軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

迷える子羊よ

『巨壁回廊(1F)』

ダンジョンの中は冷たい静寂が広がっていた。

壁にかけられた松明のみが照明変わりとなり、それ以外は真っ暗な闇が包みこんでいた。

「暗いですね〜」

「暗いな〜」

地面は大理石が敷き詰められており、一歩足を進める毎に心地良い音を鳴らす。

荒地のような暖かさは無く、ただ涼しげな風が通っていくのみだった。

「何でしょう、これ」

木こりが何かの 壁(・) 画(・) を発見した。

そこには羊の群れに背を向ける孤独な羊が描かれており、その上には意味深な文字が刻まれていた。

『迷える子羊よ、もう群れの中に飛び込む事なかれ。何も無い暗闇に旅立ち、一つの灯火を求め、二つの灯火を追いかけ、そして何も無い暗闇に帰るのだ』

「何かのヒントっぽいが……今の所何を指してるのかまるで分からんな」

「赤月さん」

木こりがそう言うと、バトルアックス――――

『断頭の巨斧』を構える。

その暗闇の奥には赤い光がこちらを覗かせていた。

「ピピッ」

ふと何かの機械音が鳴った。

その次の瞬間――――

「チィッ……!」

俺は銃弾を『腐王鴉の嘴短剣』で弾いた。

「【処刑】!」

木こりは瞬時に戦闘態勢に入り、『断頭の巨斧』を振りかざした。

ガギィィィィィン!

轟音を掻き鳴らしながら両断されたそれは、まるで 岩(・) 石(・) のような見た目だった。

[守護機兵を倒しました]

[50HGを入手しました]

「……ありがとうございます! お怪我ありませんか?」

「問題無い。にしてもゴーレムか……こういうのも出てくるんだな」

今まではモンスターはモンスターでも生き物を相手にしてきたが、無機物との戦闘経験は全く無い。

これを機に行動パターンを覚えるのも良いかもしれんな。

「赤月さん……あれ!」

「……へぇ」

木こりが示した方向には同じ守護機兵が立っていた。

――――いや、1体だけじゃない。

2体、3体、4体……10体以上居る気がするな。

「全く、ソロで挑まなくて正解だったな」

俺は『血酸嘴砲』を構える。

物量攻めで俺達を倒せると思ったら大間違いだ。

「はい。2人なら余裕で倒せます!」

どうせなら、もっと数を持ってこい。

その程度では勝てない事を教えてやる!

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

暗闇の奥から、ドしどしと重厚な足音が回廊を響き渡る。

強固な壁に囲まれた回廊は侵入者を防ぐ為、常に守護機兵を生成し続けていた。

「ピピッ」

守護機兵の一体が何かに反応した。

侵入者だ。

手元に構えるは鉛玉を発射する筒。

その筒を見知らぬ侵入者に向け――――

「【処刑】ッ!」

「【腐王吸命】ッ!」

[守護機兵を倒しました]

[50HGを入手しました]

[ランク12になりました]

「どーなってんだこのダンジョンは! いくら何でも敵が多過ぎんだろ!」

どこに向かっても守護機兵だらけ、あの『腐れ鴉穴』でもここまで敵の数多くないぞ!

確かに「もっと数を持ってこい」って思ったけど、ここまで持ってくるとは誰が予想したよ!

だが育成の甲斐があって敵が柔らかいのは救いだ。

これで血将鴉みたいな耐久力があったら、確実に苦戦を強いられていただろう。

「そろそろ次の階層に行っても良さそうですけどね……」

ここまで駆け回って階段一つ無いのは流石におかしい。

となると――――ギミックか?

「木こり、先行っててくれ! 後で合流する!」

「えっ?! はい! 分かりました!」

気になる事がある。

何故か周囲の景色がまるで変わらないんだ。

俺達は大きく移動しているはずなのに、同じような景色ばかりなんて事、ゲームデザイン的にあり得るのか?

……確信は無い。

だが俺の予想が正しければ――――

「わっ! 赤月さん?!」

突然、俺の 後(・) ろ(・) から木こりが現れた。

疑問が確信へと変わる。

「これあれだ、正解の道行かないと最初から戻されるタイプのギミックだろ」

「…………あ〜!」

大量の守護機兵は気を逸らせる為のブラフ。

本命は正しい道を歩まないと出られない脱出ゲームだ。

俺とした事が気付くのに遅れるとは……!

「そういうのって、何かヒントがあるはずですよね!」

「ヒント……あれか?」

確かにダンジョンに入る時、意味深な壁画を見た。

これが抜け出す為のヒントになっている可能性が高い。

「迷える子羊よ。もう群れの中に飛び込む事なかれ。何も無い暗闇に旅立ち、一つの灯火を求め、二つの灯火を追いかけ、そして何も無い暗闇に帰るのだ……」

何も無い、一つ、二つ、何も無い――――

暗闇、焔、灯火、暗闇――――

「これ松明の事じゃね?」

俺の予想が正しければ……まず松明の無い道に行き、次に一つだけ壁掛けてある松明の方に行き、二つ壁掛けてる松明の方に行って、最後には松明の無い道に行けば――――

「よし階段来た!」

「やっと1階層突破ですね!」

パズル系のダンジョンはもうこりごりだ。

次の階層はもっと単純なので頼むぜ!

俺達は2階へと進む階段を駆け上がったのだった。