軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

マー様

「そ、そんなにいらないって」

翌朝、ファイティングモールを討伐してくれた事を知った村人達が、大量のサトウキビを押し付けてくる。未加工のサトウキビをこんなに大量にもらっても困る。道中でオヤツ代わりに齧れたらいいなぐらいのつもりだったのだ。

「マー様っ マー様っ ありがとうございますっ」

誰がマー様だ。変に略さないでくれ。

「本当にこんなにいらないって。これで十分だから」

と、20本程のサトウキビを貰って出発したのだった。

「マーギン、サトウキビって食えるのか?」

「食えないけど、噛ると薄甘いぞ。本来はこれを絞って出た汁を煮詰めて黒砂糖にするんだ」

マーギンはカザフ達にサトウキビの楽しみ方を教える。10cm程度に切って外側を剥く。

「ほら、この白い所を囓ってみろ。味が無くなったらお楽しみは終わりだ」

皆にも配ってガジガジする。懐かしいなこれ。

ー過去のシャーラムー

「なぁ、これどうやって食うんだ?」

「外の皮を剥いて齧ればよい」

ミスティに食べ方を聞いて試すマーギン。

「思ってたより甘くないな」

噛めば砂糖水が出て来るようなイメージだったのだが、ほんのりしか甘くないのだ。

「十分甘いではないかっ」

ミスティの感覚では甘いのだろうが、現代のお菓子を食べていたマーギンにとってはそうでもないのだ。マーギンはミスティが甘いというので、汁が足りないのかと思い、齧らずに思いっきり吸ってみた。

「ジューーーーっ ゲッホゲッホゲッホ」

「何をやってるのじゃ貴様は?」

「サトウキビのカスが喉に入った」

「齧れと教えたじゃろうがっ。いつも貴様は私の言う事を聞かぬからそういう事に」

「あーはいはい」

ミスティにグチグチ言われるマーギンは耳を塞いだのだった。

ー現在ー

「トルク、タジキ、誰が一番早く汁を吸えるか競争しようぜっ」

「せーのっ ジューーーーッ ゲーホッゲホゲホゲホ」×3

馬鹿だなこいつら…

自分も同じ事をしていたことを忘れているマーギン。そして、サトウキビってこんなに甘かったけ?とガジガジするのだった。

領都に到着する前に領主邸を訪ねる。

「よく戻ってきた」

歓迎してくれるエドモンド。食事と風呂をご馳走になり、夜にラウンジでタイベでしていた事の報告をする。エドモンドからはギラン商会と黒幕のユーベル、孤児院の事を聞くことに。

「マーギン君、君が教えてくれた通りの結末だ。ギラン商会の関係者は牢に入れている。ユーベルもな」

「ユーベルはここで処分ですか?」

「いや、ユーベルは跡継ぎではないものの貴族であるから王都で裁きを受ける事になる。私が王都に戻る時に一緒に連行することになるだろう。報告は先に手紙で出してある」

「孤児院はどうでした?」

「運営を任されていたものもグルだったよ。孤児院を出た男の子は大半が海賊、女の子は売られていた。残念ながら売り先までは掴めなかった。恐らくあちこちの領地で遊女か愛人になっているだろう」

想像していた通りとはいえ、やるせないな。

「孤児院はどうなりますか?」

「取り急ぎ屋敷の者に子供達の世話を任せた。これから孤児院を出たあとの事を考えてやらねばならん」

「お小遣い稼ぎぐらいの仕事ですけど、子供にやらせてみますか?」

「子供でも出来るようなものがあるのかね?」

マーギンは海賊達にやってもらう仕事や蚊取り線香、先住民達の取引の事を説明した。

「ナムの集落と取引をするだと?」

「パンジャでたまたま知り合いになりましてね。しばらく村で滞在したんですよ。で、商売になりそうなものがありましたので取引することになりました。港はナムの集落のを使います。使用料とか不要ですよね?」

「あぁ、先住民の所は管轄外だ」

「税金も?」

「そうだ」

これで大幅なコストカットが確定だ。

「もう一つ報告があります。西にある廃鉱山とその近くの村なんですけどね」

と、ギラン商会が絡みだしていた事と崩落したこと、そして魔カイコの養蚕を始めるかもしれない事を説明した。

「魔カイコの繁殖だと?」

「はい。まだ上手くいくかどうかはわかりませんが、取り急ぎ魔カイコの餌になる魔桑木を林になるように植えて来ました。多分根付いてくれたとは思うのですけど、秋にもう一度タイベに来て確認します」

「誰が繁殖をするのかね?」

「廃鉱山の麓の村です。すでに村人も少ないですし、生活も厳しいようですから離村したほうがいいとは思うんですけどね。受け入れ先があるかどうかもわからなかったので、何か産業になるものがあればいいなと思ったんです。他の村と離れているので魔蛾が他の村に行くこともなさそうなので条件的にも良かったんですよ」

「それが成功したらどうなる?」

「村としては一番金持ちの村になるんじゃないですかね?そうなれば人も増えるでしょうし。タイベ領も潤うと思いますよ」

「本当かねっ」

「はい。ただそれまでそこの村人の生活が持つか分からないですよ。出来れば視察にでも行かれて、状況把握と援助をしてあげた方がいいかもしれません。まだ先ですけど魔桑木の林が大きく育つと魔蛾も増えます。今いる魔蛾は小さいから問題ないでしょうけど、そのうち大型化したのが発生します。そいつは攻撃してきますので、ハンターを雇ったりとか領の産業として体制を組んであげる必要が出てくるかもしれません。それが無理なら今回植えた魔桑木程度の規模でやることをオススメします」

「わかった。貴重な情報をありがとう」

「で、不味い情報もあるのです」

と、黒ワニの肉が微かに瘴気を持っていた事、今までいなかったラプトゥルの事を話す。

「なんだと…」

「これはタイベだけの問題ではなく、恐らく大陸全体に広がり始めている問題です。明日ハンター組合に同じ報告をしておきますけど、領として討伐体制を早急に組まれる事を進言します」

「ここに来た時に教えてくれたことだな」

「はい。まだ先かな?と思ってましたけど、兆候が出てますのでお急ぎを」

「わかった。マーギン君には本当に世話になった。何かお礼をさせてくれないかね」

「この旨いワインをご馳走になれただけでいいですよ。上手く情報を活かして良い領地運営をして下さい」

「そうか、君は欲がないのだな。何ならお義父さんと呼んでくれても構わないのだが?」

何を言い出すのだエドモンド。

「アイリスは娘枠ですから」

と、マーギンは余り意味が通じない返答をしたのだった。それでも何かないかというので、次にタイベに来た時に海賊全員の引き渡しをお願いしたのだった。

翌日領主邸を後にしたあと、ハンター組合に瘴気を持った肉やラプトゥルの実物を出して説明。ラプトゥル対策も伝えておいた。

次はハンナリーと海賊の牢屋へ。

「 頭(かしら) 、生きてるか?」

「あぁ、お陰さんでな」

「俺達は一度王都に戻るが、秋にもう一度タイベに来る。その時にお前ら全員釈放だ。頑張って働けよ」

「ほ、本当か…」

「こんな冗談を言うのにわざわざ牢屋に来るかよ。で、ギラン商会は取り潰し、ユーベルは牢屋入りしてて冬前に王都に送還されて裁きを受ける。孤児院は領主預かりになったぞ」

「ほ、本当かっ」

本日2回目のほっ、本当か?だ。

「ただな、すでに孤児院から出た後の女の子とかの行方は掴めなかったみたいだ」

「そうか… 仕方がねぇとは言えねぇが、そこまでしてくれた事に感謝する」

「これから孤児院で小遣い程度の仕事になるが蚊取り線香ってのを作って貰う事になる。お前らに育てて貰う花を孤児院で加工するんだ。売るのはこっちでやってやる。それと孤児院もいつまでも領主預かりは無理だろうから、お前ら自分達で孤児院を運営しろ」

「俺達が?」

「そうだ。孤児院を出る時には働き手として活躍出来るようにしておいてくれよ」

「それってどういう…」

「ハンナリーがやる商会でお前らと一緒に雇ってやる。孤児はこれからも出て来るだろうからちゃんと育てろよ」

「そんなにたくさん雇えるのか?」

「まぁ、たくさんいるなら仕事を作ればいい話だ。戦えそうな奴はハンターになってもいいしな。これから魔物が増えて強くなる。ハンターは常に足らなくなるぞ。海の魔物退治とかお前ら得意そうだしな」

「今の話は全部本当なんだな?」

「だからお前らを騙しに来るメリットないだろうが。俺達が迎えに来るまでちゃんと罪を償っておけよ。暴れたりした奴は迎えに来ないからな」

「わ、わかった」

「じゃ、またな」

「おうっ、本当にありがとうな…」

頭の目に汗が溜まってそうなのでマーギンは振り向かずに手を振って牢屋を後にしたのだった。

「ハンナ、お前タイベで仕入れたかったものはどうするんだ?」

「え?もうええわ。それどころやなくなったし」

「何を仕入れるつもりだったんだ?」

「マーギンが味噌って呼んでるやつや。あれライオネルの名産にしたろ思ててん」

「屋台で味噌付けた串肉売ってたけど、あんまり人気なかったぞ」

「うちもあれ食べた事あんねん。あのままやったらあんまし旨ないけど、ちょっと甘したら売れるんちゃうかなって思ってたんや。そやけど、漬け込んだ方が旨いとか思わんかったわ」

「いや、甘くする食べ方もあるぞ。今夜作ってみるか?」

「ほんま?」

「あぁ タジキにも教えないとダメだからな」

晩飯を宿の部屋で田楽味噌をタジキに教えて行く。

「クルミとか使うといいんだけど、ゴマで代用が効く。手に入りやすいのを試すといいぞ」

今回は味噌に胡麻をすって練りゴマにして混ぜた。砂糖と酒を加えて完成。

「肉に付けるのか?」

「王都に戻ったらスジ肉とホルモンの煮込みを教えてやる。今日はナス田楽と味噌カツ、それと五平餅を作ろうか。今回は全部同じ味噌ダレでやるけど、大将と相談しながら味付けを変えてやるといいぞ」

カザフとトルクにも手伝わせてせっせと料理を作りあげた。

「シスコ姉達を呼んで来るね」

トルクが呼びに行ってくれて、皆で味噌ダレを食べて感想を聞いて行くタジキなのであった。