軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

過去のシャーラム

ー過去のシャーラムの話ー

「マーギン、この魔物はどうやらシャーラムから来ていると思われる」

「ミスティ、シャーラムってどこだよ?聞いた事がないぞ」

「お前はどこの土地も聞いた事がないじゃろうがっ」

日頃から魔法や魔道具や剣といった自分の興味のあるものしか覚えようとしないマーギン。歴史や地理とか全く覚えようとしなかった事にミスティは怒っていたのだ。

マーギンがこの世界に召喚されてから1年ほど過ぎた時に小麦が虫系の魔物にやられて飢饉になるのではないかと苦戦していた。1匹1匹の強さはそれほどでもないが、何せ空が真っ暗になるほど大量に小麦畑を目指して飛んで来るのだ。〈戦いは数だよアニキ〉とはこのことだろう。

「毎年こんなんなのかよ?」

「毎年ピンクロウカストは出るものじゃが数が多すぎる。食い尽くされた森を見てみよ」

ミスティが指差す方向の森は食い尽くされて壊滅しており、ピンクロウカストと呼ばれる魔物は山を超えて来たのだろうとのこと。ピンクロウカストとは体長30cmほどのピンク色をしたバッタかイナゴみたいなやつだ。

取り敢えず壊滅された森だから問題ないだろうと、空を埋め尽くすほどのピンクロウカストを二人で焼き尽くしていったのであった。マーギンは使うなと言われていたフェニックスでやったけど怒られなかった。それで若かりし頃のマーギンが図に乗ったのは言うまでもない。

「山の向こうのシャーラムに向う」

「えーっ、あの山を越えんのかよ。食料とか着替えとかそんなに持って来てないから一度帰ろうぜ」

「すぐに着く」

「えっ?まさか…」

そう言ったミスティは転移の魔法陣を浮かべてマーギンをそこに蹴飛ばした。

オロロロロロロっ

激しい転移酔いをするマーギン。

「まったくっ。いい加減慣れろと言うたじゃろうがっ」

「ギ、ギブ…」

マーギンは盛大に吐いた後に気を失ったのであった。

そしてパチパチと木を燃やす音で目が覚める。

「ようやく目を覚ましおったか」

「まだ気持ち悪いぞ」

「丸一日気を失っておったのじゃぞっ。それより周りを見てみよ」

そう言われて周りを見渡すマーギン。

「な、なんだよここ…」

マーギンが目にしたものは荒れ地というか何もかもがピンクロウカストに食い尽くされた光景。村か何かがあったであろう痕跡しか残っていない。

「ここにあった村も全滅じゃ。畑を食い尽くし、森を食い尽くし、食う物がなくなって人も食われたのじゃろう」

「あいつらは人も食うのか…」

「好んでは食わん。が、食う物がなくなれば何でも食う。魔物ですらな」

村の周りの土地も荒れ果てて生命反応も何もない。

「これからどうすんだよ…」

マーギンは自然豊かなこの世界に来て生命反応の無い荒れ地を見たのは初めてだった。強い魔物よりピンクロウカストの方が凶悪だ。こんなに何もかも食い尽くすなんて…

「マーギン、もう吐いている暇はないぞ。シャーラムのどこかにピンクロウカストが湧いてくる場所があるはずじゃ。それを壊滅せねばアリストリアのみならず他国もやられる。魔王にやられる前に人類が滅亡するやもしれん」

「わかった」

マーギンが気絶している間にミスティが作ってくれてあった旨くない飯を食ってピンクロウカストの殲滅に向かったのであった。

そしてピンクロウカストが飛んで来る方向に虫を焼き払いながら走り続け、ついに湧き出る場所を発見する。

「マーギン、思いっきりやれ」

マーギンは極大の炎を出してピンクロウカストが生まれてくる場所を焼き尽くしたのであった。

「もう出てこぬようじゃの」

「うん、そうだね…」

もう大丈夫だとミスティに言われたマーギンの顔は晴れない。ここに来るまでにいくつもの壊滅した村や街を通って食われた人の残骸とかを見て来たのだ。

「そんな顔をするでない。シャーラムはアリストリアであってアリストリアではない。属国という扱いになっておる他国じゃ」

「それがなんだよ…」

「転移魔法を使わずにアリストリアからシャーラムに来るには山越えをするか、西側から船で来る必要がある。3ヶ月くらい掛かる道のりなのじゃぞ。つまり本来であればアリストリアから助けが入ることはない。シャーラムは自力で自分達を守れる力を持たなんだ結果がこれなのじゃ」

「そんなの知るかよ… アリストリアも俺達がいなかったらこうなってたんだろうがっ」

「そう、アリストリアは生き残る為にお前を召喚したのじゃ。だから助かったのじゃ」

「うるせぇっ 人を… 人を勝手にこんな世界に連れて来やがって…」

マーギンはこの世界に来た事を始めはとても喜んでいた。しかし、シャーラムで初めて魔物にやられた凄惨な状況を見て心が病みかけたのであった。

そしてまたミスティも勝手に召喚しやがってと言ったマーギンの言葉が胸に刺さる。恐らくマーギンの本体は元の世界にあるだろうとは思ってもマーギンは確かにここにいる。違う世界に住んでいたマーギンはこの世界で戦う必要もなく、こんな凄惨な状況を見る必要もなかったのだ。

当時ミスティは王に命令されて仕方がなく召喚に応じたが、同意なく連れて来られた異世界人の気持を考えると心が痛んだ。しかし召喚されたマーギンは喜んではしゃぎ、色々とやらかしながらも訓練や魔物討伐をやりその心の痛みも忘れていたのだ。

「すまぬ…」

ミスティはそれだけを言ってしゃがみこんで泣いているマーギンの後ろから謝り続けたのであった。

そのまま夜が明けて朝日が二人を照らす。

「ミスティ、もうそんなに謝んなよ。勝手に連れてきやがってと言ったのは謝る」

「いや、お前の言う通りじゃ…」

ミスティは300年以上生きて来たとはいえ、見た目は幼さが残る少女。マーギンにとっては歳下の様に見える。そんな幼さの残る少女に怒鳴った自分を悔いた。恐らくミスティはこれまでにこんな凄惨な光景を何度も見たことがあったのだろうと理解したのだ。

「ミスティ」

マーギンは小さな声でミスティに呼びかける。

「なんじゃ…?」

ビシッ

「あうっ」

のけぞるミスティ。マーギンは涙目で下を向いているミスティにデコピンをしたのだ。

「痛っ なっ、何をするのじゃーーっ」

「ババァが泣いても可愛くねーんだよっ」

「なんじゃとーーっ ババァではないわっ」

「やーい、ツルペタロリババァ」

マーギンはベロベロバーをしてミスティにそう言い放ち、その場から走って逃げる。

「きっさまーーーっ」

それを追いかけるミスティ。二人は朝日に向かって走るのであった。

「はぁっ、はぁっ、死ぬ…」

「ぜーっ ぜーっ 貴様と言う奴は…」

走り疲れた二人が見たものはまだ生存者がいると思われる村だった。

「ここはどこじゃ?」

「俺に聞いても知る訳がねぇだろ」

二人は村に入り、ピンクロウカストの被害がないか確認をする。見知らぬ人がやってきた村人は見知らぬ二人を警戒をしたが、ピンクロウカストが湧き出る所を壊滅したと言うと泣いて喜んでくれたのであった。

そしてご飯をご馳走になった時に米に出会い、しばらく滞在した後に米の為に転移魔法でオロロロして何度も通い、品種改良をしたのであった。

ーガイル達との野営ポイントー

象のハナコが枯れた水場で泥浴びをしてきたようでドロドロになって戻ってきた。

「あーあーあー、砂場でやりゃいいものを泥場でやってきやがったな」

泥だらけのハナコを見てまいったなという感じのゴイル。

「ハナコ、洗ってやろうか?」

マーギンはハナコに話し掛け、ややぬるめのお湯で泥を落として行く。

パオンパオンと嬉しそうなハナコ。象は砂遊びも水浴びも大好きなのだ。

「マーギン、お前凄いな。ハナコが怖くはないのか?」

「人に懐いてくる動物好きなんだよ。象ってデカくて可愛いよな」

「動物を見て可愛いと言うやつは珍しいぞ」

「ガイル達もハナコを可愛がってんだろ?よく懐いてるじゃないか」

「まぁな、こいつが小さい時から一緒だから家族みたいなもんだ」

ハナコもフンフンとマーギンの臭いを嗅いで鼻を巻き付ける。嗅いでもいいけど、俺を食わないでね。

アイテムボックスからリンゴを出してやると喜んで食べる。

「マーギンっ、俺達もハナコになんかあげたいっ」

今の様子を見ていたカザフ達も餌やりをしたいと言い出したのでリンゴを持たせてやると襲われるかのように奪い取られていた。

「マーギン、ハナコに贅沢させないでくれ。次から欲しがって言うことをきかなくなったら困る」

タイベではリンゴは高級品らしく値段が高いようだ。

「ごめん、王都だとリンゴはそれほど高くない果物なんだけど、南国なら手に入りにくいんだったね。忘れてたよ」

「マーギンっ、リンゴはまだ持ってるの?」

ハナコにリンゴをあげていたのを見ていたマーイがリンゴを欲しそうに聞いてきた。

「持ってるけど、マーイにあげたらゴイルに怒られるからダメだよ。マーイがゴイルの言う事をきかなくなるかもしんないじゃん」

「もうっ、ハナコと一緒にしないでっ」

とプンスカ怒るのでリンゴの皮を剝いていく。

「どうして皮を剥くの?」

「剥いた方が旨いだろ?」

「皮ままの方が美味しいじゃない」

「そう?ほらこんな風にも出来るんだぞ」

と、マーギンはリンゴをウサギカットにした。

「なにこれ?」

「ウサギ」

「どうしてリンゴをウサギにするの?」

「別に…」

うわぁ、すごーいとか言ってくれるものだと思ったのに誰も言ってくれなかった。ロッカ達もなぜそのようなことをする?と聞いてくる。

そして食べたいという人に渡すと皆そのまま齧った。

「マーギン、僕は可愛いと思うよ」

トルクに慰められるマーギン。そしてウサギカットのリンゴはハナコが喜んで食べたのであった。