軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

36.龍脈

……【風化鬼】以来の、いや、それ以上の激しい威圧感を感じる。どうしようもない格上を、というよりもむしろ……。

『なるほど。我を感じ得るのか。ますます面白くなってきたな』

今私がいる場所の周辺は、あり得ないほど魔素が濃く満ちている。もし私が生身の人間だったら、一呼吸でつぶれかねないほどだ。

でも、確かにかすかな気配を感じる。絶対に逆らっちゃいけない相手の、気配を。

『言葉も出ないか?それではつまらん……名を名乗ることは?』

そこはお前から名乗れよ、と、言えるわけありませんね……。私に口は無いけれど、しゃべるだけしゃべってみよう。もしかしたら【念話】が通じるかもしれない。

「……(エナ、と申します)」

『ほう、エナ。穢那……その名でありながら、お前からは清浄さも感じ取れる。……坩堝のように混沌としていながら、決して歪むことのない芯を持つか。実に面白くなってきた』

いや、ただ本名から取っただけの名前ですから。全然そんなことはないので。

しかし、向こうには【聖浄魔法】を持ってることが透けてるのか。この様子じゃ【侵蝕魔法】もバレてそうだし、なんならいっそ手持ちは全部知られてると思ってたほうが良さそうだな。

『では、エナよ。ここまで至ったお前に、一つ贈り物をくれてやりたい。だが、如何せん我は孤独が永い故に、他者の望む贈り物が分からぬ』

ははあ。

『して、お前の望みを聞こうというわけだ』

まあ、願ってもみない申し出だ。さてどうしたもんか、【風化鬼】を生み出した旅人_恐らく【煉丹術】を作り上げたあいつと同一人物_の行方でも聞くか、そもそも正確な地図を願うか、はたまた……。

……待てよ。そもそもこの相手は、本当に私の願いを叶えてくれるのか?例えば正確な地図を要求して、「正確な地図」と書いただけの紙を寄越してきたりするような存在じゃないと本当に言えるのか?

なら、何かものをねだるのは得策じゃないな……。

「……(で、あれば)」

『ほう、なんだ?』

「……(……私の前に、姿を現していただきたい)」

姿。顔を見せ合うことは、信頼を示す一つの形だ。特に、あらゆるすべてがネットワークで片を付けられる 今日(こんにち) では。どれだけ強大で偉大であろうが、私一人に向けて声を掛けるのなら、顔と顔を突き合わせるのが 礼儀(マナー) というものである。

まあ、もちろん、否と言うのなら、適当な何かを所望して失礼させていただくが。場合によっては、そもそも関わりがなかったことにしてサヨウナラだ。

『……姿を?』

「……(ええ。世を忍ぶ仮の姿でも何でも、私に姿を見せてください)」

『その心は』

「……(知らぬ者と話すときは、顔を見て信用するかどうかを決めているので)」

『……』

さあ、どう出る?

『……ふ、っくく……!そうか……!それはそうだ、非礼を詫びよう』

「……(では)」

『ああ、我の姿を顕にしよう』

その瞬間、吹き飛ばされたかと思うほどの衝撃が、実体のない私の身体を叩いた。

『だが心しておけ_』

微かだった気配が濃密になる。魔素で歪んだ空間が引き伸ばされる。

すべてが屈服して、膝をついて、頭を垂れる存在が出現する。

『我を見る人は、王のみであると』

眼前に、巨大な龍がいた。艶めく鱗に覆われた身体を悠々とくねらせ、たなびくひげと巨大な角を持つ巨躯が、そこにある。

それは、其は、闇の中で薄ぼんやりと光を放ち、その瞳は一際強く輝いていた。

『我こそは、天道の主。契約と対価、法と則の長。世の調律者_【歳王】也』

ゆるりと細められた目は、確かに私だけを突き刺している。

「……(……調律者)」

『ふむ、それが我を端的に示す言葉よの』

「……(そんな大物が、なぜここに……)」

『それは、ここが【龍穴】故にだ』

「……(【龍穴】?)」

また知らんワードが出てきたな。

『世に満ちる【魔素】……お前には最早説明など要らぬだろう。それの源は地下にあるのだ』

「……(ああ、だから下の方が魔素が濃いわけですか)」

『はっは!話が早くて助かる。我は老体ゆえ時間も無いのでな』

ジョークのセンスないな、おじいちゃん……。

「……(それで、それと【龍穴】に何の関係が?)」

『魔素は地下の根源、【龍脈】より生まれる。万物一切もまた【龍脈】より本質をいただく。【龍穴】は【龍脈】の溜まりよ』

あー、リンパ管とリンパ節みたいな。おーけーおーけー。

『大小の差はあれど、万物は魔素を持つ。すべてが【龍脈】に影響を受けているためにな』

「……(ああ、そんなところに私なんかが迷い込んだから……)」

『何やら良からぬ陰謀でも企まれては困るのでな』

困るどころの話じゃないだろ。世界滅亡まっしぐらのスイッチがここにあるわけなんだから……。

『覗いてみれば、居るのは幽霊一匹。大した企みも無くただ迷い込んだだけ。なれば、一つものでもくれてやって口止めすれば良い』

「……(ああ、つまり……これは表にしてはならないと)」

『ふん。そのはずが、お前の願いで一つ予定が狂ったわ。愉快愉快』

「……(……反省はしませんよ)」

『無論。今後も用心して生きると良い。だが……あらためて、一つくれてやろう』

……はい?

『時期が来ればまた相見えようぞ。我は“上”に住まう者だ』

……え、何……?

『あなたは【■■■■】に代償を払った』

『リスポーンしますか?』

『受理しました』

『 称号(タイトル) 獲得:【■■■■】【王の器】』

『条件達成。スキル獲得:【■■■■】【龍脈活性】』

『経験が一定に達しました。スキル獲得:【内丹】』

『スキル【魔素自動回復】【体力自動回復】がスキル【龍脈活性】に統合されました』