軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

おっさんは話が長い

ロッカがぷちゃっとした後はもうモグラが見付からなかったので、今回の討伐は終了となった。ロドリゲスには本当はこう倒すのが王道なんだと伝えておく。

「こいつはこれから増えそうか?」

ロドリゲスは討伐完了とのことで、ポケットウィスキーのような物を飲みながらダベリ始める。

「多分ね。原型を留めてないからなんとも言えないけど、ここにいた奴はタイベのやつより小さくて弱かったような気がする」

「こいつはどうやって増える?」

「魔物の増え方ってよく分かってないんだよ。魔蛾とかの虫系の魔物は卵を産む。でもオス・メスの区別がない」

「雌雄同体ってやつか」

「多分。ロドは魔狼の幼体を見たことある?」

「そういやねぇな」

「そう。俺も見た事がないんだよ。どこかに巣穴があって、そこから大人になるまで出てこないのかなって探した事もあるんだけど、巣穴自体を見つけられなかった」

「それで?」

「討伐しても討伐しても魔物ってすぐに増えるだろ?どこから出てくるのか分からないんだよ。いつの間にかいるって感じなんだよね」

「そうだな… お前が討伐した白蛇もどっから来やがったんだろうな?」

「あいつは人の悲鳴を学習していたから、すでに存在していたとは思う。いきなりあそこに出たわけじゃないだろうね」

「なるほどな。俺も魔物がどこから来るか長年不思議でな、お前と同じように巣穴を探しても見付けられんかった。魔狼もオス・メスわからんだろ?」

「大きい小さいはあっても区別出来るものないよね」

「そうだ。大概の魔物がそんな感じだな」

「あとピンクロウカストって知ってる?虫系の魔物なんだけど」

「あぁ、知ってる。あいつは強くねぇだろ?」

「一匹一匹はね。でも俺はあいつが最凶の魔物だと思ってる。あいつの大群が発生すると全てが食われてなくなる。小麦とかだけじゃないぞ。全てだ。草木はもちろん魔物も人も…」

マーギンはギリッと唇を噛んだ。ピンクロウカストに食われた人の光景が脳裏に甦ったのだ。

少し気持ちを落ち着かせて、

「でさ、今回のモグラの情報を各組合に知らせるだろ?」

「あぁ。そのつもりだ」

「ついでにピンクロウカストを見かけたら、発生する場所を特定して根絶やしにするように知らせておいてくれないかな。土の中とか出てくる場所があるから」

「そうなのか?」

「うん。あいつが出て来なくなるまで焼き払うように知らせておいて。大群になったら街とか壊滅することになる」

「まじか?」

「大マジ。ラプトゥルとか出ても街が壊滅することはない。でもピンクロウカストが大量発生したら誰も対応出来ない」

「お前でもか?」

「俺がやると、ピンクロウカストを殲滅出来ても街ごとなくなるぞ」

「なんだそれは…」

「大群になったらそれぐらいの火力がいるってことだ。下手なファイヤボールとか撃ったら、火ダルマになったピンクロウカストが飛び回って火事になる。剣でちまちま斬ってもラチがあかないからな。手に負える間に出てくる場所を特定して根絶するしかない。大群にさせない予防策が重要なんだ」

「分かった。それは通達しておくわ」

マーギンはしばらくロドリゲスと話した後、カタリーナの所へいく。寝る準備は終わっているはずなのに、座ったままなのだ。

「寝ないのか?」

「眠くない」

「明日も一日移動だぞ。ちゃんと寝ろ」

そしてしばらく黙ったカタリーナはポツッと聞いてくる。

「マーギンは私がカザフに勝てないことを知ってて勝負しろと言ったのよね」

「そうだ」

「私を騙したの?」

「騙してはいない。勝てたら次のタイベに連れて行ってやるつもりだったぞ」

「でも絶対に勝てないと分かってたのよね」

「そうだな」

「酷いじゃない。あんなに死ぬ気で頑張ったのに…」

「理不尽だろ?」

「とってもっ」

「カタリーナ、世の中は理不尽で溢れている」

「そんなの知ってるわよっ」

「で、お前は理不尽を与える側の人間だ」

「えっ?」

「お前は王族だ。この国の人はお前が命令すると従わざるを得ない者が大半だ。命令までいかなくとも、希望を口にするだけでそれを叶えねばならないと人は動く。でもお前はまだ何も成していないし、国に貢献したわけでもない。ただ王族に生まれたというだけの人間だ。それでも人はお前の言うことを叶えなければならない。実に理不尽だとは思わんか?」

「そ、そんな事はしてないもんっ」

「直近で言えば大隊長に鍛えてもらったことだ。大隊長の任務はお前を護衛するのが仕事であって、鍛えて足を速くするのは仕事ではない。本来の仕事をやりながらお前の鍛えてって言う言葉だけで、余計な時間を使ったわけだ。その分、大隊長が鍛えねばならなかった騎士が鍛えて貰えなかったかもしれない。お前は無自覚だろうが、そういった事をしてきたんだと知った方がいい」

「だってマーギンが大隊長に鍛えて貰えって言ったんじゃない」

「あれは大隊長への仕返しだ」

「仕返し?」

「そう。大隊長が王様との焼き肉会に俺を連れて行かなかったら、お前の面倒を見る必要もなかったし、王様と王妃様とも会うこともなかった。つまり、お前とカザフが勝負する事も無かったんだよ」

「マーギンは私が来るの嫌なの?」

「カタリーナ自身が嫌とかはない。だけど王族としてのお前は別だ。もし何かあったら、関わった人全員に責任が発生する。俺の所に来ている時はカタリーナ個人として見ているけど、王族の身分がなくなる訳では無い。それを見ないようにしているだけだな」

「マーギンは本当に私が来るの迷惑なの…?」

「迷惑だな。非情に煩わしい」

マーギンにそう言われて泣きそうな顔をするカタリーナ。

「でもな、お前が俺の所に来て何かを学んでくれる事があればそれは嬉しい」

「意味がわかんない…」

「俺はお前がこれから何をしていくのかは知らんが、国政に携わる人になるか、その人の奥さんになるかは確実だろ?王様にはなれないだろうしな」

「うん、私が王になることはないと思う」

「でも何らかの形では国政に関わる事になるだろう。その時に良い国になるように力を発揮してくれると良いなと思ってる」

「そんなの当然じゃない」

「で、良い国って言葉が曲者でな、何が良い国なのかは、人によって異なる。貴族たちが良い国だと思っていても庶民はそう思ってないかもしれない。逆に庶民が面白おかしく暮らしていて良い国だと思っていても、何も自由のない貴族が不満を持つかもしれない。家を継げない貴族が平民になってこんなシステムを作った国を恨むかもしれない。良い国ってのは立場や人によって異なるんだよ」

「シュベタイン王国は良くない国なの?」

「俺個人としては良い国だと思っている。庶民が圧政に苦しんでいるわけでもないし、長らく戦争もなくて平和だ。しかし、これは国のトップ、つまり王様やその周りにいる人が変われば変わってしまうこともある。だからお前は自分の目で他の王族が見ることのない本当の庶民の暮らしとか人を見ておいて欲しいと思う。そして、そういう人達は簡単に理不尽な目に遭うということを知っといてくれ。その理不尽を与えるのは権力者である自分達だとな」

「私に理不尽なことをしたのはそのせいなのね」

「そう、自分で体験しないと言われてもわかんないだろ?」

「うん」

「ま、お前はタイベに行くときも、今回の勝負もちゃんと結果を受け入れた。それに対して王族としての権力も使わなかったし、努力もきちんとした。それは褒めてやれる。お前はきっと俺が思う良い王族になれると思うぞ」

「マーギン…」

「タイベにはこの秋に行く。それまでにもう一度チャンスをやる」

「でもカザフに勝てると思えない…」

「カザフには一生勝てん。あの素早さはあいつの努力と天から授かったギフトというやつだからな。努力だけで追いつけるものじゃない」

「そんなのズルいじゃない…」

「お前も十分ズルい。カザフが何を努力しても王族になれんのと一緒だ。で、俺も十分過ぎるほどズルいからな」

「マーギンは何がズルいの?」

「俺のギフトは魔法の能力だ。努力して身に付けたものじゃなく、勝手に授かったものだ。お前の王族の身分と一緒だな。そしてギフトの力を使う者はそれを使って何かを成さなければならないと思っている。神様からズルい物をもらった対価という奴だ。俺は魔物討伐、お前は国政だ。使い方を間違えば人を不幸にするものだというのも共通だな」

「私と共通?」

「そう。どちらも凄い力だ。その力を誰かの幸せの為に使ったつもりが不幸にしてしまうこともある。特にお前の力は使い方が難しい。知らずのうちに人を不幸にする事が減るように色々と学んでくれ」

「うん」

カタリーナはマーギンの言うことが少し分かった気がした。

「次のチャンスは何をすればいいの?」

「タイベに行く許可を王様と王妃様から自分で取れ。後は体力トレーニングを引き続きすること。それとシスコとハンナリーが王都で店を開く予定をしている。それを手伝え」

「それだけでいいの?」

「お前には良い国にするための感性を磨いてもらわないとダメだからな。一番高いハードルは親からの許可だ」

「それ全部クリアしたら連れてってくれるの?」

「お前がちゃんと学ぶ気があるならな」

そこまで言うとポロポロと涙を流すカタリーナ。

「マーギンっ」

と、抱きつかれそうになったので、サッと避ける。

「小娘ぐらい簡単に躱せますわよね?」

瞬時に王妃の声が脳裏を過った。心なしか王妃の隠密からチッと舌打ちした音が聞こえた気がする。

べちょっ

マーギンに避けられると思ってなかったカタリーナはそのまま顔から地面に突っ伏したのだった。

隠密がガッツポーズをしたような気がするけど、この責任は取らんからな。と、心の中で先手を打ったのであった。