軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

根回し

ー翌日ー

「マーギン、手伝え。てんてこ舞いだ」

ロドリゲスに顔を見せるや否やそう言われる。

「俺は忙しいんだよ。で、相談なんだけどな」

と、サラッとロドリゲスの言う事を却下してから特務隊の話をする。

「うちと連携か… 騎士隊とは話が付いてるのか?」

「こっちがOKならこれから話を持っていく。特務隊も魔物討伐に慣れてないからロッカ達に臨時パーティ組んでもらう許可は取った」

「まぁ、こっちは使える奴が足らんで困ってるから願ったり叶ったりだ。で、お前らがタイベから帰って来るまではどうする?」

「特務隊に近隣の討伐を依頼したりする?」

「向こうが受けてくれるならな。ボアとかオーキャンなら問題ねぇだろ?」

「討伐はな。肉とか持って帰って来ないと思うぞ」

「いらないならいらないでかまわん。村の奴らにくれてやればいいが…」

「なんか問題ある?」

「いや、騎士隊が来たら肉や毛皮をもらえるとなったら、ハンターが来るよりそっちの方が良いからな。騎士隊に依頼が偏るかもしれん」

「あー、なるほどね。ハンターが持ち帰れない肉とかどうしてんだ?」

「村の近くなら村で買い取ってもらうか、燃やしちまうかだな。無料でやると次に来たハンターにも同じ条件を期待されるから他の奴らに迷惑をかけることになる」

そんなシステムなのか。

「わかった。その暗黙のルールも伝えておくわ。後さ、防刃服ってのを開発してんだけどハンターならいくらで買うと思う?」

なんだそれ?と聞かれたので説明をする。

「すげぇじゃねーかよ」

「だろ?素材から育てるから量産はもっと後になる。初めは騎士隊と軍に売り込みを掛けるからハンターにまで行き渡るには時間が掛かるとは思う」

「どれぐらいの価格になりそうだ?」

「上下で30万G」

「服にしちゃ高ぇが、防具としちゃ安いな。本当に斬れないのか?」

「それは保証する。後は耐久性がどこまであるかだね。それは販売までに試しておくよ」

「おう、決まったら教えてくれ。組合でも販売させてもらうわ」

「了解。じゃ、騎士隊と話が付いたら連絡するよ」

次に騎士隊の本部に向かう。歩いて行くのは初めてなのでちょっとした観光だ。ちょいちょい店を覗くとやっぱり庶民街と値段が全然違う。魔道具も仕組みは似たようなものだろうけど装飾が華美だ。

まぁ、職人街の商品は実用性で勝負だ。貴族達も買いに来ないだろうからな。

歩くと遠い騎士隊本部。

「こんにちは。自分はマーギンと申しますが大隊長と面会出来ますか?」

「大隊長に?…………… おっ、お前はっ」

本部前の警護をしているところを見ると第四隊なのだろうか?俺は顔を知らないけどこの人は俺の事を知っているようだ。

「無理なら手紙を渡しておいてくれますかね?」

「い、今確認致します」

と、伝令を出してくれたのでしばし待つことに。

「ここの警護は第四隊?」

「はいっ、第四隊であります」

こいつなかなか良い体付きをしてるな。ちょいと鑑定をしてみよう。

おっ、ステータスも中々。魔力値は700もあるし火の適性がBか。十分戦力になりそうだ。

「名前なんていうの?」

「自分でありますか?」

「うん。君に話し掛けてるよね?」

「自分はサリドンと申します」

「爵位は?」

「我がシュミット家は爵位はございません」

爵位なしの貴族もいるのか。

「出世って爵位が関係している?」

「… はい」

「自分で強いと言える?」

「騎士隊の中ではまだまだではありますが、鍛錬は欠かしておりません」

「剣技会とかに出られそう?」

「剣技会は隊長推薦がないと出られませんので難しいかもしれません」

「自分の実力が試せる場があれば活躍したい?」

「それはもちろんであります」

「どんな役目でも?」

「はい。国を守るために騎士になりました。出世は難しいかもしれませんが、国を守る職務は自分の誇りであります」

「うん、わかった。警護頑張ってね」

「ありがとうございます」

伝令が帰って来たので話を止めた。大隊長がいるらしいので案内される。

「お前から来るとは驚いたな」

「まぁ、営業ってところかな」

「営業?」

「そう、騎士隊と軍なら買ってくれるんじゃないかなと思って」

「お前商人も始めたのか?」

「いや、職人街の仕事を手伝ってるんですよ。で、面白いものが出来たからどうかなと思いましてね」

と、マーギンは預かってきた防刃服を見せる。

「女に着せるのか?」

「違います」

なぜ皆エロい方に考えるのだ?

「これは防刃服といいましてね、刃物で斬れない服なんですよ。試しにローズにも斬ってもらいましたが斬れませんでした」

「なにっ?」

「防具の下に着て貰えば刃物で斬られる事がなくなって大出血するのを防げます。防具のないところだとダメージは普通に喰らいますが斬れなければ治癒師がなんとか出来るケースが増えると思うんです」

「こんなスケスケの服が刃物を通さないのか?」

「刺突されたら防げません。あくまでも斬られるのを防ぐ服です」

「試していいか?」

「どうぞ」

大隊長はその場にいる騎士に着せようとしたがそれはやめてやって欲しい。ダメージは通ると説明したよね?

「椅子か何かに着せて下さいよ。大隊長の力でやられたら斬れるうんぬんの前に打撲で死にますよ」

試し斬りされかけた騎士は顔が青ざめてんじゃねーかよ。

マーギンは大隊長から防刃服を奪い取り、椅子の背もたれに着せた。

「どうぞ。椅子は壊れると思いますけど」

「かまわん。フンッ」

ゴシャッ

哀れな椅子…

弾き飛ばされた椅子は砕け散ったが服は斬れていなかった。

「素晴らしい。これはいくらで販売する予定だ?」

「上下セットで30万G」

「その程度で買えるなら全員に支給可能だな」

「まだ耐久性を確認出来ていないのと、量産出来る体制が整っていないので販売はまだ先になります。売れるならその体制を組もうと思うんですけど、いかがです?」

「うむ、騎士隊の予算は組んでおこう」

「軍には売れないですかね?」

「軍か… これは預かっておいて良いか?」

「はい」

「採用するかまでは解らんが俺から話を通しておく」

「ありがとうございます。あと、焼き肉のタレも量産出来るかもしれません」

「それも買おう」

即決なのが素晴らしい。

「ではお邪魔しました」

「マーギン、飯を食いにいこう」

「はい。安い所でいいですよ」

そう言うと騎士隊の食堂に行くことになった。

「こんな所があるんですね」

「皆はだいたいここで食う。俺が来ると皆が遠慮するから来ないようにしているがな」

昼の時間は過ぎているけど、交代で飯食ってるからか今の時間は若手が多い。大隊長が食堂に入るなりぎょっとしてサササッと逃げるように去って行く。気持ちは解るけど心象は良くないよ君たち。

飯はパンとスープと肉を焼いたもの。味付けは塩胡椒だ。胡椒が掛かっている所が貴族だな。結構旨い。

「オルターネンの話は聞いたな?」

「はい。大隊長は自分の話は聞きました?」

「あぁ、驚いた。陛下にはまだ報告していない。お前と話をしてからにしようと思ってな」

「まぁ、報告を上げない訳には行かないだろうからいいよ。で、オルターネン様の部隊は上手く行きそう?」

「難航してるぞ」

と、ふふふと笑う。

「まぁ、騎士になるような人は魔物討伐なんかしたくないだろうからね。俺も左遷かと思っちゃったよ」

「だろうな。それは俺も想定している。だから人選はオルターネンに任せたのだ。本気で国を守るという志を持った奴が必要だからな。俺が人選するとハイとしか言いようがなくなる」

「うん、ちい兄様にとってお互いに命を預けられる仲間は自分で探した方が良いと思う」

「生命を預けるか… そうだな。その通りだ」

「初代メンバーって重要なんだよね。その組織の在り方が決まってくるから。組織って人格みたいな物を持つんでしょ?それは伝統とかになるのかもしれないけど、人が入れ替わっていっても組織の人格は変わっていかないって教えられたよ」

「お前の師匠は本当に傑物だな。良い話を教えてもらっていた自分を幸せに思えよ」

「うん、今なら理解出来るよ」

「騎士達はまだ特務隊がどうなるか分からないから様子を見ている。で、オルターネンが活躍して部隊の重要度がわかってくると希望者は増える。出世の近道だからな」

「まぁ、後出しで手を上げた奴より、初めから手を上げてくれた人の方が重要だね」

「そうだ。だから俺は黙って見ている」

「うん。ちい兄様も解ってると思う」

「お前の所に相談しにいってどんな話をした?」

「まぁ、パーティの組み方の例とかだね。ちい兄様には盾役がいいよとは言った」

「前衛じゃなくか?」

「目の前の魔物討伐ならそれでもいいけど、この先は部隊全体の指揮官になるんでしょ?戦力としてより指揮官としての訓練じゃないかと俺は思ったんだけど違った?」

「正解だ。いずれ特務隊は騎士隊とは別の組織になるだろう。そうなればオルターネンは大隊長だ」

「なるほどね。爵位に関係なく上を目指せる部隊か」

「そういう部隊がある方が腐らずに済む奴がいるからな」

「うん、大隊長がそういう考え方の人で良かった」

マーギンがそう言うと、大隊長はそうかと笑顔だった。

「次は相談なんだけど、特務隊って魔物討伐はどうして行くつもり?」

「初めは自分たちで魔物を探して討伐することになるな。まだ各地から国へ依頼する方法が確立されておらん」

やっぱり。

「ここに来る前にハンター組合と話をしてきたんだけど、特務隊が依頼を受けてくれるならお願いしたいってさ。慣れるまでは近隣のボアとかオーキャンの依頼をこなして貰えたらいいって。各地で魔物が増えててんてこ舞いらしいんだ」

「ハンター組合が協力してくれんのか?」

「ハンター達は依頼を断る自由があるからね。そのうち誰も受けたがらない魔物討伐依頼とか出てくる。そういうのが国に依頼される事になるんだろうけど、それまでのつなぎだね」

「そうか、代わりに話を付けてくれたのか。それは助かる」

「で、近々俺達はタイベに行くけど、それから帰ってきたら星の導きと特務隊で臨時パーティを組んだらいいと思うんだ。ロッカ達には話を通してある。1年ぐらい一緒に魔物討伐したら色々と学べると思うけどどうかな?」

「良い考えだ。星の導き達は了承済みか?」

「もちろん。後は大隊長の返事待ちとちい兄様の希望しだい」

「わかった。オルターネンには伝えておこう」

「あと別件なんだけど、貴族制度に付いて教えてくれる?」

「何が知りたい?」

「爵位無しの貴族って多いの?」

「ゴロゴロいるぞ。爵位は一人にしか継げないからな」

「爵位無しの貴族は子供も貴族?」

「貴族籍を継げるのは一人だけだ。爵位と同じ考え方だな」

「貴族籍を継げなかった子供はどうなんの?」

「平民落ちだ。女ならどこかの貴族に嫁ぐとかが一般的だが、男は養子に入るか、それも叶わなければ平民になる」

「親が亡くなる時に決まるの?」

「親が貴族の間は子供も貴族だが、誰かが継いだら継げなかった者は貴族籍を失う。自分が貴族籍を取れないのがほぼ確定したら先に外に出るぞ。王都にいると平民落ちしたくせにとか言われるから大体地方に行くな」

「結構シビアだね」

「まぁ、全員貴族のままなら貴族が増える一方だからな。どこかで線引する必要がある。だから爵位無しの貴族はあまり子供を作らん。男が生まれたらそこで子作りを止めるのが一般的だ」

なるほど。

「何か功績を上げれば自分で貴族籍を取ったり、爵位を取ったりは出来る?」

「国がこいつが必要と思えば可能だ。爵位は中々もらえんが貴族籍はそうでもない。それと、貴族籍を失う可能性があるやつは努力家が多い。貴族籍を失うまいと必死になって働くからな。まぁ、そういう奴は平民落ちしても成功して貴族でいるよりも裕福になったりするから一概にどっちが良いとは言えん」

「ありがとう。参考になったよ」

「どうしてこんな事を聞く?」

「ちょっと気になってね。第四隊のサリドン・シュミットって知ってる?」

「ここの警護をしているやつだな。あいつは貴族籍を継げないだろうから努力家だぞ。そのうち隊長から剣技会への推薦があってもおかしくない。正騎士になりたてだが上がって来るのも早いだろう」

「でも出世したとしても小隊長くらいまで?」

「まあ、正直そうだろうな。小隊長になれば貴族籍を取れるとは思うぞ」

「そう。ならいいか」

「何か気になったのか?」

「いや、ちい兄様の部下とか向いてるんじゃないかなぁとか思っただけ。大隊長への伝令を待ってる間の話相手になっててもらったんだよね」

「そうか、オルターネンの耳にも入れておこう」

話がだいたい終わった頃に嵐がやってくる。

「こんな所にいたーっ。探したんだからねっ」

姫様登場で騎士隊本部の食堂は騒然となるのであった。