軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

タヂカラオ

「ありがとうね。凄く面白い話だったよ」

「お前は本当に使徒様ではないのだな?」

「違うってば。そんな大した者じゃないよ」

「そうか、昨日の雨乞いの儀式はいつもより効果が強く出ておるようじゃから使徒様ではないかと期待しておったのじゃが」

あー、それはもしかしたら自分の魔力がかなり影響したのかもしれんな、とマーギンは思うのであった。

「今はこの村は平和なんだろ?使徒様が現れるような状況でもないんじゃないの?」

「いや、占いではこの先苦難がやってくると出ておるのじゃ。魔物も増えておるようじゃから安心は出来ぬ。ゴイルやマーイが余所者をいきなり連れて来たのは何か感じる事があったからじゃろうの」

いや、焼きそばが原因だぞ、とは言えないマーギンなのであった。

長老の家を出ても雨は降り続き、薄暗くて時間が分かりにくいが結構長く滞在してたのだろうなと思う。雨の中、ちべてっと言いながらテントに向かって走った。

「お帰り、結構長い間話し込んでたんやな」

出迎えてくれたのはハンナリー。まるで自分のテントのように居座っているのだ。

「マーギン、晩飯は何をしたらいいと思う?」

と、タジキが聞いてくる。昼飯は鉄板でカジキをステーキにしたようだ。きっとハンナリーのリクエストだろう。

「雨で気温が下がってるから鍋でもするか?」

「煮込み料理をすんのか?」

「そうだな、ちょっと違う味付けにしてみるか。イルサンで米以外に味噌を買っただろ?あれを使うぞ」

「ライオネルで串焼きに使ってた調味料か?」

「そう。あれは本来、汁物に使う事が多い調味料なんだよ。肉も焼く時に塗るより、漬け込んでおく方がいいんだぞ」

「どうやるか教えてくれよ」

マーギンはカザフに牛タンの処理の方法と味噌漬けにするやり方を教えていく。

「こんなに食べるのか?」

「どうせロッカ達も食うだろ?」

と、マーギンが言うと、それがさぁとカザフがバネッサの事を話し出した。

「は?そんなに拗ねてんのか?」

「うん。だから昼飯もロッカ姉達は一緒に食わなかったんだよ」

「トルク、何をそんなに拗ねてんのかわかるか?」

「わかんない。昨日のたこ焼きも一口も食べなかったんだって」

まったく… あいつは何をそんなに拗ねてやがんだ?面倒臭ぇ…

マーギンは放っておこうかと思ったが、雨足が強いのでテントでずっと篭っているとロッカ達と喧嘩になりかねんなと思い直す。

「よし、屋根を作るか」

マーギンは外に出て土魔法で簡易のガゼボというより東屋を作っていく。これがあればバネッサが拗ねてこっちの飯を食わなくてもロッカ達が火をおこして干し肉以外の物が食えるだろ。

ついでに簡易の風呂にも屋根を付けておく。小雨程度なら雨に打たれながらの風呂もオツなものだと言えるが、土砂降りの中では修行と変わらん。

東屋と風呂の屋根を作り終えた後、そこでタジキにタイベの味噌を使ったチゲ鍋を教えていく。

「辛くすんのかよ?」

「少しだけな。辛い鍋って結構美味いんだぞ」

と、準備が整ったのでトルクにロッカ達を連れて来させる。真っ先に来たのはアイリス。次にシスコが来た後にロッカが渋い顔をして出てきた。

「バネッサは?」

「食わないだってさ。昨日から拗ねていてうっとおしいのだ」

そりゃ、狭いテントの中で拗ねた奴が一緒ならそう思うわな。

「ま、いらないって奴にまで無理やり食わすものでもないからな。今からタイベの調味料を使った辛い鍋にするけどロッカ達は食うだろ?」

「それはありがたいが飯は別だと言っていたのに良いのか?」

「雨で何にも出来ないから飯ぐらいしか楽しみないだろ?飯はタジキの訓練も兼ねてるからな、食って感想を言ってやってくれ」

そして、グツグツと煮えたチゲ鍋を皆で食べだす。

「うむ、旨いぞ」

作り方を教えたのはマーギンだが、実際に作ったのはタジキだ。アイリスやガキ共にはちょいと辛かったようだが、ロッカとシスコは気に入ったようだ。こういう味付けは酒も進むからな。

「マーギン、牛タンは食わないのか?」

「ん?まだ漬け込みが浅いかもしれんが試しに食ってみるか?」

タジキは味噌漬けも早く試したいようなので、炭火をおこして味噌牛タンを焼くことに。その準備をしているとシスコがマーギンの方をじっと見つめてくる。

「なんだよ?」

「バネッサを呼んであげないのかしら?」

「拗ねていらないって言ってんだろ?ほっとけよ。干し肉と水があれば死にはせん」

「そう?マーギンも気にはなってるんじゃないのかしら?」

確かに。皆で楽しく食ってるのにバネッサがいないのは気にはなっている。落ち着いて食えるのはいいのだが、飯時にバネッサがカザフと肉の取り合いをしてないのもなんとなく物足りないのだ。それにカザフもバネッサの事が気になるようで、ロッカ達のテントをチラチラと見ている。

「カザフ、バネッサに新作の焼き肉をするから食いに来いと呼んで来てくれ」

「わかったっ」

カザフは嬉しそうにロッカ達のテントに行き、外から呼びかける。が、バネッサは返事をしない。

「おっぱいっ、出てこいよっ」

返事をしないバネッサにカザフは挑発するかのようにおっぱいお化け呼ばわりをする。

「うるせえっ。うちはいらないって言ってるだろがっ」

「いいから出てこいよっ」

カザフはテントを開けようとしたが、バネッサがテントの入口を掴んで開けさせてくれない。それから何度もカザフが挑発するもとうとう返事すらしなくなってしまったのだった。

すごすごと悲しそうな顔をして戻ってくるカザフ。なんか少し泣いているようにも見えたのでタオルをバサッと頭からかけて皆から顔を見えないようにしてやった。

「ロッカ、バネッサが拗ねている原因はわかってんのか?」

「どうだろうな?ほら、マーギンが出発前から飯は別でいいのか?と何度も確認してただろ?それで問題ないと私達は答えた」

「そうだな」

「だから、意地を張って食わないのでは?と思っているのだが…」

「ここに来るまで何回もこっちの飯を食っただろうが?それを今更か?」

「私もそうは言ったのだがな。バネッサは昨日の晩から意地を張ってそのままなのだ」

まったく… 何を拗ねてんだあいつは?

「拗ねさせたマーギンが呼びに行けば出てくるかもよ?」

と、シスコが拗ねたのはマーギンのせいだと言う。俺が飯は別だと言ったのが原因と決めつけやがった。

マーギンはしょうがないなと言いながらロッカ達のテントに向かう。

「バネッサ、今から新作の焼き肉するから食いに来い。タジキの修行も兼ねてんだから、食って感想を言ってやれよ」

「うるせえっ。ハンナに感想を聞けばいいだろうがっ」

なぜここでハンナリーなのだ?

「ハンナは鍋の感想も言った。感想を聞けてないのはお前からだけなんだよ」

「うちの感想なんていらねぇだろうがっ。ハンナと楽しそうに飯食っとけ」

だからなぜハンナリーなのだ?

もう聞く耳を持ちそうにないのでマーギンはそうかよっと捨て台詞を吐いて東屋に戻る。

「マーギンでもダメだったのかしら?」

「ハンナと楽しく飯食っとけだとよ」

それを聞いたシスコははぁ〜とため息を付く。

「マーギン、もう一度呼んで来なさいよ」

「なんでだよ?呼びに行っても拗ねて出て来なかっただろうが」

「いいからっ」

何故かシスコに怒られてまたバネッサを呼びに行くも結果は同じだった。

「ほれみろ。俺が何回行っても同じだろうが」

理由も解らずに拗ねているバネッサにどんどんムカついてくるマーギン。

「何か策を考えて」

「策って何をすりゃいいんだよ?バネッサはお前らの仲間だろ?自分達で解決しろよ」

「無理よ。ずっとあのままだったら私達もうっとうしいのよ。マーギンのせいなんだから責任とってなんとかしてちょうだい」

だからなんで俺のせいなんだよ?

「お前なぁ…」

「マーギン、頼む。バネッサが時折拗ねることはあったのだが、こんなに長引くのは初めてなのだ」

ロッカによると拗ねても、チェッと舌打ちをするぐらいでこんなに拗ねて言うことを聞かなくなることはなかったらしい。それがマーギンと出会ってからどんどん拗ねることが増えたように思えると、ロッカまでもが俺のせいにしやがった。

「普通に呼びに行っても同じことの繰り返しだろうが?ますます意地になるんじゃないのか?」

「だから策を考えて欲しいのだ」

こいつら…

「あのなぁ… なんで俺が策を考えないとダメ…」

「マーギン、僕もバネッサ姉と楽しくご飯を食べたいな」

ロッカ達に怒鳴ろうとしたマーギンにトルクがうるうるした目でお願いと言って来る。

「もうっ、しょうがねぇなぁっ」

「ありがとうマーギンっ。大好きっ」

俺はトルクのこれに弱い。もしトルクが嫁ならいいように扱われるのだろう。

「ハンナ、俺たちに軽くラリパッパを掛けろ」

「こんな状況で踊るん?」

「そう。俺達はこっち側に寄るから、バネッサにも掛かるようにしてくれ。近かったら姿が見えなくても掛かるだろ」

マーギンは全員をロッカ達のテント方向に集める

「わ、わかったわ。ほな行くで。ラリパッパっ!」

と、ハンナリーがラリパッパを唱えると皆の脳内に流れる軽快なリズム。マーギンだけはまたチャンカチャンカチャンカ♪と違う音楽になっている。

えらいやっちゃえらいやっちゃヨイヨイヨイっ

マーギンはラリパッパに抵抗せずにチャンカチャンカと踊りだす。

「うははははっ マーギンの踊りは相変わらずおもろいなぁ」

ハンナリーは自分の魔法には掛からないので、マーギンを真似て踊りだす。他のみんなはドンツクドンツク♪とEDMのような物が脳内に流れて踊りだす。

「いやっほーーっ」

ガキ共はそれに抗う事なく踊り始め、ロッカも不器用に踊り、シスコも抗うのを止めてカオスに加わる。

「ちっ、うるせえってんだよっ」

バネッサはテントの中から皆がはしゃぐ声を聞いてそう吐き捨てる。しかし、自分にも軽快な音楽が流れ始めているのだ。

チャンカチャンカチャンカ♪

ドンツクドンツク♪

うずっ

バネッサは外に向かって悪態を付きながらも身体が自然とリズムに乗り出そうとしている。ハンナリーのラリパッパ効果は強烈なのだ。

「濡れたまんまでいっちゃってっ!」

土砂降りの中、それを物ともせずにタオルを振り回して飛び出して歌い始めるロッカ達。

あまりにも楽しそうな雰囲気が伝わってくるテントの中。身体がうずっとしたバネッサは少しテントを開けてその様子を伺おうとした。

「今だっ タヂカラオ!テントを開けろっ」

マーギンは魔法抵抗力が高いので踊りながらもテントの様子を伺っていた。そしてロッカにむかってタヂカラオと呼びテントを開けさせたのだった。

「ふぅーーんっ」

タヂカラオロッカがテントの入口を引き裂くみたいな感じで無理やり開けた。

「なっ、なんだよっ」

いきなりテントを開けられてビクッとするバネッサ。

「いいからお前も来いっ」

バネッサを力尽くで引っ張り出したロッカはそのままマーギンに向けて放り投げた。

ドンッ

マーギンはそれを受け止める。

「はっ、離しやがれっ」

「いいからお前も踊れっ」

「踊るかっ」

尚も意地を張るバネッサをマーギンは高い高いするように持ち上げる。

「ぎゃーはっはっはっはっ」

くすぐったがりのバネッサは思わず大声を出して笑いだす。

「ほーれほれほれっ」

マーギンはそのままバネッサの脇をくすぐるかのように動かす。

「ぎゃーはっはっはっっ やめろっ 止めてく…ぎゃーはっはっはっ」

止めてくれと叫ぶバネッサを尚もくすぐるマーギン。

ゲシっ

ぶほっ

バネッサはそのままサマーソルトキックのようにマーギンの顎を蹴飛ばし離脱した。

どさっ

顎にキックを食らったマーギンは盛大に脳を揺さぶられそのまま気絶したのだった。

「あなたっ、なんてことをするのよっ!」

今の騒動でラリパッパが解けたシスコにジト目で見られるバネッサ。

「ちっ、違っ。こいつがうちをしつこくくすぐるから…」

気絶したマーギンを見てバネッサもあわあわする。雨で泥だらけになった地面にマーギンが崩れ落ち、ドロドロになっているのだ。

「あなた責任取りなさいよ。誰がこんな泥だらけになったマーギンを綺麗にするのよ?」

「ふ、風呂に漬ければいいだろうが」

「そのお湯は誰が出すのかしら?」

湯船にお湯を貯められるのはマーギンだけ。今は雨水が溜まった冷たい風呂なのだ。

「み、水でもいいだろうがっ」

バネッサはうんしょっ うんしょっとマーギンを拾いあげて水風呂にズルズルと押し込んでいく。

水風呂に漬けられるマーギンはまるでホルマリン漬けの死体のようだ。

「バネッサっ。上向けてっ、上っ」

ぷかっと下向きに浮かぶマーギンを見て慌てるシスコ。このままでは本当に死んでしまう。

シスコに溺れ死ぬわよっと言われて、あわあわしたバネッサは水風呂の中に入り、マーギンを上に向けようとするがマーギンはデカい。小柄なバネッサは中々マーギンを上に向かせる事が出来ないので顔だけ持ち上げた。

「どっ、どうすりゃいいんだよっ」

「チュッてしてあげたら目を覚ますんじゃないかしら?」

「なんでうちがマーギンにキスしなきゃなんないんだよっ」

「そのまま死んだらあなたのせいよ」

シスコは今ここで〈だって面白いじゃない〉を発動させた。

それを真に受けたバネッサはマーギンの目を覚まさせようと目を閉じてチューっと唇を伸ばした。

パチっ

その時にマーギンは目を覚ます。

へっぶしっっ

マーギンは目を覚ますなり大きなくしゃみをした。それが唇を伸ばしたバネッサにもろに掛かった。

バキッ

「汚っねぇっ 何しやがんだっ」

唾を盛大に掛けられたバネッサはマーギンをグーでいったのだった。