軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

51.相対する

……屋敷の北、母屋にあたる建物。

そこの中心にある、最も大きな扉の前に、私は立っていた。

この扉の向こうに……【風化鬼】がいる。

扉に触れた。木の表面はささくれ立ち、塗装がはげた部分からは腐敗も見え隠れしているが、その扉には重みがあった。

その奥から薄っすらと、強大な気配がする。でも_初めて相対した時のような、どうしようもない恐ろしさは感じない。ただ、そこに強者が居る、ということだけが分かった。

行こう。

私は扉をこじ開けてくぐった。

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その空間はひんやりとしていた。冷え切った死体である私がそう感じるのだから、実際に来た人は相当寒く感じるだろう。

私以外の誰も、もう来ることはないが。

ちょうど目の前に【風化鬼】がいる。禿げ上がって僅かな髪を残すだけの頭、艶のないかさついた肌、痩せこけて肋の浮く胴、異様に膨らんだ腹、関節が際立つ骨と皮だけの四肢。パッと見は大きくなってより禍々しくなった餓鬼といった風体だ。

【鑑定】。

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【魔物】風化鬼 レベル112

大きな咎を犯し続けるもの。救いの道を探すのは、最早絶望的かも知れない。

その身体は死んでいて、血を流すことは無いだろう。

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レベル詐欺〜。攻略は80からって書いてたのに。お前。シンプルに素直に詐欺だよ。アレか?道中の魔物が弱いからか?それともパーティでのクリア推奨レベルだったとか?まあいいや。

それはいつまでも私をぼんやりと見つめていて動かない。前は出会って数秒で丸呑みだったよね?しょうがないから、試しに【念話】で話し掛けてみた。

『ごきげんよう』

それは軽く首を傾げるだけだった。痩せこけた、どころかほぼミイラのような死体がそれをやっても可愛くはないぞ。

ふむ……伝わってはいなさそうだ。一応【魔物語】で話し掛けたが、元人間だしもしかしたら【人語】が通じるのかもしれない。

『良い天気ですね』

……それは軽く首を傾げるだけだった。伝わらないかあ。はてさて、私の言語スキルレベルが低いせいなのか、【風化鬼】が脳味噌まで腐ってしまっているばかりに言語を介せないのか、単純に私の対話力が終わっているのか。そのどれかは分からない。

「……(……ダメだな)」

だけど……伝わらないのなら、 伝わる言葉(肉体言語) でやり合うしか無いよね。

「……(【踏み込み】【一撃入魂】【剣禅一致】)」

正面から斬り込む!

「……!(【ポイズンスラッシュ】!)」

ガキン、と派手な音がして、私の剣は【風化鬼】の腕に受け止められる。こいつマジで硬い。

落ち窪んだ【風化鬼】の目と、落ち窪んだ私の目が交錯する。それのぬめった黒い目には、何の感情も映り込んでいない。何処となく、 狼茄子(ベラドンナ) の実を思い出した。

やはり【風化鬼】は、薄ぼんやりとしていた。私を見つめているようで、その実どこにも焦点が合っていないような目だ。

ああ、はじめまして、ごきげんよう。いつぞやお前に丸呑みにされた魂だよ。お前は覚えちゃいないだろうし、知ったことではないかも知れないが、私だって色んな経験をしてきたんだ。

私だって善人のあなた自身に恨みは何一つ無いし、救ってやりたいと思ってる。でも、お前が我を忘れたために、ただ迷い込んだだけの私を食い殺したのだって事実だ。だから_

「……(【麻痺毒生成】【毒爪】)」

_お礼参りの一つくらいはさせろよ!

「……!(【地獄突き】!)」

毒の滲む爪を、風化鬼の喉元に向かって思いきり突き立てる。皮膚を裂き、喉仏を砕いて、柔らかい気道に一気に突き刺さった。爪から伝わって、風化鬼の全身に麻痺毒が染みていく。

風化鬼は苦悶の声を上げて、そして私に向かって大きく口を開けた。

……丸呑み攻撃だ。どう考えても即死!どうかわす?手を引き抜いてバックステップ?多分間に合わない。

「……!(……吹っ飛べ!)」

じゃあ、向こうを吹き飛ばせばいい!風化鬼の膨れた腹を、勢いのままに蹴り飛ばす。やつはもんどり打って倒れ、私はそのまま後ろへ跳び退いた。

よし……何とか距離を取れた、が……足のほうが逝ったな。足首が思い切り変な方向へ曲がっている。あ〜じんわりと痛みが……。まあこれくらいなら数秒もあれば【再生】で治せるか。

さて、風化鬼とも距離を取って、【再生】を待つ間に……もう一度【鑑定】だ。

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【魔物】風化鬼 レベル112 麻痺状態

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……うん。どうやら麻痺毒そのものは通っている……が、如何せん風化鬼には血が巡っていないために、どうにも全身へ回りづらいらしい。動きこそ鈍くなっているが、行動を阻害するまでには至らなかったようだ。

やっぱり、警戒すべきは丸呑み攻撃かな。大して鈍くなってない状況で、一気に近付かれてバクッといかれたら、救済云々の前に死ぬし。

……さ、仕切り直しだ。安心してくれ、ちゃんとあなたのことを救ってあげるから。