作品タイトル不明
【決勝戦】楽しい決着
[準決勝 全試合終了を確認しました]
「――――諸君、お疲れ様でした」
静寂を裂くように、あの仮面の案内人の声が響いた。
バトルロワイヤル、準々決勝、準決勝――――
戦闘は苛烈を極め、プレイヤー同士が武勇を競い合うイベントにも、ようやく終止符が打たれようとしている。
数あるプレイヤーの中、決勝へと駒を進めたのは――――
「幾多の死闘を制し、ここまで勝ち上がった二名に、まずは敬意を表しましょう」
仮面の案内人が、ゆっくりと両手を広げる。
その動きに呼応するかのように、空中に二つの名が浮かび上がった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
【決勝戦】
赤月 VS ヒーロー
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「いよいよ最後の一戦となります」
仮面の奥の視線が、2人のプレイヤーへと向けられる。
『トーナメント コロシアム』
決勝戦の舞台はコロシアムだった。
このドーム状のフィールドは、正々堂々戦うには丁度良い広さの空間であり、最強を決定する戦いに相応しい戦場であった。
周囲には観客となる大勢のプレイヤーが、勝負の時を今か今かと待ち侘びている。
「本トーナメントの締め括り――――決勝戦を開始します」
[決勝戦 開始準備]
――――遂にここまで来た。
ここでの戦いによって、武闘祭の優勝者が決まる。
「お前がヒーローだな」
「はじめまして、赤月。お前とは一度会ってみたいと思っていたんだ」
ヒーローは多少の緊張が籠もった声で挨拶をする。
彼はこれまで多くの困難を乗り越えてきた。
たが流石にイベントの決勝戦、それに加え有名人の赤月との会話が出来るとなれば、震えた声色を隠せないでいる。
「そうなのか? なら、1つ質問に答えてくれよ」
「何でもどうぞ」
「お前は――――紅茶派か? 珈琲派か?」
「……え?」
ヒーローは一瞬、何を言われたのか理解出来なかった。
質問は単純、紅茶か珈琲か。
一体どんな意図があるのかは計り知れないが、ひとまずは答えるべきだろう。
「……紅茶派だけど」
「分かる。やっぱ紅茶だよな。珈琲なんて飲む奴、気がしれないよな……!」
「待て、そこまでは言ってない!」
「良かった、お前が仲良くなれないタイプの人類かと思ってヒヤヒヤしてたんだ」
「……はぁ」
「じゃ、対戦始めるか」
「……何だったの今の質問?!」
ヒーロー、完全に緊張が吹き飛ぶ。
それと同時にBANの忠告が脳裏に浮かんだ。
――――「あいつのペースに飲み込まれるんやないで」と。
「気にするな、ただの査定だ。ちなみに、先程の質問で 珈(・) 琲(・) と答えた暁には殺意を向けていた」
「えぇ……?」
「それに……ほら、緊張解けたろ? せっかくの決勝戦なんだ、楽しくやろうぜ」
それを聞いて、ヒーローはハッとする。
これはイベントの決勝戦ではあるが、それと同時にゲームでもある。
――――ゲームは楽しくなければならない。
「――――その通りだな」
[プレイヤー 赤月は準備完了しました]
[プレイヤー ヒーローは準備完了しました]
[決勝戦 開始まで]
[3]
両者、武器遺物を構える。
[2]
赤月は色の異なる二丁拳銃を取り出す。
右銃は赤く煌めいており、俺に似合う色合いをしていた。
左銃は青く輝いており、赤を基調とした衣装に対して一際目立つ色合いをしていた。
[1]
ヒーローは直剣を構える。
それは最も王道たる武器であり、ファンタジーの代名詞とも呼べる 聖(・) 剣(・) であった。
彼は柄を握りしめ、神経を集中させる。
[0]
[決勝戦 開始――――
[群れの状態になりました]
バババババババババン!
開始の合図と言わんばかりの雷弾がヒーローを襲う。
彼は余りにも速攻に驚愕しながらも、高速に身体を動かし回避しようとするが――――
「……っ!」
流石に無害なクマのようにはいかず、3発被弾する。
そこで、ヒーローは違和感が浮かんだ。
彼は【極性災雷】を使っていただろうか……?
「別に あ(・) れ(・) 使わないと弾を放てない――――なんて、誰が言ったんだ?」
そう、【極性災雷】はあくまで弾に電磁の状態異常を付与するスキルであり、「電磁の状態異常を放てる弾」を撃てるようになるスキルではない。
[毒の状態になりました]
それに加え攻撃が当たった事による毒の付与。
――――正確には【紫蜜ノ血】による影響で、毒が 蓄(・) 積(・) され1秒毎3を3重に起こし、徐々に体力が削られ続けていく。
この蓄積は【死肉の王眼】による効果であり、状態異常の重複を可能とする。
「【極性災雷】」
赤月の恐ろしい点。
それは難題にも等しい 択(・) の押し付けである。
この場の状態異常を把握し、その上で両者がどのように行動するかの選択を強制的に選ばせる。
刹那の解答時間、そこから状況を脱する正解を導き出さなければ、赤月の 我(・) は止まらない。
「……っ!」
赤月がスキルを使用したや否や、彼が何かを仕掛けて来る前に駆け出した。
バン!
バンッ!
――――突然、赤の雷弾が飛来する。
ヒーローはその雷弾を 斬(・) っ(・) て(・) 打ち消しつつ、赤月を両断せんと剣を振り下ろ――――
「なっ?!」
「はい駄目〜」
バババババババババン!
赤月はいつの間にか赤の電磁状態となっていた。
それにより、『神霊聖剣』が振り下ろせず反発した。
――――無数の雷弾が襲いかかる。
「――――【神霊顕現】ッ!」
ヒーロー、早くも奥義を切る。
『神霊聖剣』で斬れないのなら、代わりに神霊の剣が攻撃すればいい。
カウンターの如く無数の斬撃を発生させるが、間一髪で赤月は攻撃を躱した。
バババババババババン!
雷弾の猛攻は止まらない。
それと同時に神霊の斬撃も止まる事は無い。
バンッ!
「【飛来天斬】ッ!」
ヒーローは飛ぶ斬撃を放つ。
赤月は大きく回避するが、その後隙を狩られるように無数の斬撃が彼の身体を掠めた。
だが――――
「……っ!」
飛ぶ斬撃と同時に、赤の雷弾が腕に撃ち込まれていた。
それにより――――
剣が帯電する赤の電磁とヒーロー自身が帯電する赤の電磁となり、反発する。
その結果、『神霊聖剣』が彼の手から離れた。
――――ふと、背後の神霊が掻き消える。
神霊聖剣を失った事による、消失だった。
「勝機っ!」
赤月は銃口をヒーローに向ける。
もう、彼には攻撃手段が無い。
限りない雷弾の雨が、ヒーローに振り注ぐ。
「……まだだっ!」
ヒーロー、最後の猛攻に出る。
彼は全神経を使い、飛来する雷弾を躱しながら赤月に向かって急接近していた。
「……まさか!」
「喰らえっ!」
ヒーローは赤月の顔面に向けて殴りかかる。
既に赤月とヒーローは赤の電磁状態となっていた。
殴られるだけの顔面、超スピードによる拳。
どちらの方の磁力が優先されるかは言うまでもない。
「ごべらぁっ……!!!」
ヒーローは顔面の直前、その空間を殴りつけた。
赤月は絶大なる反発力によって吹き飛ばされ――――――
壁に激突した。
[プレイヤーネーム ヒーローが決勝戦に勝利しました]
[プレイヤーネーム ヒーローは優勝しました]