軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

忖度?なにそれ美味しいの?

「勝者カザフ!」

マーギンがそう宣言すると、えっ?という顔をするみんな。

「なんだよ?カザフの方が早くゴールしただろ?」

姫様への忖度とかしないマーギン。その宣言を聞いたカタリーナ。

「う、う、うわぁぁぁぁんっ」

その場で泣き崩れる。

「貴様ぁ、今のは姫様の勝ちでもおかしくなかったではないかっ」

責任回避に必死な大隊長。

「大隊長、今の勝負はカザフの勝ちです。大隊長にも見えていたでしょ?」

「ぐぬぬぬっ しかしだなぁ…」

「大隊長らしくないですよ。姫様がかなり努力されてきたであろうことは理解しています。たった2ヶ月間で見違えましたからね。血反吐吐くような訓練に耐えたというお言葉は信じておりますよ。でも負けは負けです。勝負は非情だということを一番理解されているのは大隊長では?」

マーギンの正論に反論出来ない大隊長。

マーギンはちらっとカザフの顔を見る。カザフは泣き崩れているカタリーナを見て悲痛な顔をしているが、わざと負けてやろうとした訳ではなさそうだ。もし終盤の違和感を引き出したのがカザフ自身の心が原因だとしたら、ハンターとしては致命傷になる。さて、原因はなんだ。

マーギンは泣き崩れているカタリーナには目をやらずに原因を探っていた。

「カザフっ、てんめぇぇっ、真剣勝負に手を抜きやがってぇぇっ」

そう言ってバネッサが走ってきた。

「手なんか抜いてねえよっ」

「嘘つけっ。なら何で終盤にあんなに遅くなりやがったてんだっ」

「知らねぇっよっ。急に身体が重くなったんだよっ」

「はぁっ?情けねえっ。姫様に同情して身体が言うことをきかなくなったんじゃねぇのかよっ」

「それなら始めっからそうなってるわっ」

口喧嘩を始めるバネッサとカザフ。元々は1回勝負のつもりだったからな。負けてやるつもりなら1回目の勝負でそうなるか… ならやっぱり他の誰かが原因か。

マーギンはチラっとトルクを見る。トルクには見えざる手の事を話したからな。こいつなら見ただけで使えてもおかしくはない。

「姫様、頑張ったのに負けちゃったね」

と、ニッコリとマーギンに微笑む。トルクは癒し系ではあるが、こういう時に何を考えているのか分からんな。

「お前、脳が震えたか?」

「なんのこと?」

と、キョトンとする。まぁ、意味はわからんわな。

マーギンは他のみんなも聞いているだろうから、トルクに問い正すのは止めた。トルクがやったとしたのなら、まだこいつの能力を広めるのは良くない。

マーギンは泣き崩れているカタリーナに話し掛ける。

「カタリーナ、結果は不合格だ」

「うわぁぁぁぁんっ」

再度現実を突き付けられて大きく泣くカタリーナ。

「お前が普通の子供だったら、努力した過程を褒めてやれる。しかし、お前の立場は普通の子供じゃない。努力はただの通過点であって求められるのは結果だ。頑張りました、でも無理でした。ということが許されない事が出てくる」

今の言葉に大隊長達も言葉を挟めない。

「それにな、お前は働かなくてもこういう努力をさせてもらえる身分だ。鍛えてくれたのは国を支える騎士隊トップの立場の人だ。その人に2ヶ月間付きっきりで鍛えて貰える人間がこの国に何人いると思っている?それに努力したくてもさせてもらえない境遇の子供達もたくさんいる。カザフ達は物心が付いた頃から生きる為の努力をし続けてここまで成長したんだ。それを血反吐を吐くぐらい頑張ったとはいえ、たったの2ヶ月間程の期間でその努力を超えられると思うな」

カタリーナはヒックヒックと泣きながらマーギンの厳しい言葉を聞いていた。

「マーギン…」

ローズがマーギンに声を掛けようとするが、自分も厳しい言葉をぶつけられた時の事を思い返す。これはきっと姫様にとって大切なことなのだろうと。

「カタリーナ、お前は鍛えてくれた大隊長にお礼の言葉ぐらいは言ったか?」

ヒックヒックと泣きながら答えないカタリーナ。

「多分、鍛えて頂戴とか軽く言って、自分を鍛えるのはさも当然のように言い、鍛えられている最中には鬼、悪魔と罵り、ようやくここまで来た時にもお礼も言ってないし、感謝もしていないだろ?」

何も答えられない図星のカタリーナ。

「だから俺はお前が努力したことは認めても褒めてはやれない。忖度して合格も出してやれない。負けたけど、良く頑張ったからしょうがないなぁとも言わない。わかったか?」

何も答えられないカタリーナ。

そして周りにいる皆も口を挟めないのであった。

「さ、次はサリドンの番だけど、結構時間を食ったからそれは後回しでいいですかね、オルターネン様」

「う、わ、わかった…」

「ロッカ、組合に顔を出してからモグラ討伐に向かうぞ。走って行けば夕方には到着して、ちょうど討伐にはいい時間になる。大ミミズを捕まえてモグラの穴を探す時間も必要だ。急ぐぞ」

その場で蹲って動かないカタリーナ。側で何も声を掛けられず立ち尽くすローズ。これはローズの胃に穴があいてしまうかもしれん。

「大隊長、これから西の町から南に下った村に大モグラの討伐に向かいます。お時間があれば同行されますか?」

「俺がか?」

「はい。王都から少し離れるので、姫様の護衛に付いて頂きたいと思います」

「えっ?」

目を赤く腫らしたカタリーナが顔を上げる。

「別に遠出って場所でもないからな。付いて来たいなら大隊長に護衛を頼め。お前からの護衛依頼なら大隊長の顔も立つ」

「いっ、いいの?」

「俺の言った事を理解したならな。どうする?」

「大隊長… 護衛をお願いします」

カタリーナは護衛に付きなさいと命令するのではなく、お願いしますと大隊長に言ったのだった。大隊長の目に涙が溜まったのは言うまでもない。

大隊長以下、特務隊とカタリーナは先に西門へ向かってもらう。組合にはマーギン達だけで向かった。

ーハンター組合ー

「遅かったじゃねーか」

ロドリゲスが待ち構えていた。

「ごめん、ちょっと野暮用でね。今から向うわ」

「なら出発するか」

「え?ロドも来んの?」

「魔物の討伐方法を見とかなきゃならんからな。ロッカ達が他の奴らに教えるってのも限界があるだろ。組合はここだけじゃねーからな」

それもそうか。

ロドリゲス曰く、各組合に討伐方法を共有するために自ら出向くらしい。

そして、西門に到着する前にカタリーナの事を話しておく。

「お前って奴は…」

「これで共犯だね♪」

マーギンはしっかりとロドリゲスも巻き込んでおくのであった。

移動途中にハンナリーが話し掛けてくる。

「な、なぁ、姫様ってもしかしてほんまもんの姫様なん?」

「そうだ。お忍びで庶民街の勉強をしている。ローズは姫様の専属護衛で貴族だ。姫様はフェアリーという名前でローズの親戚という事になっている。これは絶対に秘密だ。もし漏らしたらお前の耳をちぎって横に付けるからな」

「い、言わへんてっ」

「お前は褒められたり、乗せられたりしたら口が軽くなると言うことを自覚しろ」

「う、うちそんなんしてへんで」

「だから自覚がないと言ってるんだ。昨日ババァと話した内容をシスコに話しておけ。それでどんな反応をされるのか見て反省しろ」

まだ意味がわからないハンナリーはモグラ討伐後の飯の場で、死ぬほどシスコに怒られる事をまだ知らないのであった。

ー西門ー

「ロドリゲスも来たのか」

北の街防衛戦で大隊長と顔見知りのロドリゲス。

「初めましてフェアリー様。ハンター組合の組合長をしているロドリゲスと申します」

ロドリゲスってちゃんとした挨拶が出来るんだな。てっきり、「よう嬢ちゃん」とか言うのかと思ってたよ。

「カタ… フェアリーです」

「ロドリゲスにはカタリーナの事をここに来るまでに話した。今はきちんとした挨拶をしてくれたが、ロッカ達と同じ扱いをするからな」

「いいわよ…」

カタリーナはいいわよと言いつつ、ローズの後ろに隠れた。ロドリゲスは見た目あちら側の人に見えるし、眼帯も威圧感あるからな。

そして、皆は現場に付くまで走る事となり、アイリスはロッカに、カタリーナはローズにお尻を突っつかれながら走り続けたのであった。