする。ガキ共と大隊長はこっちだな。特務隊とカタリーナ、ローズ。星の導きとハンナリー。この組み合わせでいいか。

3カ所に分かれて各々が好きに焼いて食いたまえ。

さぁ、始めるかと準備をすると、

「お前ら、自分の場所に行けよ」

カタリーナ、アイリス、ハンナリーが尻尾を振るようにしてこっちに来る。

「えーっ、マーギンの為にせっかくいいお肉持ってきたのに」

カタリーナは城から肉をもらってきたらしい。確かに良い肉の塊だ。しかし、ローストビーフにするような肉だ。おそらくマルシンだろう。鉄板焼ならこの肉の方が良いだろうけど、もう口は焼肉になっているので、俺は花咲カルビをタレで食いたいのだ。

「肉の準備はしてあるから、それはお前らの所で焼いて食え」

「えーっ、私もここで食べたい」

「姫様、僕が替わってあげる」

いつも優しいトルクはカタリーナと場所を替わってやるようだ。そしてタジキはアイリスと、カザフはハンナリーと席を替わってやると言った。

「お前ら、自分で焼けよ」

結局、小娘3人が同じコンロに来ることになってしまった。

あっ…

タジキが仕込んだ肉を持っていきやがった。代わりにアイリスが星の導き達が用意した肉を持ってくる。これもまだ塊のままじゃないか。

マーギンはコンロの上にタイベ肉で作ってもらったソーセージをぽいぽいと載せ、肉の塊を焼肉用に切り分ける。なんか上品な肉だから貴族街で買って来たのだろう。高そうな肉ではあるが、俺は今日はカルビを食いたかったのに…

せっせと切った肉をタレに少し浸けておき、その間に焼けたソーセージを食う。

「このソーセージは美味いな。どこで仕入れた?」

大隊長はソーセージをバクバク食いながらマーギンに聞いて来る。

「タイベ産の豚肉をトナーレの食堂でソーセージにしてもらったんですよ」

「ほう、こいつは流通させるのか?」

「いや、一般販売するほど数が作れないと思いますよ。タイベから肉を持ってくるのも大変ですし。俺は商売人でもないですしね」

「お、そうだ。商売と言えば姫様の庶民街の家を改装して店にする予定にしているのだ」

「え?あの家を店に」

「姫様にシスコとハンナリーの店を手伝えと言ったのだろ?」

「言いましたけどね。あそこを店にするかどうかはシスコに相談された方がいいですよ。なんか考えているかもしれませんし」

「そうか、では酒が回らんうちに話しておこう」

大隊長はそう言って皿に載せてあったソーセージを全部持って行きやがった。それとこっちの肉よりあっちの肉を食いたいのだろうな。

「マーギン、お肉焼いてーっ」

「自分で焼けと言っただろうが」

カタリーナが自分で焼くとあまり美味しくなかったようで、焼けと言って来る。

マーギンはしょうがないなと言いながら、小娘共の肉を焼いていく。この肉ならバター醤油の方が合いそうだな、と、タレに浸けてない肉を焼き出した。

「うちに魚焼いてぇな」

ハンナリーは魚を希望する。

「今回魚は…」

あっ、そうだ。はんぺんを食わなければ。

「ちょっと変わった魚を焼いてやる」

マーギンははんぺんを焼き始めた。

「これ魚なん?」

「魚から作ったはんぺんというものだ。すぐに焼けるからバター醤油をかけて食え」

「うわっ、フワッフワやん」

「だろ。これを作るの面倒臭いんだからな」

カタリーナとアイリスも食べたいというので、はんぺんを次々と載せていくと、焼けたしりからバクバク食っていく。肉もせっかく焼いてるのに食えよ。

カタリーナとアイリスの為に焼いた肉を自分で食べ、次は焼鳥を焼いていく。タイベで仕入れたセセリやナンコツ、ボンジリなども一緒にだ。

そしてカタリーナがナンコツにハマる。

「これ、ゴリゴリした歯触りだけど美味しーっ」

「ナンコツばっかり食うな。俺の分が無くなるだろうが」

「ナンコツってなーに?」

「これは鶏の膝の骨だ」

「これ、骨なの?」

「ナンコツというのは軟らかい骨という意味だな。王都で見かけないけど、タイベでは売ってたぞ」

「へぇー、今度コックに頼んでみよっと」

やめれ、姫に何を食わしてるんだと怒られそうじゃないか。

カタリーナにナンコツの説明をしている間にセセリとか食われてしまった。こいつら用に鶏モモ串の味付け変えるか。

3本串を並べてその上にチーズを削って掛け、程よく溶けたら指先から出したバーナーて炙る。

「ほら、お前ら用にチーズのせにしてやったぞ」

わーいと喜ぶ3人。それから何本もお代わりを要求され、ひたすら鶏モモ串チーズのせを焼いたのだった。

「トウモロコシは食えるか?」

「食べるっ」

自分用と合わせて4本皮付きのまま焼いていく。これで小娘3人はご馳走様になるだろう。それから自分の分はゆっくり食べよう。

トウモロコシの皮が真っ黒に焼けたら、それを剥いて、醤油を塗ってもう一度焼く。

ショワワワワー

醤油が炭火に落ちて香ばしい匂いが漂う。この匂いはたまらんな。

仕上げにバターをちょいと塗って完成。

「熱いから火傷すんなよ」

皆でアチッと言いながらトウモロコシを食べているとローズがジーーーっとこっちを見ているのに気付いた。

「ローズも食べる?」

「い、いや私は…」

「トウモロコシが嫌ならピーマンを焼いてやろうか?」

「イヤだーーっ」

お決まりになって来たローズとのやり取り。ちょっと楽しい。

「トウモロコシはたくさん買ってきたから遠慮しなくていいぞ」

「な、ならば頼もうかな」

オルターネン達も食べるだろうから、ゴロゴロと載せておく。

「マーギンさん、アイスクレープが食べたいです」

アイリスからのおねだり。その日の課題をクリアしたらご褒美に貰えるものなので、アイリスとカタリーナだけまだ一度も食べられてないのだ。

「あれはご褒美の…」

と、言いかけたら泣きそうな顔をする。まぁ、今までの事を考えたらよく我慢したほうか。

「今日だけ特別だぞ」

そう答えるとぱあっと顔が明るくなった。これからずっと平和が続くのであれば、こんな子供の女の子に特訓をさせないで済むのにな、とマーギンは思いながらアイリスとカタリーナに南国フルーツたっぷりのアイスクレープを作ってやるのだった。

概ね食べ終わった頃に大隊長とシスコがこっちに来た。

「マーギン、姫様の家をお店にする件を受けようと思うの」

シスコは大隊長からの提案を受けたようだ。

「別にいいけど、高級品を扱うにしては場所が悪くないか?思いっきり下町だぞ」

「それは分かってるわよ。でも、繁華街とか空き店舗もないと思うの。裏通りとかは危ないかもしれないし」

「まぁ、そうかもしれんな」

「それと、警備員に扮した騎士様を店の警備につけてくれるんですって」

あー、なるほど。家ではなく店にしたら警備員がいてもおかしくない訳か。今回の件はカタリーナの護衛を増やすのが目的か。下町に出来た高級品を扱う店だから警備員を雇っていることにすれば自然だな。

「へぇ、良かったな」

「ハンナもそれでいいわね?」

「うちはかまへんで。王都に詳しないからな」

「店の名前は考えてるの?」

「ハンナリー商会にしようと思てるで」

「それは商会の名前でしょ?お店の名前よ」

「別にするん?」

「高級品を売る店なのよ。それにあった名前にしないとダメよ」

シスコ判定ではハンナリーネームは高級イメージには失格らしい。

「うーん、名前かぁ。あっ、マーギン。あのピンクのフクロウを看板にするんやんな?」

「お前らがそうしたければな」

「ほならピンクフクロウとかどうや?」

ピンクと付くとちょっと夜のニオイのする店の名前に聞こえるのはなぜだろう?

「真面目に考えてっ。庶民街で 12(イチニ) を争う店を目指すのよ」

シスコはそんな事を考えてんのか。

「えーっ、真面目に考えてるやん。あ、マーギンて異国人なんやろ?異国の言葉でピンクってなんて言うん?」

「モモイロだな」

「1番2番の珍しい言い方ないん?」

「んー、そうだな。ワンツー、イーアルとか、アンドゥとかかな」

「色々とあるねんな。ほなら1番2番とモモイロのフクロウを繋げて、アンドゥモモフクとかどうや?」

アンドゥモモフク…

お前、インスタントラーメンでも売るつもりか?

「結構いいわねそれ」

やめれ、どこからか訴えられたらどうするんだ?

「もっと短い名前の方がいいぞ」

「そうなん?シスコ、もっと短い方がええねんて」

「どうしてかしら?」

「店の名前がそのままブランド名になったりするだろ?化粧品の入れ物とか服に名前入れたりする時の事を考えたら短い方がいいんじゃないか?」

ということで、アンドゥを少しもじって、アンジュという名前にするそうだ。

その後、シスコとハンナリーとカタリーナで、店の紋章はどうする?とか盛り上がるのだった。