軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

海賊

船は順調にタイベに向けて進む。そろそろ海賊の出る海域に入るから待機しておいてくれと指示が入った。海賊は闇に乗じてやってくるらしい。

「ロッカ、お前ら戦えそうか?」

「敵が来るなら気持ち悪いとは言っておられん」

星の導き達はヘロヘロになりながらも配置に着いた。

マーギンは船首に陣取り海面を見るが魔法を使わないと暗くてよく見えないなと覗き込んだ時にカッカッカと投げ鈎が投げ込まれて来た。

「来たぞっ。縄を切れ」

ガキ共に鈎に付いた縄を切らせていく。これで上がってこれまい。と思ったが次々に鈎が投げ込まれて切るのが追いつかない。大型貨物船のあちこちに飛んで来るのだ。

「カザフ、お前等とアイリスとハンナは俺のそばに来い」

人質に取られたら対応が難しくなる。

そして海賊共が乗り込んできた。

「ライト」

マーギンは灯り魔法を沢山出して船と海面を照らす。

おー、めっちゃいるな。20艚くらいいるぞ。人数はざっと100人って所か。

「ロッカ、バネッサ、キリが無いから海に落としていけ。シスコは小船に残ってる奴を射落としてくれ」

僕もやるとトルクも小船に乗っている奴らをやるようだ。

「お前ら、この人数を相手に勝てると思ってんのかよっ。大人しく荷物を…ブッ」

海賊の一人が何かを言いかけたのを無視してマーギンは土魔法の弾をぶつけて海に落とす。ロッカ達は調子が悪いようだが大丈夫だろ。

「アイリス、海賊の船に大きめの着火魔法をぶつけていけ」

「は、はい…」

アイリスはうっぷうっぷとなりながらも船に向かって着火魔法を飛ばしていく。まぁ、燃えはせんだろうけど慌てて消火活動に勤しんでくれ。シスコとトルクの絶好の的だ。

海賊達はこれは無理だと判断したのか海に飛び込んでいく。

「パラライズ」

マーギンは海に飛び込んだ海賊に軽く麻痺魔法を掛けた。これで上手く泳げないから他の海賊も救助に回るしかない。

「助けてくれぇっ」

そんな声があちこちから聞こえて来る。死ぬかもしれんが刃物を持って襲って来るような奴がどうなろうと知ったこっちゃない。こいつらを殺すのは魔法ではなく海水だ。

「おっ、あの中型の船は良いな。戦利品としてもらうか」

10人以上乗れそうな中型の船を発見したのでアイリスにまだ乗っている奴の頭目掛けて着火させる。

「うわぁぁぁぁっ」

頭に火がついた海賊は慌てて海に飛び込んでいく。

誰もいなくなった船に向かってトルクに糸付の矢で射ってもらい、船をキープ。

「終わりだな」

「あぁ、人数の割に呆気なかったな」

貨物船から海賊がいなくなったのでロッカ達と船尾に向い、中型船を皆でオーエスオーエスと引き寄せてから追加で糸付の矢を射り、切れてしまわないようにして貨物船にくくっておいた。

「お前らすげぇな」

船長がこちらにやってきてあっという間に大量の海賊を追い払った俺達を褒める。

「これで船賃ぐらいにはなったろ?」

「船賃どころか期待以上の成果だ。かなり大掛かりの海賊だったが、もうこれでしばらく海賊家業もままならんだろ」

船長曰く、海賊団は複数いるらしく、今回は合同で来たのではないかとのことだった。

「なんか貴重な物を積んでるのか?」

「ご貴族様の荷物を積んでいる。たいしたもんじゃねーが何か金目の物があるとふんだんだろう」

荷物の情報も漏れてるんだな。港に海賊と通じているやつがいるのかもしれん。

「あの船はどうするんだ?」

「タイベで使おうかと思ってな。釣りとかすんのに良いだろ?」

「操船出来るのか?」

「いや出来んよ。海岸からそんなに離れんから大丈夫だろ」

「流されても知らんぞ。海を舐めるなよ」

「まぁ、波打ち際程度にしておくよ」

そんな話をしているとどこからか歌声が聞こえて来る。

「ん?もしかしてこの海域にセイレーンがいるのか?」

「よく知ってるな。さっきの海賊共が沢山海に落ちたせいで集まってきたんだろ。溺れた奴は食われてると思うぞ。きっとサメと餌の取り合いだったろうな」

その光景をカザフ達に見せずに済んだのは良かったな。恐らく凄惨な光景だっただろう。

他の海賊が来ないか警戒している間に夜が明けてくる。もうすぐタイベに到着だ。

それから数時間で港に到着した。

「帰りも乗るのか?一週間後に出るぞ」

「いや、しばらくタイベに滞在するから帰るのはもっと後だな。帰りもタイミングが合えば乗せてくれ」

「おお、お前らならいつでもいいぞ。じゃあまたな」

と、ここで貨物船の船長とはお別れになった。

陸地に降り立つとロッカ達はまだ揺れていると言うので、今日は移動せずに港町の宿に泊まる事にしたのであった。

ーマーギンがライオネルの隣町から出発した日の翌日ー

王都から沢山の衛兵とその責任者がやって来た。

「街長及びその関係者、衛兵責任者を捕らえよ。他の衛兵は尋問を行う」

ライオネルの隣街は騒然となる。王都から衛兵達がやって来て街長を捕らえたのだ。そして今までの衛兵に代わって王都の衛兵が警護に付いたのであった。

ーマーギンがライオネルを出発した翌日ー

「わ、私が何をしたと言うのだ…」

ライオネルの領主は王都から呼び出しを受けていた。伝令から渡された手紙には即座に登城しろと書かれている。

ライオネルの領主は慌てて馬車を王都に走らせるのであった。

ー王都ハンター組合ー

「組合長、ライオネルから至急の手紙が届いてます」

ライオネルのハンター組合からの手紙を読むロドリゲス。

「ちっ、マーギンのやろう、やっぱりなんかやらかしてやがる。おい、今からライオネルに向う」

「えっ?ちょ、ちょっと待って下さいっ」

ロドリゲスは馬でライオネルに向った。手紙によるとライオネルの組合がヤバい事になっているからだ。夜の街道を馬で走り、翌朝にライオネルに到着。

「おい、マーギンはどこに行った?」

「あ、ロドリゲス総長。どうされたのですか?」

対応したのは副組合長のトッテム。

「マーギンはどこだ?」

「マーギンさんならもう出発されてますよ」

ロドリゲスの予想に反して平穏そうなトッテム。

「組合長はどこだ?」

「体調が悪いようで事務所でお休みですよ。組合長の部屋にご案内します」

そしてロドリゲスが組合長の部屋で見たものは麻痺が残って机に突っ伏したままの組合長だった。

「大丈夫か?」

「あ、あいつは一体なんなんだ…」

「お前、マーギン達の討伐に難癖付けて報酬払わなかったんだってな。あいつの記録に丸特付けてあったの見てなかったのかよ」

「わずか半日程で魔狼を120以上討伐したとか信じられるかよ…」

「はぁ〜、ったく。あいつはそんなもん朝飯前なんだよ。一人で化け物を倒すやつなんだぞ。それにライオネルにもそんなに魔狼が来てたならやばかっただろうが。礼を言うべき所を疑った上に報酬払わないとか馬鹿過ぎる。そのまま痺れが取れるまで反省してろ。お前は謹慎だ。おいトッテム、お前がしばらく組合長代行をやれ」

実は王都の組合長だけでなく、シュベタイン王国全体のハンター組合の総長をしているロドリゲスは取り敢えずトッテムを組合長代行に据え、ライオネルの魔物状況を関係者に説明させるのであった。

ータイベー

「なぁ、マーギン。この後の予定どないするん?」

「まずはアイリスの母親の墓参り。その後は決めてないからあちこち見て回るつもりだぞ」

「ほなら、それが終わってからでええねんけど、タイベのハンター組合に付き合ってくれへん?」

「ここで依頼を受ける気はないぞ」

「あの海賊絡みやねん。そんな事言わんとちょっと手伝ってぇな」

「あの海賊絡み?手配掛かってるかもしれんが討伐証明がないから報酬はもらえんぞ」

「あいつら海に落ちて死んだやつもいるけど、逃げた奴もようけおんねん。うちは夜目も効くから逃げていく方向見てたんや」

「それで?」

「逃げた方向にアジトがあるんちゃうかなと思て。アジトはタイベの衛兵も探してるんやけどずっと見付けられへんままや。それを一網打尽にしたらようけ報酬貰える。うちの商売の軍資金にしたいねん」

「アジトを見つけて報告したら報酬がもらえるのか?」

「情報だけやったら100万Gとかそんかもんや。せやけど、捕縛したら海賊を鉱山奴隷にする金も貰える。親分もおったら賞金も貰えんねん」

「捕縛ってどうやるつもりだ?」

「あんな… 実はうち魔法が使えんねん」

「え?」

「そやけど、大規模に発動させるには長い間集中しとかなでけへん。その間守って欲しいんや」

「射程距離は?」

「多分100mくらい。うちの目ぇで見えてたら大丈夫や。多分隠れてやったら見つからへんと思うけど、もし見つかったら怖いやろ?ドキドキしてたら発動せんかもしれんへんし、マーギンが隣におってくれたら絶対に成功すると思うんや。なぁ、頼むわ」

「どんな魔法なんだ?」

「それは見てのお楽しみ。その魔法掛けたら衛兵呼びに行って捕まえてもろたらええ。ほなら捕縛もやってくれるし報酬も全部手に入る。いまどれぐらいの条件になってるか確かめときたいねん。なぁ、ええやろ?」

「俺の報酬は?」

「う、うちの身体でどうや?」

と、ウッフンポーズを決めるハンナリー。

「却下だ」

あっさり拒否するマーギン。

「なんでやねんっ!うちはそこそこ可愛いやろ?あんたもうちにケモミミ可愛い言うたやんっ。あれは嘘か?うちを騙したんかっ」

「お前、身体を報酬にしたいなら娼館で働け。金持ちに気に入られたらザクザク金が入るぞ」

「そんなん嫌や。マーギン相手やったら責任問えるやん?ほならうちも一生安泰や。安心して商売出来るっちゅうわけや」

こいつ…

「まぁ、金だけやのうてあいつ等なんとかしたいねん。働きもせんと人の商売を邪魔して生きとるような奴らは全部捕まったらええねん。それで今まで人のもん奪った分、奴隷として人生奪われるべきやと思わん?」

「そりゃあな」

「やろ?こんなチャンス絶対に逃したらあかん。みんなが困ってた海賊を全滅させたのがうちらやとなったら、商売の信用度も上がって軍資金も入ってすべてが上手いこと行くと思うねん。なぁ、頼むわ」

上目使いで目をうるうるさせてマーギンを見るハンナリー。実にあざとい。しかし男はこういうのに弱いのだ。

「なら俺の報酬希望を言う。これを飲むなら手伝ってやる」

「な、なんや?やっぱり身体か?」

「違うわ。お前、タイベと王都の流通をやれ」

「ん?今すでにあるやん」

「違う。俺が望む物を取り扱えと言ってるんだ。新しい物を流通させるからそれをお前に任せる。送料の価格は安めに設定するけど損はさせない。どうだ?この条件を飲めるか?」

「いきなりうちに仕事をくれる言うんか?」

「そう。それとタイベに魔道具の店を持て」

「え?」

「俺は今王都の魔道具職人の仕事を手伝っている。売り先は沢山あったほうがいいからな。タイベの人でも買えるように運送費は抑えたい。だからそれをお前がやるんだ」

「う、うちが魔道具の店と流通をやるんか…」

「一人じゃ無理だろうから人を雇うことになる。こっちも魔道具の大量生産に時間が掛るし、タイベで作って貰う物も仕入れるまで時間が掛かる。準備期間は半年ぐらいだな。今年の秋にスタートして、本格的に商売になるのは来年の今頃からって感じだ。どうだやれるか?」

「ほ、ほんまにうちにそんな大きな仕事を任せてくれるんか?」

「出来るならな。貨物船の船長はライオネルからタイベに運ぶ荷物が少ないと言っていた。ライオネルからの荷物が増えるなら船賃を負けてくれるかもしれない」

「それが魔道具ってことなん?」

「あとは薄力粉かな。こっちでは見かけなかったから商機がある。お前が直接薄力粉の買付をしたら値段を落とせるだろ?タイベからは米を取り寄せるつもりだから、それを王都に運んで薄力粉を仕入れてタイベに持ち込むって事だ」

「薄力粉ってなんなん?」

「小麦粉の種類の一つだ。普通の小麦粉はパンを作る為のもの。薄力粉はお菓子や色々な料理に使うものだ。タイベでも使い方が知られたら需要があると思うぞ」

「めっちゃ大きな商売やん」

「だろ?王都の薄力粉の仕入とかは口を利いてやる」

「わかった。うち頑張るわっ」

「なら交渉成立だな。アイリスの墓参りが終わったらハンター組合に行こう」

「おおきにっ」

むちゅーっ

マーギンはハンナリーにほっぺにちゅーされるのであった。