軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

蠱毒

『ムシムシ密林』

俺は今、『ムシムシ密林』に居る。

――――正確には『ムシムシ密林』という名の 地(・) 獄(・) に居る。

『ムシムシ密林』って名前だから、「蒸し暑い密林」なのかなって思ってたんだ。

……密林ではあるから、間違っては無いんだが。

じゃあ、何がそんなに地獄かって?

バタバタバタバタバタバタバタバタバタバタ

ブーンブーンブーンブーンブーンブーンブーン

ガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジ

「巨大な虫モンスターが大量に居るんだけどぉぉぉぉ!!」

なんて名前詐欺だ!

『ムシムシ密林』じゃなくて『虫々密林』じゃねぇか!

絶対こいつら出るゲーム違うって!

せめて、この密林じゃなくて地球に落ちろよ!

どこぞの防衛軍が駆除してくれるだろうからな!

「あぁしゃらくせぇ! 【蒼炎点火】ッ!」

俺は振り返るのと同時に後方の蜂の羽を焼き切る。

蒼炎が切り口を燃やし、地面へと転がり落ちる。

「はっは! 油断したな馬鹿め!」

そのまま流れるように樹上へと登ってから落下し、蜂の脳天をカチ割った。

蜂は余りの衝撃に耐えきれず倒れる。

[激昂蜂を倒しました]

[100HGを入手しました]

「おっと」

すかさず蜘蛛が糸を吐き出すが、瞬時に前方へと飛び出して回避する。

――――振り向いた時には、轟音を掻き鳴らしながら爆発が起きていた。

「……わぉ」

続けて蜘蛛がそこら中に糸を吐き出し、連鎖的に爆撃を開始する。

俺はその爆発の合間を縫うように詰め寄り、蜘蛛の脚を切り落とした。

バンバンッ!

トドメに2発の酸弾を当てて、蜘蛛を仕留める。

[紅蓮蜘蛛を倒しました]

[150HGを入手しました]

「ガジガジガジガジガジ……!」

「ガジガジ!」

「ガジガジ……ガジガジ……」

戦いはまだ終わって居ない。

地面から3匹の蟻が出現した。

バンバンバン!

俺はそれぞれの蟻に酸弾を当てる。

「【蒼炎点火】」

再度、刀身に蒼炎を纏う。

そして、俺は油断している1匹の蟻の首を切り落とした。

[軍隊鋼鉄蟻を倒しました]

[50HGを入手しました]

「「ガジガジ!」」

蟻達は敵討ちとばかりに駆け寄り、一斉に自慢の顎で俺を挟もうとする。

「「ガジ?!」」

俺は高く飛び上がって蟻の目を潰す。

そして蟻の身体を踏み台にして飛び出し、振り向きざまに2発お見舞いした。

[軍隊鋼鉄蟻×2を倒しました]

[『軍隊の顎鋏』を入手しました]

[100HGを入手しました]

[ランク18になりました]

「これだけ戦って、やっとランク18か」

ランク上げの効率だけを見ればダンジョンに潜った方が大きいのは分かっている。

だが、もし死んでしまえば『サンド街』へと戻されてしまう可能性がある。

そうすれば、この『ムシムシ密林』に戻る為に時間を要してしまうのだ。

……俺を狙うプレイヤーのせいで。

「えーっと、『軍隊の顎鋏』?」

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

軍隊の顎鋏

攻撃力 20

たまに軍隊鋼鉄蟻からドロップする遺物。

その鋏に挟まれた者は動きを拘束される。

【拘束圧力】

種類 攻撃

消費魔力 1毎1

相手を拘束する事に特化したスキル

この鋏に挟まれている間、相手の動きを拘束の状態にする。

また拘束中は常に魔力を消費し、自分も動けない。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「あ〜弱いな」

ごく一部で使い所がありそう。

……が、使う場面無さそうだな。

この拘束状態がどれだけ強いのか分からんが、この「自分も動けない」は余りにも致命的過ぎるな。

「『市場』に出しとこ」

どうせ買われないだろうけど、万が一需要を満たすかもしれない。

適当に300HGで出品し――――

[『軍隊の顎鋏』が購入されました]

[300HGを入手しました]

「えっ」

あれ買う奴居るんだ……。

ま、まぁ多分初心者の子が買ったんだろうな。

最序盤で尚且つパーティ組んでるなら確かに有用か。

「まぁいいや、探索進めるか」

今の俺の目的は『ムシムシ密林』の街を見つける事。

何故なら『サンド街』に戻りたくないから。

俺はPVPが好きか嫌いかで言ったら好きな方だ。

ただ俺は「手に汗握る死闘」をしたいのであって、初心者相手にPVPしたいかと聞かれたら違う。

基本的に俺は手加減はしないし、したくない。

だが初心者相手だと、手加減しないと速攻でケリが着く。

正直それはつまらない。

どうせならお互いに強くなった状態で戦いたいんだ。

そう思えば、かつてのBANとの戦闘は良かった。

あれは互いに全力を出した戦いだった。

まさしく「手に汗握る死闘」であり、ゲームをしている実感が湧いたな。

「思想は相容れなかったが……そういう意味では、BANは好敵手なのかもしれないな」

いつか互いに強くなったら、もう一度戦いたいな。

当然、次も俺が勝つがな。

「お、見つけた」

「……ん?」

後方から、見知らぬ声が聞こえた。

この『ムシムシ密林』に入れる者は俺と木こりしか居ないはずだ。

――――馬鹿な。

俺達の他に『巨壁回廊』を突破した者が居ただと?

「…………………」

俺は後ろを振り向き、『血酸嘴砲』を――――

「――――――――おっかないな」

いつの間にか、俺の喉元に 短(・) 剣(・) が突き付けられていた。