軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

58.再試行再思考再試行

『あなたは【影禍】に肉体を捻じ切られた』

『リスポーンしますか?』

『受理しました』

私は広間にリスポーンした。ふー……これで362回目だな……。

「結構進めてはいるんだけどね……」

まだまだ廊下の先は闇に溶けていて見えない。でも大半の攻撃は初見殺しだし、というか普通に被弾したら即死なので初回は必ず死ぬんだけど。

でも2度目は喰らわない。相手の攻撃パターンそのものは実に単調だ。どんな攻撃も私を追いかけるばかりで、例えば【影操作】で影をロープのように操って私を捕らえようとはするが、私が回避した先に罠のように仕掛けてあるといったようなことは無かった。

「本当に、頭までは奪ってないんだね」

まだ同時に複数のスキルを使ってきてすらいない。私ならもっと意地の悪いことをするし、そもそも偽装を使う。

何よりも、何度やり直しても攻撃パターンが変わらない。それはそういうシステムなのかもしれないが。

「よしっ」

廊下から黒い槍が飛んでくる。しゃがんでかわして廊下に駆け込む。四方八方から黒い弾が飛んでくる。身をひねってしゃがんで跳んで着地したら首を反らして、全てかわす。まだ走る。

「……ふっ!」

毒々しい槍は大きく距離を取ってかわす。やや甘く追尾して来るそれを、頭上に降ってきた二撃目である黒い槍とぶつけて相殺。

ふむ、最初の方の回避行動パターンはかなり身体に染み付いてきたな。

「……はっ、はっ……」

走る、走る。

「おっ……と!」

かわす、かわす。

弾が飛んできても槍が生えてきても見えない何かに引き寄せられても走る。パターンを覚えている限りかわす、パターンを忘れても直感に沿ってかわし続ける。

「さっきのあれは……ここ!」

肌が不意に引き攣れたような感覚がして、咄嗟に身を捩った。シャツの袖が少し千切れたが、やり過ごせたようだ。

「これで……うわっ!?」

が、突然足場が消える。

「いや……これは……!」

廊下がぐるんと回った。さっきまで前方だった場所はゆっくりと足元になって、私は真っ暗闇な長い廊下を凄まじいスピードで 落(・) ち(・) て(・) い(・) く(・) 。

「がっ゛……!」

『あなたは強く叩き付けられた』

『リスポーンしますか?』

『受理しました』

気付けば、また広間に戻っていた。

「……はは……ああ、そう、そのくらいしてもらわなくちゃね。マンネリだったもの、ちょうどいい」

――――――――――――

「ここ……っ!」

378回目、空間が回転する直前に床を蹴って壁に飛びついた。装飾に指を引っ掛けることで生存。

「ゔっ」

しかし壁から黒い槍が飛び出し、私の心臓を真っ直ぐ貫いた。

『あなたは【影禍】の影に貫かれた』

『リスポーンしますか?』

『受理しました』

――――――――――――

「……凌いだ!」

405回目、空間が180°縦回転し切るまでなんとか壁につかまってやり過ごせた。天井の梁を飛び石のように移りながら移動する。

しかし、頭上……さっきまで床だった場所から何か液体が降ってきた。

「な……あ゛っ゛づ!?」

『あなたは【影禍】の強酸に溶かされた』

『リスポーンしますか?』

『受理しました』

――――――――――――

「っ、ふ……」

417回目、回転する空間の中、かつて床だった壁を蹴って天井だった壁へ貼り付く。そのままやり過ごすのではなく無理やり駆け出して、酸液も弾幕もスルーした。

「このあたりは何もっ」

そのまま駆け抜けていくと、見えない何かが腹を貫通する。

『あなたは【影禍】の影に引き裂かれた』

『リスポーンしますか?』

『受理しました』

――――――――――――

632回目、天井に立ち、濃密な弾幕をあまり動かないようにすり抜けているところで突如として身体が動かなくなり、蜂の巣にされた。

633回目、弾幕が展開される直前に大きく前へと跳躍し、後方から爆風を浴びた。

――――――――――――

984回目、突然足元が全てぬかるんだ。跳び上がりながら壁を伝って移動していたら、ぬかるみにすさまじい力で引き込まれた。

985回目、同じく壁を伝って進み、ぬかるみから腕が飛び出すのを確認。壁の装飾を蹴り落として黙らせた。

――――――――――――

1865回目、空間が再び回転した。今度は後方が下になり、元の広間がうっすらと足元に見える。遠くなった地面を見た瞬間につかまっていた壁が溶け、装飾をつかんだまま明るい広間に叩き付けられた。

1866回目、前回の再放送。同じ罠にそっくりそのまま2度引っかかったのはこれが初めてだ。

1867回目、少し持ち堪えたが結局下を向いて真っ逆さまに落ちてしまった。

1868回目、何が何でも地面を見ないようにしてみたら、壁が溶けなかった。そのまましがみつき、這い上がっていくと、廊下の回転が終わる。久方ぶりに床へ足をつけたところで全身を握りつぶされた。

――――――――――――

3001回目、暗がりの向こうにある大きな扉の存在を視認した。立ち止まったその瞬間に、両足を断ち切られた。

3002回目、扉が見えても立ち止まらなかった。壁が少しずつこちらに向かって迫り出してきて、加速しようと強く踏み込んだ瞬間に足元から沈んだ。

――――――――――――

3056回目。私は立ち止まった。

「……あは」

私は、廊下の先にある大きな扉を、両手で力いっぱいに叩き、あのムカつくアイツに向かって叫んだのだった。

「……開 け ろ ! ! ! !」