軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

くっころさん

マーギンはローズの訓練を始める前にそれぞれを見る。

木登りは3人とも苦戦しているな。手を回せるサイズの木だと登りやすいけど、大木かつ、掴むところが無い木だと普通には登れんからな。一気に駆け上がるような登り方をしないと無理なのだ。枝があるのは5mちょいの高さの所。あそこに飛び付くことが出来たら、後は逆上がりみたいな感じで枝に登りきって完了だ。あの様子じゃ3人とも今日は1回も登れんだろう。

ちい兄様もハンナリーを捕まえるのに苦戦している。追い込む場所がない所で逃げる野良猫を素手で捕まえるのは相当難しいのだ。

サリドンも苦戦。バネッサは走ることもせずにひょいひょいと躱しているから、遊びにもなっていない。今日サリドンが魔力切れになって終わったら内容を見直さないとダメだな。

カザフ達はホープの教えにそって、1で振り上げて2で振り下ろす。これのみをやっている。ホープはカザフ達に木剣ではなく、長い棒でそれをやらせていた。振り下ろした先に小さな石を置き、棒の先でそれに当たるように指導をしていた。真っ直ぐ振り上げて、真っ直ぐ振り下ろす。これは簡単そうに見えて難しい基本動作。長い棒なら尚更だ。ホープはやはり剣術道場をやればいいのでは?と思う。

「マーギン、まだ始めないのか?」

「じゃあやろうか。ローズの相手はこれだ」

マーギンはピーマンを手にした。

「ピーマンで何をするつもりだ?」

物凄く嫌そうな顔をするローズ。この前、カタリーナにほぼ生のピーマンを口に突っ込まれていたからな。

「これを投げるから、避けきってみて。ピーマンがローズに当たれば、そのピーマンがローズの晩飯に加わる」

「なんだとっ」

ローズの眉間にシワがよる。その顔を楽しみつつ、マーギンはニヤッと笑い、マジシャンのように指の間に全部にピーマンを挟んで見せた。

「たくさん買ってきたからお腹いっぱい食べられるぞ」

「貴様っ…」

「ローズが全部避けきれたら俺が食べるから安心しろ」

「そのピーマンは斬っても良いのだな?」

「俺は避ける事をお勧めするけどね。それでもローズが斬りたいならどうぞ。泣くはめになると思うけど」

「ちまちま避けるより、全部斬り殺してくれるっ」

ピーマンを斬り殺すって…

「じゃ、姫様を先に逃がせた後に、それを追い掛けつつ迫りくるピーマンを撃退するという内容だ。そのまま立ち止まってるとピーマンでも俺が投げたら怪我するぞ」

マーギンは真剣な顔をしてローズに言う。ローズはこの前投げられたゴムクナイの事を思い出した。マーギンはあれよりきっと速く投げてくると。

ローズは言われた通り走り出したので、マーギンはピーマンを投げる。

「ふんっ、これを避けるのは簡単だ」

後ろから来たピーマンをひょいと躱したローズ。

「ふはははっ。ぬるいぞマーギンっ」

余裕のローズ。しかし…

「ホーミングセット、ローズ」

マーギンはピーマンにホーミングの魔法を掛けた。するとローズの横をすり抜けたピーマンが弧を描いてローズに向かってくる。

「なっ…」

「なに安心してんだよ。魔物でも人でも一度躱しただけで諦める訳がないだろ?執拗に追われる事になるんだ。さっさと対処しろ」

「クソッ」

ローズは自分に向かって来たピーマンを剣で斬り付けた。

シパっ

哀れピーマンは真っ二つに…

「ふはははっ。見ろっ、ピーマンなんかこうしてやれば良いのだ…?」

ぴとっ

その時にローズの顔に何かが当たった。それをローズは掴んで見る。

うねうねうねうねっ

「いやぁぁぁっーーーっ!」

ローズは叫んだ。

ローズの顔にくっついたのは斬られたミミズ。マーギンはピーマンの中にミミズを仕込んであった。ローズが向かって来たピーマンを斬った事により、中身のミミズが顔にへばり付いたのだ。ミミズも斬られた事により、激しくうねうねしている。

「まだ終わりじゃないぞっ」

マーギンは残りのピーマンを一斉に投げ、8個のピーマンにホーミングの魔法を掛けてローズを狙った。

「ローズ、叫んでいる暇はないぞ」

ローズは自分に向かって飛んでくるピーマンを見て絶望する。あの全てにミミズが…

ローズは必死に走る。何としてもあれから逃げなくては。斬ればミミズが飛んでくる。

「ようやく本気になったか」

マーギンはその様子を見て、ピーマンを分散させた。後ろからだけでなくて上、横とあちこちから迫りくるように念動力で操作していった。

「やっぱりこれ、難しいな」

ピーマンにはホーミング魔法を掛けてあるので、どこかに飛んで行ってしまうことはないのだが、複数を同時にバラけさせて操作するのはかなり難しい。マーギンはマリオネットを操作するようにイメージと手を連動させて、自身の訓練もついでにするのであった。

ー木登り組ー

「こんなの無理よっ」

カタリーナがまったく登れずにゼーハーしている。アイリスもだ。

「マーギンは本当に嫌な課題を出すわね」

シスコもまた登れずにいた。足にスパイクを付けたら踏ん張れるものの、手で掴める所がないので、カッカッカと3mぐらいまでは上がれるが、そこから上に行けずに落ちるのだ。

「他の道具を使っていいか聞いて来るわ」

シスコはこのままでは絶対に登れないと判断して、他に道具を使っていいのかの確認をマーギンにしに来た。

「何やっているのかしら?」

「ピーマン操作。なに?30回終わったのか?」

「まだ一回も登れてないわよっ。わかってるくせに」

「ならなんだ?」

「他の道具とか使っていいのかしら?」

「手段は問わないぞ。別に素早く登れるなら何をしてもいい」

「分かったわ」

シスコは余裕で暇そうなバネッサの所に行き、クナイを借りたのだった。

「えーっずるいっ」

シスコはクナイとスパイクで登り始めた。それを見たカタリーナがずるいとシスコに言う。

「真似してもいいけど、必要なものは自分で調達しなさい」

そう言われた二人はマーギンの所に来て、クナイを貰って戻って来た。

マーギンが木登り組を見ると、3人はスパイクとクナイを使って登っている。

「セミの幼虫みたいだな…」

それを見たマーギンはそう呟いた。

一番初めに終わったのはオルターネン。

マーギンはピーマンをホーミングのみに切り替えてオルターネンと話す。

「捕まえられたの?」

「あぁ、かなり苦労したがな」

「ハンナリー、体力切れか?」

「ちゃうねん、オルターネン様が怖かってん…」

どうやらオルターネンはすばしっこく逃げるハンナリーに威圧を放って硬直させたようだ。なんて大人気ない事をするのだ、ちい隊長。

ぐりりりりりっ

剣の鞘をほっぺたにグリグリされるマーギン。

「痛だだだだっ 何にも言ってないだろ?」

「貴様はローズに何をしているのだ?泣き叫んで逃げているではないか」

あ、ちい隊長の方じゃなかったのか。

「退避行動の訓練だよ。逃げろと言ってるのに戦おうとするから精神的に追い詰めているだけ」

「ったく、貴様は…」

「ちい兄様はズルしたから、ご褒美は無しね。明日も同じ事をするけど、ハンナには対策しとくから」

「ふんっ、それでも捕まえてやるがな」

「もう暇ならロッカの柔軟手伝って来て。一人でやるより、サポートがあった方が上手くいくかもしれないから」

と、オルターネンにはロッカの手伝いをさせる事に。

「終わったぜ」

バネッサも戻って来た。

「サリドンは?」

「ヘタリ込んでるぞ」

「どんな感じだった?」

「遊ぶ事も出来なかったぜ」

「そっか。なら真っ当にクリアしたのはバネッサだけだな。今から褒美を作ってやる」

「何を作ってくれんだ?」

「甘いお菓子だ。フルーツとラムレーズンとどっちがいい?」

「ラムレーズン!」

マーギンは魔導鉄板を2つ出す。

「2つも使うのか?」

「こっちは生地を焼く用。こっちはアイスを作るんだよ。まぁ、見てろ」

いつもの魔導鉄板にクレープ生地を流して丸くして焼き、それを皿の上に載せておく。

「こっちの鉄板は冷たくなるんだよ」

マーギンは予め作ってあったアイスクリームの元を流して、お好み焼き用のテコでチャッチャッと混ぜていく。

「あっ、固まって来やがったぜ」

「だんだん冷えてアイスになってきてるんだよ。ここにラムレーズンを投入して混ぜて完成っと。で、これに包んだらアイスクレープの完成だ。ほら、今日のご褒美だ」

マーギンが皿ごとアイスクレープを渡すと、バネッサはかぶりつく。

「うめぇっ」

「良かったな。今日食べられるのはお前だけだと思うぞ。シスコたちに自慢してこい」

マーギンがそう言うと、口の周りにアイスを付けたまま走って行ったのだった。

「なぁ、マーギン。ローズがエライことになっとんで。大丈夫なんか?」

ハンナリーにそう言われてローズを見るとうずくまっている。そしてホーミング魔法に掛かったピーマンが全部ローズに 集(たか) っていた。

マーギンはホーミングを解除してローズに近付く。

「うっうっうっ…」

蹲ったまま泣いているローズ。

「大丈夫か?」

ローズは顔を上げない。

「貴様と言う奴はっ 貴様と言う奴はっ…」

「だから泣くはめになると言っておいただろ?」

返事をしないローズ。

そして、結局本日の合格者はバネッサのみとなり、木登り組は晩飯抜き、ローズにはたんまりとピーマンが添えられた晩飯が提供されたのだった。

ーその夜ー

「くっ、殺せぇぇっ…」

ローズは夢の中で、ミミズの足が生えたピーマンに襲われてクッコロさんになっていたのだった。