軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

王都に戻るまで その2

タイベの豚肉を使ったソーセージはやっておいてくれるとのことで店を出た。タジキはもう寝かせる時間だ。大将の話では肉に味付けして熟成させるのに2日程必要とのこと。で、仕上がりは3日後なのでそれまでここに滞在することに。

テント広場に戻り、ロッカ達と明日の予定を調整する。

「それではマーギンはここに3日間滞在するのか」

「王都に戻ってまた来るの面倒だからな。ロッカ達はどうする?」

「では先に戻ろうか。この街ですることがないからな」

「了解。王都に戻ったらお前らの家に知らせに行くわ。ミードを仕入れといてやるけど、小樽でいいか?」

「いや、大樽で頼む」

実に男らしい。いや、こういう事を思うのはやめておこう。またキッと睨まれるからな。

翌朝、ハンナリーもシスコに一緒に来なさいと言われて、星の導きとハンナリーは先に王都に向かったのであった。

「マーギン、俺達は何をするんだ?」

「昨日の晩に飯食った店があるだろ?そこの手伝いでもやろうかと思ってな」

「 ダッド(大将) の店と同じ事をするのか?」

「そんな所だ。タジキも違う店を見ておいた方が勉強になるからな」

ということで、昼の営業前に店に行く。

「すいません、お客さん。まだ店が開いてないんですよ」

「あぁ、ごめん。飯食いに来たわけじゃないんだ。大将に用事があってね、昨日来たソーセージを頼んだ奴が来てると伝えてくれないかな。俺はマーギンってものだ」

と、店の人に取次を頼んだ。

「まだ出来てねーぞ」

と、すぐに大将がやってきた。

「分かってる。ソーセージが出来る日までこいつ等に店を手伝わせてやってくれない?賄だけ食わしてやってくれたらいいから」

「は?いきなり仕事を手伝わせるったって使いものにならんだろうが」

「こいつ等は王都の食堂を手伝ってるから仕事の流れを掴むのは早いと思うぞ。こいつは注文取りと配膳、こいつは会計、で、昨日来たこいつは料理の手伝いをしてる。ここで料理の手伝いは無理だろうから、洗い物でもさせてやってくれればいい」

「本当に出来るのか?」

「大丈夫だと思う。お前ら自分らだけでやれるか?それとも俺がいた方がいいか?」

「大丈夫だ。しっかり働いてやんぜっ」

「まぁ、使いものになるならいいけどよ」

とカザフとトルクは店の人に指示して仕事を教えてやれと言って、タジキは大将が厨房に連れて行ったのであった。

マーギンは大将に宜しくねと言って、街の外へと消えて行った。

ー閉店時間ー

「よ、どうだった?」

「おい、こいつ等よく働くじゃねーかよ」

と、大将はご機嫌だった。

「だろ?」

「お前ら、このままここで働くか?」

「俺等はハンターになるからな。悪いけどこのまま働くのは無理だ」

「そうか。そいつは残念だ。タジキはこの後どうする?時間が遅くなるが仕込みを手伝うか?」

「いいのか?」

「お前がやりたいならな。ソーセージの仕込みを教えてやる」

ここの大将もタジキを気に入ってしまったようだ。ダッドと取り合いになるかもな。

マーギンはおっさんとおっさんが男の子を取り合いする姿を想像する…

やめておこう。違う物語になってしまう。

「大将、何時頃に終わる?終わる頃にタジキを迎えに来るわ」

「そうだな… お前らここに泊まっていくか?」

「え?」

「あと2日手伝うんだろ?3人共ここに寝泊まりすりゃいい。何ならお前もここで泊まれ。どうせテントで寝てんだろ?」

と、ガキ共だけでなく、マーギンにも泊まれと言ってきた。

「そうだな… 俺はともかく、お前らどうする?泊めてもらうか」

「マーギンはどうすんだ?」

「俺はちょっとやらないとダメな事があるから遠慮しとくわ」

「お前らが泊まるなら、フワフワソーセージを朝飯に食わしてやるぞ」

「マジでっ じゃあ泊まるっ」×3

こうしてカザフ達はこの店で手伝いをしながら寝泊まりまでさせてもらうことになったのだった。

マーギンはトナーレ周辺を調査する。あまりにも魔物の気配がないのだ。ハンターが駆除しまくっているのならいいのだが…

ー王都隣の村ー

先にトナーレを出発した星の導きとハンナリーの一行は王都の隣の村に到着し、ケンパ爺さんの家に向かった。

「知り合いの家でもあるん?」

「マーギンとタイベに向かう時に世話になった家があるのだ。マーギン達も帰りに寄るだろうから伝えておこうと思ってな。ついでに庭先にテントを張らせてもらおう」

ロッカはケンパ爺さんの家に向かうと…

「オルターネン…様?」

「ん?おぉーーっ ロッカではないか。ようやく帰って来たか。マーギンはどこだ?」

「マーギンはまだトナーレにおります。3日程遅れてこの村に来ると思いますが…」

「うわっ、めっちゃかっこいい人やん。なぁ、ロッカ、うちも紹介してぇな」

ハンナリーはオルターネンを見るなり目がハートになり、シスコはご機嫌ようと優雅に挨拶し、バネッサはもじもじしている。アイリスは手を振った。

「オルターネン様、こいつはハンナリー。タイベに一緒に行っていた商人を目指しているやつです」

「えへへ、うちはハンナリー。ハンナって呼んでな」

「オルターネンだ。こちらも仲間を紹介しよう。ホープとサリドンだ」

「特務隊の方々ですか? 初めまして、私達は王都に所属するハンターで星の導きというパーティを組んでおります。私はロッカ、こちらはシスコとバネッサ、それとアイリスです」

ホープは自己紹介をしたロッカ達を訝しげに見た。

「サリドンです」

挨拶をしたサリドン。しなかったホープ。

「隊長、ハンターに知り合いなんていたのですね」

「ふふ、知り合いどころの話じゃないぞ。ロッカ、マーギンは3日後にここに来るのだな?」

「その予定です。マーギンのことですから確約は出来ませんが」

「予定が変わってもここには来るのか?」

「来るとは思います」

「お前達は明日王都に戻る予定か?」

「はい。その予定にしております。何かありましたか?」

「俺達はここで二ヶ月近く魔物討伐をしていてな、明日一度戻ろうかと思っていたのだが、マーギンがここに来るならそれを待とう」

と、オルターネンがロッカに言うと、ゲッという嫌そうな顔をするホープ。

「た、隊長。明日戻るんじゃなかったんですかっ」

「予定は変わるものだ。ロッカ達はマーギンがここに来るまで待てるか?」

「戻る日を決めていたわけではないので構いませんが…」

「では、飯でも食いながら話をするか。今何をしているか、これからどうするか説明したい」

「か、かしこまりました」

オルターネン達が拠点にしているのは森に隣接している場所。ここで2ヶ月近く生活しているようだ。先程は村人達の井戸を使わせて貰っていたとのこと。

ここにはマーギンがいないので、スープ料理になる。野菜が豊富なのはよいが、肉は臭みのあるボア肉だった。

「え?延々とボア討伐をしているのですか?」

「そうだ。まずは魔物に慣れるのが先だと思ってな。これをしておいて良かったと思っている」

ー特務隊初の実戦ー

駆け足で村に到着した特務隊。鎧を身に着け、野営セットを持ったまま走り続けるのは訓練より辛い。

「ぜーっはーっぜーっはーっ」×2

「この程度で情けない。そんな事で特務隊が務まると思っているのか」

「こ、これ訓練よりキツイですよ」

「実戦はこれより辛いのだぞ。お前死にたいのか?」

「明日から全部自分が殺ってやりますよ」

ホープは肩で息をしながらオルターネンに強気な姿勢を崩さなかった。

村人達は騎士が来た事でざわつく。何かあったのか?それとも国に対して不穏な事をしていた奴を捕まえに来たのか… どちらにしても良くない事が起こるのでは?とサササッと逃げて行ってしまった。

「騎士って怖がられてるみたいですね」

「村に騎士が来ることはないからな。サリドン、お前が誰かに声を掛けて状況を聞いてこい」

人当たりの良さそうなサリドンが家を訪ねる。

「誰かいるか?我々は王都で騎士をしているものだ」

「はっ、はい。ワシはじゃがいもを作っとるだけで何も悪い事は…」

「いや、驚かせてすまない。我々は誰かを捕まえに来たのではない。魔物討伐に来たのだ」

「えっ?騎士様が魔物討伐を?」

「そうだ。この村にはハンターが少なく魔物被害に困っていると聞いてきたのだ。どのような状況か聞かせてもらえぬか?」

「な、なら、狩人をしている者の所へ案内させて頂きます」

と、お爺さんさんは狩人の家に案内し、引き継いだ。

ー村長の家ー

狩人は自分だけでは荷が重いと、村長の所に案内すると言って案内したのだった。

「元々この村周辺は魔物が少なく、狩人の人数も少ないのです。裕福でもありませんので組合に払える報酬も少なく、ハンターが来てくれても新人がほとんどで、村の中に入って来た魔物を追い払うだけの状況です。魔物避けの柵を作ってはおりますがもう持たないかもしれないのです」

「今は何が出ている?」

オルターネンが村長に聞く。

「オーキャンとボアでございます。オーキャンは狩人が狩れますが、ボアは追い払うのが精一杯でございまして」

狩人が獲物を狩る手法は罠と弓矢。大型のボアだと矢で通用しない事が多いとのことだった。

「了解した。明日より我々はこの村にしばらく滞在し、ボアメインに討伐を行う。狩人よ、ボアが出そうな場所の案内を頼めるか?」

「そ、そりゃお安いご用ですが…」

「騎士様、我々は騎士様にお支払い出来る報酬は…」

「報酬は不要だ。今回は我々の訓練として行うからな」

「え?訓練とは」

「今回、騎士隊に魔物討伐隊が新設された。我々はその隊のものだ。ただ我々もまだ魔物に慣れてはおらん。よって訓練を兼ねてここに来たのだ。魔物避けの柵が出来るまでこの村に滞在する」

「この村には騎士様に泊まって頂くような宿は…」

「その心配は無用だ。テントを張って野営する。井戸は使わせて貰ってよいか?」

「そ、それはご自由に使って頂いて構いませんが」

「あと、報酬はいらぬと申したが、いくばくかの野菜を提供してもらいたい」

「野菜なんぞいくらでも差し上げます。畑にあるものであればお好きに採って下さい」

翌日からオルターネン達は狩人の案内で、ボアの通り道や出そうな場所を回った。

「では我々はここでボア討伐を行う。案内ご苦労だったな」

「騎士様」

「なんだ?」

「オーキャンは人を見たら逃げますが、ボアは向かって来ます」

「あぁ、それぐらいは知っている」

「オーキャンでも角持ち、それも大型のオーキャンは人を襲って来ることもありますのでご注意を」

「そうか、忠告を受け取っておこう」

案内が終わった狩人はお気を付けてとその場を離れたのであった。

「隊長、よく庶民相手にあんな丁寧な態度を取れますね。全部命令すればいいじゃないですか」

「ホープ、特務隊は庶民と接するのが当たり前の隊だ。我々の任務は魔物から人々を守る隊だと理解しているか?」

「分かってますよ。しかし、庶民と貴族の立場が…」

「お前は長男でありながら家を継ぐ権利を放棄したのだったな?」

「そうですよ。自分は自分の力で爵位を得るつもりですからね。家の仕事を継ぐつもりがないので」

「今のままのお前だと、貴族籍が残るだけになるな。そしてお前の長男以外の子供や孫は平民落ちだ。その時に子供や孫が何もなしてない世間知らずの貴族に偉そうに命令されたらどうする?」

「自分は爵位を勝ち取るのです。そんな惨めな未来の事を考える必要はありませんよ」

「そうか、俺の余計な心配か。なら、爵位を見事に勝ち取ってみよ」

「当然です」

そう答えたホープにオルターネンはこそっとボア寄せの薬を1滴掛けたのであった。